岸本周平の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○岸本委員 民進党の岸本周平です。
私は、昨年八月八日の天皇陛下の次のお言葉を国民全体への問いかけとして重く受けとめました。
このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。
国民の理解を得られることを、切に願っています。
天皇陛下は、象徴天皇のあり方として、積極的に国民の声に耳を傾け、思いに寄り添うことが必要であると考えられ、その信念に基づき、みずからのお務めを行ってこられました。このことは、憲法第一条に規定された、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、その地位が国民の総意に基づくという天皇の位置づけにかなうものであります。このような天皇陛下のお姿を国民は敬愛し、天皇陛下は日本国の象徴、日本国民統合の象徴としての役割を果たしてこられたのです。
以上のことを前提に、以下、各論点について我が党の見解を申し述べます。
まず、元首について申し述べます。
政府見解によれば、現行憲法下において元首とは何かを定めた規定はない、天皇が元首であるかどうかという問題は元首の定義いかんに帰する問題である、かつてのように、内治、外交の全てを通じて国を代表し、統治権を掌握している存在を元首と定義するなら、現行憲法のもとにおいて天皇は元首ではないことになる、他方、実質的な国家統治の大権を持たずとも国家におけるヘッドの地位にある者を元首と見るとの定義によれば、外交関係のごく一部ではあるが国を代表する面を持つ天皇は、現行憲法上、元首であると言っても差し支えないことになろうとされています。
天皇が元首であるかをめぐってはこのような二つの見解がある中で、現行憲法のもとで行政権を保持していない天皇をあえて憲法において法的に元首であると規定することは、誤解を招くおそれがあるのではないでしょうか。
さらに、日本の天皇はヨーロッパの王政や中国の皇帝とは違う存在であることから象徴という言葉を日本国憲法で用いたことは、既に国民的にも定着をしていると思います。あえて他国の大統領や国王と横並びに扱うような元首という言葉を使って天皇の地位を憲法上位置づける必要はないと考えます。
次に、象徴天皇制にとって、皇位の安定的継承は何より重要です。そして、象徴天皇制を支える皇族の皆様の御活動についても、安定的に維持されなければなりません。
皇位が男系で継承されてきた歴史的経緯を踏まえつつ、皇位継承資格者を確保し、皇位の安定的な継承をどうやって維持するか。そして、高齢化や女性皇族の御結婚に伴う皇籍離脱により、天皇陛下及び特定の皇族方に御公務が集中している現状を改め、皇室の御活動をどのように安定的に維持していくか。現実に差し迫った重要な課題であり、速やかに検討されなければなりません。
皇族の御活動の安定的な維持については、旧民主党政権の野田内閣において、女性皇族の婚姻後の身分の問題に絞って整理、検討を行い、皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理を公表した経緯があります。
民進党としては、皇族の御活動の安定的な維持について、以上の経緯等を尊重しつつ、女性皇族が御結婚後も皇族の身分を保持し、当該女性皇族を当主とする宮家の創設が可能となるよう皇室典範を改正すべきだと考えています。
今般の退位の問題については、民進党は、党内に皇位検討委員会を設けて、昨年十二月に皇位継承等に関する論点整理を取りまとめるなど、率先して真摯に取り組んでまいりました。
正副議長取りまとめにおいては、「安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等については、政府において、今般の「皇室典範の附則の改正」及び「特例法」の施行後速やかに検討すべきとの点において各政党・各会派の共通認識に至っていた」と明記され、民進党の検討の成果が取り込まれることとなりました。これを受けて、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議においても、「女性宮家の創設等」という文言が明記されました。
我が党としても、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等につき、しっかりと党内の議論も行い、より先駆けての提案も進めていくことにより、国家の基本にかかわる象徴天皇制を支えるための努力を引き続き行ってまいりたいと考えています。
