岡正晶の発言 (法務委員会)

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○岡参考人 本日は、発言の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。
 私は、日弁連からの推薦で本件の法制審部会の委員となり、五年四カ月間、最初から最後までフルで審議に参加をさせていただきました。その立場と経験を踏まえた本改正法案に対する私の意見は、日弁連の意見と同じであります。
 本日は、まず冒頭にその意見を述べさせていただきます。次に、その意見を持つに至った経緯、理由として、本改正審議に取り組んだ日弁連の基本姿勢及びどういう陣容でどのように取り組んだかについて説明をさせていただきます。そして最後に、まとめとしての私の所感を述べさせていただきます。
 ではまず、意見でございます。
 私の配付させていただきました資料五、通しページ十四分の六をごらんください。
 真ん中あたり、「第一 意見の趣旨」第一項でございます。「本改正法案は、保証人保護の拡充や約款ルールの新設を見ても明らかなように、利害の対立する複数の契約当事者間の適正な利益調整を図り、かつ、健全な取引社会を実現するために、必要かつ合理的な改正提案であると評価でき、当連合会は本改正法案に賛成する。」、これが結論でございます。
 我々弁護士は、民法を市民の最も身近な立場で活用し、それを通じて市民の権利を実現する職責も負っております、民法のヘビーかつ最大のユーザーであります。その立場と責任を踏まえて、日弁連も私も本法案に賛成をいたします。
 二項、三項については、後で触れさせていただきます。
 次に、資料六、通しページの十四分の十三をごらんください。
 日弁連は、昨年の通常国会の法案提出時にこの会長声明を出させていただきました。下から二行目をごらんください。「時を移さず、これらの検討内容を活かして、今国会で」、昨年の通常国会でございますが、昨年の通常国会で「充実した十分な審議を行い、重要法案である本改正法案の成立を求めるものである。」という声明を出させていただきました。
 次に、次のページ、十四分の十四をごらんください。
 これは、本年九月三十日に会長声明を出したものでございます。ここでも下二行に御注目ください。法案提出から一年半も経過したことを踏まえ、「今国会で充実した迅速な審議を行い、」今臨時国会での「早期成立を求める」というものでございます。時ここに至って、日弁連も私も、充実だけではなく迅速な審議、すなわち丁寧で速やかな審議をお願いしたいと思っております。
 それでは次に、このような意見形成に至った経緯、理由の一つ目として、日弁連及び私どもが本改正審議に取り組んだ基本姿勢を御説明いたします。
 資料三、通しページの十四分の四をごらんください。
 これは、日弁連の理事会で機関決定していただいたものでございます。法制審の部会には、私を含めて四名が推薦されてメンバーになりましたが、私ども四名は、この基本姿勢に基づいて懸命に発言をし、本法案にこれを反映させたつもりでございます。少し早口になりますが、読ませていただきます。
 一 改正を所与の前提として拙速な取り纏めをすることなく、各検討事項につき、改正の必要性、方向性、改正の具体的内容および改正した場合の影響の内容や程度を慎重に検討する。
理念ファーストではなく、個別的、具体的に検討していくという宣言でございます。
 二 改正にあたっては、法定債権や担保物権に関する規律などを含む民法全体の整合性、消費者契約関連法、商行為関連法、労働契約関連法などの民事特別法との相互関係や役割分担などについて適切に配慮し、民事法体系全体として整合性・統一性をもった民法とすることをめざす。
 三 確立した判例法理や定説のうち法文化すべきものは民法典への適切な取り入れを検討し、市民にとって真に「分かりやすく使いやすい民法」をめざす。
 四 専門的知識や情報の量と質または交渉力に大きな格差のある消費者・労働者・中小事業者などが、理由のない不利益を蒙ることがなく、公正で正義にかなう債権法秩序を構築できる民法となるように積極的に提言する。
 五 社会経済の現代化、市場の国際化、外国の法制度との比較などの考慮に基づく改正に関しては、我が国における民法規範としての継続性や市民法秩序の法的安定性に十分配慮して検討する。
外国の先進的な取り組みは、研究、検討するけれども、追随はせず、批判的に受け入れる、こういうものでございます。
 先ほども申し上げましたが、
 六 民法を市民の最も身近な立場で活用し、市民の権利を実現する職責を負う実務法曹の団体として、多面的な議論を尽くし、利用者である市民の視点にたった改正意見を積極的に表明し、活動する。
 なお、これに加えて、私個人は、民法は日本国民全てに適用される法律ですので、私のふるさと、四国うどん県、香川県で農村に住む私の両親、親戚にも理解できるもの、納得できるもの、そういうものを目指そうと思いました。
 次に、私ども及び日弁連が本改正審議にどういう陣容で取り組んだかを御説明いたします。
 資料二、通しページ十四分の三をごらんください。
 先ほどの基本姿勢の六項で述べましたように、多面的な議論を尽くすためには、いろいろな立場のできるだけ大勢の弁護士で議論することが重要と考えました。そこで、全国の各層から約六十名弱のバックアップチームをつくっていただき、部会の前日等に、合計すると、ここにありますとおり百二十四回の議論をしていただきました。また、このチーム会議の前に、多くの地方の単位会、委員会でも事前議論をしていただき、それを書面等でチーム会議に提出してもらいました。
 本当にさまざまな弁護士、具体的には、消費者、大企業、中小企業、労働者等の代理を多く務める弁護士、企業内弁護士、親族、相続の事件を多く扱う弁護士など、大勢集まって、本当に多面的な議論を尽くすことができたと考えております。
 そのほか、この表の右側に記載してありますとおり、全国八つの高裁所在地で、各二回、シンポ、研修会を行ったり、日弁連の重要な意思決定機関である理事会でも何度も意見交換、審議をさせていただきました。
 次に、意見形成に至った経緯、理由の最後に、私ども日弁連が本改正審議にどのように取り組んだかを御説明いたします。
