鈴木達治郎の発言 (外務委員会)

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○鈴木参考人 長崎大学核兵器廃絶研究センター、センター長の鈴木でございます。
 では、早速始めたいと思います。
 お手元にパワーポイントの資料をお配りしておりますので、それに沿って説明させていただきます。
 まず第一に、最初のページは私のポイントですが、四点あります。
 そもそも、このインドとの原子力協定というのは、核不拡散条約のメンバーでない国に対して原子力協力をしないという国際的な規範、これが国際的な核不拡散体制の柱でありますが、残念ながらこれを破ることになる。これはもともとは、やはりアメリカの原子力政策、核不拡散政策の転換、それから先ほどお話がありました原子力供給国グループの例外化扱い、ここから始まっているわけですが、この点がそもそも問題であると私は考えております。
 二番目に、日本政府の対応ですが、そのNSG例外化に際して、そのときの声明として、核実験をインドがしたら協力を破棄すべきであると明確にその決意を表明されておりますので、インドとの原子力協力を交渉する場合には、これが最も重要な条件であるというふうに私は理解しておりました。
 しかし、今回の日印協定の、今御説明がありました公文書を見ますと、核実験禁止で破棄というふうに明文化されておらず、さらに濃縮、再処理の技術も容認するという、ほかの原子力協定に比べてかなり弱い協定になっているというのが私の理解であります。
 現在の国際状況を考えますと、北朝鮮の核開発に対して我々はぜひ核開発をやめるよう要請しているわけですが、それに対して、核兵器を持っている国に対して緩い原子力協力を進めるということは非常にマイナスであり、しかも国際原子力市場の状況を考えますと、七年前、二〇一〇年に交渉を開始した時点に比べますと、現在の国際原子力市場は非常にリスクが高く、ベネフィット、利益の方も減っているということで、特に被爆国である日本がこの協定を批准することは、核軍縮・不拡散政策にとっても大きな、日本にとっても大きなマイナスになるというのが私の理解、私のポイントであります。
 それでは、二ページ目を見ていただきますと、歴史なので、これはもう既にお話がありました。ちょっと飛ばさせていただきますけれども、ポイントは、七八年の、アメリカがもともと中心になって、インドの平和利用核爆発に対して、NPTメンバー以外への原子力協力を禁止するということで、日本も参加している。それが二〇〇七年に変わった。それから、二〇〇八年にインドの例外化に合意ということですね。
 では、次の四ページ目に行っていただきたいんですが、アメリカとインドの原子力協力をちょっと見ていただきたいんです。
 アメリカは法律で、NPTのメンバー以外に原子力協力をしないという法律があったわけです。これをわざわざ改正して、インドとの原子力協力を進めた。
 この状況を見ますと、今回の日本の協力とよく似ているんですが、インドの再処理を容認し、核実験をした場合には要求する権利を持つ、破棄をする権利を持つという表現になっておりまして、中に、別の供給者を確保できるという供給保証項目がありまして、インド側はこれでも核実験はできるという解釈をしている、玉虫色の文書になっております。今回、実は、日印原子力協定もこれに近いものになっていると私は理解しております。
 次のところですが、NSGインド例外化に当たり日本政府の決意表明というのがあります、二〇〇八年ですが。非常に苦慮した結果、日本政府としてはぎりぎりの判断として加わった。その際、政府として、インドによる核実験モラトリアムが維持されない場合には、NSGとしては例外化措置を失効ないし停止すべきであること、さらに、参加各国は各国が行っている原子力協力を停止すべきであることを明確に表明しています。これが、日本政府のインドとの原子力協力を進める条件であるということですね。
 二〇一〇年に、私は原子力委員会におりましたのですが、このときに協力協定を開始したわけですけれども、このときに原子力委員会として見解を出していただいております。
 そのときも、約束と行動を守るだけでは十分ではない、核軍縮に向けて創造的で現実的な取り組みを両国が国際社会と連携協力して着実に推進する意志を共有していることを確認することを期待するという表現になっていますが、約束と行動を超えて、核軍縮や不拡散分野で大きなベネフィットがないと困るというのが、日本とインド原子力協力に対する原子力委員会の見解でありまして、これをもとにぜひ交渉していただきたい。
 単純に言えば、米国とインドの原子力協定では十分ではない、それより厳しい条件で交渉してほしいという要望を出しております。しかし、今回の協定を見ますと、残念ながら、基本的にはアメリカと似たような協定になっている。
 ポイントは、先ほど申しましたように、核実験を実施したら協定を自動的に破棄できるというふうに明文化されているかどうか、それからインドの軍事プログラムに対して間接的にでも支援することにならないかという点を私は注目しましたが、両方ともよくない。核実験条件については玉虫色であり、機微な技術移転と濃縮、再処理は基本的には容認されている。
 今、浅田参考人から御説明があった第二条、おっしゃるとおり、「改正された場合に限り、」と書いてありますが、改正されれば移転することができるわけです。しかも、十一条では二〇%以上の濃縮も可能というふうになっております。十四条で書かれている核実験禁止条約は、先ほどお話もありましたが、「協定を終了させる権利を有する。」としか書いていません。さらに、その一年間の中で協議をして、協力停止をもたらし得る状況について慎重な考慮を払うという、インド側からの要求がここに入っているということで、そう簡単にインドが合意するかどうかはわからないということで、次のページに書かれていますように、続きましては公文書についても明確でないということで、果たしてこれでインドが核実験を行ったら協定破棄できるかということは、私としては読めない。あるいは読める場合もありますが、玉虫色であるということで、これでは不十分であるというふうに私は考えます。
 次のページは、私が一番モデルとしている、いわゆる濃縮や再処理を明確に禁止した二国間協定というのは既に日本は結んでおります、これはヨルダンとの協力協定ですが、UAEとか、ほかにもこういう厳しい協定を結んでいる国があるわけですが、残念ながら、インドとの協定ではこれよりも甘いということで、私は非常に残念であると思います。
 次のページに、私はパグウォッシュ会議という、核兵器廃絶を推進する科学者団体に属しているわけですが、日本パグウォッシュ会議の有志として、やはりこの協定が出た後に声明を出しております。
 もし協定を締結するのであれば以下のような条件が必要であるということで、明らかに核実験を行った場合には協定を破棄するという明文化が必要であり、少なくともほかの核不拡散条約に参加している国よりも厳しい条件を要求すべきであるということ、再処理や濃縮についても技術移転の禁止や国内における再処理、濃縮の禁止、それから、包括的核実験禁止条約のCTBTの批准や、FMCT、兵器用核物質生産禁止条約への積極的参加といった新たな条件が加わらない限り、私は協力はすべきではないというふうに考えております。
 最後のページですが、先ほど申しましたように、今、北朝鮮との核問題、核開発が非常に大きな問題になっておりますが、このインドとの原子力協力に入るということは、核開発をした方がかえって不拡散条約の条件が緩められるというメッセージにもなりかねない。核開発を事実上容認するのみならず、技術供与も与えてしまうということで、非常に悪いメッセージを与えてしまう。
 それから、隣国の韓国や中国に対しても、インドが核、さらに再処理を進めるということに対してどういう心配をするかということで、これもメッセージとしては問題がある。
 それから、現在、東芝はウェスチングハウスで問題になっておりますが、原子力市場のリスクも非常に高くなっておりまして、七年前に比べますと原子力市場のニーズも減っているということで、現時点で日印原子力協定を批准することはリスクが大きく、メリットの方が少ないというのが私の意見であります。
 以上で発表を終わります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 鈴木達治郎

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日付: 2017-04-28

院: 衆議院

会議名: 外務委員会