遠山清彦の発言 (憲法審査会)

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○遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。
 私は、公明党を代表いたしまして、国と地方のあり方について意見を述べさせていただきます。
 まず、我が党の地方自治に関する基本的考え方について申し述べます。
 地方自治の原則は、住民の暮らしにかかわる事柄は住民みずからが決定することを意味しており、日本の民主主義の発展の原動力と言っても過言ではありません。また、少子高齢化と人口減少に直面する今日の日本にあって、地方における地域社会の活性化は喫緊の課題であります。政府には地方創生担当大臣が置かれ、本院にも地方創生特別委員会が設置されていることがそれを象徴しております。その意味においても、憲法第八章に規定されている地方自治は極めて重要であり、公明党としても、今日までの加憲の議論の中で、地方自治の強化を一つの重要な視点として捉えてきております。
 これまでの党内議論の中では、地方自治に関する憲法規定が四カ条しかなく、他の規定項目に比して規律密度が低いことや、地方自治の本旨の定義がないこと、地方と国との役割分担や地方公共団体の財政的自立の実現について憲法に位置づける必要があるか否か等が検討されてきております。
 また、地方自治の議論における重要な視点の一つとして、東京一極集中の是正があります。
 東京は首都であり、そこに政治、経済、社会の中枢機能が集中することはやむを得ない面はありますが、弊害があることも国会において多くの指摘がなされてきております。
 例えば、地方から若者が東京に流入し続けることにより、地域社会がますます衰退する、地方に比べ出生率の低い東京に人口が集中することで、日本全体の人口減少に拍車がかかる、島嶼国家である日本の国境を形成する離島地域が無人化をし、安全保障上のリスクが増す等であります。
 これらの課題解決のためには、東京一極集中の是正へ向けた努力を強化すること、特に基礎自治体の足腰を強化する必要があることは、与野党を超えて認識が共有されているところであろうと思います。
 なお、このことに関連いたしまして、道州制の導入が唱えられておりますけれども、これにつきましては、特に憲法との関係におきまして、慎重に検討する必要があると考えております。
 次に、以下、地方自治と憲法の問題につきまして、四つの論点ごとに意見を述べさせていただきます。
 一つ目は、地方自治の本旨の明確化と、国と地方との役割分担の明記についてであります。
 憲法第九十二条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定しておりますが、この地方自治の本旨をより明確化する、すなわち、住民自治や団体自治を憲法に明記すべきではないかとの意見が党内にはあります。
 これにより、国が地方自治体と地域住民の意思を尊重することや、地方自治体が自立と責任の原則に立つことを憲法の中においてはっきりさせるということであります。他方、地方自治の本旨の具体的な内容につきましては、憲法の解釈や判例の中で相当程度明確化されてきており、改めてさらに規定する必要性があるならば、憲法ではなく、一般の法律で手当てすればよいとの意見もございます。
 第九十二条に関連し、国と地方との適切な役割分担を憲法に規定することを検討すべしとの指摘もありますが、地方自治法の第一条の二等において、国と地方の適切な役割分担や、地方公共団体の自主性及び自立性の重要性は既に規定されていることに留意する必要があると考えます。
 また、憲法に役割分担規定を挿入することが立法分野における国の地方に対する過剰な介入を抑止する効果をもたらすとの主張もございます。地方自治法第二条十一項は、「地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づき、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえたものでなければならない。」と規定しております。
 これに関し留意すべきは、地方に対する義務づけ、枠づけの抑制は閣議決定に基づいて行われておりますが、議員立法は対象となっていない点であります。しかし、議員立法にかかわる立法実務においては、地方への配慮は一定程度なされており、憲法改正を要するほどの過剰な介入があるのかどうかも含めてさらなる検討を要すると考えます。
 次に、地方自治権の司法的救済と事前協議による保障について意見を申し上げます。
 地方自治権の強化を図る視点から、地方自治権の侵害に対して裁判所を使って是正できることを憲法に規定するという考え方がございます。ヨーロッパ自治憲章には次のような規定があり、地方自治権の司法的救済が明記されております。ヨーロッパ自治憲章第十一条、地方自治体は、その権限の自由な行使及び憲法または国内法に定められた地方自治の尊重を確保するために、司法的救済に訴える権利を有するものとする。
 日本においては、国による関与については地方自治体が出訴できる道はあるものの、そのほかは司法的救済の道は狭いという指摘があります。加えて、今日までの国の関与についての訴訟において自治権侵害に当たらないと判断されてきた裁判実務を考慮すると、国と地方の事前協議を義務づける規定を憲法に同時に定める必要があるという意見もございます。
 しかし一方で、現在でも、国と地方の協議の場に関する法律や地方自治法二百六十三条の三に基づく地方六団体による意見書提出等、一定の事前手続の保障がなされております。司法的救済の確立や事前協議の保障によって地方自治権をさらに強化する必要があるとしても、そのための憲法改正の要否については党内の意見はまとまっておらず、この点についても引き続き議論を継続してまいりたいと思います。
 三つ目に、地方自治体の財政基盤の強化について申し上げます。
 地方自治体の自主的、自立的な行政運営は、その財政基盤の確立の程度によって大きく左右されます。地方自治体の財政的自立は、地方自治の不可欠の要素であります。そして、地方財政の分野でも東京一極集中の問題は切り離すことができません。人口が増加して財源が潤う地域がある一方で、人口も財源も減少する地域がございます。自治体間の財源の不均衡を調整し、どの地域であっても一定の行政サービスが提供されるよう、財政格差を縮小することが不可欠であります。このため、地方自治体の財政的自立の確立、すなわち、課税自主権や財政調整制度を、憲法上、より明確にすべきとの意見が党内にございます。
 その一方で、現行憲法下においても、地方自治体が条例に基づき法定外税や超過課税を実施するところはふえてきております。また、この問題を実質的に解決するためには、憲法のみならず、地方税、地方交付税制度のあり方を含めた地方税財政に関する法体系の全体を見通した議論が必要であり、この点も引き続き慎重に検討してまいります。
 最後に、道州制と憲法の関係について申し上げます。
 東京一極集中の是正の有力な手段として道州制の導入があることは既に触れました。しかし、仮に都道府県にかえて道州という、より広域性の強い自治行政団体を生じさせるとしても、憲法上の地方公共団体として捉え得る観点から、その導入のために憲法改正は必要がないという意見が党内では大勢でございます。
 道州制導入のメリット、デメリットにつきましては、国会の内外において幅広く議論されてきているところでありますが、道州の区割りのあり方、国と道州の機能と権限の調整、税財源のあり方、道州制下における基礎自治体の役割等々、検討すべき課題は多いと認識をしております。
 いずれにしても、道州制の導入は国の形を大きく変える政策であり、国会のみならず、地方を含めた国民的議論を喚起しつつ議論を前に進めていくべきであると考えております。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 遠山清彦

speaker_id: 31727

日付: 2017-05-18

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会