今村知明の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○今村参考人 平成十九年より奈良県立医科大学で公衆衛生を研究しております今村と申します。
本日は、このような意見陳述の機会をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。
私は、日ごろ大学で食品保健や健康政策、医療政策などを研究している者でございまして、そのようなことから、公衆衛生、食品保健にかかわる問題ということで、きょうお声をかけていただいたんだと理解しております。
まず、意見陳述の最初に、私が考える食品の安全の考え方についてお話しできればと思います。
食品にリスクがどのようにあるかということでございますけれども、まず、全ての食品にはリスクがございます。ゼロリスクという食品はございません。例えば発がん性というものを考えてみても、発がん性の強い物質と弱い物質はありますけれども、全てのものに発がん性の可能性があります。したがいまして、リスクそのものを食品は持っているというふうに考えていただきたいと思います。
では、ゼロリスクを目指すとすれば何が起こるかというと、食べることをやめるしかないわけでして、食べることをやめると、当然死んでしまう。すると、どちらのリスクをとるかということになります。
では、リスクをとるとなったときに何ができるかということを考えていきますと、リスクを最小限に抑えるということが唯一の方法でございます。この唯一の抑える方法として、今、国際的に考えられているのがリスク評価という考え方でございまして、このリスク評価は三つの概念から成り立ちます。一つはリスク評価、そして一つがリスク管理、一つがリスクコミュニケーションです。
これは、まず、リスク評価は、科学的にどんなリスクがあるかということを徹底的に見ようというのがリスク評価。そして、科学的に評価したものを、極力リスクを抑えようというものがリスク管理。それでもリスクは残ります。では、リスクが残った部分についてどうするかということは、リスクコミュニケーションという概念で、このリスクが残りますけれどもよろしいですかということを合意を取りつけるという、この三つの概念のもとに食品の基準などを決めてはどうかということが国際的に言われているわけでございます。
したがいまして、このリスク評価という新しい概念に基づいて、今、世界じゅうが動いているという状況であります。
そこで、我が国の食品安全の今の仕組みを振り返ってみますと、今からもう十五年ぐらい前でしょうか、牛乳の食中毒事件があったり、BSEの事件があったり、国民の食品に関する関心が非常に高まった時期がございました。その時期に、その高まりに応えるべく、食品安全基本法という法律が施行されて、その中で、我が国の食品安全もこのリスク分析の考え方に基づいて行うべきということが法律の中に定められたというふうに理解しております。
この食品安全基本法の中には、国で基準を決めていく際にはリスク分析の考え方を必ず使うこと、そして、このリスク分析の際には最新の科学をもとに評価を行っていくことが定められております。それに基づきまして食品安全委員会という組織が立ち上がりまして、これは厚生省や農水省といったリスク管理機関とは独立した、科学的に食品のリスクを評価する機関として新しくつくられたわけでございまして、この評価に基づいて、食品のリスク管理機関である厚生省や農水省が実際に基準を定めたり監視をしたりということをしている、そのような関係になっていると思います。
その意味では、まさに我が国も、このリスク分析の考え方に基づいて制度がつくられて、組織がつくられているという状況であります。
これは海外でも同じような仕組みがつくられておりまして、例えばEUですと、EFSAというリスク評価機関が外部にございまして、そのもとに食品の基準がつくられているという状況がございます。
では、国際的に見たときに、食品の安全基準というのはどのように定められているかということを考えていきますと、今、FAOとWHOが共同でコーデックスという国際規格基準委員会をつくっておりまして、この国際規格基準委員会が世界的に見たときに食品の基準を定めているということでございます。
今、日本の食品の事情を見たときに、国内で食品がつくられる率というのは四割、海外から六割が輸入食品として入ってきているという状況ですので、海外の食品を日本で安全に食べるための仕組みという意味でも、国際的に合意が得られた基準があって、それに基づいて輸入が行われるという仕組みづくりは重要であるというふうに考えております。
その意味では、このコーデックスの役割は非常に大きくて、コーデックスで定められた基準に基づいて、日本を初め各国が輸入食品の基準を定め、それに基づいて安全性を確保しているという状況がございます。
コーデックス自身も、先ほどお話ししましたリスク分析の考え方に基づいて実施されておりまして、そこでの科学的な評価機関はJECFAなどの専門家会議などがありまして、そこでリスク評価したものをコーデックスでも国際基準として定めているというふうに考えております。
TPPとの関係で申しますと、TPPの中では、WTOの中のSPS協定を遵守するものであれば、各国の基準の差というのは認める内容になったというふうに理解しております。
このSPS協定というのはどういうものかと申しますと、十分な科学的根拠に立脚して措置を行うこと、そして、原則国際基準に基づいて措置を実施することが定められているものでございまして、このSPS協定の言うところの国際基準は、先ほど申し上げましたコーデックス基準でございます。したがいまして、コーデックス基準に基づいて基準をつくっている分には、その内容について変更することは必要がないものになっているというふうに理解しております。
これまで、我が国ではリスク評価を科学的な基準で独立した機関が行っているということも考えますと、まさにSPSが求めている基準を我々の国は持っていて、それに基づいて食品の基準などが定められておりますので、SPS協定にのっとった規格基準であるということを考えていけば、コーデックスとも合っているということを考えていけば、このTPPの枠組みの中で、ほとんど食品の基準に関しては影響を受けないのではないかというふうに考えております。
今後、我が国でもSPS協定に基づいて規格基準が定められていくと思いますし、コーデックスの基準も遵守しながら進めていくと思いますので、今の食品安全委員会でリスク評価を科学的にする仕組みと、そして、それをもとに厚生省や農水省といったリスク管理機関が実際の施策を打っていく枠組みがあって、そして、コーデックスを通じて国際基準との調和を図るというふうな環境があれば、TPPによる影響はほとんどなく、我が国の食品安全の規格基準、そして安全性の監視といったようなものは担保されるというふうに考えております。
簡単でございますけれども、私の意見の表明とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)