崔江以子の発言 (法務委員会)

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○参考人(崔江以子君) 川崎市桜本から来ました崔江以子と申します。在日韓国人の三世です。日本人の夫と中学生と小学生の子供がいます。川崎市ふれあい館の職員をしています。ふれあい館は、乳幼児から高齢者までの幅広い方々が利用する施設です。日本人はもちろんですが、地域に暮らす外国人市民や外国につながる市民の利用もあり、共に生きる町の中で誰もが力いっぱい生きられるためにとスローガンを掲げ、市が掲げる多文化共生の町づくりにその役割を果たしています。
 今日は貴重なお時間をいただいてありがとうございます。正直怖いです。とっても怖いです。表に立ってヘイトスピーチの被害を語ると、反日朝鮮人と誹謗中傷を受けます。私は今日、反日の立場で陳述をするのでは決してありません。ヘイトスピーチを違法とし、人種差別撤廃に国と地方公共団体が責任を持つ法案を是非成立させてほしい、法案に賛成の立場でお話をさせていただきます。
 私が生まれ育ち暮らす川崎市では、二〇一三年から十二回にわたりヘイトデモが行われてきました。お配りした資料の一ページ目を御覧ください。直近の二回、二〇一五年十一月八日と二〇一六年一月三十一日のデモは、その前に十回行われたデモとは大きく意味が違います。
 資料の三ページ目を御覧ください。
 駅前周辺で行われてきたヘイトデモが、十一月八日に川崎区の臨海部、在日コリアンの集住地域に向かってやってきました。私たちの町、桜本は、日本人も在日もフィリピン人も日系人も、誰もが違いを尊重し合い、多様性を豊かさとして誇り、共に生きてきた町です。その共に生きる人々の暮らしの場に、その思いを土足で踏みにじるかのようにあのヘイトデモが行われました。川崎に住むごみ、ウジ虫、ダニを駆除するためにデモを行いますと出発地の公園でマイクを使って宣言をし、ゴキブリ朝鮮人をたたき出せとヘイトスピーチをしながら私たちの町へ向かってきました。このヘイトデモに対し多くの人が抗議した結果、桜本の町には入りませんでしたが、住宅街、たくさんの人の暮らす共生の町にあのヘイトデモは土足で入り込みました。確かに、桜本の町はあの日は守られました。けれども、とてもとても大きな傷を残しました。
 資料十六ページの神奈川新聞の記事を御覧ください。
 在日一世のおばあさん、ハルモニ方は、何で子や孫の代にまでなって帰れと言われなければならないのだと傷つき、悲しみの涙を流し、ヘイトスピーチをする大人の人たちに、外国人も日本人も仲よく一緒に暮らしていることを話せば分かってくれるはずだと信じて沿道に立った私の中学生の子供は、余りのひどい状況に強いショックを受けました。多くの警察がヘイトデモの参加者のひどい発言を注意するどころか、守っているかのように囲み、差別をする人たちに差別をやめてと伝えたくても、警察にあっちへ行けと言われ、デモ参加者からは指を指されて笑われ、どうして大人がこんなひどいことをするのと大人に対して強い不信と恐怖心を持ちました。もしかして同じエレベーターに乗った人がこのヘイトスピーチをする人だったらと、エレベーターに乗ることが怖くなったと言います。私自身もこの十一月八日のヘイトデモのときに初めて抗議の意思表示をしました。残念ながら、決して届かぬ共に生きようの思いを見詰め、無力感に襲われました。
 そして、一月三十一日に再びヘイトデモが予告されました。集合場所の公園やデモに許可を出さないでほしいと行政機関にお願いしても、不許可とする根拠法がないのでできないと断られました。私たちの桜本地域の中高生や若者たちは、なぜここに住む人間がヘイトデモに来ないでほしいと言っているのに来るんだ、大人がしっかりルールを作って自分たちの暮らす町を守ってほしいと強い怒りと悲しみの思いをあらわにしながらも、それでも共生への思いをしるし、私たち大人を信じ、預けてくれました。
 そして、一月三十一日、ヘイトデモの当日、私の中学生の子供は、ヘイトデモをする大人に差別をやめて共に生きようと伝えても、その思いは残念ながら届かず、再び傷つき、絶望を突き付けられるだろうと心配して止める私たち親に、ヘイトデモをやめてもらいたいから、僕は大人を信じているからと、強い思いで沿道に立ちました。資料四ページから六ページにその日の記録の写真があります。御覧ください。
 あの日のことをお話しするのはとても厳しくつらいです。一月三十一日は過ぎましたが、まだ私たちそこに暮らす人間にとっては終わった話ではなく、続いている話だからです。また来るぞと言ってその日のデモは終わりました。悪夢のような時間でした。私たちの町、桜本の町の入口で、助けてください、助けてください、桜本には絶対に入れないでください、お願いです、お願いです、桜本を守ってください、僕は大人を信じていますと泣きながら叫ぶ中学生の子供の隣で、彼を支えなければと思ったけれど、あのとき私の心も殺されました。
