原田宏二の発言 (法務委員会)
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○参考人(原田宏二君) おはようございます。北海道から参りました原田といいます。
私は三十八年ほど警察で仕事をしておりまして、その大半を刑事部門で過ごしました。北海道では殺人事件の捜査本部事件とか、他府県にも出向いたしまして、熊本、山梨県警の捜査二課長として選挙取締りとか役人の汚職事件の捜査をやっておりました。
そういうことで、私は今日お話しいたしますけれども、決して私はアンチ警察の立場で皆さんにお話しするつもりは全くありません。長い間警察におりまして犯罪捜査という仕事をやっておりましたから、それなりの愛着は持っております。ただ、私が今考えておりますのは、警察に長くいて捜査をした人間として、警察の捜査はやっぱり堂々としてもらいたいと、つまり、法の手続に従って正々堂々とやってほしいと思うんですね。その上で国民の皆さんの信頼を得てほしいと、そういう願いで今日皆さんにお話をいたします。
本題に入りますと、私は、取調べの問題について言うと、可視化だけで冤罪とか誤認逮捕がなくなるということは多分ないだろうというふうに実は思っております。といいますのは、警察の犯罪捜査には様々な問題がありますので、今日時間内で全てお話しすることはできません。ということで、一部だけお話しさせていただきます。
北海道におりますと、国会で今何をやっているのかということが、私のようにある程度関心がある人間でも本当に分かりません。せいぜい私なんかはこの刑訴法の改正問題について知識としてあるのは、法務省のホームページを見たということぐらいです。
そんなことで、実を言いますと、私はもう最初から、議論のスタート、この可視化の問題のスタートというのは、そもそも盛り上がってきたのは志布志事件とか富山の氷見事件とか、ああいう事件をきっかけにわっと盛り上がってきたんだと思っているんですけれども、あの議論辺りは、日弁連の話なんかを聞いていますとやっぱり全面可視化なんですよね。ですから、私はもう多分全面可視化でいくんだろうというふうに強い、何というか、ある程度の先入観みたいのを持っていたわけですね。
実は私、今年の一月に、これ、本の宣伝じゃないんですけど、「警察捜査の正体」という本を講談社から出したんですよ。その中に、ちょうど原稿を書いた頃にこの問題がわっと盛り上がってきた頃で、いや、やっぱり書かないと駄目だと思って急いで実は書いたんですけど、ところが、間違って書いちゃったんですね。
何を間違ったかというと、私はまさに、警察の取調べは裁判員裁判事件で逮捕、勾留されている被疑者については基本的に原則として、まあ例外は若干あるにしても、録音、録画すると、こういうことですよね、現在の政府提案の改正案というのは。私はそのほかに、全面可視化なんだからという頭があるので、当然裁判員裁判の対象外の事件の被疑者についても何らかの形、例えば申出があった場合は録音、録画するとか、そういう形。あるいは任意の被疑者、任意の被疑者の取調べで問題がないということは絶対あり得ない。それから、参考人の取調べについてもいろいろ問題があるわけですよ。例えば、目撃者の供述がどんどんどんどん変遷していって言ったことと供述調書の内容が全然違うと、こういうようなこともあり得るので、そういう意味では、私は参考人の取調べも当然録音、録画の対象にするべきだと。ですから、取調べ室以外でやることになるんでしょうから、その人が自前で録音することぐらいは認めたっていいんじゃないかということで、実はこの本に書いたんですよ。
ところが、実は、よく調べてみるとそれは政府案には載っていなかったんです。ですから、私の本は間違っているんですよ。今日、ようやくそれ確認しました。それは民主党の案だったということですね。この法案が成立したら私は訂正文を書かないといけないというふうに思っていますけれども、それは半分冗談みたいな話で申し訳ないんですけど。
