益田直子の発言 (原子力問題調査特別委員会)
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○益田参考人 拓殖大学の益田直子と申します。
本日は、発言の機会をいただきましたことを関係者の皆様に感謝申し上げます。
私は、評価研究と行政学を専門としております。大学院時代に客員研究員として行ったアメリカの大学院で、評価がもたらす影響の研究をしておりました。その際、ガバメント・アカウンタビリティー・オフィス、通称GAOと呼ばれる、独立した立場から政府活動の評価を行うと同時に、立法府の補佐を行うという機関の役割に関心を持ちました。
具体的には、GAOは、評価結果を立法府、行政府、国民に知らせることにより、何か問題が起こっている、または起こりつつあるという警告を発する役割を歴史的な経緯の中で担うようになっていったことに強い関心を持ち、その要因を博士論文としてまとめ、出版をしました。
例えば、一九九二年に年金記録に関する記入漏れとその要因を明らかにしたことは日本でも報道されています。ほかには、二〇〇二年ごろにエネルギー政策策定におけるエネルギー関連会社の影響に関する調査を行い、二〇〇七年にイラク戦争後のイラク政府による復興実績の評価を行い、そして、二〇一四年に福島原子力発電所の事故を受けての調査対象十六カ国における原子力規制機関の対応状況の調査を行っています。それぞれ調査結果は公表され、該当する行政機関には勧告を行っています。
こうしたGAOによる評価活動によって行政を監視する機能がどのようにアメリカの統治機構において誕生したのかという著書がきっかけとなり、アドバイザリー・ボードのメンバーに加えていただいたと考えております。そのため、本日は、他国の経験を踏まえて、立法府が行政監視を行うに当たりヒントとなるお話を幾つかお示しできればと考えております。
本日は、関連する過去二つの研究成果を踏まえて、次の二点についてお話をいたします。
一点目が、アメリカにおいて、立法府は、行政監視の能力を強化するために、なぜ独立かつ立法補佐の機関を必要としたのかです。GAOが議会に近づきながらも、議会の日常的権力作用からは一定の距離をとり独立性を確保する位置にいるからこそ、議会の行政監視を補佐できると考えられているのはなぜかです。
二点目が、国際比較の視点から、日本は評価政策と評価文化の成熟度の程度はどのように評価されており、その理由は何かについてです。日本は、評価政策については高く評価されていますが、評価文化の成熟度については課題があるという調査結果が出ています。評価文化の成熟度をはかる測定指標は九つありますが、そのうち、他国と比べて最も評価が低いのが、議会における評価の実施と結果の利用に向けた制度化の程度です。つまり、評価活動における立法府の役割に大いに課題があるという結果が出ています。その要因として考えられる事項につきましては、後ほどお話をします。
まず初めに、一点目の、アメリカにおいて、立法府は、行政監視の能力を強化するために、なぜ独立かつ立法補佐の機関を必要としたのかについてお話をします。
詳細はこちらの写真にある「アメリカ行政活動検査院 統治機構における評価機能の誕生」という著書をごらんいただきたいと思いますが、本日は、立法府との関係にのみ焦点を当ててお話をします。
こちらの図は、GAOが立法府との関係と機能をともに変化させてきたということを示しています。
まず、GAOの機能における変化について説明します。
一九二一年に、財務省内にあった監査機能を新たにつくったGAOに移行させたのが設立のきっかけでした。政府の全ての支出証票の監査を行う機関でした。一九五〇年には、GAOは、政府支出における無駄な経費の節約など、経営管理上の効率性に関する監査を始めます。そして、一九六七年の法改正により立法府はGAOが行政府の貧困対策プログラムの効果を評価することを義務づけ、これにGAOが成功をしたことにより、一九七〇年代以降は政策の効果を検証する評価活動がふえていきます。
他方、立法府との関係にも変化が起こりました。図の中の「位置」と書かれている箇所がそれを示しています。
