法務委員会

2017-05-16 衆議院 全108発言

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会議録情報#0
平成二十九年五月十六日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 鈴木 淳司君
   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君
   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君
   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君
   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君
      赤澤 亮正君    安藤  裕君
      井野 俊郎君    奥野 信亮君
      門  博文君    菅家 一郎君
      城内  実君    國場幸之助君
      鈴木 貴子君    辻  清人君
      長尾  敬君    野中  厚君
      藤原  崇君    古田 圭一君
      宮川 典子君    宮路 拓馬君
      山田 賢司君    若狭  勝君
      枝野 幸男君    階   猛君
      山尾志桜里君    浜地 雅一君
      吉田 宣弘君    畑野 君枝君
      藤野 保史君    松浪 健太君
      上西小百合君
    …………………………………
   法務大臣政務官      井野 俊郎君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    林  眞琴君
   参考人
   (弁護士)
   (ニューヨーク州弁護士) 木村圭二郎君
   参考人
   (中央大学名誉教授)
   (弁護士)        椎橋 隆幸君
   参考人
   (弁護士)        海渡 雄一君
   参考人
   (弁護士)        加藤 健次君
   参考人
   (成城大学法学部教授)  指宿  信君
   法務委員会専門員     齋藤 育子君
    —————————————
委員の異動
五月十六日
 辞任         補欠選任
  宮路 拓馬君     長尾  敬君
同日
 辞任         補欠選任
  長尾  敬君     宮路 拓馬君
    —————————————
本日の会議に付した案件
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案(階猛君外二名提出、衆法第一七号)
     ————◇—————
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鈴木淳司#1
○鈴木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する平口洋君外四名提出の修正案並びに階猛君外二名提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案の両案及び修正案を一括して議題といたします。
 本日は、両案及び修正案審査のため、参考人として、弁護士・ニューヨーク州弁護士木村圭二郎君、中央大学名誉教授・弁護士椎橋隆幸君、弁護士海渡雄一君、弁護士加藤健次君及び成城大学法学部教授指宿信君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、木村参考人、椎橋参考人、海渡参考人、加藤参考人、指宿参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず木村参考人にお願いいたします。
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木村圭二郎#2
○木村参考人 おはようございます。
 本日は、法務委員会の参考人として意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございます。
 私は、昭和六十二年に弁護士登録をし、登録後間もなく大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会に所属し、平成十九年には大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務め、昨年六月より日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務めています。
 また、コーネル大学ロースクールに留学し、ニューヨーク州でも弁護士登録をしています。
 民暴対策にはおおむね三十年かかわっていることになります。その間、五代目山口組の組長責任訴訟や暴力団組事務所の差しとめ訴訟等にかかわってまいりました。また、日弁連の代表として、国際組織犯罪に関する国連会議に出席させていただいたこともあります。
 まず、法務委員会として、これまでテロ等準備罪及びTOC条約に関し詳細な論議を重ねてこられたことに敬意を表させていただきたいと思います。
 私の方では、本日、意見陳述の項目を記載したレジュメと、テロ等準備罪の論点をQ、Aの形式で整理した資料一、立法ガイド、パラグラフ五十一の解釈に関する意見を記載した資料二を配付させていただきました。
 本日は、テロ等準備罪に賛成する立場から、資料一を参照しながら、民暴対策に関する活動を通じて得た知識や経験をもとに、レジュメの順に従ってお話をさせていただきます。もとより、意見にわたる部分は個人的見解であることをあらかじめ御了解お願いいたします。
 まず、関連法案についてですが、現在、従前の共謀罪の構成要件を厳格化したテロ等準備罪が審議されているわけですけれども、さらに、自民・無所属の会、公明及び日本維新の会の修正案、与党側修正案と言います、と民進党・無所属クラブ及び自由党の対案、民進党側対案と言います、もあわせて審議されている状況にあると伺っております。
 最初に、この点について申し上げたいと思います。民進党側対案では、TOC条約は包括的な共謀罪を創設せずとも締結することが可能であるということを前提とされておられます。これまでの審議で、全体としてTOC条約に批准しなければならないことは合意形成がされながら、TOC条約の批准に共謀罪規定が必要か否かというところで意見の対立があることについては、まことに残念なことだと思っています。
 その問題についての議論は尽くされているように思いますが、私の意見は、お手元の資料一のQ3からQ5に記載のとおりです。
 Q3に対応するA3に記載のとおり、共謀罪規定はTOC条約の批准のための国内法上の義務であり、Q4に対応するA4に記載のとおり、共謀罪規定の義務を留保、回避することはできないと考えています。また、Q5に対応するA5に記載のとおり、予備罪規定ではTOC条約第五条の要件を満たすことができないことは明らかであると思っております。
 したがいまして、まことに恐れながら、民進党側の対案ではTOC条約の批准要件を満たすことができないのではないかと考えております。
 与党側の修正案につきましては、捜査上の実際の懸念に配慮を求めるというもので、特段の異論はありません。
 次に、立法ガイド、パラグラフ五十一についてですが、日弁連も、かつて、立法ガイドのパラグラフ五十一を根拠として、共謀罪も参加罪もTOC条約の義務ではないという主張をしていました。しかし、そのような主張が誤訳に基づくものであることは、英文の原文を見れば明らかだと思います。資料二に記載のとおりです。
 日弁連の平成二十九年二月十七日付のテロ等準備罪に対する反対の意見書におきましては、立法ガイド、パラグラフ五十一に関する主張は完全に抜け落ちています。平成二十九年二月の意見書で、これまで主張されていたパラグラフ五十一の記載がなくなっていることからして、パラグラフ五十一に関する日弁連の見解は撤回されたものであると私は理解しています。
 法務委員会の審議でパラグラフ五十一の解釈がいまだ論点として残っているように思われましたので、参考として資料二を提出させていただきました。
 ここで、日弁連の意見書について一言申し上げたいと思います。
 余談になりますが、現在の日弁連会長の中本和洋先生は、私が大阪弁護士会の副会長をしたときの会長でして、人格、識見に秀でた大変にすばらしい方で、私が尊敬する弁護士の一人です。しかし、残念ながら、今回のテロ等準備罪に関する日弁連の意見書には正面から反対をさせていただいています。日弁連の意見はすばらしいものが多いのですが、時に、特定の考え方を持った会員の意見が強く反映されることがあるように思います。テロ等準備罪への反対意見書もそのようなものと考えています。
 私は、弁護士が一枚岩となって反対しているという誤解を与えてはいけないと思い、呼びかけ人の一人として、百三十名の弁護士の意見として、組織犯罪対策としてのテロ等準備罪に賛成をする立場で提言書をまとめ、関係省庁及び各政党に対し送付をさせていただきました。
 これまで、日弁連は、濫用等の危険を述べて、暴対法について反対をしました。しかし、暴対法が労働組合や市民団体に適用されたということは聞いたことがありません。暴対法が施行されたおかげで暴力団の弱体化が現実のものとなり、我々が暴力団を相手とする事件において大きな力を発揮しています。
 日弁連の意見に基づき暴対法が廃案になっていたとすれば、恐ろしい事態になっていたと思います。組織犯罪処罰法にも日弁連は反対をしましたが、それが濫用されているという事実はないと思います。
 日弁連のテロ等準備罪に関する意見書は、そもそも条約等の解釈に問題があり、参考にすべきものではないと考えています。
 五番目の濫用の危険についてです。
 テロ等準備罪の濫用の危険について議論がされていますが、濫用の危険については二つの論点を分けて考える必要があると思っています。
 一つ目の論点は、テロ等準備罪の構成要件の問題です。資料一のQ8とQ9に記載しています。仮に、過度に広範な刑罰規定、処罰規定であれば、その修正が必要であることは言うまでもありません。しかし、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団の定義の核心部分として、結合関係の基礎としての共同目的が一定の重大犯罪を実行することと規定しています。この定義は組織犯罪の核心をついており、その特徴をよくあらわしていると思います。
 井田教授も指摘されておられましたけれども、テロ等準備罪の組織的犯罪集団の定義は厳格であり、通常の労働組合や市民団体がこの要件に該当する余地はないと言ってよいと思います。
