熊坂義裕の発言 (東日本大震災復興特別委員会)

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○熊坂参考人 御紹介をいただきました、社会的包摂サポートセンターの熊坂でございます。
 本日は、本委員会にお招きをいただき、発言の機会を与えていただきましたことに対し、鈴木委員長を初め関係各位に御礼を申し上げます。
 早速、お手元にお配りいたしました資料をもとに、よりそいホットラインの相談内容の分析から、被災者の心のケアが求められている現状について報告をさせていただきたいと思います。この資料にお目通しください。
 まず初めに、よりそいホットラインに被災地と被災者から寄せられる電話相談は自殺念慮を有するような非常に深刻なケースが多いということを申し上げておきます。
 ちなみに、よりそいホットラインは、東日本大震災が発生した二〇一一年十月に被災経験を持つ自治体の首長などが集まって設立いたしました一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営する、二十四時間年中無休の無料包括的電話相談であります。設立当時は被災三県を対象に法人独自でスタートいたしましたが、厚生労働省、復興庁の補助金を受けまして、翌年三月十一日からは全国に広げて相談を受けております。
 毎年一千万件を超える電話アクセスをいただき、うち、相談につながった件数は毎年約二十五万件となっております。包括的相談でありますが、特別な配慮を必要とする相談者のために、ガイダンスで選べる、DV、外国語、九カ国語で対応しております、セクシュアルマイノリティーなどの専門ダイヤルを設置しております。その中に、今自殺しようと悩んでおられる方のための自殺予防回線や、主に福島県からの避難者を対象とした被災者支援回線並びに被災地の若年女性のための専門回線もあります。
 全国の番号は、フリーダイヤル〇一二〇—二七九—三三八、つなぐ・ささえるですが、岩手、宮城、福島の被災三県は、つなぐ・つつむ、二七九—二二六という全国とは別の番号を設置し、支援を手厚くしております。
 まず、一ページの下の図をごらんください。
 今すぐ自殺したい気持ちを相談したいというガイダンスを選ぶ方の割合を被災三県以外と比較いたしますと、全国では一二%であるのに比し、被災三県では二〇%を超えており、この傾向は、よりそいホットラインスタート時から続いております。被災三県の利用者は被災三県以外の倍近くも自殺予防回線を選んでいるということでございます。
 二ページのグラフをごらんください。
 平成二十八年四月から十一月までの相談表のうち、千件をランダムに抽出した被災三県の自殺予防回線の集計結果です。年代で見ると三十代がトップで、次の四十代を合わせると約六割を占めております。全国回線では四十代がトップですので、被災地の自殺専門回線への相談は若年の傾向があると言うことができます。仕事のない人の割合は約六割であり、全国と変わりがありません。相談できる人がいる割合は約三〇%に対し、いない人の割合は約五四%となっております。
 次は、三ページです。
 疾病を持っている割合は七〇%を超え、そのうちほとんどがうつ病などの精神疾患を抱えています。何らかの障害者認定をされている相談者の割合は約三割です。自殺念慮のある割合は半分以上で、今死にたいと考えている人は、自殺念慮が確認された相談の中では七割を超えています。
 四ページに移ります。
 自殺未遂の経験のある方は全体の約一四%であり、自殺念慮を確認できた相談だけを見ると三八%を超えています。頻回の自殺未遂も見られます。訴える悩みは、心と体の悩みが約八五%であり、次いで家庭の問題、仕事の悩み、人間関係の悩み、暮らしやお金の悩みと続きます。
 五ページに移ります。
 被災三県からの具体的な相談事例を六例提示します。時間の関係で、線で囲った三十代の男性の例を読み上げます。
 家族や親戚の大半が津波で亡くなった。自分も津波を体験したが、生き延びてしまった。体調を崩して受診したところ、震災によるPTSDと診断された。仕事中でもふとしたことで倒れてしまうので退職させられた。今は日雇いの派遣の仕事しかない。震災前からの借金を抱えていて支払いが滞っている。役所に行き、窮状を訴えたが、誰も聞いてくれず、生活保護は車を所有しているのでだめと言われた。相談する人もいないし、頼れる人もいない。死にたい気持ちが募っている。親も家族も皆死んだ津波で、自分も死んでいればよかったのではないか。