一九二一年の設立当初は、設立法に立法府の機関であると明記されておらず、行政機能の幾つかを財務省から引き継いだ組織であったので、行政府と立法府の両方の境界線をまたがる組織という説明もありました。そのため、GAOは、行政府の枠内に戻されそうになる動きに何度も直面しました。しかしながら、一九四五年の行政府再編法に、GAOは立法府の一部と明確に表現され、さらに、一九八六年の最高裁判所判決で明確に立法府の機関であると示されるようになるに至って、論争は解決しました。
このように、GAOは、行政府から立法府に近づくとともに、財務的検査から政策の効果の検査、つまり評価を行う組織に変わっていきました。
なお、二〇一六年度のみの勧告数は二千七十一件です。四年前の二〇一二年度勧告のうち、二〇一六年度までの四年間で執行された率は七三%です。未執行の勧告のデータベースは公開されています。
このように立法府とGAOの関係が近づくためには、相互の取り組みが必要でした。立法府側からは、上院下院の両院がGAOに対する議会側の要望を報告書により明確に示しました。例えば、議会との関係の密接化、GAO報告書の提出のタイミングの改善、監査の観点を政策効果にまで拡大することなどの勧告が出されました。また、実施する上で必要な法律の制定を行いました。
一方、GAO側は、議会側の要望に応えるように、専門職職員の専門領域の配分を変え、新たな監査活動である評価の実施を牽引する評価・方法論課を新設するなどの組織改革を行い、質が高く議会の意思決定のタイミングに合わせた評価書を作成し、その件数を大幅にふやしていくことで議会からの信頼を得るようになりました。つまり、立法府とGAOの間に行政監視能力を向上させるための相互作用がありました。
その背景には、数々の行政府への不信感を高めるような出来事がありました。莫大な連邦政府資金の支出を伴う福祉政策、ベトナム戦争による軍事費の増大、それらに伴う赤字の持続的拡大がありました。例えば、福祉プログラムは法の目的を達成できているのかについて議会が疑問を持ち始め、その評価をGAOに義務づけました。その後、ウォーターゲート事件と呼ばれた大統領の不祥事が起こると、国民は、行政権が濫用されているという認識を高め、行政府への不信感を強めるのみならず、それを監視すべき議会の行政監視機能が効果的に働いていないと考え、議会への不満も高めていくことになります。
こうした国民による政府の正当性への強烈な疑念が、議会改革を推し進めていくことになりました。
具体的には、議会が行政府に情報を依存しているために行政府が優越していると考え、議会の情報力を向上するために、信頼性の高い独立した情報源の獲得が必要になります。そして、一九七〇年の立法府改革法の制定により、GAOに評価の実施を義務づけました。
ここで重要な点は、政府活動への正当性の確保が必要になり、そのために、議会のみならず国民にとっても信頼性の高い情報の活用が不可欠となり、党派性やバイアスから自由な独立した組織との関係を強化したということであると考えます。
次に、二点目の話、つまり、国際比較の視点から、日本は評価政策と評価文化の成熟度の程度はどういった位置づけにあり、それはなぜかについて、簡潔にお話をしたいと思います。
表は、二〇一五年のジェイコブらによる評価文化の成熟度に関する調査において対象となったOECD諸国十九カ国の中での日本の順位を示しています。下から六番目に位置しています。また、評価政策については、公式化されているとともに十分に確立した国に分類された国々に日本も位置しておりますが、その中で最下位に位置しています。
評価を下げている最大の原因は、数値からも明らかなとおり、六、議会における評価の実施と結果の利用に向けた制度化の程度、配点はゼロから二点でなされておりますが、そのうちの〇・三です。参考としている論文において、日本の評価の低さの理由について明確な説明はありません。
しかし、他国の議会の中には、一、議会みずからが評価を行う場合や、二、独立性の高い機関が評価を行うことを議会が求め、議会が法律の策定や修正を行う場合、三、議会における予算審議の中で行政機関が行った評価情報を利用する場合などがあることを説明しており、日本はこれらに該当しないと判断されたと推測できます。
以上となります。御清聴ありがとうございました。(拍手)