石井正弘の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○石井正弘君 ODA調査派遣第四班について御報告いたします。
当班は、昨年十二月十三日から二十一日までの九日間、パラオ共和国及びミクロネシア連邦に派遣されました。大洋州地域への派遣は、平成二十年度のフィジー諸島共和国、現在のフィジー共和国及びツバル以来二回目であり、両国へのODA調査派遣は初めてであります。
派遣議員は、団長の赤石清美議員、長浜博行議員、辰巳孝太郎議員、そして私、石井正弘の四名であります。
以下、今回の調査を通じて得た所見を中心に御報告いたします。
まず、パラオ共和国について申し上げます。
第一に、サンゴ礁と海洋生態系の保全対策であります。
パラオ共和国では、豊かな自然環境を利用した観光開発が経済発展の主軸であり、観光開発の大部分がサンゴ礁を利用した活動に依存しています。しかし、近年、急速な観光開発や気候変動等によってサンゴ礁生態系への悪影響が深刻な問題となっております。
派遣団は、二〇〇一年一月に、アジア太平洋地域におけるサンゴ礁研究の拠点として我が国の無償資金協力によって建設されたパラオ国際サンゴ礁センターを視察いたしました。同センターのゴルブーCEOとの意見交換においては、近年のCO2ガスの増加による海水の酸性化と海水温の上昇によってサンゴ礁への悪影響が懸念されているが、どのような地域でどのようなサンゴ礁が影響を受けているのかを詳細に調査することにより今後の海洋生態系の保全対策に役立てたいこと、パラオにとって観光業が重要な産業となっていることに鑑み、ダイビングやシュノーケリング等がサンゴ礁生態系に与える影響についても研究を行うこと等について見解が示されました。
我が国といたしましても、パラオ共和国のサンゴ礁と海洋生態系の保全に向けて、JICAボランティア等を通じた技術協力とサンゴ礁のモニタリングを両国で連携して長期的に実施していくことにより、そこで得た成果をアジア太平洋地域におけるサンゴ礁生態系の保全に生かすことが重要であると実感いたしました。
第二に、情報通信インフラ整備の必要性についてであります。
パラオ共和国は観光立国であり、日本からの観光客も毎年多数訪問しておりますが、情報通信インフラの整備が著しく遅れており、パラオ国民はもとより、海外からの観光客にとっても深刻な問題となっております。例えば、携帯電話による日本への国際電話料金が一分間八百八十円と世界的に見ても非常に高額であり、さらに、スマートフォンやタブレットをホテルなどで利用する場合も、インターネット等の通信環境が極めて悪いため、接続に時間が掛かる上、通信速度も非常に遅い状況にあります。この点について、レメンゲサウ大統領からは、情報通信インフラはパラオ共和国が最も遅れている分野の一つであるが、現在、アジア開発銀行から融資を受け、フィリピン―グアム間の海底ケーブルに接続するプロジェクトを検討していること、早ければ二〇一七年に海底ケーブルへの接続が完成する見通しであるとの見解が示されました。
我が国はアジア開発銀行に対する最大の拠出国となっておりますが、アジア開発銀行の融資を通じてパラオ共和国の情報通信インフラが改善されれば、観光客の利便性が向上するだけではなく、ひいてはパラオ共和国における教育や医療など多方面での貢献が期待できるだけに、我が国といたしましても、その動向を注視しつつ、必要な支援を行っていくべきと考えております。
次に、ミクロネシア連邦について申し上げます。
第一に、脆弱な財政構造の改善と経済発展についてであります。
ミクロネシア連邦は、政府歳入の約五割を米国からの自由連合協定、コンパクトに基づく財政支援が占めるなど、脆弱な財政構造となっております。現在は、二〇〇三年五月に締結された改定自由連合協定により、二十年間、毎年九千二百万ドルの財政支援を米国から受けることとなっております。しかし、二〇二三年を間近に控え、同国の財政問題の解決が大きな課題となっております。この二〇二三年問題について、クリスチャン大統領及びロバート外務大臣からは、現在の世界経済の中でミクロネシア連邦の将来について悲観的な見方もあるが、米国からの支援や日本を含めたドナー国からの支援を引き続きお願いしたいとの要望が寄せられました。
ミクロネシア連邦が財政的な自立を図るためには、歳出の効率化や税制改革といった財政構造改革が必要ですが、それに加え産業育成による経済発展が不可欠であります。今後は、農業、漁業、観光業を中心とした経済的な自立に向けて、国内産業の育成や外国投資を促進することが必要と考えます。我が国といたしましても、ミクロネシア連邦の財政的な自立と経済発展に向けて、様々な形で支援を継続していくべきであります。
第二に、同国内の重要な海上輸送手段となっております貨客船問題であります。
ミクロネシア連邦は、約六百の島と環礁が散在しており、円滑な人の移動や生活物資の入手、保健医療サービスの利用等のため、安定的に運航される船舶の存在が不可欠となっております。我が国は、ミクロネシア連邦政府からの要請を踏まえ、無償資金協力により、一九九八年にキャロライン・ボイジャー号を、二〇一五年にミクロネシア・ナビゲータズ号を提供いたしました。
派遣団は、ウィルバーガー運輸・通信・インフラ大臣の案内の下、この貨客船二隻を視察いたしました。十七年前に供与したキャロライン・ボイジャー号につきましては、耐用年数の半分以上を経過しており、多くの機材で不具合が生じ、維持管理に多額の費用が掛かっていること、一方、新たに供与したミクロネシア・ナビゲータズ号につきましては、最先端の設備を完備しており、定員数や客室環境も大幅に改善をし、定期運航が可能となったとの説明を受けました。
