安倍晋三の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上義久議員にお答えをいたします。
 成長と分配の好循環についてお尋ねがありました。
 安倍内閣としては、持続的な経済成長を通じて富を生み出すことにより、経済全体のパイや個人の所得を増加させ、その果実を所得の再分配に活用することで、さらなる成長につなげてまいります。
 政権交代後、デフレ脱却を目指して経済再生に取り組む中、名目GDPは三十三兆円増加し、税収は国、地方合わせて二十一兆円ふえました。
 さらに、未来への投資を実現する経済対策を講じ、内需を力強く下支えし、アベノミクスを一層加速するとともに、全国の中小・小規模事業者の生産性向上、販路開拓などの努力を後押しし、経済の好循環を一層促進してまいります。
 また、経済成長の果実を生かし、子育て支援や介護離職ゼロに向けた取り組みなどの社会保障の充実を行うことにより、安心できる社会基盤を築き、その基盤のもとに、さらに経済を成長させていくという成長と分配の好循環をつくり上げてまいります。
 一連の台風被害からの復旧復興についてのお尋ねがありました。
 私自身、九月十四日に被災地を視察し、甚大な被害を目の当たりにするとともに、被災者の皆様の大変な御苦労を直接伺い、復旧復興に向けた決意を新たにいたしました。
 北海道や岩手県を初めとする東北地方を襲った一連の災害を激甚災害に指定し、広範な分野で財政支援等の特例措置を講じたところですが、今後も、被災者の皆さんが再び希望を持って前に進めるよう、道路、河川などのインフラ復旧、被災者の住宅再建、農林水産業、観光産業などの復旧について、地元自治体と緊密に連携しつつ、被災地の方々の気持ちに寄り添い、ソフト、ハードの両面から、できることは全て行うとの方針で、スピード感を持って全力で取り組んでまいります。
 地域経済を活性化する成長戦略の加速についてお尋ねがありました。
 全国津々浦々に至るまで景気回復を実感できる状況を実現する。このため、地域に根を張り活躍する中小・小規模事業者の成長を応援していきます。
 近年、ロボットからビッグデータ、AIまで、デジタル技術の活用が進んでいます。これを中小企業が活用し、新たな需要を創出し、生産性を向上できるよう、第四次産業革命の実現を後押ししていきます。
 既に、中小企業が先進的な取り組みを始めています。百以上の中小縫製工場をITでつなぐ。数千のデザイナーと数百の3Dプリンター工場をマッチングする。生産資源を効率的、柔軟に活用し、多様な顧客とつながることで、中小企業が手軽に多様なニーズに応える商品を開発、提供できるようになります。
 こうした動きが全国に拡大していくよう、革新的な物づくり、サービス開発等を支援してまいります。また、官民合わせた研究開発投資を対GDP比四%以上、民間投資の呼び水となる政府研究開発投資を一%にすることを目標としています。
 日本の各地を多くの外国人が訪れるようになったことも、地域の中小・小規模事業者にとって大きなチャンスです。安倍政権はこれまで、ビザの緩和、免税制度の拡充など、外国人観光客の増加に精力的に取り組んでまいりました。
 ことし三月、二〇二〇年に訪日外国人旅行者数を四千万人という新たな目標を掲げました。この実現に向けて、豊富で多様な観光資源の魅力を最大限に高めるとともに、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境を早急に整えてまいります。政治が前面に立って、常に先手を打って万全の対策を講じていく決意であります。
 経済対策の地方、中小企業への波及についてお尋ねがありました。
 先般閣議決定した経済対策では、未来への投資をキーワードにしています。地方が主役となる施策を講じてまいります。
 地方創生の切り札である観光においては、岸壁の整備、客船ターミナルの建設、WiFiの利便性向上など、ハード、ソフト両面でインフラ整備を進めることで、観光客の利便性をさらに高め、外国人観光客四千万人の高みを目指します。
 地方が誇る魅力の源である農林水産業においては、農林水産品の輸出基地、輸出対応型施設を全国に整備することで、輸出額一兆円目標の早期達成を目指します。
 中小企業、小規模事業者に対しても、サービス産業等における革新的な開発の支援を行うことなどにより、その経営力強化、生産性向上を図ります。
 また、生活密着型インフラの整備においては、鉄道立体交差化やホームドアの設置、バリアフリー化などを推進し、高齢者や障害者が住みやすいまちづくりを進めてまいります。
 これらの施策を通じて、地域経済が下支えされるだけでなく、地方が主役となる未来が切り開かれていくものと考えています。
 長時間労働是正についてのお尋ねがありました。
 誰もがその能力を存分に発揮できる社会をつくる。一億総活躍の未来を切り開いていく、その最大の鍵は働き方改革です。子育て、介護など多様なライフスタイルと仕事とを両立させるためには、長時間労働の慣行を断ち切ることが必要です。
 私としては、働き方改革実現会議において、労使のトップや有識者に集まっていただき、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方を含め、長時間労働の是正について、働く人の立場、視点に立って議論を進め、年度内に具体的な働き方改革実行計画を取りまとめ、関連の法案を提出します。
 また、勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要であり、今回の第二次補正予算では、インターバルを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、労使の自主的な取り組みを推進します。
 働き方改革は、安倍内閣の最重要課題であります。
