三谷秀史の発言 (情報監視審査会)

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○三谷参考人 それでは、着席のまま失礼いたします。
 本日は、当審査会にお招きいただきまして発言する機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。
 実は、先ほど来、個人的な感慨に浸っております。と申しますのは、お手元に私の略歴を配らせていただきましたが、昭和四十九年警察庁入庁以来、約四十年間の公務員人生の相当部分をインテリジェンスとカウンターインテリジェンス、いわゆる情報分野で過ごしてまいりました。その中でも、平成十八年から二十二年、内閣情報官を務めさせていただきました。
 この間、これも資料にございます、一部抜粋ではございますが、官邸の情報機能強化の方針というものを取りまとめ、参画いたしました。この取りまとめに際しまして、いわば積み残しましたのが二点ございます。そのうちの大きな一点が秘密保護の強化でございました。先ほど申し上げました部分の抜粋を記載しておりますが、この後、いろいろな進展あるいは関係各位の御努力により特定秘密保護法が制定され、本日、当審査会にこうしてお招きいただきまして、ある種、感無量でございます。重ねて御礼申し上げます。
 なお、本日の発言は、あくまで個人、退官した一インテリジェンスオフィサーとしての発言にすぎないことを御了解いただきたいと思いますし、また、私の経歴、インテリジェンスサイドが中心でございます。主としてインテリジェンス活動と秘密保護法ないしは当審査会との関係についてお話ししたいと思いますので、御了解賜りたいと願います。
 また、本題に入る前にどうしても申し上げたい点が一点ございます。といいますのは、情報という日本語の抱える問題点、情報という日本語の多様性ないし曖昧さでございます。
 この情報という言葉には、インテリジェンスとインフォメーションという二つの英語が入ってしまっております。しかも、このインテリジェンスとインフォメーションには、それぞれ幾つかの異なる意味がございます。このため、情報に関して議論する際あるいは意見表明する際には、どの意味で情報という言葉を使っているのかということを常に確認する必要があると思っております。さもなければ、語り手と受け手、聞き手の間に認識ギャップが生じてしまう可能性が大きいと思います。
 甚だ僣越ではございますが、その意味におきまして、本日は、可能な限り私の発言の中では情報という言葉を使わずにお話をさせていただきたいと思っております。
 それでは、本題に入らせていただきます。
 本日のキーワードは信頼でございます。
 特定秘密保護法は、まず信頼確保、醸成を実現したというのが一点目でございます。二点目は、特定秘密保護法の効果的運用には信頼関係の醸成が必要ではないかという意見でございます。それらを踏まえまして、将来に関しましてもう一点意見を申し上げたいと思います。二つ目の部分に時間を割かせていただきたいと思います。
 まず、意見表明の一点目でございます。本法の施行は大いに効果を生んでいるということでございます。
 かつて、亡くなられた町村先生は、我が国のインテリジェンスコミュニティーの最大の欠陥として、上がらない、回らない、漏れると看破されました。私、当時から、この上がらない、回らない最大の理由は、実は漏れる、漏れるがゆえにお互い信頼しない、だから上がらない、回らないではないか。すなわち、この欠点を改善するためには、漏れない状態をつくらなければならないと考えておりまして、この点、本法は極めて重大な効果を既に生みつつあるというふうに考えております。
 すなわち、インテリジェンスサイドと、その使用者たる政策サイドの間の信頼感はでき上がってきたと思います。すなわち、上がる、報告される、その情報が、インテリジェンスが活用される、さらに、インテリジェンスコミュニティーの中で信頼感が醸成され、回る、すなわちインテリジェンスの結果が共有される、あるいは友好国インテリジェンスからの信頼も上がる、提供されるモノの質と量の向上が実際実現しておるのではないかと仄聞いたします。
 さらに申し上げれば、本法の信頼醸成効果は国会と行政の間にも始まりつつある。すなわち、当審査会と対象行政機関の間に一定の信頼関係が構築されつつあるのではないかというふうに感じます。
 さはさりながらというのが、二点目の意見表明でございます。
 二点目の中で、甚だ僣越ではございますが、意見具申を三点盛り込ませていただきました。
 問題意識は、当審査会と各行政機関にいまだに相互疑心があるのではないかと報告書を読ませていただいて感じました。しからば何をなすべきかというのが意見表明の二点目であります。三点意見具申申し上げます。
 一点目は、今申し上げた、いまだ相互に疑心があるのではないかという具体的場面は、何をどこまで開示すべきか相互に模索しておられるという印象を報告書から受けました。では、これを乗り越えるために何を考えていただけばいいんだろうかというのが一点目であります。
 情報という言葉の曖昧さについては冒頭申し上げました。当審査会の名前自体が、情報監視審査会でございます。しかし、インテリジェンス監視審査会ではない。これは事実であると思います。したがいまして、特定秘密を離れて、インテリジェンス、すなわち政府の情報活動全てが調査の対象になるわけでは残念ながらないというのは事実であろうと思います。
 一方で、特定秘密の中身や指定された状況を知らなければ、その指定の適否を初め運用状況について判断ができない。したがって、インテリジェンス活動そのものなどについても開示を求めるマンデートは当審査会にあるという考えがあるということ自体は理解させていただいております。