 もう一つの論点は、捜査機関が誤って法執行をするという意味での濫用の問題です。完璧な人間はいませんので、さまざまな理由で、結果として間違った捜査が行われる可能性は否定できません。
 この点も井田教授と同じ意見を持っておりまして、それは刑罰規定全てに共通する問題で、テロ等準備罪の特有の問題ではありません。刑事制度全体の問題として、捜査側の不祥事も含め、間違った捜査が行われないようにするということが重要であることは言うまでもないと思います。
 お手元の資料一のQ10に対応するA10の回答で、この点を指摘させていただいています。抽象的に間違った法執行の可能性があることを理由として刑罰法規に反対するということであれば、極端に言えばあらゆる刑罰法規に反対をしなければならないことになるということを記載しております。
 私は、テロ等準備罪に特有の濫用の危険はないと考えています。
 それから、治安維持法であるとの批判についてです。
 さすがに法務委員会の議論のレベルは高く、テロ等準備罪は治安維持法の再来であるといった批判はされていないように思います。しかし、テロ等準備罪に反対をしている弁護士や集会等のビラなどでは、テロ等準備罪を治安維持法の再来と表現しています。
 お手元の資料一のQ11に記載しているとおり、治安維持法は、国体を変革することを目的とした結社を処罰し、予防拘禁制や行政検束制などにより、司法手続を経ない拘束、そして拷問までもが行われた悪法です。テロ等準備罪を治安維持法の再来と批判するのであれば、どのような事態が生ずるかについて主張される必要があると思いますが、具体的な主張はされていないように思います。
 治安維持法の問題は、旧憲法下での制度、戦時体制という時代背景が前提となっています。成熟した民主主義と司法手続、マスコミ等による監視が行き届いている現在で、治安維持法と同様の事態が生ずる可能性は皆無であると考えています。
 七番目の監視社会を招来するとの批判についてです。
 テロ等準備罪が監視社会を招来する、そういう批判がされることもあります。この論点は資料一のQ12に取り上げています。テロ等準備罪は実体法規定ですので、同法の規定が捜査手続に直接的な影響を及ぼすとは考えられません。そもそも、監視社会という批判がどのような事態を想定しているのか曖昧だと思います。
 人間関係が希薄になっている現代社会において、防犯カメラの設置や顔認証システム、サイバー空間の捜査の強化は、テロ等準備罪の導入のいかんにかかわらず、犯人検挙や犯罪抑止のために必要性が高まっていると理解しています。
 しかし、そのような必要性が高まっていることも犯罪捜査一般の問題です。テロ等準備罪を立件するために警察が日常的に適用事例を追いかけ回して捜査をする、そういったことはないと思います。
 八番目のテロ等準備罪の必要性について、簡単に申し上げます。
 私は、具体的な事件で、組織的詐欺の被害者の民事事件を二件経験したことがあります。一件は現在も係属中でして、被害は十億円を超えるものです。だまし取られた金額のほとんどが海外の預金口座に隠匿されています。また、現在破産管財人として担当している破産事件では、四十億円もの現金が海外に流出させられています。弁護士の体感として、犯罪の国際化が進んでいることを指摘させていただきたいと思います。
 TOC条約には、捜査共助や情報交換、また没収財産の被害者への返還の考慮等の規定等があり、TOC条約の批准を契機に我が国の組織犯罪捜査の国際化が進み、犯罪被害の回復が図られることには大きな意味があると思います。
 九番目のテロ対策についてです。
 東京オリンピックに向けて海外から多数の方が日本を来訪する、そのことは好ましいとはいえ、やはり国民目線としては、テロ組織や組織犯罪の関係者が紛れ込まないか、そういう不安があると思います。テロ対策としてできる限りのことをやるということで、TOC条約に批准し、海外のテロ情報を集め、我が国の安全、安心を達成していただきたいと思います。
 テロ等準備罪だけで、テロ対策や組織犯罪対策として十分であるということはありません。しかし、この罪ができることで組織犯罪に対する牽制力が発揮されることは間違いないと思います。
 次に、十番目の項目です。
 テロ等準備罪の話は離れますけれども、今回のTOC条約対応の立法で、不法収益の隠匿罪、いわゆるマネロン処罰の拡大が犯罪被害者の被害回復に大きな力を発揮する可能性があると思っています。
 具体的には、金融商品取引法百九十七条の二の無登録での有価証券取引業の規定です。それがマネロン処罰の前提犯罪となっていることです。我が国の詐欺被害は年間四百億円を超えると言われています。金商法違反をマネロン罪で立件することができれば、投資詐欺型の特殊詐欺対策として有効だと思っています。
 民暴対策委員会の活動として、FBIや司法省等の組織犯罪対策の調査に行ったことがあります。アメリカでは、刑事事件の立件というのが被害者救済と強く結びついていました。我が国でも、暴力団などの組織犯罪から被害回復をするためには、刑事事件が先行しない限り、実態解明が難しく、困難であるということが実情であります。
 終わりにということで、最後に一言です。
 犯罪者による海外への資金移転は日常的になっています。TOC条約に批准し、海外捜査機関との連携を密にし、犯罪被害回復を実現していただきたいと思っています。
 テロ等準備罪は構成要件が厳格であり、刑罰法規として特段の問題はないと考えています。TOC条約に批准するために早急に本法案を成立させる必要がある、そのことを強調させていただき、意見陳述を終えさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。拍手
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鈴木淳司#3
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 次に、椎橋参考人にお願いいたします。
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椎橋隆幸#4
○椎橋参考人 中央大学名誉教授、弁護士の椎橋隆幸でございます。
 本日は、このような委員会で陳述する機会を与えていただき、光栄に存じます。
 私は、テロ等準備罪法案に賛成の立場から陳述させていただきたいと思います。今の木村先生のお話と内容的に重複する面もございますけれども、御容赦いただきたいと思います。
 まず、本法案は、国際組織犯罪防止条約を締結して、国際社会と協調して国際的な組織犯罪を防止、根絶するための協調体制をとる必要があるということと、他面で、実質的に考えて、テロが九・一一以降世界各地で頻発して日本人がその犠牲になる、あるいは日本がその標的になるという事実がございまして、テロの危険が日本に迫っている、テロの危機が増大しているという中で、国民の生命、安全、財産を保護するという必要、この二つの側面があるというふうに考えております。
 まず、国際組織犯罪防止条約、以下TOC条約と言わせていただくことが多いかと思いますが、その中身等についてお話しさせていただきたいと思います。
 テロを含む組織犯罪、これは犯罪組織による薬物密輸でありますとか銃器の不正取引、人身売買、マネーロンダリング等々でございますけれども、この防止、根絶を目的とした条約であります。
 この種の組織犯罪によりまして犯罪組織は多額の利益を不正に得て、大きな勢力となって、一国の民主主義政治決定過程にも不当な影響を及ぼしたり、あるいは自由な経済体制にも悪影響を与えてきております。このような組織犯罪の犠牲になるのは一般の人々、特に子供や女性といった社会的弱者にも及んでおります。この犠牲となる女性とか子供の人権を守るためにもTOC条約は必要であるというふうに考えます。
 この条約は、国際刑事法条約であることはもちろんですが、同時に、今申しましたように人権条約というような性格も持っているわけであります。このような条約の趣旨が国会議員の先生方の間でも理解、共有されて、平成十五年、二〇〇三年五月に、TOC条約は、留保を付することなく、圧倒的多数をもって国会で承認されております。
 次に、国際犯罪組織を効果的に防止、根絶するためには、国際社会と緊密に連携することが必要不可欠でございます。TOC条約の締結によりまして、逃亡犯罪人の引き渡し、捜査共助の効率化、情報交換の円滑化が可能となります。この実際的効果というのは、テロ等組織犯罪の防止、撲滅という点では非常に重要な効果を持つものでございます。
 現在、百八十七の国と地域がTOC条約を締結しており、未締結国は我が国を含む十一カ国のみというふうになっております。この状況も、世界的に考えて、直視しなければいけないだろう。テロを含む組織犯罪を未然に防止し、摘発する上で、我が国は、国際的取り組みの中で組織犯罪の抜け穴になってしまうという事態を避けなければなりませんし、それと同時にというか、むしろそれ以上に、世界における経済的あるいは政治的な地位というものを考えますと、その国にふさわしい積極的なリーダーシップを持った取り組みが必要なのではないかというふうに私は考えております。
 それから、TOC条約の内容でありますけれども、もともとからこれはテロ対策というものが含まれているということであります。テロ対策かそうでないかというような議論は余り意味がないのではないかというふうに思っております。
 むしろ、テロ犯罪というのは組織犯罪の典型でありまして、テロそのもの以外に、テロ集団は、そのテロ活動を行うための活動資金を獲得するために女性や子供の誘拐、身の代金要求、人身売買、薬物、銃器の売買を行う。これは、世界各地で起こっているいろいろなことにもよくあらわれていると思います。
 そして、TOC条約というのはテロ対策も含んでいるというのは、このTOC条約ができたときの国連総会決議においてもその趣旨のことが表明されておりますし、それから二〇一四年十二月に採択された国連安保理決議においても、テロ防止へ共同に取り組む必要性とTOC条約等への加入等を加盟国に求めております。
 それから、経済協力開発機構の金融活動作業部会、FATF、これは国際組織犯罪対策をまとめる上で非常に重要な役割を果たしている会議でありますけれども、この勧告が数多く出されております。特にその中でも二〇一二年二月に統合、改定された四十の勧告及び特別勧告は、我が国に対して、TOC条約を締結していないということ、それからテロリストの資金に関する凍結義務を十分に実施していないと、かなり手厳しい指摘をされております。
 他方で、我が国はテロ対策が十分だという御議論もあります。実際、十三のテロ防止関連条約を締結しておりますけれども、しかし、必ずしもこれだけではテロ対策としては十分ではないというふうに思います。十三のテロ防止関連条約でカバーできない態様のテロについて、TOC条約は対応できるという面がございます。
