西村まさみの発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○西村まさみ君 ODA調査派遣第三班について御報告いたします。
当班は、昨年十月二十一日から十月三十日までの十日間、ODA調査派遣として初訪問国となるアルゼンチン共和国及びパラグアイ共和国に派遣されました。
派遣議員は、団長の松山政司議員、鶴保庸介議員、そして私、西村まさみの三名であります。
訪問国のうちアルゼンチンは、南米地域の主要国で、既に第三国への支援が可能な国であります。他方、パラグアイは、インフラ整備や格差の是正が課題であり、同じ南米地域にありながら支援対象国としての性格が大きく異なる両国を同時に訪問することで、有意義な調査を実施することができました。
さらに、今回、両国に共通して強く印象に残ったのは、日系社会の存在であります。日本との強いきずなとなっている日系人、日系社会が、相手国との二国間関係にあって重要な役割を果たしていることを再認識いたしました。
それでは、調査派遣を通じて得られました所見につきまして、その概要を御報告いたします。
最初に、アルゼンチンについて申し上げます。
日本の対アルゼンチン経済協力は、現在、技術協力及び草の根・人間の安全保障無償資金協力を中心として実施されています。
今回の調査で視察した国立農牧技術院の花卉研究所は、そもそもJICAから移管されたものでありますが、JICAにより技術協力が続けられてきています。中南米地域における花卉園芸研究の中核的存在である同研究所は、我が国ODAの効果が顕著に現れた模範的な例であると言えます。この研究所が今後も地域の最先端の技術を維持するために、日本の大学や研究機関との連携継続、強化について側面から支えていくべきであると考えます。
また、対アルゼンチン経済協力の重点分野として環境保全が掲げられています。我が国ODAで実施した技術協力、イグアス地域自然環境保全計画プロジェクトにおいては、日本の専門家による適切な技術協力により、国立公園や保護区の管理が継続して行われていることが確認されました。
このような技術協力により、日本の技術、知識がアルゼンチンの発展の担い手に伝わり、その担い手がアルゼンチン社会の核として中心的な役割を果たすならば、やがてはその実績が日・アルゼンチン関係の深化に結び付くことが期待されます。ほかの新興援助国も現れる中で、これまでの成功してきた日本の技術協力を途絶えさせることなく、更にその財産を生かすためにも、今後もアルゼンチンとの協力関係を維持、継続することが重要であります。
日本とアルゼンチンの両国間においては、二〇〇一年に締結された日本・アルゼンチン・パートナーシップ・プログラムに基づき、第三国への支援、すなわち三角協力が推進されております。アルゼンチンのフェラリス外務副大臣からは、日本が三角協力のパートナーとしてアルゼンチンと連携していることについて光栄であるとのお話もいただきました。
アルゼンチンを開発パートナーとする第三国への三角協力支援は、日本の持つ技術協力のノウハウが、アルゼンチンの持つ中南米諸国への結び付きを通じ発展的に活用されることにより、日本と中南米諸国との関係強化につながる有益なものであると言えます。充実した三角協力実施のため、アルゼンチンにおける新政権発足を契機に、日本とアルゼンチンの国際協力実施機関同士の関係構築を更に強化し、相補性を高めていくことが期待されます。
次に、パラグアイについて申し上げます。
パラグアイにおいて、我が国の無償資金協力により建設された文化施設、パラグアイ・日本・人造りセンターでは、六部門の研修コースのほかに日本文化コースも実施されているなど、一九八八年に開設されて以来、パラグアイにおける人材育成の拠点となっていることが確認できました。ただし、日本文化コースの茶道、着付け等に使用されている和室の畳など、パラグアイ国内では調達できない備品については経年劣化の形跡が見られました。充実した研修を継続するためにも、我が国の援助関係者が適切に助言し、きめ細かい補修の努力を促す必要があると思います。
パラグアイ環境庁の下部組織である環境情報センターの庁舎は、二〇一五年二月に完成し、真新しい研究室、資料室等において、既に研究員や職員が業務を遂行しており、森林の適切な保全、管理に向け、有効に活用されていることが確認できました。ただし、施設建設に当たっては、内陸国であるパラグアイの国内事情を勘案しつつも、我が国が提供するのにふさわしい施設となるように、設備、備品及び機材について、性能のみならず、メーカーやその製造国が適当なものであるかどうかといった点についても留意すべきであります。
これら施設建設など、ハード面における支援のほか、パラグアイの若年人口の多さから考えると、今後のパラグアイ社会を担う人材を育成していくことこそが同国の発展に結び付くものであることは、日本から同国に派遣された専門家やボランティアとの意見交換を通じて確信したものであります。