実は、可視化の場合、いろいろ議論の中で出てくるのは、裁判員裁判が何%だと、こういう話の議論が出てくる。私はあれ絶対違うと。警察で毎年どのぐらいの人間を調べているのと、刑法犯あるいは特別法犯の被疑者として何人ぐらい調べているの、場合によっては任意も含めて、その中でどうなのという話になるべきだと思うんですけど、そうじゃない。それを私、この本の中にも書きましたけど、試算してみると、試算ですよ、〇・三六%ぐらいですよ、裁判員裁判の対象人員というのは。せいぜいそんなものですよ。これよりもっと低い数字を言っている弁護士さんいますよ。さっき言った氷見事件とか鹿児島の志布志事件は対象外ですからね、あれ、明らかに冤罪ですけど、外ですからね。ですから、そういうことで、部分可視化というのは余り意味がないというふうに思います。
さらに、もうちょっと言うと、私たちの場合、意外に思われるかもしれないですけど、私は捜査幹部としては別件逮捕は基本的にやるべきじゃないと、非常に違法性が強いという意識がありましたよ、私自身。だから、そういう指揮をしていました。
でも、最近見ていると、随分何か別件逮捕が多いんじゃないかなという気がして、新聞等の報道見ていると。例えば今市事件ですね、栃木の、この間有罪判決になった今市の事件。あれなんて商標法違反で入っていますでしょう、捜査に。そして、最終的には殺しで逮捕していると、こういうことですからね。別件逮捕も、したがって、商標法違反、今市の事件でいうと商標法違反は対象になりませんからね、これ。ですから、ここから外れますよね。
それとか、もう一つは、いろんな冤罪事件見ていると、大体、私の言い方から言うと、全ての冤罪事件は任意同行から始まる。じゃ、皆さん、任意同行というのは一体全体何だと思われます。刑事訴訟法には書いていませんよ、任意同行なんて言葉。ですから、実際のやり方は、要するに朝早く容疑者の家へ行って、もしもし、ちょっと話聞きたいから来てくれませんかということで、数人の警察官が車に乗せて警察署へ連れてくるんです。行き先は取調べ室ですよ。もちろん逮捕状持っていませんよね、逮捕していません。じゃ、任意ですよね。録画できるんですか、この部分から、本当に。そういう部分あるじゃないですか。
そうすると、その後そこで、私から言わせるとたたき割りというんですけど物すごい取調べが行われる、そこで自供する、逮捕状を取る、執行する、こういうことですね。その次の取調べ辺りからは、それは裁判員裁判であれば取調べ室の録画が始まると、こういうことになりませんかね。そういう事態をどうやって防ぎますかね、これはということですね。
それで、警察には現在も、お読みになった方いらっしゃるかと思うんですけど、取調べの適正に関する規則というのがありますよ、国家公安委規則で。それは、要するに特定の取調べの行為、例えばちょっと読ませていただきますと、やむを得ない場合を除き、身体に接触すること、直接又は間接的に有形力を行使すること、殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること、これを取調べに、監督行為として取調べ官がやることを禁止しているんですよ。いいですか、禁止しているということは、こういうことがある意味では行われるんだということを警察が認めているということです。これ、生きていますからね、この規則は。
要するに、警察内部でさえ信用していないということになりませんか。ある幹部が、取調べ監督官という役職をつくって、それが、取調べ官が取調べ室で取調べをしているのをのぞき窓から見て監視するというようなことでしょう。物理的にもできませんよ、そんなことは。取調べ監督官なんて数人しかいないでしょう。それを、毎日警察署でやっている取調べの内容をチェックできると思うこと自体がおかしいですよ、それは。こんなもの何の実効性もない、こんな規則は。ですから、そういうことが行われる、こういうことですね。
それから、時間もありませんからあれですけれども、司法取引や刑事免責の問題ですね。これも私は非常に危ないなと思っています。
過去にももう現にこれは取調べ官が取調べ室の中で司法取引やっているわけですから、便宜供与みたいなこととか、あるいはそのほかの利害誘導的な、取調べの中でそういう司法取引的な取調べをやっているわけですよ、これまでも。