 例えば、テロ対策の関連条約の中で、包括的といいますか、一番よく引き合いに出されるテロ資金提供処罰法について申し上げますと、公衆等脅迫目的の犯罪行為について、公衆または国もしくは外国政府を脅迫する目的をもって行われることを要件としている。これは第一条にその規定がありますけれども、この目的のない犯罪行為のために資金等を受領してもこの条約によって処罰されないということになります。それから、もっと広く、薬物に関する犯罪、人身に関する搾取犯罪、資金源に関する犯罪、司法妨害に関する犯罪のほとんどが同法の対象犯罪には当たらないわけであります。この穴を埋めるというか、テロ等準備罪にはその役割を果たされることが期待されると思います。
 次に、国際組織犯罪防止条約の要請でありますけれども、これはレジュメに書いてあるように、TOC条約の要請に従って、共謀罪または参加罪の創設、あるいは資金洗浄、腐敗行為、司法妨害。これについてはそれぞれ、共謀罪は新設、それ以外のものについては、証人等買収罪を新設する、組織犯罪処罰法の拡大、あるいは贈賄罪の国外犯処罰規定の整備というような形で対応しているということであります。
 それから、次に、現行法のままで国際組織犯罪防止条約を締結できるかということでありますが、これは先ほどの木村先生の御発言とかなりかぶるところではありますけれども、非常に重要なことでありますので申し上げますと、条約の五条一項(a)号には、加盟国に参加罪か共謀罪かの少なくとも一方を犯罪化することを義務づけている。これはマストであります。シャルであります。
 立法ガイド、パラグラフの五十一及び五十五というのがあります。これは必ずしもそれに従う必要はないという解釈がされているわけでありますけれども、これを五条一項との関係で素直に読めば、共謀罪を持たない締約国が参加罪を導入した場合に共謀罪の導入を求めるものではなく、その逆も同様であるというふうに、片方を持っていればいいということであります。しかし、片方は持っていなければいけないということです。
 それから、その国の原理原則、制度との兼ね合いの問題につきましては、例えば導入する共謀罪の規定ぶりはそのまま条約を直訳しないでいい、規定ぶりについては締約国に任せる。それから、犯罪阻却事由等をどうするかというような法原則については締約国に委ねられている。だから、他方で、絞るという意味で重大犯罪に限ると限定をするのも、この趣旨によって生かされているということだと思います。
 それから、次に、テロ等準備罪について。
 我が国はテロ等準備罪を考えている、それは共謀罪型のテロ等準備罪ということでありますけれども、もちろん、るるこの間に指摘されてきておりますように、非常に厳格な要件というものが課されているということによって、前に言われた共謀罪とは大きく異なっているということであります。
 時間が余りなくなりましたので、この中で特に問題になりそうなことを申し上げますと、まず、テロ等準備罪が成立するためには、一定の対象犯罪である重大な犯罪の実行を目的とする組織的犯罪集団が、団体の活動として、重大な犯罪を実行するための組織によって行われるということが要件としてございます。
 これは、組織的犯罪集団ということによってかなりその対象が限定されるということが言えると思います。テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団というものがこれに当たるということでありまして、労働組合とか市民団体、宗教団体、学生のサークル活動というのはこれには当たらない。この関係で、世上、いろいろな、こういう場合は危ないんじゃないかというふうに言われているものがございますけれども、まずこの要件に当たらないということで抜け落ちるものがたくさんございます。
 それから、捜査権限は拡大するんじゃないかというようなことが言われておりますけれども、しかし、これは、まずテロ等準備罪は実体法の改正でありまして、手続法の改正は予定されておりません。ですから、手続法の分野である捜査権が拡大されるものではありません。それから、手続法は実体法によって規制されるものでありまして、テロ等準備罪が成立するためには、組織的犯罪集団、計画、実行準備行為、この三つの厳格な要件が求められております。適用対象が組織的犯罪集団に限定されていることによって捜査の対象も組織的犯罪集団の構成員や周辺者に限定されるということになりますし、計画に基づいた実行準備行為がなければ、捜査、特に強制処分である逮捕等もできません。捜査機関の判断次第で捜査権限が歯どめなく拡大していくとの議論は現実的ではないと思います。
 それから、最後に、我が国の刑事司法システムというのは、警察、検察、裁判所という機関等から成っております。
 そこで、考えてみますと、警察は警察で、犯罪の嫌疑がなければ捜査というものはできませんし、検察は、公訴を維持できる、有罪の高度の見込みがあるというものでなければ起訴しません。また、起訴できると判断して起訴したという場合でも、その後、公平中立な裁判体が起訴事実について合理的な疑いを超えるまで証明しなければならない、有罪を認定できないという厳しいハードルがそれぞれあります。したがって、私は、こういう法運用のあり方というのは、今、基本的には健全に機能していると思われますので、テロ等準備罪の適用においてもこのような形で法運用は行われるというふうに信じております。具体的な点については、後でもし機会があれば申し上げたいと思います。
 これで終わりたいと思います。ありがとうございました。拍手
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鈴木淳司#5
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 次に、海渡参考人にお願いいたします。
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海渡雄一#6
○海渡参考人 組織的犯罪処罰法改定案、いわゆる共謀罪法案について公述の機会をいただきましたことについて感謝いたします。
 私は日弁連の共謀罪法案対策本部の副本部長を務めておりますが、本日の意見は、日弁連の意見として断らない限り、私の個人的な意見であることを最初にお断りしておきたいと思います。
 先ほど木村参考人から、日弁連の中にはいろいろな意見があるという御意見がございましたが、全国の五十以上の単位会で、共謀罪法案については反対とする反対の意見を表明しておることをつけ加えさせていただきます。
 まず、この法案になぜ反対なのかということからお話しします。
 刑法は、犯罪の定義を定めておりますが、裏返せば、人の行動が自由である範囲を定めている法律です。犯罪とは、人の生命や身体、自由、名誉に被害を及ぼす行為として説明されてきました。
 法益の侵害またはその現実の危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動されるというシステムは、我々の社会の自由を守るための制度なのでございます。
 約三百もの多くの犯罪について共謀の段階から処罰できることとする共謀罪法案は、既遂処罰を基本としてきた我が国の刑法体系を覆し、人々の自由な行動を制限し、国家が市民社会に介入する際の境界線を大きく引き下げるものであります。
 次に、人と人との犯罪の合意をする手段は、会話、目くばせ、メール、LINEなど、人のコミュニケーションそのものによってなされます。その合意の内容が実際に犯罪に向けられたものか、実行を伴わない口先だけのものかという点は、犯罪の実行が着手されていない段階では大変難しい判断となります。その捜査は、会話、電話、メールなど、人の意思を表明する手段を収集することになります。予算委員会では、法務大臣は、共謀罪を通信傍受の対象とするかどうかは将来の課題であると明言されております。
 国連越境組織犯罪防止条約の目的は、マフィア対策、経済的な組織犯罪対策です。この条約は、決してテロ対策の条約ではありません。
 日本は、国連の十三の主要テロ対策条約について、その批准と国内法化を完了しております。法案には二月の段階でもテロの文字は全くなく、法案提出直前にテロリズム集団という言葉を法案に入れ込みましたが、この修正にはテロの定義もなく、法の適用範囲を限定する意味は全くございません。
 政府は、一月の国会審議の中で、共謀罪をつくらないとテロは防げないとして、ハイジャック犯人が航空券を買ったり、危険な化学物質の原料を調達しても、その段階で予備罪は成立しないというふうに説明しました。しかし、特別刑法の権威ある注釈書にこれらは典型的な予備行為として掲げられており、政府の説明は間違いでした。政府は、テロ対策の穴を何一つ具体的に指摘できていないのです。
 森林法、所得税法、著作権法など、組織犯罪やテロとは全く無縁で、未然防止が必要とは考えられない多くの犯罪について共謀罪をつくることが本当にテロ対策でしょうか。テロ対策としてほかにやるべきことがもっとあるのではないでしょうか。
 政府がこの法案制定の最後のよりどころとするUNODCから寄せられた口上書を見てみました。ここにも、犯罪の規定ぶりは締約国の国内法に委ねられている、本条約の犯罪化の要求を満たすために、国が定める国内法上の犯罪は、必要な行為が犯罪化される限り、本条約と全く同じ方法で規定される必要はないと、はっきりこの口上書にも述べられています。
 日本政府が二〇〇三年につくった法案が国連のガイドに沿っていなかったことは明らかです。実は、このガイドは二〇〇四年に出版されており、国内法の制定が検討されたのは二〇〇二年でした。国内法案の制定を急ぎ過ぎたためにこのガイドを参照することができなかったのであります。政府は、当初言われていたように長期四年の刑を定める全ての犯罪の共謀罪の制定が条約のために不可欠という立場は既に放棄されています。そうだとすれば、明確な基準を示して絞り込みの議論をしなければならないはずです。
 そもそも、この条約五条は何を求めていたのでしょうか。この条約は、組織犯罪集団の関与が想定される重大犯罪について、未遂に至る前に処罰可能であることを加盟国に求めているのだと思います。このことは、条約の五条に、括弧して、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪を定めなければいけないと明確に書かれていることにあらわれております。そして、この条約は国内法の原則に従って実施すればよいのです。このことは条約の三十四条に明記されています。
 条約審議以前に広範な共謀罪が制定されていた国は、イギリス、アメリカ、カナダくらいです。そして、その後に制定された国は、ノルウェーやブルガリアしか報告されていません。