 資料一、通しページ十四分の一をごらんください。
 最初の第一ステージの当初、我々は、強い警戒心を持って臨みました。きついことも発言をいたしました。また、当初は、日弁連内にも、壊れていないものを直す必要なし、学者主導の改正につき合う必要はない等の批判的な意見が多くございました。しかし、先ほどの基本姿勢に基づいて議論を重ねる中で、批判だけにとどまっているのではなく、前向きで建設的な議論が多くなってきました。
 また、部会におきましても、この次の九ページの五行目以下にありますとおり、別の学者有志、具体的には加藤先生グループの改正提案でございますが、そのような資料も数多く引用されるとともに、比較法資料も豊富に提供されまして、実に多くの議論が滑らかに進んでいくようになったと理解をしております。
 一回目のパブリックコメントの後が第二ステージでございます。
 この第二ステージにおきましては、三つの分科会が部会と部会の間に開かれ、本当に中身の濃い審議をいたしました。日弁連も意見書を五本提出いたしました。この九ページの左側の下から十行目にありますとおり、このほかにも弁護士会、弁護士有志等による意見書が何本も部会に提出され、法制審の部会としては異例のことですが、これらも全て机上配付を許され、審議に供されました。
 そして、いよいよ、二回目のパブコメが終わった後、第三ステージを迎えました。
 資料一、九ページの右側をごらんください。
 これは選択と集中の審議であったと認識をしております。まず、全員のコンセンサスが得られたもの、積極的な反対者がいない、そういう論点を要綱案とする方針に従って仕分けが進められました。早々にまとまったもの、詐害行為取消権など、早々に断念されたもの、信義則等の適用に当たっての考慮要素などもございましたが、熟議の上、少数意見者が多数意見を尊重するということでコンセンサスが成立したものも出てまいりました。
 その例が消滅時効でございますが、消滅時効については、主観的起算点導入に対する不安や時効完成までの期間が短くなる権利がややあるということで、反対が小さくはありませんでした。しかし、熟議を重ねる中で、主観的起算点というのは既に不法行為において民法に導入済みであること、それについて説得的な下級審判決例も出ていて予見可能性があること、生命身体に関する権利の特則を一般債権、不法行為の両方に設けることなどでコンセンサスが得られるに至ったものでございます。
 その後、意見が大きく分かれた論点について、事務当局から、この案でどうかという提案が二次案、三次案、四次案を含め出されまして、この結果まとまったもの、動機の錯誤でありますとか個人保証でございます、そういうものもありましたが、日弁連にとっては遺憾ながら断念されたもの、暴利行為の明文化等も少なからず生じました。
 この間、日弁連では、最終局面に入ったことを受け、ここにあるような組織変更を行ったり、日弁連の理事会等で議論をさせていただきまして、最後まで積極的に発言を続けたものでございます。
 若干時間がございますので、法定利率についても若干御説明をいたしたいと思いますが、法定利率についても、適用法域が異なるごとに利率を設ける方が合理的ではないか、三%では債務不履行のペナルティーとしては低過ぎるので五%のままでいい、逆に、現在のマイナス金利、まあ、その当時はマイナス金利じゃございませんでしたので、当時の低金利を考えると二%がいいなど、さまざまな意見が出ておりました。しかし、これも熟議を重ねる中で、激変は相当ではないのではないか、現在の仕組みに対する適度な変更が今回は相当ではないかということで、四割減の三%とし、加えて穏やかな変動制を採用するという方向に収れんをしていきました。
 私個人は、こういう方程式ではなく、その都度国会が決めればいいという意見でございました。少数意見で採用されませんでしたが、最終的には、こういう方程式があろうとも、国会がその時点で議決をすれば、法定利率を変更することは可能ではないかと考えております。
 以上の経緯、理由を踏まえて、私及び日弁連は、本改正案に賛成をし、早期成立をお願いするものでございます。
 最後に、まとめとしての所見を三点述べさせていただきます。
 第一に、今回の法案は、我々から見ればなお不十分な点もありますし、法案とならなかったものについても残念なものがございます。しかし、これらも、そのような案が公平妥当という方々が社会の中にいらっしゃり、また、それらはまだ時期尚早であるという方々がいらっしゃることから、こうなったものと理解をしております。そして、本法案には我々として評価できるものが数多くございますし、理論よりも実務を優先して採用していただいた条文もございます。
 こういう意味で、本法律案は、各界各層の参加者が民法をよりよいものにしようという思いで長年にわたって検討、議論を行い、その英知を結集したものと理解をしております。そういう意味で、絶妙なバランスのとれた法律案と私は考えております。
 第二に、私どもから見れば不十分な点についても、制度としては一つの大きな前進であると考えております。よい方向でのアナウンスメント効果もあると考えております。国会における審議、金曜日の審議を拝見させていただきましたけれども、それを通じて行政指導等も充実されるのではないかと考えております。我々弁護士会としては、今後は、不十分と考えられる点から問題が生じないよう、法教育の充実等も含め、実務において力を尽くしていきたいと考えております。
 第三に、最後ですが、今回は法案とならなかったものについても、法制審部会における中身の濃い議論が議事録という形で残り、今後に向けての大きな貯金ができたと考えております。これで相当な進展があったと考えています。これをばねにして、さらに一層、全国の弁護士で実務、判例を積み重ね、多数意見の形成に向けて精進していきたいと思っております。
 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119205206X01020161122_002

発言者: 岡正晶

speaker_id: 26643

日付: 2016-11-22

院: 衆議院

会議名: 法務委員会