小林信一の発言 (農林水産委員会)

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○小林参考人 おはようございます。畜産経営安定法等の一部改定についての私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 今般、旧畜安法と暫定措置法が統合されて恒久法として法制化される、このことは非常によかったなというふうに思います。そして、畜産経営安定法という名前自体も非常にいいというふうに考えておりますが、残念ながら、内容は畜産経営不安定化法ではないかというふうに考えております。
 まず、改定案の問題として私が指摘したいことは、現在脆弱化が進んでいる酪農の生産基盤、特に都府県の酪農を維持発展するような内容になっていないということがまず第一点でございます。第二点は、指定生乳生産者団体による一元集荷、多元販売、その体制を壊すという可能性があるということが非常に大きな問題として指摘されると思います。
 まず、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、いわゆる不足払い法、これは三本の柱を持っていたと思います。
 まず一つは、加工原料乳地帯の生産者の再生産を確保するということで、生産者の所得の補償ということがありました。そして同時に、乳業者に対しても、安価な基準乳価によって適正な利益を確保するということ、その差額を国が不足払いをするという内容でありました。
 二点目は、国による需給調整機能ということがあります。
 そして、三点目が、指定生乳生産者団体の設立による一元集荷、多元販売、その体制を確立するということによって生産者の乳価交渉力を高めるということがありました。
 しかしながら、これまで、例えば平成十二年に行われた酪農・乳業改革によって、一と二の機能というものは既に実質的に失われております。そして、今般の改正によって、三番目の機能、つまり、指定生乳生産者団体による一元集荷、多元販売ということがなくなろうとしている。
 例えば、一、二の機能がなくなった段階で何が起こったのかと申しますと、無理な生産者によるいわゆる自主的な生産調整、あるいは平成二十年前後の飼料価格の高騰ということによって、酪農所得は急激に減少しました。平成二十一年の白書によりますと、酪農家の一時間当たりの所得というのはわずか七百六十六円、学生のアルバイト代よりも安いというような状況に落ち込んでしまっておりました。
 今回の畜安法改定によって、不足払い法の最後の柱である指定生乳生産者団体による一元集荷、多元販売体制が崩壊する可能性があると考えます。その結果、五十年前の不足払い制度以前の乳価の乱高下時代に戻るということも恐れております。
 第一に、今回の改正案は、脆弱化する酪農生産基盤、特に都府県の酪農を強化、発展する内容になっていないと申しました。むしろ、家族経営を中心とする生産基盤を崩すおそれがあります。
 具体的に申しますと、まず第一には、補給金は加工原料乳に対してのみでありまして、飲用乳は対象となっておりません。つまり、ほとんどを飲用乳として出荷する都府県の酪農にとっては、メリットがございません。都府県のセーフティーネットにはなっていないということであります。
 第二は、補給金は加工原料乳全てが対象になるということでございますが、この結果、国がこれまで強く推進してきた国産チーズ、この生産が頓挫する、そういうおそれがあると思います。法案の目的の一つとして、乳製品に生乳を仕向けやすい環境をつくるということがうたわれておりますけれども、全く反対の結果を生むのではないかというふうに思います。
 これまで、乳業メーカーが多大な投資を行ってチーズ生産を行ってきました。これが、いわば悪い言葉で言えば朝令暮改的に行うということはいかがなものか、メーカーに対しても多大な損害を与えることになるのではないかというふうに思います。
 三点目は、補給金の算定方法は今後省令等で決められるということのようですけれども、従来の固定的な支払いのままということであれば、所得補償の機能は非常に小さい。その結果、先ほど申しました平成二十年前後の飼料価格高騰や乳価低迷が再度起きたならば、再び酪農所得が急激に落ち込む、それに対処できないということになると思います。
 第二に、今回の改定案によって指定生乳生産者団体が弱体化するということで、一元集荷、多元販売体制が崩壊し、結果として、生乳の流通ですとか需給調整に混乱を来し、乳価が乱高下するおそれがあるというふうに考えます。
 まず第一に、指定団体の要件というものが書かれておったんですが、地域の販売乳量の相当量、実質的には五割以上というもの、その要件が今回の改定案ではなくなります。その結果、生産者の結集力が弱まり、生産者の乳価交渉力が低下するということにつながりかねないと思います。
 現在でも格段の力の差があるメーカーあるいは量販店の優越的な地位というものがさらに高まって、生産者が不利な立場に追いやられることで、さらに生産基盤が弱体化するということが言われております。このことは、イギリスのマーケティングボードの廃止ということで何が起こったのかということが既に示していることであります。
