藤垣裕子の発言 (原子力問題調査特別委員会)
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○藤垣参考人 藤垣と申します。
私の専門は科学技術社会論というものなのですけれども、科学技術と社会との接点でさまざまな問題が、もちろん原子力も入るわけですが、そういう問題を、社会学、人類学、歴史学、政治学、経済学、科学計量学、科学技術政策、さまざまの方法論を用いて分析する研究分野でございます。
きょうは、この科学技術社会論、STSと呼びますけれども、そこから、世界から日本の原発がどんなふうに見えているのか、あるいは、科学技術ガバナンス、原発ガバナンスでも世界に誇れる国をつくるためにはどうしたらいいかということを中心にお話ししたいと思います。
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福島原発に関しましては、原発事故及び津波の災害に関しましては、さまざまなところでお話をしてきたんですけれども、特に、二〇一三年の二月にIAEAの応用健康部部長より国際電話をいただきまして、福島の原発事故後、低線量放射線被曝の健康影響について意見が割れている、福島県立医科大学と広島大学、長崎大学、放射線医学総合研究所のフォーラムをつくる、それをウィーンでつくりたい、それをやる上で、STS、つまり科学技術社会論は、そういった科学コミュニケーションに造詣が深いだろうということで、ウィーンに来てほしいと言われまして、行きました。このスライドの右側にある写真は、ウィーンのIAEA本部の噴水の前で、福島県立医科大学の先生たちと撮った写真でございます。
二〇一三年にウィーンで開いた後、福島、広島、そして福島という形で国際会議を開きました。そこでもいろいろな意見交換がございました。
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時間的に少しさかのぼりますけれども、二〇一一年の四月、ハーバード大学で、私の専門である科学技術社会論の会議が開かれました。これは、我々日本で起きた事故は三月十一日でしたので、一カ月もたたない間にあった会議でしたので、私はその会議で多くの人から質問攻めに遭いました。
裕子、日本は科学技術立国と言ってきたのに、どうしてこんな事故が起きてしまったんだ、日本の原発というのは、日本の政治的、経済的、社会的文脈にどんなふうに埋め込まれてきたんですか。一体どういう科学技術と社会の関係のもとであの事故は起こってしまったんですか。そして、日本の科学技術と社会の関係は歴史的にどんなふうに構築されてきたんですか。
質問攻めに遭って、かつ、彼らは知りたいと思うのに、多くの文献が全部日本語で書かれていて、英語で読めない。だから見えないんだ、とにかく答えてほしいと言われて、困惑した記憶がございます。
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その多くの質問に答えるために本を編みました。こういう本なのでございますけれども、二〇一五年にシュプリンガーという理系の本を出す有名な出版社から本を出しました。これは、先ほどのハーバード大学での質問攻めに答えるために書いたものです。
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本の構成は二部構成になっておりまして、第一部が福島原発事故の分析でございまして、日本の政治的、経済的、社会的文脈に原発がどのように埋め込まれてきたかとか、あるいは、科学コミュニケーションが直後どうであったかとか、そういったことが含まれております。つまり、先ほどの質問一つ目と二つ目への回答となっております。
第二部は歴史的なことですね。事故以前に、日本において科学技術と社会の関係としてどんな事件が起きてきたか。水俣病、イタイイタイ病、「もんじゅ」の訴訟、薬害エイズ事件、そして現代的なものだとウィニーの訴訟というのがあるわけですけれども、そういうものを載せました。
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そこからまた、先ほどのハーバード大学での会議の後、二〇一一年、クリーブランドで私の所属します4S、ソサエティー・フォー・ソーシャル・スタディーズ・オブ・サイエンス、科学技術社会論学会というところが、科学史学会と技術史学会と合同でプレナリーを開きました。福島原発に関してのものです。
アメリカの文化人類学者が、菅直人先生、きょうもいらしていますけれども、菅先生と枝野先生がずっとカメラに、世界じゅうにこの映像も出たんですけれども、このスライドを使いながら文化人類学者が何と言ったかというと、日本政府はディスオーガナイズドナレッジを出し続けたと言った。そうしたら、そこにいた、プレナリーに八百人ぐらい聴衆がいたわけですけれども、その人たちがくすくすと笑い始めた。失笑が出たわけですね。私は、このプレナリーの司会をしておりましたけれども、ああ海外からはこう見えているのかと思って非常に恥ずかしい思いをいたしました。
こういういろいろな反応を国際会議に行くたびにもらってきたんですが、海外の人から福島がどう見えているのか。コペンハーゲンであった会議での例をもとにまとめてみました。