 日本には、テロや暴力犯罪など、人の命や自由を守るために未然に防がなくてはならない特に重大な犯罪約七十については、共謀、陰謀罪が二十、予備、準備罪が五十あります。これによって、重大な組織犯罪、テロ犯罪の未遂以前の段階はおおむね処罰可能となっていると言えます。
 暴力団対策法そして暴排条例など日本の組織犯罪対策は、銃器の所持すら認められているアメリカと比較しても決して遜色がないというふうに言い切れると思います。
 日弁連は、これ以外に、人を殺傷する犯罪の予備段階を独立罪としている銃砲刀剣類所持取締法違反、凶器準備集合罪や、重大窃盗の予備段階を処罰しているピッキング防止法などにも着目しております。
 日弁連も政権交代時の民主党も、新たな立法なくして条約は批准できると述べてまいりましたが、二〇一一年の十一月、民主党政権のもとで、平岡法務大臣は、法務省、外務省の関係部局に対して、条約の目的、趣旨に基づいて防止すべき犯罪について、既に当該の罪について共謀罪、予備罪があるものを除いて、予備罪を創設することについてどのような問題があるかということを指示しました。平岡大臣の調査によれば、サウジアラビア、パナマなどはそういう対策をとったようでございます。当時の法務省の稲田刑事局長は、これに基づいて作業するというふうに国会でも答弁されています。
 この国会に、民進党は、組織的人身売買、組織的詐欺の二つの犯罪について予備罪を設けるという提案をされました。このような提案について、五月十二日の法務委員会審議において、畑野君枝議員の質問に対し、外務省の水嶋氏は、客観的に危険性が認められる程度の準備が整えられていなければ処罰ができないので、このような提案は条約五条の趣旨に反するおそれが高いというふうに答弁されました。
 しかし、これは過去の政府の答弁と明らかに異なっております。二〇〇五年十月二十一日の衆議院法務委員会で神余隆博氏は、オバートアクトのかわりに予備行為を要求することが条約の趣旨に反するか否かといったことについては確たる定義はないとはっきり述べておられていたのです。
 そもそも、合意を推進する行為について、どのような行為を法的に要求するかは、各国が国内法の原則に基づいて判断できる事柄です。
 また、新たに予備罪を制定すべき犯罪としてこの二つの犯罪を選択したことにも十分な根拠があると思います。
 すなわち、最終的には条約本文に残されませんでしたが、条約に重大犯罪のリストを記載すべきであるという意見がエジプト政府などから提案されておりました。きょうの参考資料の三として添付させていただきました。
 このリストは、テロ関係の犯罪について入れるということについて反対意見があった。日本も反対したんですけれども、結局条約の中に採択はされませんでしたけれども、十五項目しかありません。長期四年以上の刑を定める六百七十六の犯罪の中から絞り込みを行うとすれば、このリストに従う以外にないのです。
 さらに、日弁連と法務省が新たな立法は不要であるという意見を公表した二〇〇六年、この年、法務省が二〇〇六年の十月の六日に公表されているペーパーの中では、この提案に対して、組織犯罪が行うことが容易に想定できる詐欺罪、人身売買が抜けている、そういう意見を述べられています。その段階で恐らく法務省は、我々が今見ているリストと同じものを見て、その中から抜けている二つを提案されたのではないかというふうに思われるわけです。
 この二つの予備罪を加えることで、日本では合計七十四の重大犯罪について未遂以前の処罰が可能となります。これは、外務省が調べた重大犯罪の数、自民党の部会に配られたもののようですが、きょうの資料に参考資料四として添付しておきましたが、スペインでは四十六個しかありません。外務省が数えたとされる数字でも、北欧諸国などは七十ぐらいです。この数字と比べても、特に少ない数字ではないのです。
 今回の民進党の提案は、先ほどの平岡法務大臣の指示に沿って立案されたもので、バランスがとれており、我が国のこれまでの刑事法の法原則にも合致するものです。私は、この案に個人的に大賛成です。このような抑制のとれた考え方に基づいて、与野党で真剣な協議をしていただきたいと思います。
 きょうの、先ほど見ました椎橋先生のペーパーの三ページにも、人身売買と詐欺以外にあと三つぐらいの犯罪がつけ加えられていますが、それ以上の指摘はされていないということも言いたいと思います。
 また、二〇〇七年の段階で、自民党は小委員会案というものをつくられていました。この小委員会案では、対象犯罪は百二十八まで絞られ、自首の必要的減免規定なども削除されていました。それでいいとまで私は言いませんが、政府・与党の姿勢が後退しているのではないかというふうに指摘せざるを得ません。
 私は、沖縄で既に弾圧の道具に使われている威力業務妨害罪に着目したいと思います。組織犯罪処罰法が一九九九年に制定されましたが、この段階以前には、威力業務妨害罪、強要罪、信用毀損罪などは、法定刑は長期三年でした。共謀罪の対象犯罪とはされない刑期だったんです。それが、九九年に法定刑が引き上げられ、共謀罪に取り入れられました。もともとこれらの犯罪は、構成要件が曖昧で、弾圧法規として使われてきた問題のある犯罪です。これらの犯罪一つだけでも、治安維持法に匹敵する濫用の危険性があるというふうに私は思っております。
 自民党の二〇〇七年の小委員会案では、今申し上げたこれらの犯罪は共謀罪の対象から除外していただいていたのでございます。前回、早川忠孝先生がここに来られましたけれども、早川先生がつくられたときの案からは除かれていたのでございます。なぜこのような極めて危険性の高い共謀罪が復活しているのか、私には全く理解できません。組織的威力業務妨害罪、組織的強要罪、組織的信用毀損罪の共謀罪は、真っ先に削除するべきだというふうに考えます。
 本日の公述では、法案に関する問題点を数々提起させていただきました。この法案については、多くの刑事法学者、メディア関係者、そして多くの国民が疑問と不安を覚えています。けさの朝日新聞の報道によりますと、今国会で成立すべきではないという意見は、成立させるべきであるという意見の三倍以上に上っております。
 二〇〇五年、六年の国会では、真剣な審議と協議がされました。そのときも私は参考人に呼んでいただきましたが、最終的に、二〇〇六年の六月段階で強行採決が予定されましたが、これは回避されました。この強行採決を回避した判断は、小泉純一郎首相と河野洋平衆議院議長の話し合いと決断によってなされたというふうに私は聞いております。
 事は、一国の刑事法体系を崩しかねない重要問題なのです。民進党の提案された予備罪の追加法案、これにまた二つ三つつけ加えても構いませんが、このようなものだけで条約を批准しても、他国の例を見れば、国際的には全く問題にはなりません。政府法案の修正案を決して強行採決することなく辛抱強くこの法務委員会の場で審議を尽くしていただき、日本の国の人権保障と民主主義の未来に禍根を残す法案の成立は何としても断念していただくように訴え、私の公述といたします。拍手
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鈴木淳司#7
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 次に、加藤参考人にお願いいたします。
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加藤健次#8
○加藤参考人 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、ありがとうございます。
 私は今、自由法曹団という全国約二千百名の弁護士が加入する団体の幹事長を務めております。
 きょうは、共謀罪を創設する法案に反対する立場から意見を述べさせていただきます。
 本法案に対する重要な論点の一つに、共謀罪の創設がいわゆる監視社会をもたらすのではないかという点があります。政府の方からは、例えば捜査機関において適切な運用がなされるとか、あるいは一般人が対象となることはないという答弁がなされております。しかし、これらの答弁は、法案の規定の内容からも、また警察等が現に行っている活動に照らしても、説得力のあるものではないというふうに考えます。
 私たち弁護士は、具体的な事件を通じて捜査機関の具体的な活動内容に触れる機会がたくさんあります。今回、法案の審議に資するために、警察による市民監視が問題となった具体的事例を紹介することによって審議を深めていただこうと思いまして、事例集をつくりました。本日は、資料三ということで、「今も行われている市民監視の実態 事例集」という資料を配付させていただいております。そういう具体的な事実に基づいた議論をしていただきたいということで、以下、意見を述べさせていただきます。
 まず、この事例集の具体的な事件を紹介する前に、市民の側から見た場合に警察というのは一体どういう活動を行っているのかという、特に情報収集にかかわる活動について、資料一、二を作成いたしました。
 よく国会の議論を聞いておりますと、いつ逮捕されるのかとかいう議論がされておりますけれども、実際に我が国の警察の活動は、警察法二条一項に基づく公共の安全と秩序の維持、この目的のための情報収集活動、いわゆる行政警察あるいは予防警察と呼ばれる側面と、それから、実際に犯罪の嫌疑が生じた場合の犯罪捜査、いわゆる司法警察に大別されます。そして、捜査の中には、令状を必要とする強制捜査、令状を必要としないいわゆる任意捜査と呼ばれているものに大別されているわけですが、ここで確認していただきたいのは、警察による情報収集というのは、行政警察、司法警察を通じて、いわば切れ目なく、シームレスに行われているということです。
 そして、もう一つは、逮捕とか捜索、差し押さえという強制捜査にわたらない段階で、任意捜査というとあたかも非常に軽いイメージがありますけれども、実際には、この表にありますように事情聴取、尾行、写真・ビデオ撮影、所持品検査、あるいはさまざまな捜査事項の照会等々という形で、実はプライバシーを大きく侵害しかねない活動が現に行われております。この点は、いわゆる行政警察における情報収集においても同様の活動が行われていることをまず注意していただきたいというふうに思います。
 結論から言いますと、共謀罪を創設するということは、犯罪の成立時期を、具体的な結果発生、あるいは結果発生の危険性がある段階よりも前に前倒しをすることになります。この表でいいますと、一、二を比べていただくと、捜査の開始時期がかなり早まることが御理解いただけるというふうに思います。
 しかも、この前倒しというのは、単に時間的に早くなるというだけではなくて、客観的な結果が発生していない、あるいは客観的に見て結果の発生の危険性、そういうものを示すものがない、そういう段階での捜査の開始になりますから、極めてハードルが低くなり、濫用の危険が多くなる。
