木村圭二郎の発言 (法務委員会)

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○木村参考人 おはようございます。
 本日は、法務委員会の参考人として意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございます。
 私は、昭和六十二年に弁護士登録をし、登録後間もなく大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会に所属し、平成十九年には大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務め、昨年六月より日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務めています。
 また、コーネル大学ロースクールに留学し、ニューヨーク州でも弁護士登録をしています。
 民暴対策にはおおむね三十年かかわっていることになります。その間、五代目山口組の組長責任訴訟や暴力団組事務所の差しとめ訴訟等にかかわってまいりました。また、日弁連の代表として、国際組織犯罪に関する国連会議に出席させていただいたこともあります。
 まず、法務委員会として、これまでテロ等準備罪及びTOC条約に関し詳細な論議を重ねてこられたことに敬意を表させていただきたいと思います。
 私の方では、本日、意見陳述の項目を記載したレジュメと、テロ等準備罪の論点をQ、Aの形式で整理した資料一、立法ガイド、パラグラフ五十一の解釈に関する意見を記載した資料二を配付させていただきました。
 本日は、テロ等準備罪に賛成する立場から、資料一を参照しながら、民暴対策に関する活動を通じて得た知識や経験をもとに、レジュメの順に従ってお話をさせていただきます。もとより、意見にわたる部分は個人的見解であることをあらかじめ御了解お願いいたします。
 まず、関連法案についてですが、現在、従前の共謀罪の構成要件を厳格化したテロ等準備罪が審議されているわけですけれども、さらに、自民・無所属の会、公明及び日本維新の会の修正案、与党側修正案と言います、と民進党・無所属クラブ及び自由党の対案、民進党側対案と言います、もあわせて審議されている状況にあると伺っております。
 最初に、この点について申し上げたいと思います。民進党側対案では、TOC条約は包括的な共謀罪を創設せずとも締結することが可能であるということを前提とされておられます。これまでの審議で、全体としてTOC条約に批准しなければならないことは合意形成がされながら、TOC条約の批准に共謀罪規定が必要か否かというところで意見の対立があることについては、まことに残念なことだと思っています。
 その問題についての議論は尽くされているように思いますが、私の意見は、お手元の資料一のQ3からQ5に記載のとおりです。
 Q3に対応するA3に記載のとおり、共謀罪規定はTOC条約の批准のための国内法上の義務であり、Q4に対応するA4に記載のとおり、共謀罪規定の義務を留保、回避することはできないと考えています。また、Q5に対応するA5に記載のとおり、予備罪規定ではTOC条約第五条の要件を満たすことができないことは明らかであると思っております。
 したがいまして、まことに恐れながら、民進党側の対案ではTOC条約の批准要件を満たすことができないのではないかと考えております。
 与党側の修正案につきましては、捜査上の実際の懸念に配慮を求めるというもので、特段の異論はありません。
 次に、立法ガイド、パラグラフ五十一についてですが、日弁連も、かつて、立法ガイドのパラグラフ五十一を根拠として、共謀罪も参加罪もTOC条約の義務ではないという主張をしていました。しかし、そのような主張が誤訳に基づくものであることは、英文の原文を見れば明らかだと思います。資料二に記載のとおりです。
 日弁連の平成二十九年二月十七日付のテロ等準備罪に対する反対の意見書におきましては、立法ガイド、パラグラフ五十一に関する主張は完全に抜け落ちています。平成二十九年二月の意見書で、これまで主張されていたパラグラフ五十一の記載がなくなっていることからして、パラグラフ五十一に関する日弁連の見解は撤回されたものであると私は理解しています。
