安倍晋三の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上議員にお答えいたします。
平和安全法制についてお尋ねがありました。
平和安全法制は、さきの通常国会で戦後最長となる延長を行い、二百時間を超える充実した審議の結果、与党のみならず野党三党の皆さんの賛成も得て成立したものであり、より幅広い合意が形成されたことは大きな意義があったものと考えています。
また、平和安全法制に対しては、世界の多くの国々から強い支持と高い評価が寄せられています。これは、この法制が決して戦争法などではなく、戦争を抑止する法律であり、世界の平和と安全に貢献する法律であることの何よりのあかしであります。
国民の命と平和な暮らしを守るために必要不可欠なこの法律を廃止することは全く考えておりません。引き続き、国民の皆様の更なる御理解をいただけるよう丁寧な説明に努めていく考えであります。私は、時が経ていく中において、間違いなく御理解、御支持はより一層広がっていくものと確信しています。
国会の召集についてお尋ねがありました。
一般的な考え方を申し上げれば、臨時会の召集要求について定める憲法第五十三条後段は、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定するにとどまり、召集時期については何ら触れられておらず、当該時期の決定を内閣に委ねております。
基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないと解しておりますが、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれる事情があれば、国会の権能は臨時会と常会とで異なるところはないため、あえて臨時会を召集しなくても憲法に違反するとは考えておりません。
昨年の臨時国会召集の要求に対しては、政府としてこれに適切に対応するため、現下の諸課題を整理し、補正予算、来年度予算の編成などを行った上で、新年早々、本通常国会の召集を図ったものであり、迅速かつ適切に対応していると考えております。
なお、国会閉会中でも、衆参両院の予算委員会に私も出席いたしましたが、衆参合わせて六十時間を超える閉会中審査において、TPP、COP21など、当面する政治課題につき政府としても説明責任を果たしてきたところであります。
南シナ海における警戒監視活動についてお尋ねがありました。
昨年のAPECの際に行われた日米首脳会談において、私から、南シナ海における米軍の航行の自由作戦を支持する旨述べるとともに、現状を変更し、緊張を高める一方的行為全てに反対である旨伝えました。これに対し、オバマ大統領から、航行の自由作戦については日常の行動として実施していく旨の発言がありました。
南シナ海における警戒監視活動を検討するとオバマ大統領に表明した事実はありません。航行の自由作戦は米国が行うものであり、自衛隊の活動とは別のものであります。我が国がこれに参加することはありません。また、現在、自衛隊は南シナ海において常時継続的な警戒監視活動を行っておらず、そのような具体的な計画も有しておりません。
いずれにせよ、南シナ海における自衛隊の活動については、南シナ海情勢が我が国の安全保障に与える影響を注視しつつ、航行の自由、そして法の支配が貫徹されるように、様々な選択肢を念頭に置きながら十分な検討を行っていきます。
防衛装備の海外移転についてお尋ねがありました。
防衛装備の海外移転については、我が国として、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持してまいります。防衛装備移転三原則の下、海外移転が許されるのは、平和貢献・国際協力の積極的な推進又は我が国の安全保障の観点から積極的意義がある場合に限定されています。
積極的に武器輸出する方針に転換したというものではなく、政府としてこれまで同様、厳正かつ慎重に対処する方針に変わりはありません。このため、我が国が紛争当事国に防衛装備を移転したり、地域の緊張を高めるといった御指摘は全く当たりません。また、御指摘のように、武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりません。
日印の原子力の平和的利用に関する協定についてお尋ねがありました。
日本は、唯一の戦争被爆国であり、核兵器廃絶に向けた国際社会の取組を主導していきます。インドとの協定交渉においても、これを十分に考慮し、米仏がインドと締約した協定以上の内容を目指して交渉してきました。
仮にインドが核実験を行った場合には、日本からの協力を停止します。インドによる核実験モラトリアムの継続が協力の前提となることは、私からモディ首相に対し明確に述べています。この協定の具体的な文言については引き続き調整中でありますが、かかる我が国の立場はインド側も了解しており、今般の原則合意もこれを踏まえたものであります。
