醍醐聰の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)
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○参考人(醍醐聰君) 醍醐と申します。
こういう機会をいただきまして、ありがとうございます。
私用の資料は、パワーポイントバージョンで用意しました縦長でスライド二こまずつを入れました資料、もう一つ、横長で、私の名前をちょっと入れるのを忘れてしまったんですが、一番最初のページが表一、高額新医薬品データ一覧、このちょっと細かい数字の入った表、これが私の参考資料です。主にこの縦長のパワーポイントバージョンの資料で進めさせていただきます。
私が申し上げたいことは、大きく言いまして二つでございます。
もはや発効が見込めなくなったTPP協定、それでも国会で承認するということは、ただ無意味であるというにとどまらず、危険な行為だということをお話をしたいと。では、どこが危険なのか、協定案をスタートラインとして二国間協議に入っていくことがどうして危険なのか、そのことを少しお話ししたいと。その場合は、本日の主なテーマである医療、薬価問題を中心にお話をしたいと思っております。
TPP協議に参加入りを決めましたときに、全国の大学教員が非常に将来を危惧しまして、約八百五十人の様々な分野の大学教員、私のような名誉教授も含めまして、TPP参加交渉からの脱退を求めようという会をつくりました。今回、この二十八日に緊急声明を発表しました。今日のこの私のお話と関わるところを少し読み上げさせていただきます。死に体のTPP協定を我が国が国会で承認しようとするのは無意味であるというにとどまらず、危険な行為である。協定文書を国内で承認すれば、仮にTPPが発効に至らないとしても、日本はここまで譲歩する覚悟を固めたという不可逆的な国際公約と受け取られ、日米二国間協議の場で協議のスタートラインとされるおそれが多分にあると。この点を私は強調したいと思っております。
次ですが、これは実は大学教員の会だけが言ったのではなくて、安倍首相御自身が国会で実はおっしゃっているわけです。二十八日、そして昨日、実は私もテレビで見ましたが、この特別委員会の場で安倍首相はこういう答弁をされています。協定案が国会で承認されるならばということで、日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があるという国家の意思を示すことになると、こういうことを明言されております。解釈は全く逆ですけれども、将来の見通しについてはくしくも何か同じになっているような気がしました。
しかし、その解釈の違いなんですが、つまり、TPPバスの行き先が全く違うということですね。協定案はそれほど、安倍首相がおっしゃるほど胸を張れる内容なのか。バスの行き先は墓場から至福へといつ変わったのか。私は変わったとは思っておりません。むしろTPPの原理主義である例外なき関税撤廃に向かってひたすら走り続けるということだと思っております。そのようなTPP協定を国会が承認するということは、そもそもなぜ危険なのかというときに、その危険に警鐘を鳴らした国会決議に背いているということです。
これにつきまして、実は次のページの画像を見ていただきたいんですが、昨日、このTPPの特別委員会を私テレビで見ておりまして、その録画をカメラで撮ってちょっと貼り付けさせていただきました。
ある議員がこういうことをおっしゃっていました、他国に比べて多くの例外を確保したと。これはよく頑張ったというおっしゃり方でした。しかし、この他国に比べてというときに、他の国はほぼ一〇〇%関税を撤廃したのに対して、日本は全品目では九五%、農林水産品では八二%という数字をパネルで紹介されました。問題はこの八二%から外れたのが一体何なのだと、そのことを触れられなかったのを私は奇異に思いました。
一つスライドを戻りますが、重要五品目は五百九十四ラインです。そのうちの二八・五%、百七十品目で関税を撤廃しております。また、二百六十九品目、四五・三%で税率削減か新たな関税割当てをしております。このような内容抜きによくやったと、とても言えるものではないと思っております。
