根本勝則の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会公聴会)

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○公述人(根本勝則君) 経団連常務理事の根本でございます。
 本日、このように意見陳述の機会を与えていただきましたことに、まずもって感謝を申し上げます。
 TPPをめぐりましては各国に様々な動きがございますけれども、こうした時期であるからこそ日本がリーダーシップを取るべきであるという立場から意見を申し述べさせていただきます。
 経団連では、昨年の一月、二〇三〇年までに日本が目指すべき国家像を描きました将来ビジョン、「豊かで活力ある日本」の再生、これを公表したところでございます。天然資源に乏しく、少子化、高齢化による労働人口の減少に直面する我が国でございますけれども、この再生の大きな鍵を握っているのはイノベーションとグローバリゼーションであるというのが私どものビジョンが打ち出しているメッセージでございます。
 いかにしてグローバル化を進め、海外の活力、成長力を取り込むのか。ビジョンでは、二〇二〇年までにEPAの相手国が我が国の貿易総額に占める割合を八〇%程度にまで引き上げ、二〇三〇年までにそうしたEPAの成果を取り込んだ高水準の多角的自由貿易投資体制を確立する、こうした目標を掲げたところでございます。
 そうした目標を達成するために直ちに取り組むべき課題の一つとして掲げましたのが、TPP協定の早期実現でございました。経団連は、TPPを始めとする経済連携協定の推進を、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制の維持強化と並びます貿易・投資自由化のための車の両輪と考えて取り組んでまいりました。現実には、WTOドーハ・ラウンドがなかなか答えを出せない中にありまして、各国ともEPAのネットワークの拡大に力を入れておりまして、我が国が国際競争でこれ以上不利な立場に置かれないためにはEPAの一層の推進が急務と考えるところでございます。
 しかしながら、これまでに我が国が締結いたしましたEPAの相手国が貿易総額に占める割合、これは約二三%にとどまっているところでございます。自動車、エレクトロニクスといった基幹産業において我が国企業と激しい競争を行っている韓国の貿易総額に占めるEPA相手国の割合は六七%であり、大きな差がございます。TPP協定が実現すれば、これが約四〇%となり、約三〇%のEU、三八%の中国を超え、米国の四七%に近づくことになります。
 我が国産業の空洞化を防ぎ、投資先としての魅力を高め、本格的かつ持続的な成長軌道に乗せるために不可欠であることがお分かりいただけるのではないかというふうに考えるところでございます。TPP協定の速やかな承認、発効への努力を引き続きお願いするゆえんでございます。
 経団連では、政府部内でTPP交渉への参加の検討が始まりました二〇一〇年から、一貫して協定の早期実現を強く働きかけてまいりました。二〇一〇年三月に米国、豪州を含む八か国が交渉を開始するに及んで、その直後の六月には交渉参加を経団連として提言もさせていただいているところでございます。結局、我が国の交渉参加は二〇一三年七月まで待たなければなりませんでしたけれども、この間、様々な誤解や根拠のない懸念が広まりました。しかしながら、交渉参加後は広く情報提供を行う機会を設けるなど、政府、民間双方において努力した結果、そうした誤解や懸念はかなり払拭できたのではないかというふうに考えているところでございます。
 我が国の交渉参加から昨年十月の大筋合意までの二年余り、経団連では、協定に盛り込むべき具体的な要望を政府に提出をさせていただく一方、内外の経済団体と連携をいたしまして共同提言を取りまとめ、各国政府に働きかける等の活動を行ってまいったところでございます。
 また、交渉会合が開催される現地に代表団を派遣いたしまして、交渉の推進を働きかけてまいりました。その一環として、交渉が大詰めを迎えました昨年の夏から秋にかけての閣僚会合の際には、経団連副会長を始め幹部が現地入りし、各国の経済界とも連携しながら歴史的な合意を後押ししてきたと考えております。
 経済界は本当にTPP協定の実現を望んでいるのか、余りそういう声を聞かないという御批判があるとすれば、専ら私どものPR不足が原因でありまして、この機会に改めて経済界から見た協定の意義について続いて御説明をさせていただきたいと存じます。
 協定の意義は、大きく分けて経済的な意義と戦略的な意義の二つがあると考えております。
 まず、経済的な意義についてでございますが、三点指摘をさせていただきたいと存じます。
 第一に、世界のGDPの約四〇%、八億人の自由で公正かつ巨大な市場が誕生するということでございます。この市場の活力を取り込むことで、政府、世界銀行、民間の研究所、それぞれの試算によりますと、我が国のGDPは約二・五%から二・七%押し上げられるという試算がございます。
 第二に、成長著しいアジア太平洋地域に高度なバリューチェーンを構築することを容易にする制度インフラ、これを獲得できるということでございます。