 そういう意味で、この共謀罪の創設は、警察の情報収集活動、捜査権限の拡大につながることは明らかだというふうに考えます。
 幾つか具体的な事例を御紹介いたします。
 事例集の二ページに、大垣市における大垣署の市民監視事件を紹介してあります。これは、風力発電に反対する運動が広がる、そういう見込みのもとに、大垣警察がさまざまな市民の情報を収集し、風力発電を計画している会社に提供したというものであります。
 この中で、大垣警察の署員は、大垣警察署としても回避したい行為、つまりこの反対運動が広がることを回避したい、そして、今後、情報をやりとりすることによって平穏な大垣市を維持したい、それで協力をお願いするというふうに述べています。しかも、岐阜県警は、当事者からの質問状あるいは抗議に対して、大垣警察署員の行為は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環であると判断いたしましたというふうに明確に回答しております。
 それから、四ページの、イスラム教徒、いわゆるムスリム監視事件においては、警察が、我が国に居住するイスラム諸国会議機構に加盟する五十七カ国の出身者全員の身元把握を目標にして、大使館員を含むムスリムに対する情報収集活動を行ったというものです。これはまさに、犯罪の嫌疑も何もない段階でムスリム全体をテロ予備軍というふうに勝手に決めつけて情報収集を行う、プライバシーを侵害するというものでした。
 そして、三ページにある別府の盗撮事件。これは実は、警察の弁解によりますと、公職選挙法違反の捜査という名目で労働組合事務所の人の出入りを盗撮していたという事案です。このときの犯罪の嫌疑というのは何かというと、この労働組合事務所には公務員の労働者が出入りしている、そうすると、この公務員労働者が公職選挙法違反をする可能性があるから、それを捜査するために盗撮したというのが警察の言い分です。そして、この事件が発覚した後、警察庁は、要するに無断で敷地に入って設置したのが間違っていた、そういう総括をいたしまして、令状なしの盗撮をもっと、見つからないようにというか、問題にならないようにやれ、そういう通達を出しております。
 こうしたいわゆる警察の市民監視の事件は、たまたま一人二人の警察官が思いつきで行ったとか、突出して行ったというものではありません。いずれも、警察の組織方針に基づいて、日常活動として行っている活動です。そして、このときに警察が何をもって公共の安全と秩序に反するものとみなすのか、あるいは公職選挙法に違反する人たちとみなすのかというのは、結局、監視する警察の判断に委ねられている、そういうことがこの事例からもおわかりいただけるというふうに思います。ぜひ、この点を前提にした議論をお願いしたいというふうに考えております。
 次に、事例集にも掲載されておりますが、私が直接関与しました堀越さんという方の国家公務員法事件。これは、国家公務員であった堀越さんが休日に赤旗号外を配布したことが政治的行為の禁止規定に反するということで逮捕、起訴された事件です。
 約九年にわたる裁判を経て、最高裁は、二〇一二年十二月七日に、この堀越さんの機関紙配布行為は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない、そういうふうに判断しまして、無罪判決を言い渡しました。つまり、法益侵害の危険性がない、そういう行為だというふうに最高裁が判断をしたわけです。
 きょう申し上げたいのはその理屈の話ではなく、そういう全く法益侵害の危険性のない堀越さんの機関紙配布行為、これは本来、表現の自由、政治活動の自由として保障されるべき行為でありますが、この行為を把握するための捜査と称して、どのような形で堀越さん本人、それから関係者のプライバシー侵害がされたかということです。
 お手元に資料四というのを配ってあります。これは行動確認実施結果一覧表と申しまして、警察というのは尾行のことを行動確認といいますが、その結果の一覧表であります。この裁判で裁判所の勧告に応じて検察から提出された資料の一部をコピーしたものですから、この出所は明らかであります。
 全部を紹介している暇はないのですが、例えば一枚目の十月十二日の欄を見ていただきたいと思います。
 この日は休みで、日曜日なんですけれども、自宅を出てから最後はカラオケ屋に入るんですけれども、そこまでびっちり捜査員六名が尾行し、行動を確認しています。この中で、堀越さんが演劇を見に行く、一緒に行った人、それからその後一緒に飲食店に入った人、さらにはその後カラオケに入った人、この人たちは全部監視の対象となっております。
 そして、この中で、居酒屋に入った後も尾行を続けておるんですね。この点について、実際にこの尾行をした警察官に、なぜ居酒屋に行った後も尾行を続けておるんですかと聞いたところ、いや、飲んだ後だってビラをまく可能性があるというふうに明確にお答えになりました。
 結局、この堀越さんの事件では、三日間の配布行為だけが起訴の対象となっているんですが、二十九日間にわたって、捜査員延べ百七十一名、少なくとも四台の車両と六台のビデオカメラが使用され、堀越さんの行動は、こうやって記録に残されるだけではなく、ビデオカメラにもおさめられておりました。
 ここで強調したいのは、堀越さんというターゲットを決めた瞬間に、本人のプライバシーがまず丸裸にされるだけではなくて、これと接触するあらゆる人が監視の対象、プライバシーの侵害の対象となる、この現実が実際にあったということです。
 この事件は、最終的には無罪になりました。しかし、こうした堀越さんの権利侵害に対する謝罪等は全く行われておりません。
 詳しいことは後で資料を読んでいただきたいのですが、こうした事例からわかることは、一つは、警察というのは、法律上与えられた権限を抑制的に使うことはないということです。真面目な警察官ほど使えるものは全て使うというのが警察の実態です。
 それから、もう一つは、そのときに何を監視の対象とするか、例えば先ほど言っている公共の安全と秩序の維持に反する動き、あるいは反する人は誰なのか、あるいは犯罪を犯したと思われる人は誰なのか、この判断が極めて恣意的かつ主観的に行われていることです。とりわけ、今の政府に反対の意見を持っている、そういうグループあるいは人に対しては、警察は極めて厳しい目で監視をしていることがこれらの事例からわかるというふうに思います。
 それから、あと、事例集の六ページに、高層マンション建設反対の事例を挙げました。
 実際、私たちも弁護士の仕事をしておりますと、高層マンションが建って環境が破壊される、何とかしたいという相談を受けることはたくさんあります。
 当然、住民の皆さんは、何とか建設をやめてもらいたいということで、どうやったら建築をとめられるかということを一生懸命考えます。そして、現場でいろいろなやりとりをするわけですけれども、威力業務妨害に当たるかどうかというのは、現場でのやりとりを通じながら、その場で判断をしながら進めていくのが実際のやりとりなんですが、共謀段階で犯罪の対象となるということになると、威力業務妨害をやろうとした、つまり、マンション建築を何としても阻止するぞ、こういうことを話し合っただけでこの犯罪の対象になり得る、そうすると、意見表明自体が犯罪の対象となるというゆゆしき事態になります。
 そうではないという意見をよく聞きますけれども、この法律の規定を見ますと、別にその人がある暴力団等の組織集団に属しているかどうかは問題ではありません。二人以上が法律に決められている犯罪をやろうと計画をし、準備行為を行った、そしてその際にその二人以上の集団が犯罪を行うために専ら集まっているというふうにみなされれば、これは共謀罪の対象となるというのがこの規定なんですね。それを無視して、一般人は関係ないとか、組織的犯罪集団に限られていると答弁するのは、私は極めて不誠実だというふうに思います。
 最後に申し上げたいのは、今言いましたように、共謀罪の新設というのは、極めて強力な意見表明に対する抑止力をもたらします。
 この点に関して、法案審議の中で、よく政府が一般人という言葉を使います。しかし、法律の中にはこの一般人などという言葉はないんですね。私が言いたいのは、政府が、あなたは一般人、あなたは一般じゃないという仕分けを平気でしゃべっているこの状況、これ自体が、憲法の個人の尊厳だとかいう点から見て非常に問題ではないかというふうに思うわけです。
 したがって、私は、共謀罪の創設というのは、単に新しい法律が一つできるということではなくて、警察の活動領域そのもの、活動の仕方そのものを大きく拡大していく。そして、犯罪の発生、あるいは結果、危険の発生もない段階で捜査をするためには、話し合い自体、あるいは準備行為と言われる行為が何を目的としているかということを探らなければいけなくなります。そうすると、既に警察からは盗聴法の拡大、会話の傍受、あるいは潜入捜査などを要望する意見が出ておりますけれども、必ずそういうさらに権利侵害の高い捜査手法を求める可能性は否定できないというふうに思います。
 皆さんが、ぜひ、こういう具体的な今の警察の活動、そして共謀罪の創設がもたらす状況を具体的に考えていただいて、一体どういう法律をつくろうとしているのかについて責任を持った議論をお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。
 ありがとうございました。拍手
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鈴木淳司#9
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 次に、指宿参考人にお願いいたします。
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指宿信#10
○指宿参考人 成城大学の指宿です。
 私は、専門が刑事訴訟法ですので、手続法の観点から意見を申し述べさせていただきます。
 カラー刷りの本日の陳述のレジュメと、資料を三種類、資料一、二、三を用意しております。陳述はこのカラーのレジュメに沿って申し述べさせていただきます。
 最初に、一枚目の下に写真が張りつけてありますが、左側の二枚は監視カメラです。よく御存じのものですけれども、これは大阪市西成区、いわゆるあいりん地区に警察が設置している監視カメラでございます。これは警察官がカメラを操作することによって利用されています。真ん中の二枚ですが、上がGPSの発信装置で、これが最近話題になりました、車両等に取りつけてその移動履歴を警察が把握していたという装置でございます。下のものは、先ほど加藤参考人が触れられましたけれども、大分県で発見された監視カメラと同種のものであります。これはかなり、人の手をかりないでも機械が移動であるとかその出入りを録画する、そういう装置です。さらに右側のもの、これはそうした機器の設置すら不要の最新のテクノロジーでございます。
