西沢和彦の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(西沢和彦君) 日本総合研究所の西沢です。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
私は手元資料はありませんので、口頭でお話ししたいと思います。
大きく三つ申し上げまして、一つはマクロ経済スライドについてです。
私、こういう研究者の生活を二十年近くやっていますけれども、非常にがっかりしたことが去年の二月にありまして、それは、与党の社会保障特命委員会の年金PTに厚労省から名目下限措置を維持するというペーパーが出たんですよね、マクロ経済スライドに関して。それまでは、厚労省も我々研究者も、名目下限措置を廃止した方がマクロ経済スライドがより早期に終わって将来世代の負担が軽くなる、将来世代のことを思えば、足下の年金受給者の方には苦しいけれども、名目下限措置を外しておいて早くマクロ経済スライドを終わらせようというのが、厚労省の方も恐らく、私たち研究者の多くもかな、と思っていたんですね。ところが、二〇一五年二月の年金PTのペーパーには名目下限措置を維持するというふうに明記してありまして、非常にがっかりした記憶があります。これで年金もつのかなと。
で、今回の法案のキャリーオーバーという形に至ったわけですけれども、考えてみますと、確かに何にもしないよりいい。ですから、私は十分ではないけれども必要だと思っています。
次の改革も必要だと思っています。十分ではない。例えば、キャリーオーバーを考えますと、賃金や物価が上がったときにそれまでたまってきたスライド調整率をどんと引こうといったときに、例えば三%、四%物価が上がって、しかもその原因が輸入価格の上昇であったり消費税引上げだったりしたときに、物価が上がって年金据置きですよと、なぜならこれキャリーオーバーですからといったときに、例えば地元の高齢者の方が、キャリーオーバーって何、となりますよね。生活も大きなダメージを受けるわけです。
とすると、本当は将来世代のためには年金を抑制しなくちゃいけないけれども、じゃ、ちょっとこれ上げておかないとな、選挙も近いし、となって上げてしまうと、今度は年金財政が傷んで将来世代が痛みを伴ってしまうわけであって、それよりも、毎年こつこつと少しずつ嫌でも給付水準を抑制して、名目下限措置を外しておいて給付水準を抑制して早く終わらせた方がいいに決まっているんですよね。でも、それがなぜかキャリーオーバーになってしまっているわけであって、ここは本当はよくよくそれでいいのかといったことを見ておきませんと、本当に将来世代にとって禍根を私、残すと思っています。
ですから、今回、キャリーオーバーの法案、私は必要だと思います、十分ではないけれども。ですから、十分にするためには、もう財政検証、次、すぐ迫ってきていますので、そこで、キャリーオーバーでよかったのかじゃなくて、名目下限措置を外した方が本当はよかったよねという、名目下限措置を外すという選択肢を次に残すことが必要だと思います。
今回の法案のルールの変更の二つ目で、賃金と物価を丈比べして、今、既裁定年金は物価でスライドしますけど、賃金はもっと下がっているときがありますので、丈比べして賃金が下がっていればそれに合わせるというのは、私、年金数理上やむを得ないと思うんですね。ですから、これは年金カット法案と呼ぶべきでは、まあ実際カットなんですけれども、年金カット法案と呼んでそこから表面的な理解、誤解を得るべきではないですよね。
数理上必要、数理上。でも、今申し上げたマクロ経済スライドやこの丈比べの案って、政府からしてみると、あるいは年金財政からしてみますと、年金財政健全化のためにはやむを得ない。確かに支払を減らせば年金財政は楽になりますけれども、支払を減らすということは、その支払額を年金受給者の数で割りますと一人一人の年金は減っていくことになりますよね。これは生活者の立場からしてみると非常に困ることになるわけです。
ですから、山崎先生がもう理論的に全部理路整然と御説明されていましたけど、十分性とこの財政の持続可能性のせめぎ合いの中で我々悩まないといけないわけであって、年金生活者の生活、これで大丈夫なのかなという検討が、今回この結論は非常に重要だと、受け入れるべきだと思いますけれども、プロセスについては、この賃金と物価の丈比べについて財政検証で検証も行われていませんし、非常にテクニカルでありながら十分な説明をなされていないという、ここに至るプロセスはやはりちょっと問題があったかなと私思います。
以上申し上げたことと今度相反するようですけれども、やっぱり今回年金を削減すべきだと、スピード感を持って削減すべきだと私申し上げましたが、他方で、年金を一階と二階に分けたときに、一階の方が財政検証では削られ過ぎるんですね、一階の基礎年金が。今、満額で六万四、五千円だと思いますけれども、財政検証では厚生年金のマクロ経済スライド適用はもう二〇二〇年前には終わってしまうと。ところが、基礎年金の方は二〇四〇年、五〇年まで掛かって延々と続いていくわけです。ですから、新規裁定年金の給付水準も下がっていきますし、既裁定の方も、この間、物価スライドが全く保障されないわけですから、購買力がどんどんどんどん低下していくわけです。
基礎年金には、山崎先生からお話ありましたように、本来被用者でありながら国民年金にしか加入していない、できていなかった人たちも入っているわけですから、ここは非常に深刻な問題であって、マクロ経済スライドが良くないのは、特に基礎年金を傷めてしまうというところだと思います、生活者から見てみますと。ですから、基礎年金の底上げが本来必要であり、今回の財政検証に至る過程の中においても、厚労省の年金部会の中では加入期間を延長してより多くの基礎年金をもらえるようにしようではないかといった案が出ていましたり、いろいろしたんですけれども、それも結局結実せずにここに至ってしまいました。
