加藤出の発言 (予算委員会公聴会)

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○公述人(加藤出君) おはようございます。東短リサーチの加藤でございます。
 本日は、このような貴重な場で発言の機会を与えていただき、大変ありがとうございます。
 今、林先生から世界経済の状況の御説明をいただきましたので、私の方からは、主に金融面の話を今日はさせていただこうと思います。
 お手元の資料を御覧いただきますと、最初一枚めくっていただいて、二ページのところですけれども、中央銀行の資産の名目GDP比のグラフを載せています。
 我が国の中央銀行である日銀は、一三年四月に二年程度でインフレ率を二%に引き上げると宣言して、国債などを大規模に購入する量的・質的緩和策、QQEを開始しました。その結果、市場から猛烈に国債を買い取っていますので、この赤い線のように、FRBやECBとは比較にならない勢いで日銀の資産が膨張しています。世界に類を見ない大胆な政策が行われていると言えます。
 その結果、一番顕著に表れたのは、為替が円安方向にこの三年間動いてきて、それによって株高が起きてきたということで、次の三ページですけれども、円安、株高、それによる輸出大企業の収益向上、その結果、大手企業を中心とするベアの実現、また円安によるインバウンド観光客の急増ということが起きたということだと思います。
 その点はいいわけですけれども、しかし、次の四ページ目ですけれども、インフレ率を二%に引き上げるということで始めた政策ですが、赤い線がインフレ率、消費者物価指数の総合から生鮮食品を除いたものですけれども、二〇一四年の四月、五月ぐらいは一%台半ばまで行きましたが、その後下がってきて、この一年近くはゼロ%近辺で推移していると。エネルギー要因が大きいですので、エネルギー価格を除いた青い線で見てみますと、これは一%前半まで最近上がっていたのですが、ここに来て下がり始めています。
 円安傾向が止まってきましたので輸入価格の上昇が鈍ってきていますので、その点では、今後、これ緩やかに落ちてくる可能性もあるかと思います。
 インフレ率が二%になかなか届かない、それから、年初からの金融市場の混乱が春の四月の春闘などにも悪影響を及ぼしてはまずいという恐らく判断だったと思いますけれども、日銀は、一月二十九日にマイナス金利政策を導入したわけです。従来のQQE、量的・質的緩和策にそれを加えるという形でマイナス金利政策が始まりました。五ページ目ですけれども、日銀当座預金を三つの階層に分けて、その一部分にマイナス金利を掛けるという政策が始まっております。
 次の六ページ目ですけれども、この政策、基本的には本音の部分では円安誘導を狙っているのだと思います。ただ、日本のような大きな経済の中央銀行が通貨安誘導が目的だとは公式には言えないわけですので、ただ、実際はそういうことかなと思っておりますが、及びそれにより株価を押し上げるということが期待されていたんだと思いますけれども、六ページ目のグラフは、このマイナス金利政策が決定される前日の一月二十八日以降の主な国の株価指数、株式指数の変化を表しています。
 日本は昨日までで二・三%下落していますけれども、ほかの主な国はこの一か月ちょっとの間上昇しています。ドイツの上昇が弱いのは、ドイツの大手金融機関の経営問題が言われたりとかいうようなこともありましたけれども、それを除くと欧米は緩やかに上昇していたわけです。あと、日本の株価の悪化の要因が中国のハードランディング懸念とよく言われますけれども、ただ、この一月ちょっとで見ますと、中国のこれは上海の株価ですが、それから香港はむしろ上昇しています。それから、原油要因で混乱しているともよく言われますけれども、右手の方で、ロシア、サウジアラビアあるいはブラジルはしっかりと上昇しているということで、この一月ちょっとというのは、世界的には、緩やかですけれどもリスクオフと言われる危険回避行動がやや緩んでいた一か月ちょっとだったと言えます。
 ところが、日本の方はマイナスになっているというのは、一つにはマイナス金利政策の負の側面が表れてしまったということかと思います。その負の側面というのは、一つは、金融機関の収益が相当悪化するだろうということで金融株、特に銀行株が急落したと、それから、日銀の黒田総裁の政策で円安誘導していくということがどうもなかなかうまく今後もいかないかもという市場の見方もあって円高方向に来ているわけですけれども、それによる輸出企業の株が下がっているというようなことが相まったということかと思います。