 きょうは、こういった技術の進化に伴ってどういう捜査手法が使われているかということもお話ししたいと思います。
 めくっていただきまして、さまざまな捜査手法が今後もしテロ等準備罪の捜査を進めるとすれば導入されるのではないかと予想されますところ、非常にたくさんございますので、きょうは、供述を取得するための取り調べと組織等に潜入する秘匿捜査、そして人々の行動を監視する捜査手法について意見を申し述べたいと思います。
 まず最初に、取り調べですけれども、その下、これは、世界各国の被疑者の取り調べの録音、録画をめぐる範囲を一覧できるように私が開発した可視化の概念マップと言われるものです。縦軸のY軸は、一回の取り調べでどの程度録音、録画することが義務づけられるかということを示しております。右側のX軸は、どれぐらいの対象犯罪が録音、録画の対象になっているかということです。
 今般の刑事訴訟法の改正におきまして、我が国では、記録対象を裁判員裁判対象事案と検察独自捜査事件に絞っているところですけれども、この場合、Y軸は、全ての取り調べを録音、録画するとしても、対象犯罪は非常に限定されております。私の計算では我が国で行われる取り調べの〇・二%程度ではないかと思いますが、非常に、もうほとんどゼロに近いX軸の値になると思いますので、左上になります。可視化先進国と言われているイギリス等では右上に位置するのではないかと思います。
 言うまでもありませんけれども、テロ等準備罪の政府側が出された対象犯罪はほとんどが可視化の対象になっていない、現状ではそうなっておると思います。
 では、取り調べを適正化するには、こうした可視化の範囲を広げることは言うまでもありませんけれども、可視化先進国であるイギリスにおきまして、多様な取り調べの規制が行われてまいりました。
 三ページ目の上段ですけれども、その法律、PACEといいます。私はPACE効果と呼んでいるんですが、なぜイギリスで取り調べの規制が成功したかといいますと、録音、録画だけではございません、弁護人による取り調べの立ち会い、要支援被疑者への支援者の付き添いといったものが相まって取り調べの適正化が成功したと言われています。
 では、取り調べの規制を成功させるには、さらにどういうことが必要かということを考えてまいりたいと思いますが、下の段に参りますけれども、オーストラリアの警察の法の専門家であるデービッド・ディクソン教授は取り調べを適正化するために五つの提案をなされていますが、本日は四番目に掲げています取り調べ官の訓練というところに着目してみたいと思います。
 取り調べの録音、録画が進みますと、その媒体に記録されている取り調べ官の尋問技術の巧拙、うまい、下手が如実に記録されることになります。そこで、世界各国では、取り調べ官の訓練、いわゆる取り調べ技法の開発が非常に進んでおるところです。
 私は、イギリスの取り調べ技術訓練所という専門的な訓練所の視察に参りましたけれども、イギリスでは、取り調べの技法に応じて一級から五級まで階級が設けられておりまして、テロ犯や連続殺人犯の取り調べはこの五級を獲得した者だけができることになっております。また、アメリカでも、テロ犯等の取り調べについては専門的なチームが当たっているところですが、我が国ではこのような技術が開発されているのか、私は存じ上げません。
 では、続いて、ページをめくっていただきまして、二番目、秘匿捜査について御紹介いたしたいと思います。
 イギリスの例でございますが、イギリスでは二〇〇〇年に警察捜査規制法という法律ができまして、ここで行動監視や身分秘匿捜査について明確な根拠規定が設けられました。さらに二〇〇五年には、そうした身分秘匿捜査、つまり潜入捜査官を、身分を秘匿したまま公判手続で匿名証人として証言させることを許容する法律が生まれました。
 ところが、二〇〇八年、当時の最高裁、現在の最高裁ですが、貴族院デービス事件判決という判決の中で、この匿名証人手続について、これが欧州人権規約に抵触するという驚くべき判断を示したわけです。
 その三日後に、イギリス議会は緊急立法をしました。というのは、そのデービス判決の時点で三百八十人の匿名証人が公判待機しておりまして、そのうちの十分の一が匿名捜査官であった。つまり、この法律が無効になってしまうと彼らの身分がばれてしまうということで、非常に危険が及ぶということで緊急立法したわけです。それで、匿名証人を許容する手続が新たにつくり直されました。
 しかしながら、その後、この潜入捜査官によって起こされた非常に恐るべき民主主義の破壊例が発覚したのが、二〇一一年のケネディ事件と言われるものです。
 これは、民間の環境NGOに七年間おとり捜査官が潜入し、違法活動を誘発していた、犯罪行為を誘発していたというスキャンダルでございます。この七年間にわたって、イギリスの警察は何と、二十万ポンド、当時の金額にして三億円以上をこの秘匿捜査に費やしていたと言われております。
 二〇一三年にイギリスの下院の内務委員会はこの調査報告書を出して、現在の潜入捜査に関する手続では不十分であるので、立法するように勧告しているところでございます。
 三番目に進みたいと思います。捜査手法の監視です。
 こちらにつきましては、資料の二に詳細な私の考えあるいは知見を述べておりますので、こちらを御参照いただきたいと思います。
 まず、今般、三月十五日に最高裁判所の大法廷で判決が出たところでございますが、車両のGPS利用の追尾やあるいは人に対する長期間の監視撮影など、テクノロジーを利用した捜査手法が各国でも行われています。しかし、重要なことは、こうした捜査手法について法的な規制がきちっと整備されているところでございます。
 例えば、カナダでは、テレビカメラあるいは他の同種の電子機器の手段によってプライバシーに対する合理的期待を有しているような状況で監視をする場合の令状が定められております。アメリカのニューヨーク州でも、盗聴やビデオ監視令状が規定されているところでございます。オーストラリアのニューサウスウェールズ州でも、監視装置規制法というもので、一般的に承諾のない利用が禁止され、こうした利用についてはオンブズマンが監督するということになっております。
 各国、事前規制や事後規制、あるいは令状の有無についてはまちまちでございますけれども、立法府によってきちっとこうした監視捜査に対する規制がなされているということを強調しておきたいと思います。
 では、こうした監視捜査の先にあるのは一体何なのかということでございますけれども、これが先ほど申し上げました、今日では設置等の手間すら不要な最新のテクノロジーが用意されているところです。
 きょう御紹介するのは、ISMIキャッチャー、私は偽装携帯基地局と訳しておりますけれども、先生方がお持ちのスマートフォンや携帯電話にはSIMカードが入っておりますが、このSIMカードには全て固有の番号が付されております。これが、インターネット・サブスクライバー・モバイル・アイデンティフィケーション、略称ISMIです。
 このISMIを全く自動的に取得する装置がございます。これがISMIキャッチャーです。一定エリアで稼働する移動通信端末を通信事業者の協力なくキャッチできますので、令状を持って通信キャリアのところへ行く必要がございません。例えばこの部屋にこのISMIキャッチャーを置けば、先生方あるいはここにおられる全ての方の携帯電話を把握することができる、そういう機械でございます。
 これは、もともと軍事技術として開発され、諜報機関や法執行機関によって広く利用されるようになりました。一番有名なのが、冒頭、写真を添付いたしましたアメリカのハリス社によるスティングレーというマシンでございます。これにつきましては資料三に詳しく紹介してございます。アメリカではこれが非常に問題になりまして、法執行機関の利用について問題になりまして、現在、各州で立法による規制が始まっているところでございます。
 では、最後のページをおめくりください。
 今般の最高裁判所の大法廷、三月十五日の判決が何を意味しているのか、最後に申し述べたいと思います。
 三月十五日の判決は、憲法三十五条が保障する住居、所持品、書類の法的保護に加えまして、それらに準じて国民をプライバシー権で守るべき新たな私的領域というカテゴリーを承認しています。そして、今回争点になりましたGPS捜査のような長期にわたって人の行動を追跡し記録するテクノロジーを利用した捜査手法によって私的領域が侵されるということを明らかにし、そうした捜査手法を立法によって規律することを国会に求めたのでございます。
 すなわち、最高裁判所の大法廷判決の最も重要な示唆というのは、任意捜査の名のもとにこれまで我が国で繰り広げられてきたさまざまな監視型捜査に対して、立法義務を国会に明示している点ではないでしょうか。諸外国ではそうした捜査手法につきまして法的規律を進めているのは申し述べたとおりでございます。
 GPS捜査や監視捜査の実態解明をまず行った上で、どのような規制手法が妥当なのかを国会の場において御審議いただきたいと思います。
 最後になりますけれども、我が国でこれまでもう既にテロ犯罪、テロ行為が行われてまいりました。どうしてそうしたテロ行為、テロ犯罪を防ぐことができなかったのか、そういった国を挙げての御議論あるいは研究調査というものを私は目にしたことがございません。
 そうした過去起きた事件に対して、どうして未然に防ぐことができなかったのか、また犯人を突きとめることができなかったのか、例えば、地下鉄サリン事件をなぜとめることができなかったのか、なぜ赤報隊と言われる人たちを逮捕できなかったのか、なぜ警察庁長官銃撃事件の犯人を突きとめることができなかったのか、そういった反省なしにこうしたテロを防ぐための法案を用意するということは、私は合理性を欠いていると思います。
 二〇一五年十一月にパリで悲劇的な同時多発テロがございました。次の年、二〇一六年二月には、フランス議会は、どうしてそれを食いとめることができなかったのかということについて検証を行い、それに立った上でのテロ対策というものを打ち出しております。
 ぜひ国会の先生方におかれましても、過去の経験に学んで、この国でどのような実体法の整備と捜査手法の整備が必要なのかという冷静な御議論をお願いして、私の意見にかえさせていただきます。
 御清聴どうもありがとうございました。拍手
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鈴木淳司#11
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    —————————————