 働き方改革の目的は、働く方によりよい将来の展望を持っていただくことです。パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規労働者に比べて二割低い状況でありますが、日本では四割低くなっているとの指摘もあります。一刻も早く同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにしなければなりません。
 このため、どのような賃金差が正当でないと認められるかを、年内を目途にガイドラインをつくって具体的に明らかにし、さらに、賃金格差について裁判で争われた場合に、裁判所の判断の根拠となる規定を整備することなどを含め、法改正についてちゅうちょなく行っていきます。
 また、非正規雇用で働く方の能力開発を支援するため、非正規従業員の企業内でのキャリアアップに取り組む企業に対する助成や、非正規で働く方が自発的に教育訓練を受けた場合の支援に積極的に取り組んでまいります。
 年金の受給資格期間の短縮についてお尋ねがありました。
 来年四月に予定していた消費税率一〇%への引き上げについては、平成三十一年十月まで延期することといたしました。
 こうした中で、年金の受給資格期間の短縮は、現在の法律では消費税率の一〇%への引き上げ時に行うこととされていますが、無年金の問題は喫緊の課題であることから、できる限り早期に実施すべきであると判断したものです。
 今回の受給資格期間の十年への短縮で、新たに約六十万人を超える方々が年金受給権を得ると見込んでいます。こうした多くの方々が間違いなく年金を受給できるよう、その対応に万全を期すため、平成二十九年八月施行としました。これにより、十月から確実に受け取れる予定であります。
 納付した年金保険料を極力給付に結びつけることにより、国民の年金制度に対する信頼を一層高めてまいります。
 福祉、介護人材の確保についてお尋ねがありました。
 福祉、介護人材の確保に当たっては、介護の仕事は本当にやりがいがあると大きな希望を持って福祉、介護の道を選んだ皆さんの高い使命感にしっかりと応えていくことが重要です。
 このため、ニッポン一億総活躍プランに基づき、平成二十九年度から、技能や経験に応じた給料アップの仕組みを構築し、月額平均一万円相当の処遇の改善、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合の再就職準備金の倍増等に取り組んでまいります。
 あわせて、ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進などにより、現場の負担軽減や職場環境の改善を進めていきます。
 このように、あらゆる手段を尽くして、今後、福祉、介護人材の確保に努めてまいります。
 がん対策についてお尋ねがありました。
 がん対策については、がん検診の受診を促し、受診率向上を図るとともに、研修の充実を通じた緩和ケアの推進や、治療と仕事が両立できるよう、職場や医療機関における支援を充実させていきます。
 さらに、がん教育のモデル事業の推進や、職場でのがんの普及啓発に取り組んでおります。
 現在、来年六月からの次期基本計画の策定に向け、厚生労働省の協議会で議論を行っているところです。
 がんによる死亡を減らすとともに、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に向けて、がん対策をより一層進めます。
 TPP協定についてお尋ねがありました。
 自由で公正な貿易を堅持し発展させる、これこそが世界経済の成長の源泉です。
 我が国は、戦後、自由貿易のもとで経済成長を遂げてきました。その我が国こそが、世界の自由で公正な貿易・投資ルールの牽引役であり、提唱者でなければならない、このように確信しています。
 TPPは、その中核です。世界の四割経済圏において、つくり手が丹精込めた付加価値が正当に評価されるようになります。TPPによって新たにつくられるルールは、単にTPPにとどまらず、日・EU経済連携協定、RCEPなどにおけるモデルとなるものです。
 TPPは、参加希望を表明する国々が相次いでおり、潜在的な参加国が数多くあります。TPPが拡大していく機運を積極的につくっていくことこそ、我が国の役割です。
 米国も発効に向けて努力を続けていると承知しています。米国にその努力を続けてもらうためにも、交渉をともに牽引してきた日本が、このタイミングで国内手続を前進させていくことが不可欠だと考えています。
 他の署名国の多くも日本の動きに注目し、日本に期待しています。この国会でやらなければならない、こう考えています。
 TPPの国内対策についてお尋ねがありました。
 我が国の農業については、農業従事者の平均年齢が六十六歳を超えるなど、その活性化は待ったなしの課題であります。
 安倍内閣では、農業の成長産業化の実現に向け、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。これにより、四十代以下の新規就農者が年間二万人を超え、この九年間で最も多くなりました。
 そして、TPP。アジア太平洋に巨大な経済圏が生まれることは、日本の農業にとって大きなチャンスです。おいしくて安全な農産物の輸出を初め、このチャンスを生かそうとする意欲ある農業者の取り組みを、あらゆる政策を動員して力強く後押ししていきます。
 総合的なTPP関連政策大綱に基づき、攻めの農業への転換に必要な体質強化策を講じてまいります。
 今回の補正予算においても、農林水産物の輸出の拡大、次世代を担う経営感覚にすぐれた担い手の育成、中山間地域の農業所得の向上などに必要な対策を盛り込んでおります。