なお、女性宮家の創設等に関する検討結果の国会報告の時期について、法案成立後一年をめどとすべきという主張に変わりはありません。党内のみならず、国会、政府においても積極的に議論を行うよう求めていきます。
安定的な皇位継承については、小泉内閣において、皇室典範に関する有識者会議報告書が提出されています。
皇位の安定的継承のため、旧宮家の皇族復帰を進めるべきという意見もありますが、現在の皇室とは親等が大きく離れていること、旧宮家の誰かだけを復帰させるロジックが技術的に難しいことなどがあり、非現実的と思われます。民進党は、皇位継承資格について、女性や女系の皇族に拡大することについても国民的な議論を喚起していくべきであると考えます。
続いて、天皇の国事行為との関連で、解散権について指摘をしておきたいと思います。
歴史的に見ると、王政時代に議会に対して解散権を有していたのは王権でした。議会は王権を制約するための機関であったため、解散権は、議会と対立、緊張関係にある王権が議会に対抗、抑制する手段として位置づけられていました。
しかし、民主制下での議院内閣制では、内閣と議会の間にこのような対立関係はありません。内閣は議会の多数派によって選出され、行政府と議会の多数派が政治的に一体化した制度となっているからです。
その結果、二十世紀半ば以降、行政府による議会の解散権には強い制約が付されるという傾向が世界的に強まっています。
ドイツでは、第二次世界大戦後、解散権行使の要件が厳格に絞られており、内閣不信任の場合などにしか解散が認められていません。
カナダでも、二〇〇七年の選挙法改正により、行政府の解散権を制約することになりました。
議院内閣制の本家と言える英国でも、二〇一一年に議会任期固定法を制定し、下院の解散は、任期満了による自動解散の場合、下院が政府不信任案を可決し、その後十四日以内に何らかの政府信任案を可決しない場合、下院が定数の三分の二以上の多数で繰り上げ総選挙の実施を可決した場合に限られることとなり、従来自由であった内閣による下院の解散は認められなくなりました。そして、本年四月十九日、この法律に基づき繰り上げ総選挙を求めるメイ首相提出の動議を下院がほとんど全会一致で可決した結果、まさに本日、英国は総選挙当日を迎えております。
一方で、内閣による自由な解散権の行使を肯定する立場からは、現代の議院内閣制において、解散には、国家機関の間の紛争の解決、国民投票の代用、内閣の安定化などの機能が期待されていると説明されます。
しかし、そのような立場に立つ憲法学者からも、解散は国民に対して内閣が信を問う制度であるから、それにふさわしい理由が存在しなければならず、解散権の行使は衆議院で内閣の重要案件が否決あるいは審議未了になった場合などに限られるべきであり、内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散は不当であるなどと、解散権の行使について自制を求める意見が示されています。その意味で、世界各地で見られる解散権制約の動きに反して内閣の自由な解散権の行使を認める我が国の議院内閣制は、内閣と国会との間の抑制と均衡を損なっています。
内閣による解散権の行使を内閣不信任の場合に限定するとともに、英国の例に見られるように、衆議院による自律的な解散権を創設することとし、解散権を衆議院に戻して議院内閣制本来の姿を取り戻すことこそ、憲法審査会が真摯に議論すべきテーマであると考えます。民進党内においても、具体的な提案ができるよう、真摯に議論を進めてまいります。
終わりに、今般の退位特例法の取りまとめの前提として、本年一月十六日、衆参正副議長の四者は、憲法が天皇の地位を国民の総意に基づくと定めていることを念頭に、全国民の代表機関である立法府が国民の総意を見つけ出すべく努めることは当然の責務と述べ、立法府に全体会議が設置されて、両院正副議長の御指導のもとで議論が開始され、最終的に、三月十七日、衆参正副議長による議論の取りまとめが了承されました。
このプロセスは、憲法改正論議にとっても大いに参考になります。憲法改正原案は、退位特例法のように閣法は想定されておらず、国会みずからが発議するものです。憲法改正は、各党各会派が真摯に向き合い、あるときは堂々と主張を述べ合い、あるときは小異を捨てて合意形成を優先し、最終的に、国会が国民に発議して、国民投票によって国民の総意を見つけ出すというプロセスであり、両者には共通するものがあります。
今回の退位特例法のプロセスで得られた、各党各会派が真摯に課題に向き合い合意形成を図っていくという経験を大切にしつつ、今後の憲法改正論議に臨むべきことを強調して、私の冒頭発言を終わります。