 この二つの見解、どちらか一方が正しい、正しくないというオール・オア・ナッシングの関係ではないと思います。相互の信頼関係の上に立って、当審査会の運営が積み重ねられていく中で慣習法的に解決されるべき問題、別の言い方をしますと、信頼関係が構築されることによって、おのずと特定な問題に課題が収れんしていくのではないかというふうに感じております。もしこれが正しければ、当面、当審査会におかれましては、行政と静かではあるけれども熱い議論を重ねていただければいかがかというのが意見具申一点目でございます。
 済みません、ちょっと時間をオーバーしそうであります。急がせていただきます。
 次に、今申し上げた見解、二つの見解の相違を乗り越えるためにどうすればいいかという点でありますが、守るべき秘密、言いかえれば、秘密保護法の客体の差異、性格の差異、何を守るのか、何が秘密なのだという点に関しての相互理解があれば、お互いの信頼は進むのではないかと思います。正直申し上げて、秘密保護法で守られている情報ないし特定秘密それ自体、いろいろなものがまじってしまっていると思います。性格が異なるものを客体としているのではないかという点であります。
 例えば、政府の対外方針、その決定の過程あるいは決定されたことが当然含まれております。外交交渉の中身が含まれております。あるいはインテリジェンス活動そのものの中身も含まれておりますし、さらには、防衛という分野での部隊の運用、兵器、暗号、もろもろのものも含まれております。これを一つにくくってしまっていいんだろうかという問題意識でございます。
 そこで、具体的な例を挙げてお話しいたします。
 例えば、ヒューミント、人的情報源によるインテリジェンス活動を考えていただきたいのでありますが、ヒューミント機関が、あるいはヒューミントの担当者が、私自身かつてそうでございましたが、最も守りたいのは情報源であります。文字どおり、情報源が暴露されるということは、この情報源の命にかかわります。また、同時に、情報源を守れない組織は誰からも信頼されません。情報活動ができなくなります。
 そういう意味で、実務上、ヒューミント関係者は、情報源の人定につきましては、最も信頼する関係者、具体的には政策決定者のトップであっても情報源の人定は伏せようとします。さらには、可能な限り情報源にたどり着くヒントも伏せよう、知悉範囲を減らそう減らそうという努力をいたします。例えば、その中には、情報源との連絡方法に関するヒント、時期、場所、その他もろもろ、いろいろなものが含まれてまいります。
 この意味におきまして、ヒューミントに関する特定秘密につきましては、各種の帳簿上、文書上の記載にいろいろな工夫が入ってくると思います。あるいは、場合によっては、年次報告書の中に含まれておりますあらかじめ指定の問題が出てくると思います。この点についての御配慮をいただくことで、ヒューミント情報機関との信頼関係を築いていただけるのではないかと思います。
 時間をオーバーしておりますが、もう一つだけ例を申し上げます。衛星でございます。
 衛星によるイミントに関して言えば、衛星情報機関が最も守りたいのは何か。何がどう写っているかであります。何を写すか、撮像対象と、解像度、どこまで見えているかという問題であります。この点に十分配慮していただける第三者に対しては、衛星情報機関は通常かなりオープンな態度をとります。
 いろいろな具体例は切りがないんです。時間の関係で以後ははしょらせていただきますが、秘密の客体ごとに何が最も守られるべきかということを突き詰めていくことで相互理解の一助になるのではないかというふうに思います。ぜひ御考慮賜りたいというのが意見具申二点目であります。
 三点目は、行政機関への要請と同時に当審査会への要請でございます。
 行政機関は、みずからの特定秘密運用に対する国民の理解と信頼を確保するためにみずからが努力しなければならない、その努力する場所が、一つが当審査会であるということを肝に銘じるべきであるというふうに思いますし、当審査会におかれても、行政側をそのように導いていただきたい、このように思います。
 あえて申し添えますが、当審査会も調査団を派遣されたと聞きますイギリスの情報保安委員会と、かつて意見交換するチャンスがございました。その際に、次のような話が双方から、委員会並びに情報機関側から別個にあったことに感銘を受けました。申し上げます。当委員会、情報保安委員会は、情報機関側と敵対しているのではない、時として彼らを守ることもある、委員会は情報機関に対する理解者でもあり、中立の見張り役でもある、相互にリスペクトし、信頼しているという言葉でございます。あえて御紹介申し上げました。
 もう時間がなくなりました。
 意見表明の三点目でございます。
 近い将来、当審査会の発展形態として、あるいは当審査会のリードによる別形態によるインテリジェンスオーバーサイト委員会は設置されるべきであると考えます。そのためには、国会と行政の間、国会とインテリジェンス機関相互の間に信頼関係があることが何よりも必要かと思います。
 当審査会がその信頼関係醸成に一歩も二歩も貢献していただくことをお願いいたしまして、そして最後に、本法の成立、施行に御努力いただいた皆さん、そしてその精神を具体化していただいている当審査会、額賀会長を初めとする先生方に改めて敬意を表して、本日の意見表明とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 三谷秀史

speaker_id: 13708

日付: 2017-05-15

院: 衆議院

会議名: 情報監視審査会