正司健一の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(正司健一君) 神戸大学の正司です。
 このような場を設けていただき、非常に光栄に思うとともに、緊張しております。また、お手元に資料等を配付できず、口頭での陳述になったことをお許しいただければと思います。
 それでは、座ったままで恐縮ですが、私自身の意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、ございましたこの法案に関して賛成ですか反対ですかと聞かれると、正司としては賛成、この考え方は前進であるというふうに思っておりますので、それが結論的な意見でございます。
 その背景、いろいろなことがあって、その点はこの後御説明をさせていただきたいと思いますけれども、特に交通政策審議会の陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会が中央新幹線の営業主体及び建設主体の指名及び整備計画の決定についてという答申を公表物として出されて、我々もそれを拝見することができます。
 それを見てみますと、そこに載っている議論というのは、私自身、公表された資料の限りではありますけれども、非常にいろいろな角度から議論して詰められ、その結論として妥当であるというふうな結論を出されているというのは皆さん御案内のとおりでございます。
 私自身も、この答申、資料を見れば細かな議論するべき点は多分あるんだろうとは思うんですけれども、ただ、大筋としては非常に納得性が高いものでありますので、その方向に従った議論、整備に関する話というのは特段大きな問題がないんではないかなというふうに考えています。それが一番の論拠でございます。
 御案内のとおり、そこの附帯意見の中に、大阪までの早期開業の検討とか鉄道建設・運輸整備支援機構の活用といったことも出ておるわけですが、中でもその附帯意見のトップに載っております大阪までの早期開業の検討、これに資する方向での今回の法案と、前倒しという点なわけですけれども、そういう意味でもそれに資するものですから、この方向性はあるのかなと思っております。
 もちろん、早期に大阪―東京間をつなぐという手法は、これ以外の手法も考えられると思います。一番極端な話では、国が全部造ってしまってJR東海に貸し与えて営業させるというのも手法としてはあり得るんだろうと思うんですが、この点については後で議論させていただきますが、我が国のこれまでの鉄道整備の在り方、この機構を使ったこういったシステムの有効性に鑑みて、今回の提案というのはうなずけるものが多いというふうに思っているところでございます。それが基本的なテーゼでございます。
 そもそも東海道新幹線、開業当初は今のような運転間隔でもなかったですし、今のような正確性がなかなか当初は守れなかったというのは皆さん御案内のとおりだと思います。それが今のような姿になってきたというのは、鉄道関係者の誇りでもあるのかも分かりませんけれども、我々は日本にとっての誇りというふうな気もしております。
 その技術力は高く評価されておりまして、新幹線そのものの輸出という形ではなっていないにせよ、それを支えている多様な技術が、品質の高い製造技術ないし品質の高いサービス、生産技術という形で我が国の経済に大きな効果を与えているというふうに私自身は思っております。その意味では、先ほど杉山参考人が技術の裾野の話をリニアに特化する形で御説明されておりましたが、そういう一つの要素技術だけではなく、全体のシステムとしても同じことが言えるんではないかなというふうに思っているわけです。そういった意味でも、こういった大きなプロジェクトというのは大きな意義があるんではないかなというふうに思っております。
 そもそも御案内のとおり、このルート、中央新幹線ですけれども、それは御案内のとおり、全幹法上の整備を開始すべき新幹線鉄道の路線ということで一九七三年に議論の俎上にのり、それを受けて先ほどの小委員会の議論になったわけですけど、そういった形で、我が国にとって大切な路線であるということが位置付けられていた路線であることは言うまでもございません。
 さらに、昨今よく言われておりますように、日本人の人口がこのままでは減少していくというか、もう減少が始まっているわけですが、その中で、社会インフラを始めとする国民の社会経済生活を支える基盤の整備を今後どうしていくのか、さらに、その基盤の更新をやっていくだけの体力が我が国にどこまであるのかというのが大きな議論になっていると思います。そういったときに、まだ相対的には、より今の生活レベルを上げる向上の施策は常に打ち続けないといけないと思うんですけど、それに貢献する一つとして、この中央リニア新幹線というのは十分価値のあるプロジェクトであろうというふうに私自身は考えております。
 例えば、EUが、今またイギリスの離脱も出ていろいろ議論になっておりますが、全体一体となってEUとして大きな経済圏をつくろうというときに、トランスヨーロッパというプロジェクトがEUの中で大きく取り上げられたわけであります。今もそれは続いているんですが、それは何なのかというと、EU内の交通インフラ、港湾とか道路も入るんですが、そこに高速鉄道も入っておりまして、それをEU全体としてしっかり整備していこうという構想が出て、各国政府並びにEU政府が協力しながらその整備を進めているといった話がございます。
 このように、各国交通インフラは経済力を高めるためだけでなく、その地域全体の人々の生活水準の向上に大きな価値があると認めて整備を進めているわけです。そういう意味では、我が国でも一九七〇年代からその必要性の議論がされていて、それなりに国の議論として位置付けは得ているプロジェクトとしては、これを進めるということは当然意義があるものというふうに私自身は考えております。