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例えば米国の災害研究者は、日本ではエネルギー政策に国民を交えた議論を行っている。これは二〇一二年ですので、デリバラティブポールをやった直後でございます。福島は日本の公共政策をそんなにも変化させたのか。
あるいは、福島の影響はさまざまであるが、専門家への不信頼という点では一様性を持っている。福島は、日本における公衆と行政の境界を書きかえつつあるのではないか。
あるいは、オランダの社会学者。ヨーロッパでは、日本の今後の原子力がどうなるのか人々が注目している。国会前に人々が並んだという映像もみんな流れていますので、市民の抵抗がどういう効果を持つのか注目している。
フランスの社会経済学者です。日本の震災後の原発政策が欧州の政策に与える影響について強い関心を持っている。
ドイツの報道関係者。閣議決定はされなかったが、日本も二〇三〇年代までに原発ゼロ%を選んだ人たちが多かったんですね、それは画期的なことだ。
こういう反応がいろいろと返ってまいりますので、ポスト福島というのは決して日本だけの問題ではないというふうに考えることができます。
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それでは、私たちは一体、今後何をすべきか。
アメリカの科学史家であるポーターという人は、日本の原子力技術者というのは、アメリカの技術者が直面したような世間一般の監視の目からは驚くほど切り離されていたというようなことを書いております。つまり、いろいろな基準を決める、それが専門家だけに任されていて、世間一般の目からの、一般の監視の目というのが行き届いていないように見えたわけですね。
日本の課題といたしましては、その監視の目としての公共空間をどうやってつくるかとか、責任のあるイノベーションでも世界に誇れる国をどうやってつくるかということが課題として残ってくるかと思います。
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原発は、事故が起こりましたけれども、いろいろな不確実性というものが入ってきます。こういう不確実性が絡む問題は専門家だけの判断に任せるわけにはいかないので、欧米ではこの監視の目というのが非常に重視されます。例えば、意見が異なる専門家そして国民の意見をどうやって取り込んで監視をするか、どこにダムをつくるかとか、あるいは堤防の高さをどうするかでさえ議論する。安全と危険の隣り合わせである原子力発電所は当然であろうと。
日本では、世界一厳しい基準ということをうたっておりますけれども、それだけでは、なぜこの数字が必要かという説明が不十分である。こういう説明のプロセスが踏まれていないために不信感を呼んでいるんでしょう。実際、本来、こうした議論をして監視の目になる場は国会であると思います。もちろん、司法の場で再稼働問題、再稼働をどうするかということを議論していますけれども、最もこういう監視をしなければいけない場は国会でございますので、委員の先生方には大いに期待したいと私は思っております。
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このスライドは、現在のヨーロッパの科学技術政策、ホライズン二〇二〇というんですが、彼らは、RRI、レスポンシブル・リサーチ・アンド・イノベーションというものを挙げております。研究とイノベーションプロセスで社会のアクターが協働する、今までのスライドにもございましたように、きちんと監視をして責任あるイノベーションを果たす。
もちろん、これから日本もイノベーションを掲げていくわけですけれども、ヨーロッパがこのようにレスポンシブルというものを掲げているにもかかわらず、今まで科学技術立国を挙げてきた日本がきちんとレスポンシブルをどうするかというのを明確にしていかなければ、世界からの日本の科学技術に対する信用がまた落ちてしまいます。ですので、日本独自のレスポンシブルのあり方を考えていく必要があるのではと思っております。
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RRI、レスポンシブル・リサーチ・アンド・イノベーションのエッセンスを三つにまとめますとこれになります。まず、議論をたくさんの利害関係者に対して開くこと、行政官と専門家の閉じた空間で議論をするのではなくて、きちんと議論を開く。そして、相互に議論する、ミューチュアルディスカッションをする。そして、それをもとに新しい制度化を考える、これは大事なんですけれども、一度組織をつくってしまうと、それを壊すのが下手なのが日本の組織なんですけれども、上の二つ、議論をきちんとした後に、それでは最適な制度はどうあるべきか、例えば規制委員会は今後どうあるべきであるとかそういうことまで含めて、レスポンシブル、責任ある研究、そしてイノベーションということになるということになります。
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今申し上げたようなことは、市民講座でありますとかあるいは新聞といったメディアを使ってお話をしているんですけれども、きょうは国会議員の先生方にお伝えする機会があるということで、ぜひとも、世界から見て恥ずかしくない日本をつくっていただきたい、科学技術ガバナンスでも世界に誇れる国をつくっていただきたいということで、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)