 次に、六ページに移ります。
 被災地では、若年者、特に若年の女性たちが支援を求めているにもかかわらず見過ごされがちだという事実が相談の中から浮かび上がってきましたことから、一昨年から専門の回線を設けました。相談できる人のいる割合は三八・五%です。三人に一人は誰にも相談できない状況にあることがわかりました。社会とのつながりは七割が持っています。これは、若い女性は学校に在籍している割合が多いためと考えられます。疾病がある割合は五二・六%、精神疾患等が多くなっております。自殺念慮は七人に一人の割合でした。
 七ページに移ります。
 被災地若年女性からの具体的な相談事例を四例提示いたします。性被害や虐待の相談も多いのですが、ここでは震災に触れている相談事例を中心にピックアップいたしました。線で囲った二十代女性の例を読み上げます。
 就活で気を張ってしまい、夜中に目が覚めてしまって電話した。震災の後、パニック障害になってから、何回も転職している。二十代前半は長期間勤め続けられたが、今は長くても半年しか続かない。家族は病気に理解がなく、若いんだから働けというプレッシャーだけがある。働かないなら追い出すと言われ、バイトしながら就活の毎日。しかし、自分にはバイトと就活を両立するのは難しい。ハローワークで相談しても、頑張れと言われるばかりで、安心できそうな職場は見つからない。目が覚めなければいいと毎晩思う。
 就労に困難を抱えながらも、働かなければいけないと思い、板挟みになっている状況があるのがわかります。若年者は社会の構成員、復興の担い手として期待されているわけですが、親との葛藤、震災トラウマを抱えている方も多く、仕事も復興も背負わなければならないストレスがあるようです。
 八ページをごらんください。
 広域避難の相談者の状況です。主に福島県から避難した方のために平成二十五年に広域避難者のための専門回線を立ち上げましたが、当初から相談者は比較的若く、疾病や障害の率が少ない皆さんでした。避難できる状況の方が避難したと言うことができるのではないかと考えています。
 その傾向は現在も変わりませんが、時がたつにつれ、疾病を持つ割合が徐々に増加し、六割近くになってきています。相談できる人がいる割合は半数弱で、多くの方が相談できる人はいません。社会的居場所のある方は三割に満たず、七割以上の方が社会的つながりを持つことができておりません。
 九ページに移ります。
 仕事の有無を見ると、男性の七割近くが仕事がない状況であり、昨年よりも、ある人が三九・九%から二八・八%へと減少しています。自殺念慮率は全体で一七・六%になっていますが、一つ一つの事例は極めて深刻なのが特徴です。
 十ページにもまたがりますが、広域避難者の具体的な相談事例を五例提示いたします。線で囲った五十代女性の例を読み上げます。
 福島で被災し、関東の公的住宅に住んでいる。ふるさとは避難地域の指定解除になったが、放射線量も高いというし、子供の進学を考えれば帰る決断はできない。夫は震災で会社もなくなり、病気で働けない。私も仕事を探しているが、見つからない。息子は大学に行きたいと言うが、学費も工面できるかどうかわからない。来年の春まではここにいられるが、支援が打ち切られたらここを出なければならない。今は家賃を払わなくていいが、来年はどうなるのか。夫と話すこともなくなってしまった。震災で何もかも変わってしまって、先の見通しも希望もない。ここには友達もいない。死ぬことを時々考えてしまう。
 避難先での就労は困難であり、職場にも学校にもいじめが発生している、家族は離散していく、住むところには不安がある、福島に帰りたいが帰れない、その中で疾病の率が増加していくという構図になっているのではないかと危惧しております。
 十一ページをごらんください。
 相談事例と相談員へのヒアリング等から、被災者の抱える生きづらさの特徴をまとめてみました。
 身近な人の死、失業、病気、家族の不和、家庭内の暴力、いじめ、借金、低収入、安定した住まいの不足など、複数の問題が複雑に絡み合っている状況にあるということが言えます。
 次に、誰にも相談できない、相談してよいと思っていないということです。相談の中では、感情を押し殺して生きている、みんな大変なのに、自分が助けてと言ってはいけない、人様に言えることではないと思っている、誰に話していいかわからない、どうしていいかわからない、頑張らなければいけないと思っているという言葉がよく聞かれます。困っていても言えない現状にあるということです。