この協定は、原子力の平和利用についてインドが責任ある行動を取ることを確保するものであり、このことは、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながります。これは、核兵器のない世界を目指し、不拡散を推進する日本の立場に合致するものであり、本件協定の締結が核兵器開発に手を貸すことになりかねず、インドの核保有を認めることになるとの指摘は全く当たりません。
なお、インドに限らず、すべからく原子力に関わる国際協力については、福島の教訓を国際社会と共有し、安全神話に陥ることなく、世界で最も厳しいレベルの安全性を追求するとの方針で行ってまいります。
安倍内閣の経済政策についてお尋ねがありました。
安倍内閣においては、デフレ脱却に向け、アベノミクス三本の矢の政策を進めることにより、名目GDPは二十八兆円増え、企業の収益は過去最高となりました。そして、政労使会議の開催や成長志向型の法人税改革を通じ、好調な企業の収益を雇用・所得環境の改善につなげることにより、就業者数は百十万人以上増加し、有効求人倍率は二十三年ぶりの水準となり、賃上げ率は二年連続で大きな伸びとなるなど、経済の好循環を生み出しました。
こうした中で、格差が固定化しないよう、最低賃金を三年連続で大幅に引き上げ、パートタイム労働者と正社員との均衡待遇を推進するなど、様々な取組を行ってきた結果、パートで働く方々の時給はここ二十二年間で最高の水準となりました。また、不本意ながら非正規の職に就いている方の比率は低下しているなど、非正規雇用を取り巻く環境は着実に改善しています。さきの通常国会で成立した労働者派遣法改正法においても、正社員を希望する方にその道が開けるようにしたほか、今後とも、非正規雇用労働者のキャリアアップや待遇改善に向けた取組を進めてまいります。
そして、今般、国民一人一人が、家庭で、地域で、職場でそれぞれの能力を発揮して輝くことのできる社会、すなわち一億総活躍社会の実現に向けた挑戦を開始しました。誰にでもチャンスのある社会を目指すとともに、経済成長の成果が広く国民に行き渡るよう、内閣を挙げて全力で取り組みます。
消費税率の一〇%への引上げについてのお尋ねがありました。
アベノミクス第二ステージでは、これまでの三本の矢の政策を一層強化して束ねた新たな第一の矢によって名目GDP六百兆円を目指します。より強化した経済政策の下においても、経済再生なくして財政健全化なしという方針に変わりはありません。今後も、賃上げの流れを続け、雇用や所得の拡大を通じた経済の好循環を回すことによってデフレ脱却を確かなものとしていきます。
消費税率の引上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会から国の信認を確保するためのものであります。その増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てることとしており、所得の再分配に資するものです。
来年四月の消費税率一〇%への引上げは、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施します。経済の好循環を力強く回すことにより、そのための経済状況をつくり出してまいります。
年金生活者等への臨時給付金の意義についてのお尋ねがありました。
GDP六百兆円の実現に向け、今年前半にかけての個人消費の下支えを行い、経済の下振れリスクにも対応することが必要です。現役世代には賃金引上げの恩恵が及びやすい一方、こうした恩恵が及びにくいのは高齢者です。
一年余り前、私は消費税の引上げの延期を決断しました。延期をした以上、給付と負担のバランスの観点から、消費税の引上げを前提とした施策を全て行うことはできません。そこで、年金生活者支援給付金については先送りするという苦渋の決断をしました。先送りの決断をした年金生活者支援給付金については、一昨年の総選挙のとき、私は、経済を成長させていけば税収は上振れしていく、その果実はしっかりと社会保障の分野に投入していきたいと申し上げました。そのお約束のとおり、税収増というアベノミクスの果実が生まれた今、その果実を活用し、臨時的な給付金の支給を行うこととしたものであります。これは、社会保障・税一体改革の一環として平成二十九年四月から始まる年金生活者支援給付金の前倒し的な位置付けになります。
今回の給付金は、今年前半にかけての個人消費の下支えの観点や実務上の対応可能性を踏まえ、年金生活者支援給付金の対象よりも幅広い方に対し一回限りの措置として支給するものであります。ばらまきとの指摘は全く当たりませんし、まして選挙対策という批判は全く的外れであります。
若者を含む現役世代については、賃金引上げや最低賃金の引上げを推進していきます。また、平成二十七年度補正予算や平成二十八年度予算においては、保育サービスの充実や児童扶養手当の多子加算の倍増など低所得の一人親家庭、多子世帯に対する支援、さらには幼児教育無償化の段階的拡充など、公費ベースで〇・七兆円の子育て支援の拡充を行っているところであります。これにより、希望出生率一・八の実現に向け、結婚、妊娠、出産、子育てに関する希望がかなう社会づくりを進めてまいります。
雇用のルールについてのお尋ねがありました。
