松田文雄の発言 (厚生労働委員会)

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○松田参考人 広島から参りました松田でございます。
 自己紹介の資料をごらんいただければと思いますけれども、たくさんあります。まず、これが現状です。私一人がなぜこれだけのことをしなければならないのか、これが恐らく一つの大きな問題ではないだろうかというふうに考えております。
 私の経歴を見ていただければおわかりになると思いますが、私は精神科医です。特に児童思春期精神医療の臨床家です。その立場から、きょう話をさせていただきたいと思います。
 本日は、本当に、このような機会を与えてくださり、ありがとうございます。
 三十七年間、さまざまな臨床経験から、虐待を背景とした児童思春期の子供とその家族、関係諸機関とのかかわりを持ってきました。また、私自身は、児童思春期にとどまらず、全年齢層の診療も行っております。一歳から百歳まで診療を行っております。虐待を背景とし、二十年以上フォローしているケースもたくさんございます。あるいは、みずから虐待をしてしまいそうだと、非常にまれではございますけれども、受診される方もおられます。
 直接、子供たちと面接をすることが主な役割でございますが、児童相談所など関係諸機関との連携、専門家に対する助言等を行う指導的な役割、専門家、一般大衆に向けての研修会、講演などを行ってまいりました。もちろん、虐待の早期発見、保護にとどまらず、児童精神科医を含めた子供の心の専門家の育成、被虐待児に対する長期的な専門的関与、そして親になることへの専門的関与など、課題は多くあると思います。
 そこで、資料の最後に、実際の私自身の取り組みも含めまして、児童虐待に関する課題、五つほどこれから述べさせていただきたいと思います。
 まず一番、医療、特に私の場合は精神医療と、教育、福祉、司法など関連諸機関との連携という観点でございます。
 広島で二〇〇〇年にバスジャック事件が起こりました。その翌年、私を含めた五名の精神科医師が立ち上がりました。資料の(6)の最後に挙げております、少年司法と思春期精神医療の対話・懇話会というものを民間で実は立ち上げました。もう十六年、年二回の事例検討、検討会を実施しております。有志が集まりまして、会費を払って、それぞれの役割から多職種がさまざまな検討を行うという場でございます。
 例えば、そのメンバーの職種を御紹介いたします。家庭裁判所調査官、家庭裁判所判事、これも、私の意見書を見て、この会にぜひ参加したいと御自身が個人的に参加をされました。弁護士、精神科医、心理士、保護観察官、児童相談所こども家庭センタースタッフ、自立支援施設スタッフ、県警育成官、少年院スタッフ、少年鑑別所スタッフ、児童心理施設スタッフ、大学院の法学者、そして一番新しいところでは検事、これは私の少年司法の講演を聞いて、この会にぜひ参加したいと。そういう多職種が集まって、各立場から、一人の少年に関するさまざまな意見交換、地域で抱えるという取り組みを行ってまいりました。
 こういった連携の場が、恐らく、広島だけではなくて、全国的にも必要なのではないだろうかということで、実は他県でもこういった動きが始まっております。
 二つ目、心理的虐待は全ての虐待に併存するという観点です。
 特に、児童青年精神医療の重要性あるいは医療体制の整備ということで、広島県では、発達障害児(者)医療体制に係る検討会が発足し、私が座長をしておりますけれども、三年目に入りました。特に、発達障害の子供は虐待を受けやすいという報告もありますし、あるいは、虐待、愛着障害との鑑別、診断等を含めますと、発達障害のみならず、全ての子供あるいは思春期の精神疾患の診断、見立てが必要となります。特に、県内全域でのかかりつけ医も含めた専門家の育成、医療体制のシステムを構築する方向で、検討会、研修会を開催しております。具体的な実態調査のために、今年度からはワーキンググループができました。小児科医と精神科医との連携についても、具体的な実態を把握し、方向性を今後検討する予定になっております。
 三番目、虐待を受けた子供の二次的障害に対する精神医療体制の整備。
 その専門家が、二次障害として、そこに書いてありますような、アタッチメント障害、うつ病、パーソナリティー障害、物質使用障害、不安障害、PTSD、解離性障害、身体化障害、摂食障害等、多くの二次障害を併存することがわかっております。また、具体的な診断名はつかなくても、大人に対する反抗的な態度、攻撃性、非行の問題、少年犯罪、学業不振、怠学、引きこもり、家庭内暴力、未成年の喫煙、アルコール依存、肥満等を含む生活習慣病など、多々の問題が生じております。
 私自身、虐待を背景としたケース、たくさん、現在もかかわっております。
 例えば、毎日自傷行為を行って、児童養護施設から受診をされました。その子は十六歳の女の子でしたけれども、初めて私に会ったときに、人は誰も信じませんと言いました。もちろん私のことも信じないと。そうやって守っていくしかない。私は、そうやって守ってきたし、これからも守っていくんですねというふうに返事をしました。その中で信じられる人と出会えることができればいいですねというふうに、最初の面接で返したことがあります。
 あるいは、中学生の女の子、家族、親戚、全て、全ての虐待を体験した女の子でしたけれども、あるところから飛びおりようとして、これは自殺企図です、その寸前に保護されて、入院となりました。大事に持ってきた日記帳には、自傷行為による出血の跡がたくさんありました。助けてと、大きな字で何ページにもわたって書いてありました。
 あるいは、少年犯罪、重大犯罪を起こした子供の背景に虐待。例えば殺人の問題、その生育歴を詳しく見てみますと、そういった背景が認められることも珍しくありません。
 そういった子供たちの長期的なフォローが必要だと感じております。
 四番目、加害親に対する精神医療の関与というものが言われておりますけれども、非加害親に対するアプローチも非常に重要と考えております。
 例えば、性虐待を受けた娘、父親は加害親、非加害親である母親はなぜ助けてくれなかったのか、自責の念、子供の信用を失っております。うつうつとして、そこに何の助けもなく、間に入って家庭崩壊という方向で苦しんでおります。
 あるいは、それを見て育った兄弟に対するかかわり。非加害親あるいは兄弟の受診というものは、実際にはほとんどない状況です。そういったところに関する何らかの関与も必要ではないだろうかというふうに考えております。
 そして、最後に、児童福祉法における一時保護委託を児童相談所から依頼されることも珍しくありません。特に、児童思春期専門病棟を持っております関係で、こういったケースを専門的に治療するという場合もあります。その場合に、精神保健福祉法との整合性。
 恐らく、精神保健福祉法での入院であると、さまざまな手続、書類等、これに沿って手続を進めるという方向でやっております。しかし、いろいろな問題が生じます。
 例えば、医療保護入院。家族が、当然同意が必要ですけれども、加害親しかいない場合、もちろん、市長同意等、手続等の問題が改善される方向ではありますけれども、親との関係が非常に難しくなっております。特に、支援会議を開く場合に、当然、児童相談所と一緒にケースの今後を検討していくときに、少なからず、児童相談所と加害親との関係がうまくいっていない、そういう場所には参加するつもりは全くない、こういったことも実際にはあります。
 また、精神保健福祉法の場合、児童思春期に関する観点が不足しているとも言われています。特に、自発的入院、子供に同意能力があるかどうか。例えば知的障害あるいは虐待等が背景にある場合には、子供は入院に同意を簡単にしてしまう。つまり、医療保護入院ではなく、非自発的入院ではなく、自発的入院にも何らかの配慮、検討が必要ではないだろうかというふうに考えております。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 松田文雄

speaker_id: 6202

日付: 2017-05-30

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会