しかも、強調したいことは、この協定案がファイナルではないということです。これからがむしろどんどんとTPPバスが先へまっしぐらに走り続けると。そのことが協定案の、皆様方はもう言うまでもないことですが、附属書を御覧になればもう随所に協議協議という言葉が登場いたします。しかもまた、セーフガードにつきましても、牛肉は十六年目以降四年間連続で発効されなければ廃止、豚肉は十二年目で廃止と、軒並みこれは廃止です。
次のページの映像の下に移っていただきますが、安倍首相は再協議には応じないということを繰り返しおっしゃっています。私はこの言葉がすり替えだというふうに思うわけです。そもそもTPP協定案で明記されている、再協議ということではなくて協議協議です。つまり、継続協議を約束するということがTPP協定のこれが根幹だと思っているわけです。協議を継続するというふうに明記されていることを、あたかも任意でやったりやらなかったりできるかのような再協議というふうに呼び方を変えるということは、私はすり替えだと思います。
しかも、継続協議といいますけれども、逆戻りができるのかどうなのかです。
次のスライドを見ていただきましたら、片道切符のバスと書きましたが、例えば第二・四条一では、いずれの締約国も現行の関税を引き上げ、又は新たな関税を採用してはならないとなっているわけですから、もう逆戻りはできないということを、これはもう好き嫌いではなくて約束しているわけですね。これは安倍首相といえども、これを変えることはもう離脱しない限りはできないわけです。免れないわけですね。それから、同じ第二の四で漸進的に関税を撤廃するということも明記しています。また、三項では、関税の撤廃時期の繰上げについて検討する、そのための協議を継続するということを、これをもう明記しております。
さらに、附属書の二—D、日本の関税率表の中で九の(a)、オーストラリア、ニュージーランド又はアメリカ合衆国の要請に基づき、原産品の待遇についての約束にセーフガードも含むと、検討するため、この協定が効力を生じる日の後七年を経過する日以降に協議するとなっております。協議といいましても、どちらにも向けるんじゃなくて、関税を下げる撤廃の方向にひたすら走る協議だということは、もうこれは動かせない事実となっております。
この後は、少し医療をめぐって意見を述べさせていただきたいと思います。
協定の二の六、もうここの辺りはちょっと時間がございませんからやめますが、その中の第五条で、各締約国はこの附属書に関連する事項について協議を求める他の締約国による要請に好意的な考慮を行い、協議のための適当な機会を設けると。つまり、TPP協定全般じゃなくて、医療の分野でもこのような約束が明記されております。
また、その下ですけれども、これは日米両国間が交わした書簡というのが含まれております。今年の二月四日、日米が交わした書簡で、フロマン氏からこういう書簡が出されております。日本国及び合衆国は、附属書二十六のA五に規定する協議制度の枠組みの下で、附属書に関するあらゆる事項、この中には保健医療制度を含む、について協議する用意があることを確認する、本代表は、貴国政府がこの了解を共有することを確認されれば幸いでありますと書きましたところ、同じ日に、高鳥修一副大臣名で、本官は、更に、日本国政府がこの了解を共有していることを確認する光栄を有しますと述べております。
次へちょっと飛ばさせていただきます。
私が、このような協議に入ることを約束している日米の、つまりこれはTPPの中にその入口がリンクされているわけですね。ですから、この点でTPPと二国間協議はもう連動しているわけです。TPPを承認するということは、このような協議に入ることをもう約束するということになるわけです。あるいは、発効はしなくても、安倍首相の言葉を借りれば、それを国際公約として、胸を張ってこれを約束するということをおっしゃっているわけですね。
