清水康行の発言 (災害対策特別委員会)
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○清水参考人 北海道大学の清水と申します。
本日は、お手元に配付していただいてございます「二〇一六年八月北海道豪雨災害調査団報告」という資料に基づきまして、私は、土木学会の方で北海道の水害調査団というのを組織させていただきまして、それをまとめさせていただいているという立場から、北海道の水害を調査し、実態として見えてきたこと、また、その対策として参考になるようなことがあればということで、意見を述べさせていただきます。
私の専門は、土木工学の中の水に関する中で、川に関する河川工学が専門です。
資料の二ページ目に行きまして、まず、台風の実態なんですけれども、八月の台風で、まず中旬に三個の台風が上陸しました。これは、今までの歴史上、北海道に一週間に三個も台風が来るなんということは全くございませんでした。さらに、その翌週になりますけれども、四個目の台風が接近しまして、これが、地形性降雨ともいいますけれども、主に空知の一部と十勝地方に大雨を降らせました。
そのときの雨の状態がそこの二枚の図です。左側が前半、右側が後半の部分であります。左側は、全道的に二百五十ミリを超えるような大雨。右側に行きますと、そのときでもう既に北海道の山から、土壌が全部、湿潤状態が飽和状態になったのでありまして、その後の台風が、十勝地方を中心に大雨が降りまして、これもまた三百ミリを超える大雨が降って、全道で大変な土砂災害、洪水災害が発生いたしました。
三ページに参りまして、このときの雨量なんですけれども、約十五日間でもう年間雨量に匹敵するだけの雨が降ってしまったということです。その量なんですけれども、五百ミリを超える。左側の図で、白い線の中が五百ミリを超える。こんなことは今までの記録上は全くないことで、北日本は、先ほど片田先生のお話にもございますように、雨は少ないというふうに言われていたんですけれども、右の図の全国のデータと比較しますと、関東とか中部地方と同じ規模のような雨が頻繁に降るようになってきたというようなことが言えると思います。
四ページに行きまして、雨の降り方ですけれども、台風によって大量に降るということはあるんですけれども、そのほかに、最近よく言われている線状降雨帯といいまして、図の右にありますように、台風がないときでも線のように降って、これが一カ所に集中するもので、こういうような雨の降り方が非常に多くなっております。これは、二〇一四年九月に北海道で初めて大雨特別警報というのが出まして、札幌で九十万人も避難勧告が出るようになっております。
この線状降雨帯なんですけれども、二十世紀ですと年間五・八回、二十一世紀に入りまして年間八・九回、二〇一〇年では二十一回も発生しまして、この降り方がどんどんふえてきている。これは、二〇一四年広島豪雨、それから二〇一五年の鬼怒川豪雨でもたらしたこういう線状降雨帯が、北海道でも、北日本でもふえてきているということがわかっております。
五ページに参りまして、言われている地球温暖化との関係なんですけれども、IPCCの第五次報告によりますと、地球全体では恐らく二度以上の気温上昇が避けられないというようなことが言われております。
この上昇の傾向は、日本に関しましては、北日本ほど気温の上昇は高いというふうに言われております。地球の平均気温が二度上昇した場合は、我々のグループによる試算によりますと、例えば石狩川流域などですと、氾濫域が二倍ぐらいになってしまうんじゃないかというようなことが言われております。
こういう地球規模の気温の上昇、それが北日本の方でも顕著化して、今まで雨が少ないと言われていた北海道、東北地方でも雨の危険がふえているというふうに思われます。
六ページに参りまして、では、全道的にどんな被害があったかというのを示しております。河川の方でいきますと、国が管理している直轄、それから道が管理している道管理区間というふうに分けて話します。
まず、六ページは、道管理区間の前半の降雨による災害です。これは、全道的に、石狩川の上流、それから日高地方、それから網走地方などでこういうふうに氾濫とか河岸侵食、堤防の決壊などが起きまして、十七水系四十三河川において、今までないような被害が起きております。
七ページに行きまして、後半の雨ですけれども、これもやはり道管理区間。今度は日高地方と十勝地方に集中しまして、特に十勝地方では、小さな河川があちこちで大氾濫をしております。被害もひどくなっております。あと、橋梁、橋の被害が顕著で、川が暴れるもので、それに伴って橋の被害が非常に多くなっております。
八ページに行きまして、今度は直轄部分、国の管理している区間ですけれども、これは前半、後半合わせてです。箇所は少ないんですけれども、石狩川、空知川、それから十勝川水系の札内川などで氾濫が起きています。数は少ないんですけれども、大河川ですから、一旦氾濫した場合の被害は、氾濫面積などは相当なものになっております。