日本―パラグアイ職業能力促進センターにおいては、工場新設や設備更新において必要な電子技術分野の専門技術者を育成しております。日本の専門家が直接学生を教えるのではなく、短期大学の教師を養成することで、技術協力終了後もその技術の伝達が維持、拡大される狙いがあります。このセンターの成果は、パラグアイ側から大変高い評価を得られていることによって証明されておりますが、こうした職業訓練に併せ、日本への留学の機会が提供されるならば、更に効果的、効率的な人材育成が達成できるのではないかと考えております。
また、派遣団は首都アスンシオンの郊外、セントラル県ルケ市に所在する学校を訪問し、草の根無償スキームにおいて増築された教室を視察しました。対象校では、教室不足のため、図書室や食堂で授業が行われていましたが、本事業によって教育環境が大きく改善され、このことは地域住民からも大変喜ばれておりました。
学校を訪問した際には、歌やダンスによる生徒主催の歓迎会が催され、生徒たちから今回の視察先の中でも最も大きな明るい歓迎を受けました。実際に増築された教室を使用している生徒たちの将来の夢を聞いてみると、経営学、経済学、そして、医学を学びたいとの声がありました。はっきりと将来の展望を持っていても、本当にその道に向かって進もうとしたときに、きちんとした教育が受けられる環境が整っているのかといえば、現状では大変難しいと言わざるを得ないかもしれません。
パラグアイの将来を担う子供たちの教育については、引き続き経済協力の最重要分野であると言えます。教室増築などの環境整備だけでなく、教育機会の拡充など人間開発としての教育への支援も併せて考えていくべきだと思いました。
次に、アルゼンチンとパラグアイの両国に共通していること、すなわち歴史的に培われてきた日系社会について御報告申し上げます。
南米では、ブラジル、ペルーに次ぐ三番目の規模となるアルゼンチンの日系社会は、これまでの長年にわたる努力の結果として同国の人々から多大な尊敬を獲得しており、こうした日系社会の存在は、今後とも日本とアルゼンチンとの関係の大きな懸け橋の役割を担うこととなると思います。
二国間の関係の更なる深化のためにも、我が国はアルゼンチンの日系人、日系社会を支えていく必要があります。今回、視察したブエノスアイレスの日亜学院は、非日系人にも開かれた学校としてブエノスアイレス市や地域からも高く評価されており、また、アルゼンチンにおいて日本語で対応できる唯一の診療所であるニッカイ共済会診療所では、対象を非日系人にまで広げるなどの経営努力を続けています。このようにアルゼンチンで活躍されている日系人やその関連施設について、日本政府が今後も継続して側面から支えることの重要性をここに指摘したいと思います。
パラグアイにおいては、日本人の入植は一九三六年に始まり、本年二〇一六年は日本人移住八十周年という節目の年を迎えました。同国の日系人は、大豆の不耕起栽培技術を導入し、その生産量が世界第六位になるまで成長させるなど、農業分野の発展に大きく貢献してきました。
今回の調査派遣で、JICAが設立した四つの移住地のうちイグアス移住地を訪問し、製粉工場や農家を視察して同移住地の現状を確認するとともに、パラグアイにおける日系社会の位置付け等について移住地の日系人との意見交換を行いました。
イグアス移住地においては、一九八〇年代後半から大豆を主力とする畑作が進められ、現在では移住者、日系人の営農はおおむね安定しております。そして、パラグアイにおける日系人、日系社会は、全体として同国の発展と進歩に貢献していると評価されています。今後も、パラグアイ社会に深く根付いた日系人、日系社会は、距離的に遠く位置する日本とパラグアイの二国間の関係緊密化に重要な役割を果たすであろうことを確信いたしました。
引き続き、日本政府が、パラグアイの移住者、日系人支援を強化し、充実したものになるように努めるべきものであります。
アルゼンチンとパラグアイの両国において、これまで努力を重ねられてきた日系人が、現地の国民から尊敬され、信頼されていることを実感し、現在、外務省においては、海外移住や海外における邦人に関する業務は領事局の政策課が所掌しており、また、中南米局は日系人招聘の業務を行っていますが、日系人、日系社会に関する施策それ自体を横断的に所管する組織はありません。今後、時の経過とともに、世代交代が進むにつれて生じるであろう日系社会の新たな課題に対し、日本政府としても適切に対応していく必要があり、こうした日系社会の成熟に合わせ、また、日本との強いきずなとなっている財産を生かすべく、日系人、日系社会に関する施策を総合的に取りまとめる組織の新設を考える時期が来ているのではないでしょうか。
最後に、今回調査に御協力いただきました視察先の皆様、外務省及び現地の在外公館、JICAやボランティア、専門家の皆様、日本企業及び日系人の皆様に対し、心からの感謝を申し上げ、私からの報告を終わります。