2016-11-25
参議院
住江憲勇
環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会公聴会
住江憲勇の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会公聴会)
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○公述人(住江憲勇君) まず、こういう陳述の機会を与えていただいたことに厚く感謝を申し上げます。
私は、全国保険医団体連合会と申しまして、地域の第一線の医療機関で働く保険医の医科、歯科合わせて十万五千名を擁する団体の会長としてやらせていただいております。そういう立場で意見陳述させていただきます。
衆議院での強行採決に抗議し、今国会での承認、批准を行わないことを求めます。
政府・与党は、アメリカ大統領選挙の結果など情勢の変化にもかかわらず、また、徹底審議を求める多くの国民の声を無視してTPP協定の承認案及び関連法案の衆議院での採決を強行し、参議院に送付されました。これは、情報開示と国民的な議論を求めた国会決議にも反するものでございます。私たちは、TPP協定内容の十分な開示と臨時国会での徹底的な審議がなされないまま今国会で承認、批准されることは断じて許されないものと考えております。協定上、今以上の情報開示は困難というならば、そもそもそんな貿易交渉は二十一世紀の今のこの世界では認められることはないと思います。
そもそも貿易交渉の在り方とは、相手国と相互に事情、実情を真摯にしんしゃくし合い、対等、平等、互恵関係を構築することにあると思っております。TPPのように、ただただ投資、多国籍企業が徹底的に保護され、相手国に徹底的に市場開放を求め、投資、多国籍企業に徹底的に有利な紛争解決規定を求める、こんな強者の論理、資本の論理むき出しのTPPでは、今、全世界で反省の極みにある、前世紀までの列強による世界支配によって今のテロのような報復の連鎖をつくっているという、そういう反省に対する冒涜であり、何よりも報復の連鎖の再生産そのものであるということを銘記せねばならないと思っております。
公的医療保険制度を切り崩し、国民の生活と健康を損なうという危険がございます。
私たちは、政府が明らかにしている内容だけから見ても、TPP協定は我が国の公的医療保険制度を切り崩し、国民の生活と健康を損なうものであると考えております。地域医療に従事する医師、歯科医師の団体として、下記の点からTPP協定の国会承認を行わないよう強く求めるところでございます。
一つ、新薬の高止まりが続き、医療保険財政を圧迫することでございます。
政府は公的医療保険制度そのものの変更はないとしております。しかし、医薬品については制度的事項で取り扱われ、透明性や手続の公正の名の下に、公的医療保険制度の一部である医薬品の保険適用や公定価格に関する我が国の決定プロセスに多国籍企業が利害関係者として影響力を及ぼすこと、すなわち日本の薬事行政への介入が懸念されます。
また、特許期間の延長やバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、そして特許リンケージといった多国籍企業に有利なルールで、現状でも諸外国と比べて高い日本の薬価が構造的に維持され、そしてまた、特許延長はすなわちジェネリック医薬品の開発を限りなく遅延させることになります。
ちょっとここで七ページの次の図を見ていただきたいと思います、私の資料の。
これは、私ども全国保険医団体連合会は二十年来、日本の薬価、国際的に見て高薬価ということを盛んに警鐘してまいりました。上の段の棒グラフは、二〇一〇年に再度、国際比較調査しました。そうすると、イギリスを一〇〇としますと、日本は二二二、米国は二八九という、そういうデータが出ました。これを厚労省に提示しますと、厚労省、本当にほんまかいなということで、再度厚労省として調査した図が下の段です。そうしますと、イギリス一〇〇としますと、日本は一九七、米国三五二と、そういうデータが出ました。米国については私どもの調査よりも高く出ました。そういう構造がございます。
こうした仕組みにより、安価で有効な医薬品が手に入りにくくなり、患者、国民の命や健康が危険、危機にさらされるだけでなく、我が国の医療保険財政が圧迫されることになります。