 ヘイトデモをする人たちの良心を信じ、差別をやめて共に生きようとラブコールを送ってきたけれど、たくさんの警察に守られながら、一人残らず日本から出ていくまでじわじわと真綿で首を絞めてやるからと、デモを扇動した人が桜本に向かってくる。韓国、北朝鮮は敵国だ、敵国人に対して死ね、殺せと言うのは当たり前だ、皆さん堂々と言いましょう、朝鮮人は出ていけ、ゴキブリ朝鮮人は出ていけ、朝鮮人、空気が汚れるから空気を吸うなと叫ぶ人たちが私たちの町へ警察に守られて向かってきた。あのとき、私の心は殺されたと同じです。
 私の中学生の息子は、自身の多様性、日本と韓国にルーツがあること、ハーフではなくダブルと私たち親や地域の人から大切にされ、自分自身も自身の多様性を大切にして暮らしてきました。そんな息子が、朝鮮に帰れと言われても体は半分にできない、心がばらばらにされたと、あのときに受けた傷を一か月以上もたってからやっと言葉にして表現をしました。目の前で、大切にしてきた民族性の違いをもって、母親が死ね、殺せと言われているのを目の当たりにした彼の心の傷は計り知れません。
 あの桜本の入口の交差点は私たちの生活の場所です。買物に行くスーパーがあります。ドラッグストアもあります。給与の振り込みや学校諸経費の支払に利用している地元の信用金庫もあります。子供が通院する病院もすぐ近くです。今でも、あそこを通るたび胸が苦しくなります。景色の色が消え、車や人通りの音が消え、あの日、あの場所が思い起こされます。信号待ちをしていると、知らない間に涙があふれます。
 この被害を行政機関に訴えても、根拠法がないから具体的な対策は取れないと、助けてもらえません。私の息子や桜本の子供たちは守ってもらえません。ヘイトスピーチをする大人から傷つけられ、さらに守ってくれない大人に傷つき、それでも大人を信じ、ルールを作ってほしい、大人がきっとルールを作ってくれると信じて待っていてくれます。
 一月三十一日のデモの後、ある日本人の高校生が、何かごめんと謝ってきました。ヘイトデモが来る前は、私たちの町で互いの民族性の違いを豊かなものだと尊重し合いながらいたのに、謝り、謝られることなんてあり得なかったのに、日本人の彼もヘイトスピーチの被害者です。
 私の中学生の子供は、あのひどいデモの後、川崎市長さんへ手紙を書きました。そこに、朝鮮人は敵、敵はぶち殺せ、朝鮮人は出ていけとひどい言葉を大人が言っていました、もしこんなことを学校で誰かが言ったら、学校の先生はそんなひどいことを言ってはいけないときっと注意をする、表現の自由だから尊重しますなんて絶対に言わない、市長さんはどう考えますか、助けてください、ルールを作ってヘイトデモが来ないようにしてくださいとつづりました。
 その私の子供の、市長への手紙への答えが資料の四、資料の七ページ目を御覧ください。
 一月三十一日に行われたデモは、外国人市民の方々を始め、多くの市民の心を傷つけ、不安や不快感を抱かせる行為であり、とても残念に思います。しかしながら、このようなデモについては、現行の法令で対処することが難しいため、現在、国に対して法整備などを要望する準備を進めています。これは三月十四日に要望書が提出済みですが、という返事でした。
 差別があっても法律がないと差別が放置されたままでは、いつか私たちは本当に殺されます。白昼堂々と、死ね、殺せとマイクを持って叫ぶ成人男性が警察にその主張をする場を守られている。いつか本当に殺されます。
 その思いで、三月十六日に法務局へ人権侵犯被害申告を行いました。資料八ページを御覧ください。正しく差別が調査、検証され、救済及び予防のための適切な措置を講ぜられることを求め、申告をしました。
 差別の問題に中立や放置はあり得ません。差別は、差別を止めるか否かです。現状、国は差別を止めていない。それは、本当に残念ながら差別に加担していることになります。ヘイトスピーチを違法とし、人種差別撤廃に国と地方公共団体が責任を持つ法案を是非成立させてほしいと心から願います。
 桜本の若者、子供たちは、また来てしまうかもしれないヘイトデモに対して、共に生きよう、共に幸せにというメッセージを記しました。この思いを私たち大人がしっかり受け止め、このメッセージが届かずに再び傷つき、涙を流すことがないような社会をつくるためにも、何よりも国が、中立ではなくヘイトスピーチをなくす側に立つことを宣言し、差別は違法とまず宣言をしてほしいです。そのために、まず今回の法案をすぐに成立させてほしいと思います、共に。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 崔江以子

speaker_id: 5320

日付: 2016-03-22

院: 参議院

会議名: 法務委員会