 例えば、基幹部品を我が国で生産し、それを東南アジアにおいて東アジアで生産された部品と合わせて組立てを行い、完成品を米国で販売するといった水平分業がビジネスの現場では進んでいるところでございます。TPP協定では、こうした複数の国にまたがって作られる製品については、累積原産地規則の下で、言わばメード・イン・TPPとして認定することによって、関税の引下げ、撤廃のメリットを享受することができるようになります。その結果、高付加価値の基幹部品について日本国内の工場での生産を維持することができますし、日本にとどまりながらグローバル化のメリットを享受することも可能となりますので、日本国内への投資を促し、雇用を生み出すことにもつながると考えております。実際に会員企業からは、TPP協定は、新技術、新製品の開発を担う国内マザー工場の維持強化、先端技術の海外流出の防止、国内雇用の維持につながるとの期待を耳にしているところでございます。
 第三に、TPPは貿易や投資に関する広範かつ高度な水準のグローバルなルール作りをリードする二十一世紀型の画期的な協定であるというところでございます。
 例えば、電子商取引に関するチャプターでは、国境を越える情報の移転の確保、サーバーなどコンピューター関連設備の自国設置を求めることの禁止などが盛り込まれております。これによりまして、映画やゲームなどのコンテンツをインターネットで提供するサービスなどを行いやすくなるものと考えているところでございます。こうした時代に即したルールがTPP協定に盛り込まれたことによりまして、他のEPA交渉やサービス貿易に関する協定交渉にも既に波及効果をもたらしていると感じておりまして、TPP協定が実現すればグローバルなルール作りが更に加速するということが期待できると考えます。
 また、新興国の一部においてはコンピューター関連設備の自国への設置を要求する国内法を制定する動きが見られますが、これに対して、最近も日米欧、豪州、カナダなど、四十以上の経済団体が結束して反対の声を上げております。そうした結束を容易にしている背景にも、TPP協定における合意があるものというふうに感じているところでございます。
 以上申し上げましたような経済的な意義を有するTPP協定を積極的に活用し我が国経済を成長軌道に乗せることこそ、成長戦略の要であるというふうに考えます。そのため、経団連では、大企業のみならず、中小企業、農業生産法人、労働組合といった多様な関係者の御参加を得まして、TPP協定の活用を促すシンポジウムを開催するなどの取組も行ってきたところでございます。また、TPP協定によりましてアジア太平洋地域に自由で開かれた予見可能性の高い経済圏を実現することは、昨今の反グローバル化や保護主義の伝播を断ち切るためにも必要であるというふうに考えております。
 次に、TPP協定の戦略的な意義について申し述べます。
 経団連としては、TPP協定を、自由、民主主義、法の支配、市場経済といった共通の価値観、原則に基づく経済秩序づくりの一環であると捉えております。また、アジア太平洋地域の安全保障において重要な役割を果たしている米国、日本、豪州を含む経済連携のネットワークがつくられることは、この地域の安定と繁栄にも大きく貢献するものと考えております。
 ベトナムのグエン・クオック・クオン大使は、経団連の機関誌への寄稿の中で、TPPへの参加により太平洋の両側の国々との連携が深まり、この地域の重要なパートナーとベトナムとの長期的なパートナーシップが構築され、利益を共有できるようになると戦略的な意義を語っておられるところでございます。
 発言の最後に、中小企業と農業にも一言触れさせていただきたいと存じます。
 先ほど申し上げましたTPP協定の経済的な意義は、大企業ばかりでなく、中小企業にも当てはまるものと考えております。実際、経団連のシンポジウムに参加され、既にベトナムで事業を行っておられる中小企業の方からは、TPP協定は中小企業にとってフォローの風であるという御発言をいただきました。先ほど申し上げました経済的な意義のほか、税関手続等の貿易円滑化のための規定は、中小企業の輸出拡大に貢献するものと考えているところでございます。
 農業につきましては、粘り強い交渉の結果、日本からの農産品の輸出には関税が掛からなくなる一方、我が国は二割弱の農産品について関税を維持することとなり、我が国の事情を踏まえた結果になったのではないかというふうに考えております。今から力を注ぐべきは輸出と海外展開の強化であるというふうに考えます。この点、経団連といたしましては、去る九月に提言を取りまとめ、公表しておりますけれども、今後は、農業界と経済界との連携において、輸出、海外展開にもつながるプロジェクトの創設、創生、形成にも取り組んでいきたいと考えているところでございます。
 今週初め、トランプ次期大統領は、米国民向けのビデオメッセージで、大統領就任初日のTPP協定からの離脱に言及をされたと聞いております。残念と言わざるを得ませんけれども、この点につきましては、余り予断を持たず、まずは我が国を含めた参加各国が国内手続を進めていくことが将来への道筋を開く上で重要であると考えます。経済界としても、TPPの経済的な意義のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定に重要な役割を果たすという戦略的な意義を機会あるごとに訴えてまいりたいと思います。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 根本勝則

speaker_id: 34099

日付: 2016-11-25

院: 参議院

会議名: 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会公聴会