中村幹雄の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)
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○参考人(中村幹雄君) モーターレースF1で有名な鈴鹿サーキットの近くにあります鈴鹿医療科学大学の客員教授の中村です。
前職は、食品添加物メーカーで、ムラサキイモなどの天然着色料とか機能性食品の開発とか、海外の添加物の導入とか、そういったことをしてきました。各種加工食品に使用されています甘味料、スクラロースってあるんですが、この指定はその成果の一つだと思っています。また、東北大震災の復興では、セシウムを吸収しにくいムラサキイモの試験栽培を提案させていただきました。
本日は、TPPのISDSが日本の食品企業のリスクを高める、リスク回避のためには、消費者サイドの反対や心配があっても基準や手続に関する規制を緩和せざるを得ない、更なる規制緩和は消費者の反発を招き、日本の食品関係事業者に良い結果が得られるとは思えないということを、遺伝子組換え食品、添加物を例に取って御説明します。
なお、遺伝子組換え技術につきましては、ゲノム編集など新技術も登場している今日、遺伝子組換え技術を使用したかどうかではなく、個々の事案に応じた安全性の判断が科学的になされるべきと、そういう立場であります。
第一に、食品衛生法違反事例の件です。
資料一の一の、お手元にあります一の一の囲みにありますように、本年九月十六日、厚生労働省は、食品衛生法第十一条第一項に基づく組換えDNA技術応用食品及び食品添加物の安全性審査の手続第三条に定める安全性審査を経ていなかった遺伝子組換え微生物を利用した添加物を製造工程に使用した植物性原料油脂が確認されたことから、当該油脂の輸入者に対し、輸入、販売の取りやめ等を指示するとともに、当該添加物の製造者には、安全性審査のために必要なデータの提出等を指示したとのニュースリリースを行っています。
その厚生労働省の裏のページに、油脂の製造者はカーギルリミテッド、油脂の輸入者は株式会社カーギルジャパンと三菱商事株式会社、当該添加物である酵素の販売者はノボザイムズASとDSMフードスペシャリティーズUSAとされています。日本が輸入した米国産の油脂の製造にヨーロッパで開発された遺伝子組換え酵素が使用されたわけです。グローバルに物と知財が動く典型的な例です。
お手元の資料一の二は、厚生労働省から、資料一、二と言っているのはパワーポイントの後ろに付けています資料です、厚生労働省から斉藤和子衆議院議員事務所への回答です。十月二十六日に頂戴しました。1)の十行目に、三件の違反事例が確認されたとあります。
それは、まず、資料一の三に記載されている事案です。五年前の平成二十三年、韓国CJ社のインドネシア工場で生産された調味料、5’イノシン酸とグアニル酸は、遺伝子組換え技術を使用しているが手続を経ていなかったということで、本件九月の事案と全く同様です。その資料の裏のページに十社の名称が記載されています。いずれも食品業界では名の通った企業です。今回の事案の株式会社カーギルジャパンも入っています。
資料一の四は、BASFジャパン株式会社が輸入したリボフラビン、ビタミンB2ですが、それとキシラナーゼです。資料一の五は、協和発酵バイオが製造したLフェニルアラニンです。これらを合わせて、資料一の二の1)の三に該当します。
次のパワーポイントのように、五年前の事案は新聞にも報道され、制度の問題にも焦点が当たりました。昨今、余り注目されていないように思います。
この未承認遺伝子組換え食品、添加物の問題については、二つのポイントがあります。一つは、資料一の二の2)で、厚生労働省は、食品衛生法の周知徹底と監視の強化をうたっていますが、3)で、どのような対応が可能か検討中であるとしているように、具体的な方策はないようです。二つ目の問題は後ほど御説明します。
次のパワーポイントは、国立医薬品食品衛生研究所からいただいたメールです。検査法の開発は、厚生労働省からの依頼で国立医薬品食品衛生研究所が作成されているようです。強化するというのであれば、同研究所の添加物部や食品部の強化、人、物、お金ですが、根本的な施策が必要です。米国の食品医薬品局、FDAに比べれば桁違いに脆弱です。
三十三年前、厚生労働省の食品化学課長が編集された「食品化学」という本に、当課は全員で十一人、同じ仕事をFDAは三百五十人で、カナダは百五十人で構成されている、日本の役所はもう言いようがないくらい省エネルギー、それでも行政改革とかで、もっと役人を減らせが世論の合い言葉、中にいる人間は、日本はどうかしているんじゃないかと思う次第と書かれています。現在も全く変わらないのではないかと思います。