ここで直近の、皆さん御承知のように、オプジーボの問題をちょっと紹介したいと思います。
これは、薬価は百ミリグラム七十三万円で、六十キログラムの人は一回投与で百三十万円、一年間で三千五百万円掛かる、そういう高薬価です。これは最初、悪性黒色腫という腫瘍に対する症例で適応されまして、大体四百七十症例、三十一億円程度の経済規模とされてそういう薬価が付いたんですけれども、この薬価、私どもの調査で、イギリスを一〇〇とすると、アメリカは二〇〇、日本は五〇〇という事実が判明しました。これは最後から二枚目のページのところにあります。それを見ていただきたいと思います。
私ども保団連として厚労省と交渉し、厚労省としては二五%引下げで幕引きを狙ったと思うんですけれども、経済財政諮問会議でも保団連の私どものデータを取り上げられ、十一月十六日に中医協総会で五〇%引下げが決定されました、市場拡大再算定ルールというのが適用されて。
これ、TPP下であればどうでしょうか。直ちにISDS条項の発動、そういう事態になったかもしれないんです。ですから、五〇%引下げなんてとんでもないと。従来、日米経済、いろんな会合、最近では、対話、調和、何かややこしい名前の会議ですけれども、そういうところでも盛んにUSTRがこの市場拡大再算定ルールを撤廃せよと、要求がもう毎年のように来ていたわけでございます。そういう事実がございます。
そして次に、ISDS条項導入で医療の非営利性が脅かされる懸念がございます。
そもそもISDS条項とは、投資企業が法的整備のない相手国でどんな損害を被るかも分からないということで一定の保障を担保するという前時代的な条項でございまして、TPP十二か国では、全て法治国家でございまして、こんな条項設定する必要が全然ないわけです。こんな前時代的な条項を持ち出すこと自体、強者の論理、資本の論理そのものであると言わざるを得ないです。ISDSを克服すること自体、今まさに人類の英知が問われているんではないかと思っております。
現在、構造改革特区において、自由診療については株式会社による医療機関経営が認められております。保険診療を取り扱うには保険医療機関の指定を受ける必要がありますが、国家戦略特区において外国の株式会社が医療機関開設の許可を得た後、当該医療機関の保険医療機関としての指定を求めてISDS条項の発動を求めるおそれがございます。そうなれば、営利企業の医療への参入を招くことになり、命と健康は金もうけの対象にしないとの趣旨で現在も堅持されている医療の非営利原則が崩されることになってしまいます。
そのほかにも、ネガティブリスト方式、きっちり営利企業参入禁止という項目が医療の項目の中に書き込まれているかどうか、これがもう甚だ不明瞭であります。
そして、もう一つ重要なことは、SPS条項、衛生植物検疫のことですけれども、危険性の評価は徹底的に科学的根拠に基づくとされております。ですから、国民の命、健康にとってこれはちょっとやばい、そういうおそれがあるとき、予防的に事前規制を掛けることが不可能になります。そういう危険性がございます。
そして最後に、助け合いの共済制度に民間保険会社と同等の規制が掛けられるおそれがございます。
当会は、会員が安心して診療に従事し、地域住民の命と健康を守る役割を果たせるよう、助け合いの制度として保険医休業保障制度を運営しております。一九七〇年の発足以来、多くの加入者の生活と医院経営を支えてまいってきました。ところが、TPP協定の金融サービスでは全ての保険サービスが対象となっております。米国保険業界は、長年、共済が事業拡大の妨げになっているとして、各団体が行っている共済制度などにも民間保険会社と同等の規制を課するよう求めており、TPPの今後の協議においてこの圧力が強まることが十分想定されます。そういう危険があります。
最後に、国民の命、健康、暮らしに関わる医療を市場原理に委ねて、国民一人一人自己責任で手当てせよでは、貧困と格差が付きまとう資本主義社会では一人一人に行き渡りようがございません。だからこそ所得再分配として、社会保障制度としての公的医療保険制度がございます。そして、医師、医学者としても、今日の最新最善の医学、医療をあまねく国民一人一人が享受できるようにすることこそ医の倫理と私どもは考えております。これを全うできるのが公的医療保険制度下こそでございます。この公的医療保険制度を瓦解させる、そういう危険大であるTPPには断固反対を表明させていただきます。
以上です。