 さらに、生産資材及び農産物の流通、加工構造の改革の具体策や農業経営のセーフティーネットとなる収入保険制度の検討に当たり、公明党とも緊密に連携しつつ、年内を目途に改革プログラムを取りまとめます。
 農政新時代を実現し、夢や情熱を持って農業の未来に挑戦する方々を全力で応援してまいります。
 北朝鮮の核・ミサイル開発及び拉致問題についてお尋ねがありました。
 北朝鮮の核実験及び弾道ミサイルの発射は許しがたい暴挙であり、断じて容認できません。
 今回の核実験は、相次ぐ弾道ミサイル発射と相まって、新たな段階の脅威であり、これに対する対応も、全く異なるものでなければなりません。
 北朝鮮に対して、このまま核やミサイルの開発を続けていけば、ますます国際社会から孤立し、その将来を切り開くことができないということを理解させなければなりません。
 我が国は、非常任理事国として、各国による安保理決議の厳格な履行の確保及び新たな安保理決議の採択に向け、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、リーダーシップを発揮してまいります。北朝鮮への人、物資、資金の流れを厳しく規制する新たな安保理決議、そして我が国独自の措置により、断固たる対応をとっていく決意です。
 また、北朝鮮の核、ミサイルの脅威に対処するため、同盟国たる米国と緊密に連携するとともに、安全保障分野での日韓協力をより一層進めてまいります。
 拉致問題は安倍政権の最重要課題です。一日も早い全ての拉致被害者の帰国に向け、北朝鮮が真剣に対話に応じるよう、厳しい圧力をかけながら、対話と圧力、行動対行動の原則のもと、全力を尽くしてまいります。
 日中、日韓関係の改善に向けた取り組みについてお尋ねがありました。
 G20の際に、習近平主席と三回目の首脳会談を行い、戦略的互恵関係の考え方のもと、日中関係をさらに安定的に発展させていくことで合意いたしました。
 来年の日中国交正常化四十五周年や再来年の日中友好条約締結四十周年、二〇二〇年、二二年に両国で開催されるオリンピック・パラリンピックを見据えて、交流を進めていくことが重要であることを確認しました。
 東アジア・サミットの際には、朴槿恵大統領と首脳会談を行い、昨年末の慰安婦問題に関する合意を引き続き双方が誠実に実施していくことで一致し、未来志向の協力を進め、相互の信頼のもとに日韓新時代を築いていくことを確認しました。
 年内に我が国で開催する予定の日中韓サミットを弾みとして、中国、韓国との関係をさらに発展させていきたいと考えています。
 北方領土問題と日ロ関係についてお尋ねがありました。
 戦後七十年以上を経てもなお平和条約が締結されていない異常な状態を打開するため、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していく必要があります。
 プーチン大統領との間では、五月のソチにおける首脳会談で、これまで停滞してきた交渉に突破口を開くため、未来志向の考え方に立って、今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を精力的に進めていくことで一致いたしました。
 そして、今月のウラジオストクにて行った通算十四回目となる首脳会談では、二人で突っ込んだ議論を行い、交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような手応えを強く感じました。
 また、先般の首脳会談においては、八項目の協力プランの具体化を初めとする、経済や安全保障分野を含む日ロ協力の現状や今後の見通し等について、意見交換を行ったところです。
 これらの分野を含め、幅広い分野で日ロ関係を国益に資するような形で進めていく中で、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、引き続きロシア側との間で粘り強く交渉に取り組んでいく考えであります。
 十二月に予定する山口県での日ロ首脳会談では、こうした考えに基づき、静かな雰囲気の中で率直に議論し、平和条約締結交渉を前進させてまいります。
 東日本大震災からの復興の加速、福島の再生についてのお尋ねがありました。
 井上議員におかれては、公明党の東日本大震災復興加速化本部長として、累次にわたり与党提言の取りまとめを主導していただいており、改めて感謝申し上げたいと思います。
 必要なことは全てやり遂げるという強い決意のもと、切れ目のない被災者支援や住まいと町の復興、なりわいの再生を進めてまいります。
 特に、福島では、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策について、世界の英知を結集し、国が前面に立って、安全かつ着実に取り組むとともに、県民、国民の皆様の御理解を得られるよう、正確でわかりやすい情報発信を行ってまいります。
 帰還困難区域以外の区域については、来年三月までに避難指示を解除できるよう、環境整備を加速させてまいります。
 帰還困難区域についても、与党の提言を踏まえて八月末に決定した考え方をもとに、年末を目途に具体策を検討し、関係法案の次期通常国会への提出や、来年度予算等に向けて作業を進めてまいります。
 あわせて、御指摘のとおり、継続的な健康調査、リスクコミュニケーションの実施、風評被害対策等に取り組んでまいります。
 東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難な日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

発言情報

speech_id: 119205254X00320160928_004

発言者: 安倍晋三

speaker_id: 26067

日付: 2016-09-28

院: 衆議院

会議名: 本会議