吉田恒雄の発言 (厚生労働委員会)

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○吉田参考人 おはようございます。ただいま御紹介いただきました、駿河台大学の吉田でございます。
 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、これまで児童虐待の問題に関しまして、法律学の立場から研究してまいりました。その関係から、今回の児童福祉法の改正に関連して、児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会の座長を務めさせていただきました。本日は、それらの経験を踏まえまして、児童虐待防止に対する司法関与のあり方につきまして、私なりの見解を述べさせていただきたいと思います。
 本日は、短い時間でありますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、児童虐待防止における司法関与の必要性から始めまして、法改正の内容に沿って、一時保護に対する司法関与、保護者指導に関する司法関与、接近禁止命令制度の見直しについて順次述べさせていただきたいと思います。
 まず、児童虐待防止における司法関与の必要性についてであります。
 既に御案内のように、児童相談所における児童虐待対応件数は大幅に増加しております。それに伴いまして、対応困難なケース、これもふえているというところでございます。
 児童虐待対応におきまして、児童相談所では、最終的に施設や里親さんに委託されるというのは児童相談の五%程度。圧倒的に多くの数は、親子が同居したままの対応になります。在宅指導、在宅支援というふうに言っております。その分だけ在宅支援の充実性というのは高まっておりますし、また、本来そうしたものでなければいけないはずです。このようにして、より実効性のある在宅支援、これをどう行うのかということが問題になってきます。
 児童虐待の対応におきましては、施設入所や一時保護だけではなくて、在宅の場合におきましても、親にカウンセリングを受けてもらったり、一定の行為を求めるということになりますので、親や子供への人権の配慮、これが必要になってきます。
 そこで、児童相談所の措置が適切に行われているかどうか、これを裁判所がチェックする、また、児童相談所と親との対立関係を調整する、そうした機能、これも必要になるのではないかと思います。そうした意味で、中立的な判断機関である裁判所が関与して、客観的な立場から指導の適切性をチェックし、そして、それをもって親が指導に応じ、適切な環境で子供が育つ、これを目指すというのが本来の姿ではないかと思います。
 加えまして、昨年の児童福祉法改正によりまして、児童虐待対応の基本原則として子供の権利保障と家庭養育の原則が明記されました。そこで、親及び子供の権利保障と手続の適正を確保する、そして、在宅での養育環境を改善して、できる限り子供が家庭において養育されるようにすることが必要である、そうしたために、児童虐待対応において司法関与のあり方を見直すこととされました。
 しかし、実際に司法関与を強化するとなりますと、児童相談所の体制の整備、また家庭裁判所の体制の整備というのが必要になってこようかと思います。現在、これを早急に実現するというのは大変難しいということもあろうかと思いますので、この実情というものを踏まえなければいけない。またもう一つは、こうした手続を設けることによって子供の保護にかえって時間を要するということになりますと、本来の目的に反することになりますので、現状で対応可能な制度を構築するというところが現実的ではないかと思われます。
 次に、一時保護における司法関与であります。
 一時保護に関しましては、虐待等で保護されるという子供に関しまして、安全確保、また状況の把握ということを目的に、児童相談所によって一時保護がなされることがあります。
 現在の一時保護は、親の同意がある場合はもちろんですけれども、親や子供の同意なくても職権で強制的に保護することができる、こういう職権一時保護という制度があります。
 この職権一時保護によりますと、子供を養育する親の権利、親に養育される子供の権利という観点からしますと、これらの権利を侵害する、こういうおそれが出てきます。また、就学児に関しましては、学校に通えないという場面も出てきますし、さらに、子供の安全確保のために一時保護所内での行動制限がなされるということもあります。
 このようにして、職権一時保護におきましては、人権保障の観点から、何らかの形で第三者がこれをチェックする、裁判所の関与が必要になってくるんじゃないかというふうに思われます。あわせて、国連の子どもの権利条約九条、その趣旨に鑑みますと、一時保護に司法審査を導入するということ、これは望ましい対応であると言えるかと思います。
 改正の方向性ということでありますけれども、一時保護によって子供の保護に支障が生じないようにするということで、まず、緊急の場合には裁判所の関与を必要としないということでよろしいのではないか。そして、現状の児童相談所、家庭裁判所の体制に即して、現在の一時保護の期間二カ月を考慮し、親が同意しない場合に、そして二カ月を超える場合に家庭裁判所の審査を導入するということに、まずここから始めて、そして、制度を実施した後、その実情や効果を検証しながらさらに見直しを加えていくという今回の改正案は、妥当な内容ではないかというふうに思われます。
 このように考えたところで現在の一時保護の状況を見ますと、親が同意せず、かつ二カ月を超えるケースというのは、一年間では児童相談所では二件、家庭裁判所では一件ということでありますので、これであれば十分対応できるだろうと思われます。