非正規で働く方の待遇の改善、正社員を希望する方への正社員への転換など、働く方々がその能力を発揮できる社会をつくることは重要であります。現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正するとともに、多様で柔軟な働き方を推進するものであり、さきの通常国会で成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を選択される方について、その待遇の改善を図るものです。
今回の補正予算及び来年度予算でも、非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金の拡充など、企業における正社員転換や待遇改善の強化を進めることとしています。
このように、一人一人が活躍し、それぞれの能力を発揮できる社会、一億総活躍社会の実現に向けて取り組んでいるところであり、法改正が賃下げと低賃金労働、不安定雇用を増やすとの批判は全く当たりません。
法人事業税の外形標準課税についてのお尋ねがありました。
今般の法人税改革は、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から行うものです。外形標準課税の拡大は資本金一億円以下の中小企業を対象外としており、また、二十七年度税制改正において、外形標準課税に所得拡大促進税制を導入し、賃上げへの配慮も行っているところであり、御指摘は当たりません。
最低賃金についてのお尋ねがありました。
最低賃金は、決定に当たり、労働者の生計費や賃金、企業の賃金支払能力を考慮することとされております。そして、これらの地域差など、地域の実情を考慮して、都道府県ごとに定められております。
政府としては、アベノミクス第二ステージにおいて、戦後最大の名目GDP六百兆円を目指す中で、最低賃金を年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均で千円を目指します。このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善等を図ります。
企業の社会的責任についてお尋ねがありました。
二十年近く続いたデフレからの脱却を確実なものとすることができるかどうか、日本経済は今、大きな岐路に立っています。経済の好循環が力強く回るようにするためには、企業が過去最高の収益を背景に、三巡目のしっかりした賃上げ、下請取引条件の改善、設備投資の拡大、非正規雇用労働者の正社員転換、待遇改善などに取り組むことが期待されます。
私はこれまで、政労使の合意を踏まえ、未来投資に向けた官民対話などの場で企業の積極的な取組を要請してきました。昨年、経済界からはこれに呼応し、今年を上回る賃上げを呼びかける、設備投資は三年後までに経済界全体で十兆円増加する、非正規雇用労働者の総合的な処遇改善を推進する旨の発言があり、その実現を期待しています。
政治活動に対する献金の在り方については、長年の議論を経て、企業・団体献金は政党等に対するものに限定されるなど種々の改革が行われてきました。許してはならないのは、個人であれ団体であれ、お金でもって政策をねじ曲げようとする行為であります。その意味で、企業、団体が政党等に献金すること自体が不適切なものとは考えておりません。
いずれにしても、この問題は、民主主義の費用をどのように国民が負担していくかという観点から、各党各会派において十分御議論いただくべきものと考えます。
TPPについてお尋ねがありました。
大筋合意の内容については、これまでもTPP協定の全ての章の概要資料や関税交渉結果等を公表するとともに、国民への丁寧な説明に努めています。協定の最終的な条文は確定していませんが、その日本語訳については鋭意作業を進めており、可能な限り早期にお示しできるようにしたいと考えています。
昨年末には、TPPにより我が国が新たな成長軌道に乗ることで実質GDP約十四兆円の拡大が見込まれるとの経済効果分析を公表しました。農林水産物については、個別品目ごとに十分に精査し、積み上げた数値を組み入れています。TPPの経済効果は、関税の撤廃、削減にとどまりません。新しいルールが自由で公正な競争を促し、イノベーションを活発にする。全く新しいビジネスも生まれてくる。今回の分析は、TPPが開くチャンスに果敢に挑むことでもたらされる経済効果の一端にすぎません。政策を総動員して最大限の経済効果を実現してまいります。
国民の批判をそらし、参議院選挙を乗り切ろうとしているとの批判は全く当たりません。そのようなうがった見方にとらわれて批判だけしているのか、前に出てチャンスをつかむのか、未来がどちらにほほ笑むのかは明らかではないでしょうか。
選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。
選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族の在り方に深く関わるもので、国民の間に様々な意見があることから、最高裁判決における指摘や国民的な議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要があると考えております。(拍手)
─────────────