 第二に、問題となっている部分委託についてで、これについては、いいとこ取りをさせないようにするということのようですけれども、例えば、ある生産者が一定部分を飲用向けに指定団体以外に出荷し、それ以外を、年間を通して一定割合を指定団体に出荷するとすれば、その分はプール乳価で受け取るということができるわけですけれども、その生産者は高い乳価を享受することができますが、その高さということは、指定団体に全量を委託出荷しているその他の生産者の犠牲の上に立って高い乳価を享受するということになってしまうということであります。その結果、指定団体の競争力ですとか収益性は低下してしまうわけで、指定団体への結集力は確実に弱まるというふうに思います。
 三番目に、国は需給調整を責任を持って実行するというふうに言っておりますけれども、具体的にどのように行うのか、これが全く明確になっておりません。年間の需給調整のみならず、日々の需給調整まで国が責任を持ってやるということをどういうふうにやるのか、非常に疑問です。
 畜安法に規定されている価格安定措置等は廃止し、機構法で対処するというふうにしております。しかし、これまで機構法による調整保管というのは一度しか行われてきておらなかったわけですし、その実効性は大いに疑問とするところであります。生産過剰時の調整保管などの需給安定対策の発動要件、これを明確化するという必要があると思います。
 今回の改定内容というのは、規制改革推進会議の答申に沿ったもので、答申では、酪農所得を向上するということが目的としてうたわれておりました。しかし、その道筋は全く見えてこないものであります。むしろ生産者団体の力を弱めるということで、酪農所得の低下あるいは変動を大きくし、結果的に家族経営を中心とする酪農経営をさらに窮地に追い込むということになりかねないと思います。
 例えば今の指定団体制度というのは、都府県にとってそれほど大きなメリットというのは、生産者補給金制度自体は大きなメリットはないと思うんですが、指定団体制度があることによって北海道と都府県との協調的な発展というものができているわけですね。それが崩れることによって、いわゆる南北戦争というものが再燃する。あるいは、今の力関係でいえば北が圧倒的に大きいわけですから、さらに都府県の酪農が、北海道からの生乳ですとか牛乳の移送によってますます窮地に追い込まれ、都府県の酪農がどんどん減少していくということになりかねないと思います。
 現在でも北海道が五割以上コンスタントに生乳生産を行っております。その北海道のさらに道東地域だけで今八割でありますから、道東が日本全体の五割近くあるいは五割以上を生産しているという状況、これは特産地化になってしまって決していいことではないというふうに私は思っております。私は、酪農というのは全国津々浦々に存在する、家族酪農として存在でき得るという状況が、酪農生産にとっても、あるいは国土の保全という観点からも必要だというふうに思います。北海道一極集中ということになってしまった場合、北海道にとっても非常によくない状況が起きるというふうに考えております。
 私たちは、この十年間にわたって、酪農生産基盤の回復と持続的発展に向けての提言を三度行ってきました。お手元にその三回目の提言を配付させていただきましたので、後でお目通しをお願いしたいというふうに思います。
 この内容といたしましては、一つは、飲用乳地帯を含めた生産者の所得補償機能の強化ということによって、後継者が安心して就農できるセーフティーネットの整備が不可欠であるという点です。
 農業競争力強化支援法関連八法案の中に、収入保険制度というものがありますが、これは畜産では酪農のみが対象になっているということであります。なぜ肥育牛や養豚が対象になっていないのかというと、より有利な制度が肥育牛や養豚ではあるんだということのようですけれども、酪農のみにそうした制度が行われていないというのは不公平である、ある意味ではイコールフッティングになっていないというふうに思います。酪農についても、収入保険ではなくして、例えば酪農版のマルキンというようなものが法制化されるということを期待しております。
 もう一つは、指定団体の強化による生産者の乳価交渉力の強化ということで、現在の指定団体制度、十ブロックによる指定団体制度でも、まだまだメーカーやあるいは量販店に対して力が弱いという結果が出ております。ですから、むしろ現在の仕組みというものを強化する、指定団体を一つとか二つとかぐらいにするということの方が必要ではないか。
 三番目は、国による需給調整の機能の強化ということで、調整保管を国が責任を持って行うということが必要だと思います。
 四番目は、農地政策を米中心から畜産の視点を持った農地の畜産的な利用というものを推進する。そういうことで自給飼料に基づいた足腰の強い酪農経営をつくり上げるということが大切ですし、そのための農地の直接支払いといったようなものが不可欠ではないかというふうに考えております。
 私の意見は以上であります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 小林信一

speaker_id: 27855

日付: 2017-05-23

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会