 また、次の七ページ目ですが、消費者のマインドもこの一月ほどは悪化している面があります。昨日発表されました内閣府の消費動向調査の消費者態度指数を見ますと、上に行くと消費者のマインドが良くて下に行くと悪化ですけれども、二月に入ってどの所得層においても急激な悪化が見られます。この日銀の緩和策、今回の緩和策が始まった一三年四月の水準よりはいずれも低いところにいるという状態です。ただ、マイナス金利政策、また後ほど触れますが、実際は個人の方々の預金がマイナスになる、金利がマイナスになるということはなかなかないんだと思いますけれども、その不安感を生んでしまったという面があるかなと思います。
 ヨーロッパの場合、ヨーロッパでもマイナス金利始まったときにやっぱり一般の市民の方が、貯蓄をするとペナルティーが掛けられるというのは一体何なんだと、特にドイツ中心に結構怒りが沸き起こって、中央銀行がそれをなだめるという構図が見られましたけれども、ただ、例えばデンマークのように高福祉社会、デンマークの場合、社会福祉の支出がGDP比で世界一大きい国ですが、ああいう国ですと、一般の方々が老後のために自分で貯蓄して、その預金金利を当てにするとかということはああいう福祉国家ではないので、スウェーデンもそうですけれども、福祉国家でマイナス金利をやってもそんなに一般の人は余り気にしないようなんですけれども、日本の場合は、やっぱりなかなか高齢者の方々も不安があるということで、やや過剰な反応が出てしまっているということかと思います。
 続く八ページ目ですけれども、金融機関の収益にとっては相当日本の場合厳しいということがこの八ページ目の表に表れております。
 ヨーロッパでマイナス金利をやっている国々と日本の比較ですけれども、真ん中辺りに銀行間の翌日物金利というのを載せております。隣に十年物の国債の利回りを載せております。この開きが、スプレッドというところですが、この開きが大きいと基本的には金融機関というのは収益を上げやすいわけですが、日本の場合、もう既にこれが非常に横ばい、あるいは若干マイナス方向になっています。
 しかも、一般的には、例えば長期の住宅ローンというのは国債の金利に上乗せして一般の方々にローンが、貸出しが行われますけれども、日本の場合、この非常に低い金利に、さらに金融機関同士の競争も激しいですから、十年固定の住宅ローン金利が、報道されていますように、一部大手行では〇・五とかあるいは〇・八とか非常に低い状態になっているわけですが、一方で、例えばスウェーデンですと、十五年の固定住宅ローン金利二・七%、あるいはデンマークは五年から十年程度のローンの平均は二・一%程度、それからスイスの十年物のローンは一・六%前後だったりということですので、日本の方は非常にローンの金利が低いと。
 それは一般の方々にはメリットではあるんですが、ただ、経済全体で見た場合、日本のように非常に高齢化している社会ですと、その低金利の恩恵を受ける人の比率が、人口の比率がもう小さい社会になってしまっていますので、金利を下げることでの経済刺激効果というのもある程度はあるわけですけれども、高齢化した社会ではそれが出にくいという傾向はあるかと思います。
 また、金融機関の収益が、著しくそこが圧迫されますと中小企業などに貸出しをする体力がだんだん奪われてくるというおそれもありますので、金融仲介機能が毀損されるおそれがないかという点には今後注意していく必要があると思います。
 地方の金融機関からは、安倍政権が目指している地方創生という、その関連のプロジェクトをやろうと思っても、今これだけ収益環境がマイナス金利で厳しくなってしまうと、取りあえず目先どうやって収益を上げるかという方に力を入れざるを得なくて、地方創生の議論がちょっとむしろ後回しになってしまうんじゃないかというような懸念すら出るぐらいの厳しい状況になってきているということかと思います。
 あと、ヨーロッパの状況をもうちょっと見ますと、九ページ目ですが、ヨーロッパでは、大手企業やあるいは機関投資家などの大口預金がマイナス金利となっています。ここにスイスフランの紙幣の流通残高を載せていますけれども、千フラン札、額面で十一万円か十二万円という非常に大きなお札ですけれども、マイナス金利を始めてから発行量が急に伸びています。これは、スイスの年金がマイナス金利で運用難で非常に困ってしまいまして、しようがなく現金を引き出して金庫にしまうということを年金が始めています。スイスの場合、やっぱり年金制度もつだろうか、大丈夫だろうかという議論が大分行われています、国債の金利が随分下がってしまっていますから。