輸入食品の安全性確保が国会で論議され、全国の検疫所の職員が約四百名で、検査できないので少しは増員すると伺いました。モニタリング検査で食品衛生法違反とされた食品を国民は食べているというお話も出ていました。厚生労働省の所管である全国の検疫所は、輸入食品の表示については全くチェックされていないとのことです。食の安全のために、人や予算の確保は、もう行政マターではなく、国会が主導権を取ってやっていただかなければ解決しないところまで来ているのではないでしょうか。
第二に、遺伝子組換え食品、添加物についてお話しします。
二種類あります。資料二の一です。安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品、添加物、現在二十四品目です。資料二の二の安全性審査の手続を経た遺伝子組換え食品、添加物、現在七十三品目です。前者は官報に告示されますが、後者は告示されず、厚生労働省のホームページに掲載されます。資料二の三は、審査継続中の遺伝子組換え食品、添加物です。この中に、九月の食品衛生法違反の二つの添加物が入っています。まさに泥縄です。
資料二の二の一番目の品目、ジェランガム、PDG1株を事例として御説明します。
ジェランガムは、熱に強いゲルを作りますが、寒天のように透明ではありません。そこで、パワーポイントのように、濁りの原因である3ヒドロキシ酪酸重合体の生成に関与する酵素たんぱく質をコードする遺伝子を欠失された菌株を作成します。
次のパワーポイントに模式図を書きました。二回の相同組換えを行います。不要な遺伝子を欠失させた後、選抜するために組み込んだカナマイシン耐性マーカーやスークロース耐性マーカーを欠失させることで安全性を確保します。
次のパワーポイントは、厚生労働省の基準の一部です。こうした資料を取りそろえることが必須です。
次のパワーポイントは、厚生労働省に提出した資料の一部です。最初の行のサザンプロット分析データやPCRによる確認データは、本品を開発したCPケルコ社が所有する資料です。追加の安全性試験は日本側で行いました。
資料二の二の八番目のキサンタンガム、NAW1株も私たちの仕事ですが、十九番目のジェランガム、GBAD1株で御説明します。これは、乳含有食品の異臭であるパラクレゾールの生成に関与する酵素であるアリルスルファターゼ及びベータグルクロニダーゼをコードする遺伝子を不活化させたものです。これも相同組換えを二回行っています。
厚生労働省への提出データは、お手元の資料三の遺伝子組換え食品評価書ジェランガムK3B646を御覧ください。食品安全委員会の評価書です。この評価書の最終ページに引用文献が示されています。数か所にCPケルコ社と明記されています。食品安全委員会の健康影響評価には、CPケルコ社のデータが不可欠でした。
PDG1株でも、GBAD1株でも、CPケルコ社のサンディエゴの本社、親会社であるモンサント社のシカゴの本社に交渉に行ったことを思い出します。互恵に基づく対等平等な交渉です。こんなところにもしISDSがあったら、頭の中でISDSがちらちらしたら、大変交渉しづらかったことでしょう。
多くの日本企業が遺伝子組換え技術の商業化に出遅れました。必然的に輸入することになります。輸入者は、消費者に安心していただけるように、自社でデータをそろえたり、開発者のデータを入手したり、それ相当の役割を果たすことが必要です。そこには相当のコストも掛かります。右から左という単なる輸入者であってはなりません。しかし、食品衛生法違反事件が繰り返された事実は、そうした役割を果たしていない企業が存在するという証左ではないでしょうか。
第三に、TPPの影響です。
日本の輸入者と相手国の開発者は、食品衛生法に基づく手続が円滑にできることによって事業が発展するウイン・ウインの関係にあります。しかし、TPP・ISDSによってそのバランスが大きく崩れます。
次のパワーポイントに、私たちの事例を使った問題を整理してみました。
海外からの認可の要求や圧力が強くなる一方で、資料やデータの提供などの協力が得られにくくなるでしょう。その結果、遺伝子組換え技術を使っている事実を把握せずに輸入することになりかねません。それは食品の大規模な回収につながることになります。こうしたリスクを回避するために、TPPに参加するのであればISDSを撤廃されることが必須条件です。