そのことがどういう懸念があるのかということですが、二〇一一年二月に発表されました日米経済調和対話の中の米国側関心事項ということがございます。その中で、先ほどからちょっと出ました、新薬創出加算を恒久化する、加算率の上限を廃止する、それから、オプジーボでこの後出てきます、市場拡大再算定ルールが企業の最も成功した製品の価値を損なわないよう、これを廃止若しくは改正すると、こういうことを米国は要望事項として出しております。
その市場拡大再算定ルールを前倒しで使って半額にしたのが、御承知のオプジーボです。詳しいことは、もう時間がございませんから触れられません。これが前倒ししたことで、オプジーボは緊急でしたが半分に下がったわけです。
ちなみに、これオプジーボだけではないということを申し上げたいので、この横長の表一、高額新医薬品のデータ一覧を御覧いただきたいと思います。オプジーボだけでは決してないと。例えば、一瓶当たりとか、あるいは一日薬価とか、十二週間とか、一日薬価でも万単位のものがこれはもうざらに出てまいります。このようなものが軒並みにあるわけですね。
これらをどうするのかというときに、予想よりも市場が拡大した、あるいは効能が拡大した、そのことをもって、それに市場が拡大したものに見合うだけ薬価を下げるという仕組みを、これはもう今後の薬価の高止まりを抑える決め手になると私は思うわけですが、アメリカは、それやると成功した医薬品の価値を損なうという言い方でそれを廃止を求めてきているわけです。これは物すごく脅威だと私は考えております。
それから、ちょっと時間もございませんから先へ飛びますけれども、私がそういうことを言うと必ず、それやると新薬開発のインセンティブを損なうんじゃないかという指摘がございます。しかし、私、会計学を専攻している者として、これにはどうしても一言、二言申し上げたいと思うわけです。
開発費の回収は薬価加算の理由にならないということを書きましたところですが、今回この準備をする過程で、二〇〇五年から一四年度の売上高営業利益、売上高を一〇〇としたときに営業利益として幾ら残るかということを、製造業の加重平均三・四%でした、それに対して東証一部上場二十七社の製薬企業は一六・三%、約五倍弱でした。大事なことは、この営業利益というのは試験研究費を費用として差し引いた後の数字だということを是非御理解いただきたいと思います。
次のページですが、今度は製薬企業十六社、これは製薬工業会が出しているデータですが、これの財政状態を二〇一〇年三月期から一六年三月期の六年間で見ますと、留保利益は七・五兆円から八・七兆円へ一・二兆円増えています。じゃ、留保利益、全部設備投資等に使ったのか、そうじゃないと。この間、現金預金は一・六兆円から二・七兆円へ、つまり留保利益が増えたのとほぼ同じ額だけ手元の現金預金として持っているわけです。開発費になぜ使わないんですか。もっと薬上げてほしいんだったら、そんなことを言う前にこれなぜ使わないんですか。こんな状態で、お金が足りない、値下げされたらインセンティブが損なわれますなんということが社会的に通用するのかということを是非とも申し上げたいわけです。
最後に、私が非常に感銘を持ったのは、二〇一三年七月四日、ちょっとこういう場で写真入りで紹介するのはいかがかと思ったんですが、自民党の長老の尾辻秀久議員が選挙の出陣式でこういう演説をされているのをユーチューブで聞きまして、メモを取りました。アメリカでは四千万人が医療保険に加入していない、WTOは世界の医療保険制度で文句なしに日本が一番と太鼓判を押した、何で十五番の国、アメリカから世界一の日本が偉そうに言われるんですかと。続きまして、私たちの宝をアメリカの保険会社のもうけの走狗にするためになくすなどという愚かなことを絶対にしてはいけない。私は、この言葉を聞いて本当に感銘を覚えました。
これを受けまして最後に申し上げたいのは、多国籍製薬資本の営利に国民皆保険制度を侵食されてよいのか。国民皆保険制度を財政面から揺るがさないためには、TPPバスから下車するのが唯一最善の道だと私は考えます。結局、今、国会議員の皆様、あるいは国民一人一人、有権者一人一人に問われているのは、尾辻さんがおっしゃる貴重な財産、宝物を未来の世代にしっかりと引き継ぐことができるのかどうなのか、その引き継ぐ責任が問われているというふうに私は考えまして、終わらせていただきます。