 また、マイナス金利で企業の口座もいろいろマイナスになっていたりもしますので、デンマークの場合、企業が税金を納めるのを早めに多めに納付しようとする傾向が見られます。早めに納めて後で還付請求すると、銀行に預けておくとマイナス金利で目減りしちゃいますけれども、まず税務署に一回入れておこうという変な話が起きています。
 逆にスイスでは、地方政府の口座もマイナス金利になっていますので、ある地方政府は納税は期限ぎりぎりまで遅らせてくださいと頼むというようなことまで起きています。まあこれは一種の混乱が起きているということなので、決して余りいい話ではないと。
 ただ、一般の方の個人預金は、やっぱりマイナス金利にしてしまうと皆さん引き出そうとするでしょうから、銀行のシステムが成り立たなくなってしまいますので、ヨーロッパを見渡しても、まずマイナス金利にはなっていません。
 十ページ目に、個人の預金金利もマイナス金利にする方策みたいなことを有名な経済学の先生方がいろいろおっしゃっていますけれども、ちょっと説明は飛ばさせていただきますが、現実には導入は難しいという流れだと思いますけれども。
 そういう意味では、預金金利が余りマイナスにできないということは、貸出金利もマイナスにはならないので、全体としては、物すごく効果がある政策というわけでもなく、一方で、本来は物すごく弊害があるという政策でもないんですけれども、日本のように量的緩和、質的緩和で国債の金利を既に相当押し潰した後にマイナス金利政策という流れでいきますと、金融機関の収益悪化からくる金融仲介機能の悪化というところが懸念されるという点で、余り過度な金融緩和策というのはやっぱりそろそろ見直す方がいいのではないかというようにも思います。
 また、日本のインフレの状況ですけれども、十二ページ目以降ですが、十二ページ目でアメリカと日本のインフレ率を比較しておりますけれども、左側の物の値段に関しては、もう日本の方がアメリカよりもインフレ率高くなっています。テレビなど耐久消費財は日本の方が相当インフレ率高くなっていますが、これは円安によるものです。
 一方、右側のサービス価格、こちらはなかなか上がっていない。アメリカの方はしっかり上がっているけれどもサービス価格はなかなか上がらないと。これは、一つはやっぱり人件費、賃金が上がっていかないとサービス価格は上がりにくいですし、あるいは下の方の二十八番、二十九番のように家賃関連、これは、アメリカはしっかり上がっていますけれども、日本は、統計上の問題もありますが、少子高齢化で住宅需要が弱いということもあり、なかなか上がらないと。
 そういう意味で、金融政策で無理やりインフレを二%に押し上げようとしてもやっぱり無理がある、じっくりと狙うのはいいと思うんですけれども、余り短期間に無理やり上げようとするとあちこちでゆがみが出てしまうということではないかと思います。
 十四ページ目に賃金と物価の関係を載せておりますが、左側が平均年間賃金の推移、右側が消費者物価の推移ですけれども、やはり安定的に賃金が上がっていけば物価も上がっていくわけです。それを日本も目指すべきであり、安倍政権が賃金上昇を財界に要求しているということも正しいアプローチだと思いますけれども、ただ、なかなか一朝一夕にはいきませんので、そこはやっぱりじっくりと日本の潜在成長率、経済の実力を上げていくということが重要になってくると思います。
 それには、十五ページにもありますが、株価は上がっているけれども、必ずしも実質の平均成長率がアベノミクスの間にそんなに上がっていないと。これは、やっぱり潜在成長率が下がってきているということだと思いますので、説明は省かせていただきますが、人口動態等々の問題もありますので、構造改革等を含めながら、その潜在成長率をいかに上げていくかということもやっぱり同時に行っていく必要があるということではないかと思います。
 私の方からは、ひとまずここまでとさせていただきます。ありがとうございます。

発言情報

speech_id: 119015262X00120160310_004

発言者: 加藤出

speaker_id: 34924

日付: 2016-03-10

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会