我が国は、問題があれば規制を緩和する、従来違反であったことが今では違反にならないという規制緩和を繰り返してきました。別のテーマですが、五、六年前、ベトナムから輸入されたエビの食品衛生法違反が続出しました。除草剤トリフルラリンの残留です。東北大震災の直前の三月六日、ベトナム政府は残留基準の緩和を日本に要請しました。その後の基準緩和によって違反はなくなりました。なぜなら、五百倍も緩和したわけですから。
二年前の平成二十六年六月二十七日、厚生労働省は、最終的に宿主に導入されたDNAが当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のみである場合、いわゆるセルフクローニングです、それに、組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合、いわゆるナチュラルオカレンスです、この二つの場合については、食品安全委員会の評価を受けるかどうかは企業が判断できるように緩和しました。
資料二の二の六十番までは、セルフクローニングやナチュラルオカレンスがたくさん書かれています。しかし、六十一番目以降は、六十八番目のカルボキシペプチダーゼがセルフクローニングとされるのみです。企業の判断に委ねられたからでしょう。この規制緩和で、セルフクローニングやナチュラルオカレンスについては全く表に出ない可能性が高まりました。この表は国民に情報を提供する役割を果たせなくなりました。国民に情報を提供しない、これが厚生労働省の姿ではありませんか。
さきに述べた九月の食品衛生法違反は、酵素に関係します。食品安全委員会添加物専門調査会で、九月、十月、十一月と三回にわたって慎重に審議されています。新たな酵素の基準が、食の安全の確保に逆行するものでは困ります。データが得られないからしようがない、役所が海の向こうから訴えられたら困るとか、TPPの地ならしにならないことを願っています。日本の制度変更は必要とはならないと説明されていますので、しっかりとそこを貫いていただきたいと思います。
次に、ビタミンについて少しお話しします。
ビタミンは、AもB2もCもDもEも日本では一切生産されていません。主な輸入先は、私の推定ですけれども、パワーポイントに示しました。ペットボトルに入った緑茶飲料にはビタミンCは必須で、七千から一万トン輸入されています。世界で生産されているビタミンCの九割は中国で生産されています。中国のビタミンCの主な製法は、パワーポイントに書きました二段階発酵法で、中国の教科書に載っています。生産性を高めるために遺伝子組換え操作がなされたとうわさされたことがありますが、確認するすべはありません。遺伝子組換えかどうかはさておき、国民の健康にとって必須のビタミン類については、必要最小量、国内で生産されるべきものと思っています。
さらに、消費者が求める情報に応えるために、事業者が必要な情報を持つことが不可欠です。資料、最後の四です。裏のページの下です。斉藤和子衆議院議員事務所からいただきました。十月二十八日付けの消費者庁への質問とその回答です。
14)遺伝子組換え技術を使った販売の用に供する食品添加物の取扱いについて、遺伝子組換え技術を使った食品添加物の販売に当たっては、その旨を加工食品の製造者にラベルあるいは伝票を用いて伝達するように制度を改める考えはないかに対し、遺伝子組換え食品の表示については、加工後に組み換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質を検出できる品目を表示品目としているが、遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物である酵素は、主に加工助剤として使用され、表示が免除されることから、これらの情報を伝達する必要はないと考えていると、こう言っています。
この回答には事実誤認がありますが、それはさておき、BツーCの情報伝達が不要であればBツーBの情報伝達も不要との考えは一理あるかのように思いますが、BツーCの情報伝達が不要であっても、食品事業者の選択、原料確認のためには必要な情報だと思います。食品事業者の役割を全く無視していると思えてなりません。
ISDSという鎖につながれてTPPというバスに乗ってはいけないと思います。次期政権で極めて厳しい交渉となるであろう今後の日米二国間協議についても、一国民として注視していきたいと、こう申し上げて、締めくくらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。