以上、全道的に、河川の氾濫、それから堤防の決壊などがこんなに広い範囲で起きているのは、かつてないような状況でございました。
九ページに行きまして、このとき、同時に、北海道は農業が盛んですので、農業が大打撃を受けております。
九ページは、前半の雨において、空知地方、十勝地方、オホーツク地方、それから上川地方などで農業が大被害を受けております。
十ページに行きまして、同様に、後半の雨でも、これにさらに追い打ちをするように、各地で農業関係の被害が物すごく広がっております。
十一ページに行きまして、先ほどちらっと言いましたけれども、農業と、それから道路、橋梁、これも大変な被害になっております。全道で橋梁の被害が五十カ所以上、橋が落ちて、国道、道道、市町村道も含めると相当な数が被害を受けております。特に札幌と帯広を結ぶ国道二百七十四号線、大動脈なんですけれども、これが今でも不通になっておりまして、橋梁の被害が大変な被害となっております。
あと、これ以降は水害の状況なんですけれども、十二ページ、石狩川に着目してダムを見てみたんです。どこのダムも最初の雨でほとんど満杯、こういうふうに言えると思うんです。ダムがたくさん、昭和五十六年に大災害があったんですけれども、その後、直轄ダムもふえておりまして、それらのダムがほとんど満杯状態で、そのおかげでといいますか、こういうダムがあった下流とかは、被害も当時に比べては随分減った。ダムの効果が随分あったというのがわかりました。
十三ページに行きまして、その中で空知川の金山ダムという、先ほどの南富良野町の下流なんですけれども、金山ダムも、この写真にございますように、もう満杯、あふれる寸前ぐらいまでいっています。
金山ダムの下流はダムのおかげで被害は比較的少なかったんですけれども、そのダムの上流の南富良野町ですけれども、その上流で、この写真の、十四ページの上の方に金山ダムの貯水池が見えているんですけれども、青い線のように川が蛇行して曲がって、大流量とともにそこの緑の破線のところの堤防が決壊して、そのときに大量の氾濫流が南富良野町の方に流れ込んだ。農地がこういうふうに物すごい被害を受けたということです。
十五ページはその南富良野町の被害状況なんですけれども、堤防が二カ所決壊して、浸水面積が百三十ヘクタール、百八十三戸が浸水しております。
十六ページに行きますと、そのほかにも、北海道は山が多くて、山から大量の流木が出てきていまして、こういう流木も橋にひっかかったり、それから川の中で詰まって大きな被害を、これは一例ですけれども、南富良野町の橋や何かもこういうふうに被害を受けております。
十七ページは、このときの南富良野の被害の状況を私どもシミュレーションしてみたんです。背景に、昭和二十三年、戦後米軍が撮った写真を重ねてみると、現在は堤防をつくって上の方に寄せてある川が、一旦氾濫すると、氾濫原、昔の川の跡をたどるように大きく氾濫しておりますことがわかりました。ということは、全道、ほかもそうなんですけれども、一旦氾濫するとやはり昔の川の形に戻っちゃうという傾向がある。こういうような知識を今後、氾濫原の管理とか防災に役立てていけるんじゃないかというふうに感じました。
十八ページは、ここに書いてあるように、氾濫した水が昔の川の跡をどうやらたどっているようだということがわかりました。
十九ページ、これは十勝川水系の方なんですけれども、戸蔦別川という道管理の川と札内川という直轄河川が合流するところなんですけれども、赤の点線が堤防が決壊したところです。戸蔦別川の上流が決壊して、この合流点のところに氾濫して、農地を、こういうふうに氾濫して、その水で札内川の方の堤防を再び破って、また札内川に流れ込むという、二重の被害みたいな、こういうことが起きております。
二十ページに参りますと、これは、十勝地方の小さな川でたくさんこういう事例があちこちであるんです。その一例として、ふだんは、これはペケレベツ川という清水町の河川なんですけれども、ほとんど、水がちょろちょろしか流れていないような川なんですけれども、比較的真っすぐな川も、こういうふうに大きく、大量の土砂が出てきて、土砂をまき散らしながら蛇行して、橋も河岸も、グラウンドとか農地とか、それから市街地も全部削りながら、大きな被害を受けております。
二十一ページも、近くの新得町のパンケ新得川という川で、これも同じように、水色の線がもともとの川なんですけれども、今回の被害で赤い河川のように大きく蛇行して、川がえぐれて、中央にある、これはJRの札幌と帯広を結ぶ本線なんですけれども、このようにJRの橋梁も被害を受けております。現在も不通になっております。
