高橋洋一の発言 (厚生労働委員会)

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○高橋参考人 高橋洋一でございます。
 本日は、こういう機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案について、賛成でございます。その立場で陳述をさせていただきます。
 私は、経済学者と言われているんですが、実は数量分析家でありまして、たまたま経済とか財政なんかを数量分析するというので今までやってきました。
 その中で、バランスシートアプローチというのを年金に対して導入するという話をずっと前からやっておりまして、そういう立場からいいますと、世代間のバランスシートというのを見ますと、過去の年金改正では、世代間の格差を広げたものもありました。ただ、マクロ経済スライドというものは、年金財政の安定性を向上させるためには極めて有効な手段であるというふうに私は思っておりまして、そうした世代間の格差の拡大を少しでも食いとめるための措置というふうに理解しておりました。
 この法案ですけれども、現在の高齢者の給付を削減し、将来の高齢者の年金を確保しようという試みでありますので、その意味で、年金の持続可能性という観点からは評価に値すると思います。
 問題は、これまでデフレが続いていて、マクロ経済スライドをまともに行ってこなかったことです。過去二十何年間、ずっとデフレでございますけれども、マクロ経済スライドが導入されたのは二〇〇〇年以降です、二〇〇六年以降だと思いますけれども、ほとんどまともに発動されてこなかったというのが問題です。デフレだからマクロ経済スライドが発動できないという何か本末転倒の話で、それにもかかわらずデフレを放置していたというのは大問題であるというふうに思っております。
 そもそも、デフレというのは経済運営が極めて困難になります。例えば、財政再建というのが問題になるんですけれども、これは、実は名目経済成長率が高くないと、ほぼできません。こういうのは、一九六〇年代からOECDのいろいろな加盟国の研究がありまして、財政再建に成功した国、しなかった国とあるんですけれども、そういうのを調べますと、実は、名目経済成長率が高くなった方は成長しておりますけれども、高くないとほとんど失敗です。
 日本にもそういう例がありまして、私自身は実は公務員をしておりましたけれども、第一次安倍政権と小泉政権のときにいましたけれども、このときは経済成長していますので、財政再建はほぼできております。今の安倍政権でも同じような傾向だと思います。
 これを見ますと、プライマリーバランス、基礎的財政収支というのは何で決まってくるかというのが結構簡単にわかりまして、一年前の名目経済成長率で九割決まります。これは別に日本だけの話ではなくて、どこの国でも一緒です。
 ですから、財政再建というのを仮にやろうとすると、実は、名目経済成長率を高めれば、後からついてくるという形です。
 デフレ脱却というのは、実は金融政策なんです。ここの理解が従来の政権は余りなかったと思いますが、今の安倍政権はかなりあると思うので、その意味では、ましであります。ただし、二〇一四年の四月の消費増税はデフレ脱却においては失敗でありましたので、そこは残念だったと思います。
 これから少子高齢化という話で、年金の財源問題というのはそれなりの問題であるというふうに思います。
 例えば、この委員会で、議事録を拝見させていただきますと、国民年金の未納とか、厚生年金の加入要件を満たすにもかかわらず加入していないという加入逃れの問題を解消するのが重要だったというふうに思います。まずは、納めるべき社会保険料なのに納められていない、徴収すべき保険料が徴収されていないところをしっかりと集める必要があると思います。
 あわせて、行政改革という観点も必要だと思います。
 政府が進めておられる社会保障と税の一体改革においても、税と社会保障というのは性格が違うということ、あと、公務員である国税庁と非公務員である独法の年金機構は違うとか、こういう議論がありますけれども、社会保険料と税というのは、基本的には一体、同じようなものです、両方とも税金の性格がありますので。
 その意味では、世界的な潮流というのが実は、税と社会保障を一体にする、社会保障と税の一体改革というんですけれども、本当は徴収の方を一体にするというのが世界の流れでありますので、そういう歳入庁の検討というのをぜひ進められるべきであるというふうに思っています。
 例えば、国税庁が把握している法人の数と年金機構の把握している法人の数は全く違いまして、数十万件もずれております。そのため、捕捉率が全く違いまして、労働者から天引きされる社会保険料が年金機構に行っていないという可能性はかなりあります。そういうことを推計しますと、多分、社会保険料の徴収漏れが少なく見ても数兆円あると思います。これはいろいろな計算がいろいろな国会でも行われておりましたけれども、ありますね。
 一方で、歳入庁というのは、国民にとっては、納税と保険料、一緒にできるという意味で、行革的には極めて効率的な組織です。
 海外でも、アメリカ、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーというのは基本的に歳入庁で、税と社会保険料は同じで、一元徴収であります。東ヨーロッパの国は、最近はほとんどの国がそういうふうな形で歳入庁というパターンになっております。
 ただ、この歳入庁の創設というのは、霞が関官僚には極めて評判が悪いようです。私もかつて首相官邸におりましたけれども、わかりますが、例えば、国税庁というのは財務省の植民地になっておりまして、国税権力というのを財務省がなかなか手放さない。私の経験でも、第一次安倍政権のときに実はこの歳入庁の話をやりましたけれども、猛烈な抵抗がありました。
 次に、財源の話をします。
 社会保険料とか社会保障の抜本改革というのは、そもそも消費税をどのように位置づけるかという話と密接にかかわってきますが、この消費税の位置づけについて、今の一体改革は間違っていると私は思っております。消費税を社会保障目的税とするというんですけれども、そうした国は多分ないと思います。
 社会保障は、要するに、助け合いの精神で、所得再分配でありまして、国民の理解というのが必要であるんですけれども、日本も含めて大体は、負担と給付の関係が明確な社会保険方式であります。