 実は私、留学生なんかをよく教えているんですけど、留学生が日本に来て、いつも質問されて説明をするんですけれども、それは何なのかというと、何で日本には、空港とか道路の整備プロジェクトというのが過去の歴史を見ているとあるんですけど、鉄道ってないんですねという質問を受けるんですね。確かに留学生の言うとおりで、全国規模で鉄道をどう整備していくとか、都市圏内で鉄道をどう整備していくという構想図はあるんですけど、それを実際に手法をもってどう進めるかという意味での計画というのがない国というふうになっております。
 交通社会インフラの中で鉄道の持つ価値というのは否定する必要は全くないと思いますので、その意味で日本のやり方というのはちょっと特殊なので、これは後で御説明しますが、それはそれなりにいいところもあるんだという説明を留学生にするんですが、その中で留学生に言うのは、昔は、昔というのは第二次世界大戦の前の頃ですけど、その頃にはあったんだけど、それでちょっといろいろ問題があったんだという説明をし、一方で、新幹線鉄道に関してはこういった議論があって、国でしっかりと造るという議論がされていると、そういうわけで、鉄道の中でも国として考えないといけないものとそうでないものを切り分けているんだという説明を彼らにしております。そんな意味でも、中央新幹線部分をこういった形で進めるというのはロジックが十分に立つというふうに思っているわけです。
 先ほど申し上げた、日本では欧米に比べると政府が表に出てこない、政府が税金を鉄道に多くを投入しないというスタンスを取っていることに関してなんですけれども、そもそも鉄道だけではないんですが、公共交通整備に関しては、運輸収入というか利用者からの収入をメーンで整備を進めるという考え方と、社会インフラとして国が税金等を使って基本的に整備するんだという考え方、このどちらに多くを依存するのかというのが、昔からこの二つの考え方があると思います。これは、どっちがいい悪いじゃなくて、その二つの考え方があるという意味でございます。
 御案内のとおり、日本は利用者負担をメーンに考える形であります。これは、鉄道のように運輸収入の形になっているケースもありますし、高速道路料金ということで利用者料金という形になっている形もありますが、それをメーンにしております。それに比べて、欧米はどちらかといえば税金を使っているケースということがございます。
 これは、日本のやり方は、そうすると利用者収入が上がらないところはなかなか整備が進まないという難点を抱えることになりますし、逆にヨーロッパのやり方は、整備は進むんだけどそれは利用者のニーズに合っているのかという議論がそこに出てくるという問題点がございます。
 そして日本も、その中で、利用者収入だけではすぐ整備できない、でも、地域社会ないしは日本全体として必要なものは公的な措置をとるという形でいろいろ整備をしてきたということは御案内のとおりでございます。ヨーロッパも、全く今度は話が逆になりまして、政府が進めるだけではどうしても、どうしてもという言い方は良くないですね、時になかなか利用者ニーズに対応した形で進まないので、そこをするためにマーケットの判断というのをどういった形で政府がインフラを造るところに入れるのかというところで苦労されているというところがございます。
 これが先ほどの機構を使った、財投を使った形でやるというシステムの話につながるわけなんですけど、日本の場合は、政府が直接やるというヨーロッパ的なやり方の問題点を意識したときに、今まででも、新幹線、さらには交通局を始め公的なセクターの強い鉄道だけではなくて、民間鉄道事業者に対してもこの機構を使った形の融資という形で公的な支援をして、それがそれなりにこれまでうまく機能してきたということはございます。その意味でも、このパターンを使っての前倒しというのは納得できるかなというふうに思っているところでございます。
 ただ、最後に、これは交通を研究している者として、今後の課題で、この法案に対してではないんですけれども、今回こういう措置のおかげで前倒しになったということになるんですけれども、前倒しといっても、名古屋までと大阪までの開業の間は十年の差、違いが出てくるということがございます。社会インフラとしては名古屋で止まるよりも大阪までつないだ方が大きいというのはこういういろんな報告書に出ているとおりで、正司もそのとおりだと思っているので、この点はもう少し何か別の議論があってもいいんではないかなというふうに実は感じております。
 さりとて、ヨーロッパの二の舞を、日本が後から追いかけることはないので、ヨーロッパのやり方をそのまま輸入すればできるという話ではないと思いますが、鉄道というのは道路や港湾と同じように五十年、百年後も使う我々の社会にとっての大切なインフラとなる交通システムだと思いますので、それを民間の鉄道事業者の力とその判断力をうまく生かしながら日本全体としてその整備を進める、ないし維持を進める、更新を進める枠組みというのを別途議論をしてもいいんではないかなというふうに思っております。これは少し法案とは違うお話ですので、そんなところを私の研究をやっていると思います。
 そもそも、古くは五街道の時代からと言ってもいいのかも分かりませんけど、杉山参考人もおっしゃっておられましたが、交通と町、地域の発展というのは密接な関係にございました。私、神戸から来ておりますが、元々、東海道本線は大阪止まりじゃなくて神戸までつながっていたわけですが、いろんな理由があったんだと思うんですが、その中の一つには、神戸港という、世界というかアジアに向けての大きな港があったということもあったんだと思います。そういう意味では、このリニアというのは一つの区間を結ぶ話ですので、これをうまく日本全体としてどう生かすのかという議論も併せて考えていく必要があるのではないかなと思っております。
 非常に雑駁な、資料もなしの意見陳述で恐縮ですけれども、正司からはここまででございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 正司健一

speaker_id: 33128

日付: 2016-11-10

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会