ですので、この基礎年金の劣化、低下をどうするかというところを本当はもっと議論しないといけないわけでありますし、また、丈比べの案についていいますと、結局、元々は、丈比べというよりも、二〇〇四年の年金改正でマクロ経済スライドを入れたことによって既裁定の年金の物価スライドが保障されなくなりましたから、年金の金科玉条であった購買力維持がもうそれで残念ながら捨て去られてしまったんですよね。年金って、購買力を維持しますよというのが公的年金のすばらしさだったわけですけれども、やはり少子高齢化が進む中でマクロ経済スライドを適用しなければいけないということで、物価スライドをそこで捨ててしまったわけです。
やっぱり、当時の二〇〇四年の中の議論では、既裁定については物価スライドを維持してもいいんじゃないのかなと、ここはマクロ経済スライドしては駄目かなというせめぎ合いもあったように聞いています。そういったせめぎ合いが本来ずっと議論されるべきですし、今回丈比べの案が出ましたけれども、丈比べはそれを更にもっと強化するものですから、そういった議論があってしかるべきかなと。
基礎年金って、御案内のとおり、基礎年金法という法律がありませんで、国民年金法の改正で基礎年金があるかのようになっていますけれども、本当は、基礎年金ってどうあるべき、新規裁定の水準はどうあるべき、既裁定は、購買力は維持されなくていいのかというところを今後課題として残しているのかなと思います。
これが非常に私、一番申し上げたかったことで、二番目は今回の法案の中の一つのGPIFですね。
GPIFのガバナンスを強化するということは私は重要だと思います。基本ポートフォリオに関しての私の見解は、多分お手元に私の見方を配っていただいていると思いますけれども、究極のガバナンスというのは、私が一つ思いますのは、運用している人間が、保険料を払っている人がどんな思いで保険料を払っているか、そして、保険料を集める年金機構の人がどんな苦労をして保険料を集めているかというのを肌身で知っていることだと思うんですよね。そういうふうに肌身で知っていますと、いや、ちょっと五兆円損しちゃったなみたいな、長期で見ましょうよという言葉が口から出てこないんじゃないかと思うんですよね。
翻ってみますと、GPIFって虎ノ門ヒルズのきれいなビルに居を構えているわけです。年金機構は高井戸にあって、もうぺこぺこぺこぺこ頭をみんな下げて、年金受給者の方や被保険者の人から文句言われるわけですよね。ですから、受給者の方や被保険者から文句を言われることが非常に重要で、そういった声が背中にあれば、また運用スタンスも変わってくると思うんですよね。
ですから、年金を運用している人たちに重要なのは、確かに投資理論も必要なんですけれども、そういう座学でなくて、保険料を払っている人たちがどんな思いで年金機構の職員と免除の手続しているかということや、年金局の方がどんな思いで保険料を集めて納付率を向上しようとしているかという意識であって、私は、だから、独立した組織としてGPIFを虎ノ門ヒルズに置くのではなくて、年金機構の中に例えば置いて、運用担当理事を一人置いて、そこと、徴収担当理事がいて、あるいは、お客様相談センターみたいな窓口がありますから、コールセンターがあって、そこに日々受給者の方、年金被保険者の方からいろんな声が届きますから、その人たちと一体になって、年金受給者、被保険者の声を背中に感じながら運用する、その声を感じながらステートメントを出すということが非常に重要であって、今の体制は、あたかも百四十兆円というお金が天から降ってきたかのように、私は高度な投資理論を備えていますという形で運用していますけど、そうではないと思いますので、そういった形で今後議論を進めていただければいいと思います。
今回の法案にはその思想の一部が入っていると思います。労使の代表を一名ずつ入れるというふうになっていますが、私、ちょっと足りないと思うんですね。やはり、もっと被保険者、受給者の声を、皆さんも多分地元でも年金受給者の方や被保険者の方から大丈夫なのという声を聞かれると思うんですけれども、それがダイレクトに届くような組織体制で運用する、そこに先端の投資理論があればなお好ましいということかなと私は思います。
最後に、適用拡大についてですが、これも先生がおっしゃっていたように、私、進めるべきだと思うんですね。ただ、それももっと根本的に、今の年金法といいますのは、今回の法案も例えば五百人未満でも労使の合意があればというふうになっていますけれども、例えば五百人未満の企業、あるいは大企業でも、労働者側にそういう強い交渉力が経営者に対してあるのかなという疑念が私、あります。経営者に駄目だよと言われてしまうと入れないわけですよね。いや、そうではなくて、使用者の義務として、給与を払う以上、あなたを使う、労働力をもらう以上、その給与に応じて、有無を言わさずそれは厚生年金適用すべきであると私は思います。
そうしますと、今の厚生年金の仕組みですと、例えば私を厚生年金の被保険者とするためには、私の勤務先が私に関して被用者届、被保険者届を出してくれないと私は被保険者になれないわけです。それは、事業主が私を常用的な雇用とみなして初めて被保険者届を出してくれるわけですけれども、そうすると、事業者のさじ加減に非常に懸かってしまっていますし、でも、働き方改革と言われている中で、いろんなところで働いてみたり給与をもらったりしてくる中で、必ずしも常用的な雇用関係を一社と結んでいなくても、複数社と結んでいたり期間限定で働いてみたりというふうに働き方が多様化する中で、今の仕組みではそういった働き方に対応できないと思うんですね。
ですから、企業があなたを常用雇用関係にありますよとみなして初めて被保険者になれるのではなくて、私が企業に労働力を提供していれば必ず被保険者になれるような仕組みにこれはやっぱり改めていくべきかなと思います。
そのほか、今回の法案の中での国民年金の保険料免除は私も非常に賛成していますし、日本年金機構が今規律正しく回復期に向かっている中で、遊休不動産があればそれを国庫返納するというのも非常にいいことだと思いますので、そのほか詳しく申し上げませんでしたけれども、法案も私は非常に賛成しております。
以上です。