 社会保険方式でありますと、実は、保険原理から、保険料で払うというのが普通です。ただし、保険料を払えない人がいる。保険料を払えない人については、実は、多くの国は、所得税の累進課税の部分から持ってくる。これは社会保障が所得再分配であるということから出てきます。そうしますと、基本的には、保険料プラス累進課税という形が普通であります。日本のように、社会保険方式といいながら巨額な税金を投入するというのは、私は余り知りません。
 消費税の社会保障目的税というのは、実は、社会保障を保険方式で運用するという世界の流れと極めて逆行する話であるということは、もう一回強調しておきたいと思います。
 社会保障の目的税に消費税を充てて社会保障目的税というのが間違いという私の言った意見は、実は一九九〇年代までは大蔵省の主張でもありました。たしかこれは、二〇〇〇年のちょっと前に、政治的に、自自公連立のときに、当時の自由党の幹部の人に大蔵省が働きかけて、社会保障に消費税を使うというのを予算総則に書いたというふうに私は記憶しております。
 なお、そのときに同時に出た政府の税制の答申、政府税制調査会の答申では、「諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらない」という記述があります。
 こう考えますと、実は、消費税をどうやって位置づけるかといいますと、これは社会保障目的税ではなくて地方税とすべきというのが普通に出てきます。消費税は一般財源なんですけれども、国が取るか、地方が取るかという問題になるんですが、実は、地方分権が進んだ国では、国ではなく地方の財源とみなせるという例も多いのです。これは、国と地方の税金の配分理論、国は応能税、個人の能力に応じて払う税、それとあと、地方は応益税、各人の便益に応じて払う税という税理論にも合致する話であります。
 こういう話をしますと、ヨーロッパの国は消費税が多いんじゃないかというんですけれども、ヨーロッパの国は一つの国の規模が小さくて、GDPで見ても、日本は欧州の大体七個か八個のレベルの集まった国、経済体であります。ヨーロッパの国はサイズがちっちゃくて、日本から見れば恐らく地方の単位であります。だから、そういうふうなEUが一つの国として消費税を取るというのは、私がさっき申し上げた消費税の地方税化というのと何ら矛盾はないと思います。
 いろいろな国をほかに見ていましても、地方分権が進んだ国では、オーストラリアのように、国のみが消費税を課税し、地方に配分する国とか、ドイツ、オーストリアのように、国と地方が消費税を共同税として課税して、それで税収を国と地方で配分する。アメリカは、消費税を課税しないで、地方が消費税を課税する。カナダはちょっと変わっていますけれども、国が消費税を課税するんですけれども、その上に地方が課税するという方式もあります。
 いずれにしても、分権度が高いほど国としての消費税というウエートはちっちゃくなっていると思います。
 いずれにしましても、消費税というのをしっかりと地方税と位置づけた上で、それでいろいろな社会保障改革をしていただくというのが多分いいのかなというふうに思います。
 最後に、GPIFの話をします。
 これは、行革の観点、年金財政の観点、あと、組織のガバナンスという観点から述べたいと思います。
 年金運用という話をしますと、条件反射的に株式という話に行くのがよくあるパターンなんですけれども、実は、年金財政の観点から見れば、株式運用、市場運用は必ずしも必要ではありません。例えば、市場運用をしないで、非市場性国債、非市場性の物価連動国債という形でGPIFの運用をするということも可能です。こういう形にしますと、市場運用は全く不必要、年金財政も全く問題ないです。
 それとあと、ここでいろいろ議論になっている組織のガバナンスもないです。というのは、この非市場性の物価連動国債によるGPIF運用という形ですと、GPIFの組織は一人で多分できると思います。毎月、保険料が入りました、非市場性国債ですから実は財務省に連絡するんですけれども、これだけお金が入ったので非市場性国債をこのくらい出してくださいと言うだけで終わります。実は、こういう例というのは、今はちょっとなくなりましたが、かつてはありました。ですから、その意味ではガバナンスは極めて簡単であります。
 こういう話はなぜ反対を受けるか。もちろん、組織を持っているGPIFも反対かもしれない。それとあと、GPIFから運用委託されている金融機関も反対だと思います。それは、当然のことながら、GPIFの運用にかかわっていろいろなコストがかかるんですけれども、そのコストというか、それを報酬として受けている金融機関が多いからです。
 例えば、百兆円の運用、これで運用報酬というのは、実はこれほど高くないんですけれども、仮に〇・一%としても一千億円ですよ。これはかなりでかいです。もちろん、こんなに大きくなくて、もうちょっと、それより一個下の桁の数字かもしれませんけれども。でも、いずれにしても、大きな手数料が動いていることです。先ほどの、全額、非市場性の物価連動国債でやると、ほとんどこの運用コストはかからないです。
 ですから、今の私の言ったやり方というのは裁量性が全くないやり方ですね。それで、年金の運用額が幾ら巨額になっても問題がないです。実は、こういうやり方を志向するというのもガバナンスを高めるやり方としてはあるんじゃないでしょうかというふうに思います。コスト安。
 それとあと、こういう形で年金運用していますと、官民の癒着とか、こういうのも危惧されるものですけれども、私が申し上げたような、全く裁量性のない、全額、非市場性の物価連動国債でやると、そのような官民の癒着の問題も全く、ほとんど発生しません。
 ですから、そういう意味で、ガバナンス問題というのを一気に解決する手段、やり方であるというふうに思います。
 運用額が大きくなって、ガバナンスを強めて、それを、運用の責任があるからといって、いろいろな組織をやるというやり方を今回の法案では志向しているようなんですけれども、全く逆転の発想ですけれども、全額、非市場性の物価連動債というやり方もあるんじゃないかというふうに思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 高橋洋一

speaker_id: 3736

日付: 2016-11-25

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会