両船とも、人の移動を始め、日常の生活物資、建設資材、災害時の緊急物資の運搬など多目的に利用されており、ミクロネシア連邦における安定した海上輸送手段といたしまして大きく貢献している様子を見ることができました。また、大臣からは、キャロライン・ボイジャー号が廃船になるときには新たな三隻目の貨客船を日本に要請したい旨の要望が示されました。
我が国は現在、大変厳しい財政状況にはありますが、貨客船二隻が同国の安定した海上輸送と国民生活に大きく貢献している実情を踏まえ、政府といたしまして、しかるべき時期に適切に判断されることを期待したいと思います。
次に、両国の共通の課題となっております教育、医療、廃棄物処理の問題につきまして、順次御報告をいたします。
まず、教育問題についてであります。
両国の教育制度は、小学校八年間、高校四年間の計十二年間となっており、大学はなく、唯一短期大学があるのみであります。小学校、高校教育においては、教員の指導力や知識が乏しいことが多く、理数系教科の生徒の学力の低さが課題となっております。
派遣団は、パラオ共和国において、教育省及び小学校二校、ミューンズ小学校及びペリリュー小学校を視察するとともに、ソアラブライ教育大臣、校長及びJICAボランティアとの意見交換を行いました。教育省に派遣されている上野シニアボランティアとの意見交換では、算数教育の問題点として、授業はパラオ語、教科書やテストは英語で行うため知識の定着が難しいということ、高校卒業後、資格や経験がないまま教員になるため指導力が不足していることなどが取り上げられました。こうした算数教育の現状を是正するため、教員向けの算数研修や算数の計算ドリルなどの作成を行っているとの説明を受けました。この後、派遣団は、小学校二校の教育現場を訪問し、青年海外協力隊員の指導の下、算数の計算ドリルが使用されている授業現場などを視察をいたしました。
一方、ミクロネシア連邦では、日程の都合上、小学校を訪問することはできませんでしたが、クリスチャン大統領との意見交換において、ミクロネシア連邦は、実質的な支配国等の変遷により三回使用言語が変わったため、教育システムが他国と比べ遅れているとの説明を受けました。
算数、数学を始めとした基礎教育の充実は、途上国において貧困を削減し、社会経済の発展に不可欠なものであります。我が国としても、引き続き、JICAボランティアの派遣を通じ、教員への指導と生徒の学習方法の改善を行い、両国における教育の質の向上に更に取り組んでいくべきであります。
次に、医療問題であります。
両国が抱える医療問題は、国内において高度な保健医療サービスが提供できないため、困難な手術を必要とする患者は国外に治療を受けに行かなければならないということ、近年、糖尿病などの生活習慣病対策が必要となっていること、医療機器の老朽化が進んでいること、国内に大学医学部がないため優秀な医療人材の確保に苦労していることなどであります。
派遣団は、病院長及びシニアボランティアの案内の下、パラオ国立病院とポンペイ州立病院を視察いたしました。両病院長から、日本の草の根無償資金協力による最新機器の導入に関する要望が寄せられました。また、両病院との意見交換を通じて、糖尿病の合併症など生活習慣病による通院や手術の事例が多くなっていることから、定期的な健康診断システムの導入が不可欠であり、予防医療や食生活の改善の必要性を強く実感いたしました。
また、両国とも、重篤な患者は国外の病院で治療を受けるため航空機で移動せざるを得ず、患者に掛かる肉体的、経済的負担が過大となっております。そのため、両国においては、国内に大学医学部を設置することや海外の大学で教育を受けた優秀な医師、看護師等の医療人材の確保策を検討することにより、両国民が自国内で適切な保健医療サービスを受けられるよう更なる努力を行うとともに、我が国としても、草の根無償資金協力やJICAボランティア派遣などを通じて、医療機器の整備や医療人材の育成などに向けて必要な支援を継続して行っていくべきであります。
最後に、廃棄物処理問題であります。
両国は、主要な産業がないことや生活様式の近代化により、食料を含む生活物資の多くを輸入品に依存するライフスタイルが定着し、ごみの発生量が増加する一方で、その処理に必要な体制の整備が遅れている現状にあり、ごみ問題の解決が深刻な社会問題となっております。
派遣団は、パラオ共和国においてコロール州廃棄物リサイクルセンター(パラオ共和国)を、ミクロネシア連邦においてポンペイ廃棄物最終処分場を視察いたしました。
パラオ共和国については、藤コロール州アドバイザーによる熱心な活動により、飲料容器のリサイクルを通じて国民の意識を変革させるとともに、有機廃棄物のコンポスト化をコロール州の事業として定着させたこと、また、ミクロネシア連邦については、JICAの技術協力プロジェクトを通じて廃棄物の埋立てに低コストの福岡方式を導入し、ごみの量の減少とメタンガスの抑制に大きく貢献しております。いずれの取組も両国の廃棄物処理問題について成果を上げており、高く評価できます。
一方で、ごみの分別回収については、とりわけミクロネシア連邦において進んでいないのが現状であります。我が国としても、両国におけるこれまでの取組について引き続き積極的な支援を行うとともに、今後の課題として、ミクロネシア連邦におけるごみの分別回収に向けてどのような支援が可能かを検討する必要があると考えます。
最後になりますが、今回の調査に御協力いただいたパラオ共和国及びミクロネシア連邦の政府、議会関係者、視察先、NGO及び日本企業関係者、外務省本省、在外大使館、総領事館、JICA本部、海外支所、JICAボランティアの皆様に対し、心から感謝を申し上げ、派遣報告を終わります。
ありがとうございました。