 今後の課題でありますけれども、立法上の課題として、全ての一時保護に司法審査を要するという意見もありますけれども、現状では早急に実現することは難しいだろうというふうに思いますので、今後の見直しに委ねたい、それが相当であろうと思います。
 運用につきましては、現在の一時保護を延長するというところで裁判所が関与するというときに、親の同意なく施設入所等の措置をするための手続として児童福祉法二十八条の手続がありますので、それとの異同、また、そのような親の同意なしの施設入所に対する入所措置の更新手続、これも、二カ月というところで家庭裁判所の承認制度がありますので、これとどう区別するのか、その手続とそれから要件、これがまず必要になろうかと思います。
 これに関しましては、家庭裁判所の家事審判ということでありますので、そちらの方の積み重ねを待つ必要があろう。
 そして、児童相談所の実務でありますけれども、この点に関しましては、特に、親の同意があって一時保護をする、だけれども、途中で同意が翻されるおそれがある、こういうことも出てくるとなると、同意確保をどのように行うのか、その同意の中身をどう判断するのかというところも実務上大事になってくるだろうというので、今後、運用に関してはこのあたりの詰めが必要になろうかと思います。
 二点目は、保護者指導に関する司法関与でありますけれども、今お話ししましたように、家庭養育の原則が明記されたというところで、なるべく家庭で育てるようにしたい。しかし、実際には、児童相談所の指導に従わない、こういう親御さんもおられます。その結果、子供の安全が十分に確保されないとなると、これは何らかの対応が必要になってくるだろうというので、ここで裁判所が保護者指導に関して何らかの関与をするという制度が必要になるだろう。この場合にも、やはり、親の行動制限につながっていきますので、司法関与の必要性は出てくるだろうというふうに思われます。
 こうやって、裁判所という第三者もこれを認めているんだ、指導の必要性を認めているんだということを明らかにすることによって、親がそれに従う、それに応ずる可能性が出てくるわけですね。こうした対立関係を緩和するということもこの制度の中に含まれた目的ではないかと思われます。
 このような実効性ある保護者指導を行うということで、まずは現行法制度を十分に使う必要がありますけれども、今回の提案では、二十八条の施設入所等の承認審判の前段階として行うということで、実際に施設入所をしなくても親子同居のまま親に児童相談所の指導に従わせることができる、こういう仕組みがとられました。また、施設入所の必要性がないというので却下された場合であっても、裁判所からこの指導に従うよう都道府県に勧告するという制度ができましたので、在宅指導におけるその効果がこれによって高まるのではないかというふうに思われます。
 もっとも、これを実現するためには、児童相談所が、単に裁判所のお墨つきがあるから親が言うことを聞くというものではない。当然、児童相談所によるカウンセリング、その他指導の実効性を高めなければ、要は、児童相談所の対応力を高めなければ、これは絵に描いた餅に終わるだろうというふうに思われますので、こうした意味での児童相談所の体制整備ということが必要になろうかと思います。
 こうした観点からしますと、改正法案というのは、特に司法関与という点でいいますと、裁判所がこれに、こうした在宅の場合にも関与するようになったということ。そして、実効性を見る上で、裁判所と児童相談所の情報交換、これがより緊密に行われるということが期待されますので、より適切な指導というのが今後なされるということを期待しております。
 最後、接近禁止命令でありますけれども、子供が施設を出た後、または性虐待を受けた子供が親族方で暮らしているというような場合に、親が強硬に引き取りを求めたり、接触を求めてきたりということで、子供の安全を図る必要があります。現行法では、施設入所措置がとられるという場合に即しての接近禁止命令でありますけれども、実際には、同意で入所をしている場合であったり、一時保護の場合であったりという場面でもやはり接近禁止が必要だというので、今回、そのように接近禁止の対象を広げています。こうやって幅広く子供の保護を図っていこうということです。
 この接近禁止に関しましては、今回の改正法では、施設に入所していて、そして、面接、また通信の制限が全部なされているというときに六カ月を超えない期間なされますということでありますけれども、実効性という点では、罰則つきの行政命令として担保されているというふうに見てよろしいかと思います。
 今後、今回の接近禁止では、司法関与という点は出ておりませんけれども、実際には、これがやはり人権という点にかかわりますので、特に、運用に関しましてはこうした配慮が必要であろう。
 最後になりますけれども、今回の改正でさまざま、虐待された子供の保護、支援の充実が行われる、そして裁判所の関与が広がるという点で、歓迎したいと思います。
 今後は、この改正法を実際にケースに即して十分に活用して、そして次の見直しにつなげる、これによって司法制度、また児童福祉制度、これをさらに充実することにつなげたい、それが必要ではないかというふうに思います。
 御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 吉田恒雄

speaker_id: 25836

日付: 2017-05-30

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会