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鈴木淳司#12
○鈴木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。
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山田賢司#13
○山田(賢)委員 私は、自由民主党の山田賢司でございます。
 本日は、五名の参考人の方々、お忙しい中お越しいただき、また、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。これまで委員と政府のやりとりを重ねてまいりましたけれども、それだけではなく外部の方からの貴重な御意見を賜ること、大変参考になります。本法案の意義、論点についての理解が大変深まったと改めて感謝申し上げます。
 さて、それでは早速質問に入らせていただきます。
 私は、法曹資格を持っているわけでもない、いわゆる法曹資格から見た一般人でございますけれども、一般人を代表して質問させていただきます。
 刑事法制を議論する際に、犯罪の抑止と人権の保護のせめぎ合いということがよく言われるんですけれども、冤罪があってはならないというのは当然のことなんですけれども、実際に犯罪を犯した者であっても、一定の人権を保護する必要性は認められるだろうと思っております。
 ただ、国家権力が人権を侵害するという観点ばかりが注目されているんですけれども、実は、犯罪によって命を奪われる被害者の方々、あるいは、一生懸命お金をためて、ためた貯金をだまし取られる方々、こういった何の罪もなく平穏に生活している方々が、ある日突然命を奪われたり財産を奪われるような、こんなことがあってはならないと思っております。
 人権といえば聞こえはいいんですけれども、犯罪集団の人権に配慮するのもいいんですが、やはり私は、犯罪とかかわりのない一般の方々の人権を守る、被害に遭ってから救済をするとか、そういうことはもちろんなんですけれども、被害を未然に防止するように最大限努力するということを願うものでございます。
 私を含めた普通の一般人なら、組織的な犯罪集団が犯罪を計画しているから、その時点で捕まえてくれ、こういうふうに思うわけでございますが、そこを一定の配慮をして、本法案では、準備行為という何らかの外形的な行為があらわれたというときにそこを取り締まるということで、これはぜひやってほしいと願うのが私なんかの考えでございます。
 この点、木村参考人、民事暴力対策にも取り組んでこられたということでございますけれども、被害者の立場から、犯罪を未然に防止する、とりわけ組織的な犯罪の未然防止の必要性について、改めて御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
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木村圭二郎#14
○木村参考人 今まさに先生がおっしゃっていただきましたとおり、犯罪というのは、一回生じてしまいますと取り返しのつかないものになります。私どもが関与させていただいた暴力団組長訴訟に関する事件でも、自分の娘さんを暴力団に殺されたりとか、そういうことがたくさん起きています。暴力団に関して言えば、そういう抗争をどうやって抑え込むかというのが非常に重要な事柄になっておりまして、御承知のとおり、暴対法の改正等もそれによって行われたわけでございます。
 したがいまして、今御指摘いただきましたとおり、犯罪を事前にどうやって抑止するか、これは極めて必要なことだと思っております。
 以上です。
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山田賢司#15
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
 そこで、この議論を聞いておりまして、日弁連さんからいろいろな御意見をいただいて、反対だという御意見をいただいているんですけれども、これは海渡参考人にぜひお聞きをしたいんですが、日弁連というのは、テロ準備罪、いわゆる共謀罪とおっしゃっておられますが、これに対して反対の意見を表明されているんですが、日弁連の中でも違う意見、例えば木村参考人とかのようにこの創設に賛成の立場の弁護士さんもいらっしゃるんでしょうか。この辺について、認識を簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
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海渡雄一#16
○海渡参考人 もちろん、木村先生のような御意見があることは、木村先生が来られていますから明らかですけれども、先ほども申し上げましたが、日弁連は、その理事会で十分議論して、二〇〇三年の段階から、二〇〇六年、二〇一二年、そしてことし、共謀罪法案についてはずっと反対という意見を表明してきております。
 さらに言うと、全国の単位会の中で、全単位会というふうにきょう言えればよかったんですが、一つだけまだ出ていないところがあるんですが、ここも間もなく出るのではないかと私は期待していますけれども、各会で議論した結果、やはりこの共謀罪法案については行き過ぎていると。
 もちろん、先生がおっしゃったように、日弁連の中には、民事暴力だけじゃなくて犯罪被害者の対策のための委員会などもありますし、昨年、死刑の廃止の問題を議論したときにも、犯罪被害者の弁護に当たっておられる方々と随分討論しながら意見をまとめていったんですね。
 ですから、先生がおっしゃるように、犯罪被害に遭われる方の人権、それも非常に重要であることは言うまでもないことですけれども、だからといって、行き過ぎた法執行機関の活動によって人権が侵害されてもならない、バランスのとれたところを目指すべきである。
 そういう意味で、民進党さんが今回出されているものというのは、二百七十七に比べると、七十四個の未遂以前の段階ですから、数が少ないとおっしゃるかもしれませんが、二〇〇七年には百二十八まで自民党の小委員会案は減っていたわけですから、その差は五十個ぐらいなわけですよね。だから、きょう、あと三つぐらい入れたらどうかという御提案が椎橋先生の方から出ていますけれども、どう考えても非常に危険性の高い類型というものがこの共謀罪法案の中には含まれていますから、そういうものを除くということは、ぜひとも御議論いただいて、委員会で一致していただければなと思います。
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山田賢司#17
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
 そこで、改めて木村参考人にお尋ねしたいんですが、木村参考人のようにこれはぜひとも創設すべきだというような御意見というのは、日弁連さんの意見表明なり決議なりの過程においては反映されなかったのか、あるいは、こういったことを言う機会があって、十分議論して、その上で日弁連全体としてこの意見表明になっているのか、この辺をちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
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木村圭二郎#18
○木村参考人 日弁連が今回、反対の意見書を出すに当たって、さまざまな内部手続が行われるんですけれども、それに対して私は言いたいことがたくさんあるんですが、ここに出席するに当たりまして、執行部の方から、日弁連の内部手続については一切口外してはいけないというふうに言われましたので、そのお答えについては、ちょっとお答えできかねます。
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山田賢司#19
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
 そこが私は大変不思議なところで、弁護士さんというと、まさにコンプライアンスですとか企業でいう組織のガバナンスとかということを一生懸命見ておられる方々が、その中が、意見の集約をする過程において民主的な手続がとられているんだろうか、あるいは、意見の形成過程をオープンに開示されるんだろうかというアカウンタビリティーの問題とか、こういったものがしっかりしているのかなと。これは、余り言うと、組織のことだから言えないということなので。
 私も、弁護士さんは御見識の高い方をたくさん知っておりますけれども、どうしても、意見書が出てくると、何でこういう意見になるのかなと疑問に思うようなところがたくさんあります。
 もちろん、それは、たとえ犯罪の被疑者であろうと人権は守らないとという人権保護の立場に立っておられるということはよくわかるんですけれども、であれば、その意思決定過程をオープンにしていただいて、こういう賛成の意見、でも、その賛成の意見に対してはこんな批判があるよということを開示していただいて、なるほど、プロフェッショナルな法律家の方々はこういう議論をされて、こんな意見を出しておられるんだなというのをぜひ開示していただきたいなというふうに考える次第でございます。これは、余り言っていてもいかぬですから、次に質問をさせていただきます。
 これまでずっと議論してまいりましたが……ヤジ
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鈴木淳司#20
○鈴木委員長 御静粛に願います。
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山田賢司#21
○山田(賢)委員 与党はもちろん、野党の先生とも意見が一致しているところは、TOC条約にはとにかく入らないといけないということでは反対の方はいらっしゃらなくて、論点としては、この政府が出している法案でTOC条約へ入るのか、それともこれがなくても入れるのか、これはさまざまな御意見があろうかと思います。
 そこで、今度は椎橋参考人にお聞きしたいんですけれども、民進党さんとか海渡参考人が御主張されるように、現行法のまま、何ら法整備がなくてもTOC条約に入ることは可能なのか、あるいは、先週金曜日に民進党さんが対案を提出されましたが、この法案によってTOC条約の定めるような義務を満たすことはできるとお考えでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。
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椎橋隆幸#22
○椎橋参考人 お答えいたします。