私の司法取引の典型的な問題の例を皆さんにお話ししたいと思っているんですけど、それは私が北海道警察の防犯部長のときに、平成の刀狩りと私は言っているんですけど、拳銃摘発キャンペーンがあったんですよ。全国の警察が一斉に拳銃摘発を始めました。国松長官が撃たれたのは平成七年ですから、そのちょっと前から始まっているんですね。そのときに、平成五年に銃刀法を改正しまして、やくざが拳銃と実包を持って出頭してきたときはその刑を免除するという規定を作ったんですよ、平成五年に。これを現場は悪用しました。
どういうことを悪用したかというと、やくざと取引して、おまえ拳銃出せと、警察ではチャカと言います、チャカ出せと。それで、ふだんいろいろエスとして、スパイ、協力者として使っているやくざに働きかけて出させるわけですね。例えば、駅のコインロッカー入れておけと、それで電話せえと、入れたら。それで、電話が来たらそれでもってガサ状取ってコインロッカー、ガサして差し押さえると、こういうこと、これはね。それで、警察はこれ誰が入れたかというのは分かっているわけですから、はっきり。だから、不法所持の被疑者は分かっているわけですよ。だけれども、そこは検挙しない、それで拳銃だけを押収する。これを首なし拳銃というんです。
首なし拳銃の押収が物すごい数になったんです、これ。これは結局、最近はそれほどでも、もう拳銃押収数というのは物すごく当時から、国松さんが撃たれたときの本当に何分の一かしか今はもう摘発できていませんでしょう。そういうことで、それはもうある意味での司法取引なんですよ。
ですから、私は、確かに今度の刑訴法上の司法取引の中に直に警察は出てきませんよ、直にはね。検察がいろいろ証拠提出に、警察に協力される云々ということはあるので間接的なあれだと思うんですけれども、検事と弁護人との間でやられるというわけでしょう。
でも、今の御説明した首なし拳銃と同じで、こういう規定ができたら警察の現場はどんどんこれを使いますよ、知らないところで。そうなります。それ、弁護士さんチェックできますか。検事チェックできますか。この首なしのときはできていないですよ、そんなことは。そういうふうになったらどうするんでしょうかね。そのことは何も書いていない。
時間もありませんけれども、通信傍受についても、私はこれ、本気でこんなことをやる気になっているのと思いましたよ。
それは、例えば何点か申しますと、警視以上が令状請求するとなっているでしょう。逮捕状の請求は警部以上なんですよ。この傍受令状は警視以上になっている。皆さん、覚えていますか。昭和二十八年に刑訴法改正があったんです。このときに、それは誤認逮捕とか違法逮捕がどんどんあったので国会で問題になった。そのときに出てきたのが何かというと、逮捕状の請求は警察にやらせない、検事の許可制にするという話が出てきたんですよ。それで、これは問題だということになって、最終的には結論は、法の方は警部以上の警察官が請求するという規定に変えたんです。昭和二十八年ですよ。
でも、皆さん、誤認逮捕とか冤罪事件、その後幾つもあるじゃないですか。階級が上の者になったから公正な請求が行われるなんてこと、これ幻想ですよ、それは。そういう組織じゃないんです、警察というのは。だから、私は、傍受令状を警視以上に上げ、警部じゃなくて、本当にナンセンスなことだなということだと思います。
そのほか、これ皆さん方から文章、よかったら教えてほしいぐらいですけど、何か今度、傍受を警察施設で、しかも立会人なしでオーケーだということになるんだそうですね。それで、新聞報道見ていたら、何か捜査に関係のない警察官が立ち会うというようなことで、話合いをしてそういうふうになったと。私はいろいろな条文チェックしてみたけど、そんなことどこにも出ていない。だから、単なる話合いだけなんでしょうかね、これ。
それ、本当大丈夫ですか、そんなことで。警察の内部というのを知っていたら、警察官は組織の中で仕事をやっているわけですから、通信傍受の公正性を、ある警察官がほかの部署でやっている捜査についてチェックなんてできませんよ、それは。