 そして、関係性の希薄さから孤立しているということです。相談者の周囲の人間関係は仕事や家族の話が中心で、震災後にそれらを喪失した後、電話相談にしか頼れないということがあることがわかりました。
 被災者の自殺のリスクが高まっている中で、震災直後に比較すると支援団体は減少傾向にあります。支援者の不足も浮き彫りになりました。一方で、支援者の燃え尽き、疲弊も確認されています。
 また、被災地においては、県外に出る者と県内にとどまる者とに若年層が二極化していることもわかりました。若年層の流出は仕事や進学もあり、そもそも震災前からあった課題ではありますが、そこに、原発の問題、被災地から離れた方がよいと家族が勧める等の理由が加わっています。一方、県内にとどまる者の理由には、支援が手薄くなっているので自分たちが何とかしなければいけないといった震災復興に寄せる責任感も見られます。
 福島県からの相談で近年目立つようになったのは、除染等復興作業で被災地に来て、その場で就労困難に陥り、生活困窮者となるケースです。よりそいホットラインとしては、生活困窮者自立支援事業と共同で食料支援などに取り組んでいますが、これは予想外の相談でした。
 最後に、相談を受ける側として、今被災地や被災者に求められる支援について御提案申し上げます。
 相談事例から見えるのは、孤立、経済的困窮、そして被災者というアイデンティティーの揺らぎが自殺念慮の原因ではないかということです。
 多くの相談者が、もう被災のことは話せないと感じています。いつまでも被災者ではいられないと言う方もいます。これは、被災者が支援されるべき存在ではなくなり、社会から疎まれるものであるかのように思わせる風潮があるのではないでしょうか。
 広域避難者へのいじめが特徴です。私も、福島で生まれ、福島で育ちましたが、なぜ福島から避難した被災者が、福島は汚い、そばに寄るななどの罵声を浴びなければならないのでしょうか。子供たちが学校で福島出身だと言えば暴力を受けるような状況になぜなってしまったのでしょうか。
 被災された方の多くは支援の終わりを恐れております。被災者への支援を決して風化させてはなりません。被災者の皆さんが大変高い自殺リスクにさらされていると私たちは受けとめております。被災者の心の復興に向けて取り組みを政府が率先して進めることが求められていると、よりそいホットラインの運営責任者として感じております。
 まず、被災者の実情を可視化し、見える化ですね、対策を早急にとることが必要だと思います。被災者の皆さんが大変困難な状況にあることはおわかりいただけたと思います。被災者が被災について話せない気持ちとならないよう、国として被災者の実情を調査し、発信し、被災者支援に引き続き取り組み、明らかにすることが被災者の心のケアにつながると考えます。
 次に、寄り添い型支援の徹底です。医療機関や何らかの公的支援機関につながっている方は少なくありませんが、支援の縦割りにより相談者のニーズとマッチしていない事例が多く見られます。地域の社会資源の連携を効果的にするためにも、相談者一人一人にきめ細かく寄り添う支援を徹底する必要があると感じています。孤立を防ぐためにも、今以上に、被災者への見守り支援など、相談にたどり着けない当事者の掘り起こし、アウトリーチを行い、家族にも職場にも言えないことが言えるような安全な場所を地域に設置していく居場所づくりを進めていく必要があると考えます。
 そして、就労と住居の安定に向けた支援です。福島県がこの三月で住宅支援を打ち切ったことは、被災者に深刻な動揺をもたらしました。被災は自己責任ではないと政策で示す必要があります。経済的困窮者に対しての就労支援と避難者の住居確保の総合的な支援が求められていると思います。
 最後に、若年層に向けた支援も必要です。インターネットのチャット相談などの実績から、若年者へのアプローチは電話や面談では無理な場合が多いと痛感しています。置き去りにされがちな若年者の言葉にしにくい悩みを受けとめる相談機関をインターネット、SNSなどの活用で設置していくことは緊急の課題だと思います。
 以上で私の報告を終わります。
 お配りいたしました、よりそいホットラインの年次報告書等の資料もお読みいただければと存じます。
 最後まで御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 熊坂義裕

speaker_id: 22902

日付: 2017-05-25

院: 衆議院

会議名: 東日本大震災復興特別委員会