 TOC条約は、第五条一項(a)で、参加罪または共謀罪を立法することを義務づけております。これはこの条約の一番のコアの部分でありますから、したがって、予備罪を追加するという形ではこの条約を満たすということにはなりません。
 そうでなければ、今までもいろいろ、十数年もう議論を重ねてきているわけでありまして、OECD等からもいろいろな要請があって、もしそのままでいいんだったら、日本はどうぞこのまま入ってくださいというような声が起こっても全然おかしくないんですけれども、やはりそうではないというのは、この条約の考え方で、起草者の考え方からもその点は、先ほど説明しましたけれども明らかであると思います。
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山田賢司#23
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
 今の話が物すごくすとんと入って、多分そうだろうなと思うんですけれども、であれば、なぜ、日弁連さんの意見では、テロ等準備罪を創設しなくてもTOC条約に加盟ができるんだという議論になっているのか。この辺が、ぜひ日弁連さん、もっとはっきりと言っていただきたいなと思うんです。どういう議論、先生方のような、木村参考人あるいは椎橋参考人のような意見があるけれども、こうだという反論を聞けば、なるほど、それに対してはこういう批判があるのかということがわかるんですけれども。
 そこで、一つお聞かせいただきたいのは、論点の一つで……ヤジやじらないようにしてください。まず、論点の一つとして、パラグラフ五十一の解釈について、誤訳があるということを木村参考人が御指摘されました。資料の中に載っているということなんですけれども、これは専門的なことで、資料を見られる方、見られない方もいらっしゃるので、議事録に残す意味でも、改めてこの立法ガイドの解釈、日弁連さんはどう誤訳をしておられたのか、この点について簡単に御説明いただければと思います。
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木村圭二郎#24
○木村参考人 今回、資料二ということで、英文についての私の方の考え方を御説明させていただいています。
 日弁連が恐らく理解をしているのは、通しページ八分の六というところがありますけれども、「without requiring the introduction of either notion--conspiracy or criminal association--」そういう部分があるんですけれども、これを either conspiracy or criminal association という形でくっつけてしまって、全否定というんでしょうか、その両方とも、両方の犯罪の導入を要件とすることなくというふうに間違って解釈されたんですね。
 まず、この構文を見たらわかりますように、「without requiring the introduction of either notion」まずそこで区切られていて、その「either notion」の中の説明を「conspiracy」と「criminal association」がしている、そういう関係にあるわけなんですね。したがって、この文章だけを見ても、いずれかの考え方の導入を要件とすることなくというふうにまず読めると思うんですね。
 それ以前に、「The options」というのがありまして、「The options」というのは、その三行上の「The two alternative options」という言葉があるんですけれども、「alternative」というのは、一般に御理解していただいているんだと思うんですけれども、代替的または択一的という、そういう言葉があるわけなんですけれども、そのいずれかのオプション、いずれかを採用するオプションということがこれははっきりしていると思うんですね。その「The two alternative options」を受けて「The options」というのが次に来ていますので、その二つのうちのいずれかのオプション、第三のオプションがあるという意味ではなくて、その二つのうちのいずれかのオプションがここで認められている、そういう解釈にしかなり得ないというふうに私の方は思っているわけです。
 全訳もつけさせていただきましたけれども、一番問題となっている第四文につきましては、このオプションは、関連する一方の法的概念を有しない国々において、当該一方の考え方、つまり共謀罪または犯罪結社罪の導入を要件とすることなく、組織犯罪グループへの有効な措置を認めているということでして、途中の文にもありますけれども、ある国々では共謀罪しかない、ある国々では犯罪結社罪しかない、そういう場合に、その一方があればいいんですよ、その両方を規定する必要はないんですよということを規定しているということは条文として明確だ。それを、冒頭申し上げましたように、いわゆる「either」「or」、中学生、高校生が英語で習うような言葉なんですが、それをくっつけて訳してしまって、そのどちらも要らないんだとこの部分だけを取り上げて解釈したところが誤訳であるというふうに思っています。
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山田賢司#25
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
 約束というものは守らないといけないというのは、条約に限らず日常社会でも原則でございます。その約束を勝手な解釈をするということは許されないと思っておりまして、わかりやすい例で言うと、あした、みんな八時に集合ねと言って、集合時間に遅刻してきた人が、私の時計ではまだ七時五十分なんだから遅刻じゃないよというのが通用するかというと、多分通用しないと思うんですね。やはりこの辺はしっかりと、国際的にも信頼を失わないように、条約が求めていることを履行することが大事だと思っております。
 続きまして、テロ等準備罪を設けると内心の自由が侵されるとか人権侵害の法案だとかとよく言われるんですけれども、そうすると、日本を除くほとんどの先進国が既にこのTOC条約を満たす国内規定を設けているということは、こういう国々というのは内心の自由が保障されないような人権侵害国家なのかという疑問が生じるんです。
 これは、では、椎橋参考人にまたお聞きしたいんですけれども、他の先進国、こういった共謀罪、合意罪、参加罪といったものを設けている国というのは、内心の自由が奪われているというような批判は出ているのでしょうか、お聞かせください。
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椎橋隆幸#26
○椎橋参考人 英米圏は共謀罪、それからヨーロッパ大陸諸国は参加罪を設けている国が多いんですけれども、いずれの国においても、特に英米を中心に申し上げますと、コンスピラシー、共謀罪について、捜査され、起訴され、裁判に付されている事件は相当数ございます。もちろん、有罪になったり無罪になったりということはございますけれども、この共謀罪自体は法制度の中に定着していると言っていいと思います。
 この共謀罪があることによって人権侵害が増しているとか、あるいは共謀罪自体が憲法に反するとか、そういった判断は下されておりません。
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山田賢司#27
○山田(賢)委員 ありがとうございます。それを聞いて安心いたしました。
 続いて、これは加藤参考人にお聞きしたいんですけれども、いろいろな、監視の例とか、大変勉強になりました。こういうのはやはり気をつけないといけないことだと思っておりまして、私、賛成意見ばかりでなくて、政府に対する批判の意見、そういったことも聞いて、問題があるところについては十分対応をとっていかないといけないなと思っておるんですが、それでは、民進党さんが出しておられるこの法案、これだと監視社会にはならないのかどうか、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
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加藤健次#28
○加藤参考人 民進党の案は予備という限定をつけておりますから、少なくとも結果発生の危険性はあるという段階を処罰の対象にするということですから、一般に、計画と準備行為だけで包括的に犯罪とする類型とは全く違う発想だというふうに私は理解しております。もちろん、警察がどういう濫用をするかは法律だけでは決まりませんけれども、少なくとも、今の政府案と比べれば、全然レベルが違うというふうに思っております。
 それからあと、実際に警察が使うことを考えると、包括的な共謀罪の創設というのは、やはり、先ほども言いましたように、捜査のスタートラインを大幅に前倒しするということと、捜査に入ることが正しかったのかどうかということを客観的に判断できる痕跡だとか、あるいは外から見て明らかにこれは危ない、こういう客観的な縛りがないものですから、警察の判断で捜査に入って、私がさっき言ったようなさまざまな監視活動、情報収集活動などが行われたときに、それを客観的にチェックできない、私が言いたいのはそこなんですね。捜査の開始時期について、警察の判断を規制するそういう客観的なものがない、だから、私は、共謀罪ができることによって捜査権限の濫用のおそれが高いというふうに言っているわけです。
 これは、現実に警察がやっていること、しかも、さっき申し上げませんでしたが、警察の監視活動は野党だけではありません、与党の中にも当然行われているということを前提に申し上げました。
 以上です。
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山田賢司#29
○山田(賢)委員 ありがとうございます。
 そのとおりで、これは私も、そのとおりと言ったのは、だから、この法律、テロ等準備罪を創設しなくても、これはあってはならないことなんだけれども監視というのが行われているとすれば、この法律をつくるかつくらないかではなくて、今そんなことをやっちゃいけないよという議論をしないといけなくて、今御指摘になられたのは、いみじくも加藤参考人がおっしゃられたように、自公案、政府・与党案よりはましだということなんだけれども、もし自公案が出ていなければ、民進党さんがこの法案をもし出していたとするならば、それは監視が強まる、そういう理解でよろしいでしょうか。
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