 法務委員会の審議でパラグラフ五十一の解釈がいまだ論点として残っているように思われましたので、参考として資料二を提出させていただきました。
 ここで、日弁連の意見書について一言申し上げたいと思います。
 余談になりますが、現在の日弁連会長の中本和洋先生は、私が大阪弁護士会の副会長をしたときの会長でして、人格、識見に秀でた大変にすばらしい方で、私が尊敬する弁護士の一人です。しかし、残念ながら、今回のテロ等準備罪に関する日弁連の意見書には正面から反対をさせていただいています。日弁連の意見はすばらしいものが多いのですが、時に、特定の考え方を持った会員の意見が強く反映されることがあるように思います。テロ等準備罪への反対意見書もそのようなものと考えています。
 私は、弁護士が一枚岩となって反対しているという誤解を与えてはいけないと思い、呼びかけ人の一人として、百三十名の弁護士の意見として、組織犯罪対策としてのテロ等準備罪に賛成をする立場で提言書をまとめ、関係省庁及び各政党に対し送付をさせていただきました。
 これまで、日弁連は、濫用等の危険を述べて、暴対法について反対をしました。しかし、暴対法が労働組合や市民団体に適用されたということは聞いたことがありません。暴対法が施行されたおかげで暴力団の弱体化が現実のものとなり、我々が暴力団を相手とする事件において大きな力を発揮しています。
 日弁連の意見に基づき暴対法が廃案になっていたとすれば、恐ろしい事態になっていたと思います。組織犯罪処罰法にも日弁連は反対をしましたが、それが濫用されているという事実はないと思います。
 日弁連のテロ等準備罪に関する意見書は、そもそも条約等の解釈に問題があり、参考にすべきものではないと考えています。
 五番目の濫用の危険についてです。
 テロ等準備罪の濫用の危険について議論がされていますが、濫用の危険については二つの論点を分けて考える必要があると思っています。
 一つ目の論点は、テロ等準備罪の構成要件の問題です。資料一のQ8とQ9に記載しています。仮に、過度に広範な刑罰規定、処罰規定であれば、その修正が必要であることは言うまでもありません。しかし、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団の定義の核心部分として、結合関係の基礎としての共同目的が一定の重大犯罪を実行することと規定しています。この定義は組織犯罪の核心をついており、その特徴をよくあらわしていると思います。
 井田教授も指摘されておられましたけれども、テロ等準備罪の組織的犯罪集団の定義は厳格であり、通常の労働組合や市民団体がこの要件に該当する余地はないと言ってよいと思います。
 もう一つの論点は、捜査機関が誤って法執行をするという意味での濫用の問題です。完璧な人間はいませんので、さまざまな理由で、結果として間違った捜査が行われる可能性は否定できません。
 この点も井田教授と同じ意見を持っておりまして、それは刑罰規定全てに共通する問題で、テロ等準備罪の特有の問題ではありません。刑事制度全体の問題として、捜査側の不祥事も含め、間違った捜査が行われないようにするということが重要であることは言うまでもないと思います。
 お手元の資料一のQ10に対応するA10の回答で、この点を指摘させていただいています。抽象的に間違った法執行の可能性があることを理由として刑罰法規に反対するということであれば、極端に言えばあらゆる刑罰法規に反対をしなければならないことになるということを記載しております。
 私は、テロ等準備罪に特有の濫用の危険はないと考えています。
 それから、治安維持法であるとの批判についてです。
 さすがに法務委員会の議論のレベルは高く、テロ等準備罪は治安維持法の再来であるといった批判はされていないように思います。しかし、テロ等準備罪に反対をしている弁護士や集会等のビラなどでは、テロ等準備罪を治安維持法の再来と表現しています。
 お手元の資料一のQ11に記載しているとおり、治安維持法は、国体を変革することを目的とした結社を処罰し、予防拘禁制や行政検束制などにより、司法手続を経ない拘束、そして拷問までもが行われた悪法です。テロ等準備罪を治安維持法の再来と批判するのであれば、どのような事態が生ずるかについて主張される必要があると思いますが、具体的な主張はされていないように思います。