二十二ページに参りまして、国道の被害状況なんですけれども、これは国道二百七十四号線、道央と十勝を結ぶ大動脈なんですけれども、四十キロに及ぶ区間で通行どめ、橋梁は十カ所以上が被災、そのほか道路そのものの崩壊なども含めて全体で六十カ所以上が被害を受け、その例を何カ所か示しますと、二十二ページのは千呂露橋という橋ですね、これも落ちてしまいました。
それから、二十三ページに行きまして、いろいろな橋とか、覆道といいまして、土砂崩れ、斜面の崩壊から道路を守るような覆道なども被害を受けております。
二十四ページに行きまして、堤防とか橋梁の被害についてちょっと述べさせていただきます。
音更川を例に、左側の図は、きれいに左右にぽこっぽこっと出っ張っているんですけれども、これは実はこんな川じゃなくて、もともとほとんど真っすぐな川なんですけれども、右の図にありますように、青い線のようにぐっとえぐれて、赤い点線のところが堤防がなくなっております。
二十五ページに参りますと、このときの音更川の被災前と被災後の様子を見ますと、堤防も真っすぐだったところが今回の被災で左右に蛇行して、そのときに、低水路というふだん流れている水のところが蛇行して、堤防も一緒に巻き込んで流れるようになって、左右で堤防が大きく流れているんです。先ほどの空知川の例なんかも、堤防がこのようにして削れて、そういうところに大量の水が流れてきたもので、堤防もろとも市街地の方に水が大量に出ていったということで、こういう侵食というのが大変顕著にあらわれております。
二十六ページなんですけれども、これは模型実験を水路でかつてやったものなんですけれども、このように、真っすぐな川も、時間とともにだんだん、大きな水が流れてくるとS字のように、蛇行というんですけれども、蛇行して、グリーンの線を入れてあるように、もしそこに堤防があっても、土手、土でつくっただけの堤防ですと、それは関係なく破られてしまうという、洪水の力の恐ろしさを改めて感じました。
二十七ページ、先ほどのペケレベツ川なんですけれども、橋の下を見ますと、橋桁から河床までの距離が異常に狭い、これは大量の土砂が出ているんじゃないかということで、そのときにそれの影響で土砂に突っかかって左右に大きく蛇行する、それによって侵食されて、市街地も家もそれによって流されてしまうということで、土砂の防止、上流の砂防事業なんかも重要だというふうに感じました。
以上、二十八ページでまとめになるんですけれども、最初にダムのことを言いましたけれども、ほとんどのダムが満杯状態で、そのおかげでというか、ダムのあるところでは下流の被害は最小限でした。ただ、ダムのない河川やダムの上流や何かでの被害は大変大きかった。
次に、河川の氾濫も調べてみますと、シミュレーションなんかでも確認したとおり、昔の川の跡をたどっているようだ、一旦氾濫すると。これは、やはりハザードマップなどの防災情報として、昔の川という情報は有効だというふうに思いました。
三番目、低水路の蛇行と書いてありますけれども、ふだんは真っすぐにしてあっても、大雨が降ると蛇行して、堤防も侵食してしまって、流量が多い場合はそこから大量の水があふれてしまう。これは土砂流出にも関係しているということで、今回の被害は扇状地が多かったんですけれども、そういうところは、基盤も含めた侵食対策、堤防の強化対策が必要だと思います。
氾濫しないように堤防や何かをつくっているんですけれども、やはり絶対氾濫しないということはないので、氾濫した後どう氾濫水が動くかというのを把握しておくと、被害も最小限に抑えられるというふうに感じました。
二十九ページ、最後になりますけれども、土で盛っただけの堤防は非常に弱いという感じが実感されましたので、堤防その他は、復旧するときも、その場所も含め、上下流とか低水路、高水敷と書いてありますけれども、河川敷や堤防の裏側や何かも含めた、基盤も含めたしっかりとした対策が必要というふうに感じました。
それから、計画の見直しの必要性。私の話の前半で申し上げましたように、気候の変動とか降雨の降り方が変わってきておりますので、計画の見直しも必要だ。ただ、計画をさらに超える雨も考えられますので、そういうときにどう対応するかというのも考えておかなきゃならない。例えば、河川の水は堤防を越えてあふれてくるということも踏まえた、氾濫原も含めた計画、それから防災対策が必要ではないかというふうに考えました。
そういうことで、ハードな対策も必要なんですけれども、ソフトな対策として、警報、交通遮断、避難勧告などの迅速な対応、ふだんからの水害に対する心構え、緊急時の行政と住民のコミュニケーション手段の充実なども、非常に必要性を改めて感じました。
以上、水害の調査を行いまして感じたこと、見えてきたことなども述べさせていただきました。今後の対策などに生かしていただければ幸いだと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)