 治安維持法の問題は、旧憲法下での制度、戦時体制という時代背景が前提となっています。成熟した民主主義と司法手続、マスコミ等による監視が行き届いている現在で、治安維持法と同様の事態が生ずる可能性は皆無であると考えています。
 七番目の監視社会を招来するとの批判についてです。
 テロ等準備罪が監視社会を招来する、そういう批判がされることもあります。この論点は資料一のQ12に取り上げています。テロ等準備罪は実体法規定ですので、同法の規定が捜査手続に直接的な影響を及ぼすとは考えられません。そもそも、監視社会という批判がどのような事態を想定しているのか曖昧だと思います。
 人間関係が希薄になっている現代社会において、防犯カメラの設置や顔認証システム、サイバー空間の捜査の強化は、テロ等準備罪の導入のいかんにかかわらず、犯人検挙や犯罪抑止のために必要性が高まっていると理解しています。
 しかし、そのような必要性が高まっていることも犯罪捜査一般の問題です。テロ等準備罪を立件するために警察が日常的に適用事例を追いかけ回して捜査をする、そういったことはないと思います。
 八番目のテロ等準備罪の必要性について、簡単に申し上げます。
 私は、具体的な事件で、組織的詐欺の被害者の民事事件を二件経験したことがあります。一件は現在も係属中でして、被害は十億円を超えるものです。だまし取られた金額のほとんどが海外の預金口座に隠匿されています。また、現在破産管財人として担当している破産事件では、四十億円もの現金が海外に流出させられています。弁護士の体感として、犯罪の国際化が進んでいることを指摘させていただきたいと思います。
 TOC条約には、捜査共助や情報交換、また没収財産の被害者への返還の考慮等の規定等があり、TOC条約の批准を契機に我が国の組織犯罪捜査の国際化が進み、犯罪被害の回復が図られることには大きな意味があると思います。
 九番目のテロ対策についてです。
 東京オリンピックに向けて海外から多数の方が日本を来訪する、そのことは好ましいとはいえ、やはり国民目線としては、テロ組織や組織犯罪の関係者が紛れ込まないか、そういう不安があると思います。テロ対策としてできる限りのことをやるということで、TOC条約に批准し、海外のテロ情報を集め、我が国の安全、安心を達成していただきたいと思います。
 テロ等準備罪だけで、テロ対策や組織犯罪対策として十分であるということはありません。しかし、この罪ができることで組織犯罪に対する牽制力が発揮されることは間違いないと思います。
 次に、十番目の項目です。
 テロ等準備罪の話は離れますけれども、今回のTOC条約対応の立法で、不法収益の隠匿罪、いわゆるマネロン処罰の拡大が犯罪被害者の被害回復に大きな力を発揮する可能性があると思っています。
 具体的には、金融商品取引法百九十七条の二の無登録での有価証券取引業の規定です。それがマネロン処罰の前提犯罪となっていることです。我が国の詐欺被害は年間四百億円を超えると言われています。金商法違反をマネロン罪で立件することができれば、投資詐欺型の特殊詐欺対策として有効だと思っています。
 民暴対策委員会の活動として、FBIや司法省等の組織犯罪対策の調査に行ったことがあります。アメリカでは、刑事事件の立件というのが被害者救済と強く結びついていました。我が国でも、暴力団などの組織犯罪から被害回復をするためには、刑事事件が先行しない限り、実態解明が難しく、困難であるということが実情であります。
 終わりにということで、最後に一言です。
 犯罪者による海外への資金移転は日常的になっています。TOC条約に批准し、海外捜査機関との連携を密にし、犯罪被害回復を実現していただきたいと思っています。
 テロ等準備罪は構成要件が厳格であり、刑罰法規として特段の問題はないと考えています。TOC条約に批准するために早急に本法案を成立させる必要がある、そのことを強調させていただき、意見陳述を終えさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 木村圭二郎

speaker_id: 10187

日付: 2017-05-16

院: 衆議院

会議名: 法務委員会