高橋洋一の発言 (予算委員会公聴会)

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○高橋公述人 おはようございます。嘉悦大学の高橋洋一でございます。
 きょうは、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 二十九年度予算に関連しまして、三つほど話題を述べたいと思っております。
 結論を先に申し上げれば、一つ目は、最近のマクロ経済学から見て、財政事情というのは統合政府、この統合政府というのは政府と中央銀行を会計的に一体と見る考え方でありますけれども、これで見るべきであるということ。二番目は、教育支出、これは未来投資として捉えるべきだ。三番目は、予算の無駄遣い批判というのがありますけれども、これに対しては天下り根絶を徹底的に行うこと。この三つが結論であります。
 それでは最初に、二ページというか、皆さんにお配りしている資料ですと最初の資料の下の方になりますか、これで財政、金融のモデルを三つほど挙げております。
 一つは、伝統的な財政政策と金融政策のモデル。二番目は、今話題になっているFTPL、財政の物価理論、フィスカル・セオリー・オブ・プライス・レベルというものです。三番目は、統合政府という話であります。
 最初に、伝統的なもの、これは多分御承知だと思いますけれども、政府というのはどこを見ていっているかというと、政府のバランスシートの右側のグロスの債務を見て、またはそのグロスの債務の対GDP比でもいいんですけれども、いずれにしてもグロスの債務を見て、増税、歳出カットで財政再建をしようと。金融政策の方は何になっているかというと、物価水準。物価水準と失業というのは、逆相関といって、フィリップス関係というんですけれども、これを前提とすれば、実は、物価とともに雇用を金融政策によって達成するというモデルであります。これは、財政政策と金融政策を分離したモデルでありまして、よく出てくる話です。
 二番目のFTPL、これは最近、シムズさん、アメリカのプリンストン大学の教授ですけれども、それを浜田先生が日本に紹介しまして、最近話題になっているものでありますね。
 このFTPLというのは、説明し出しますと難しい数式がたくさん並んでいて非常に大変だと言われるんですけれども、実は私は数学出身なので、こういう人から見たら物すごく簡単です。
 簡単に言うと、財政の予算式というのがありまして、どういうものかというと、これは予算委員会ですから皆さん御承知でしょうけれども、支出というのは税収と国債で成り立っているという、それだけです。それを言い直すと、国債というのは、実は、支出から税収を引いたものになるということですね。これは今までの話ですけれども、これを将来にわたって足し算していくとどうなるか。当然のことながら、債務残高というのは、将来の財政支出、これは先ほどの支出から税収の逆でして、税収から支出を引いたものの足し算で賄わなければならない、たったこれだけの話です。
 これの解釈の仕方として、一つの財政再建のやり方とすれば、真面目に財政再建をすると言いまして、将来の財政収支をよくする、そのために増税をする、そういう考え方があります。もう一方は、財政再建、これを真面目に言わない。真面目に言わないで、インフレによって実質的な債務残高を減らす。そういうふうな、どちらかの選択になります。シムズさんは後者の方の話をより強調しているということになります。
 ただ、財政再建を真面目にしないという話ですから、これはとてつもなく不謹慎だという議論が実はあります。学説ですから、学説というか物の考え方なので、論理的には先ほどの二つの選択肢は否定できないわけなんですけれども、最も伝統的なモデルから見れば物すごくこれは不謹慎になります。
 大体、そういう不謹慎なんて言っている人は伝統的なモデルにとらわれている人だと思いますけれども、実は、FTPLでも、その理論式をきちんと見ると、これは債務残高と書いたんですが、実は伝統的なモデルのグロスの債務残高ではないですね。グロスの債務残高というのは、皆さん御承知でしょうけれども、一千兆円という話で、GDPの二倍とかいう話になりますけれども、ここではないですね。
 ですから、それは三ページ目にちょっと書いておきましたけれども、この三ページ目、これは政府のバランスシートなんですけれども、日銀が入っていないもの、これは今でも実は財務省のホームページに出ています。でも実は、これをつくったのは、私が二十年前、財務省の役人、大蔵省の役人だったときなので、それはその後、十年間ほどお蔵入りして公表されなかったですが、小泉政権のときから公表されて、今に至っております。ですから、この数字は、そのままとってきて、それをただ丸めただけであります。
 これを見ますと、FTPLのところを忠実に考えると、実は、ネットの債務残高ですから、四百五十兆円というレベルでの話になりまして、シムズの議論もそんなに大げさな話には、極端な話にはならないというふうに思います。
 さらに、このFTPLを拡張、一般化して考えることもできます。これが実は統合政府になるんですけれども、こういうふうに拡張、一般化するというのは、数学者が最も得意だし、好きな考えなんですね。こういうふうに拡張、一般化しますと本質が見えてくる、そういう原理もあるくらいなんですけれども、それで見ます。
 FTPLでは、政府のみを考えまして、実は中央銀行を入れた予算式は考えないことが多いです。これは人によってちょっと違うんですけれども、大体は考えていないです。ただ、これは、実際の経済を考えるときにはちょっと問題が出てきます。
 というのは、これは予算委員会ですから皆さん御承知でしょうけれども、財政収入の中には税収以外もありますね。税外収入です。税外収入の多くのものというのは、実はこれは中央銀行の納付金ですね。たまたま今の制度では、中央銀行の方がいろいろと積立金を立てると納付金が減っちゃいますけれども、それを全部抜きにして考えると、それなりの納付金があります。
 これはどこの国も一緒ですね。つまり、これは通貨発行益というわけでして、実際の予算制度の中では、中央銀行の予算式は組み込まれております。この数字、毎年のはちょっと小さく見えます。例えば、数兆円のオーダーですけれども、小さく見えますけれども、このFTPLのようにずっと将来まで足し算したらどうなるかというと、すごくでっかい金額になります。ストックベースですと、やはり数百兆というオーダーになりますね。
 ですから、そういう意味で、実際の経済を考えるときには、中央銀行は実は考えざるを得ないんですね。今、毎年は少ないけれどもそれを全部足し算すると大きくなると言ったんですけれども、これは、細かい数学のテクニックは省きますけれども、実は、足し算すると通貨を発行した金額になります。それが、ですから通貨発行益というわけでして、もしそれを証明したければ、高校程度の数学の知識があれば証明もできます。
 要するに、中央銀行を含めた予算式でないと実際の分析がなかなかできないというわけになります。経済学ではここで、政府と中央銀行を会計的に合算したものを統合政府と呼びます。この考え方がありまして、もちろん、統合政府といいましても、行動として、中央銀行は政策手段の独立性はあります。普通の意味での独立性ではないんですけれども、政策手段の独立性はあります。ただ、あくまでも、法的には公的、あと会計的には子会社なので、それで合算する、連結するというので統合政府の考え方ができていて、それで分析するのが多くあります。
 この場合、財政の着目点はどこになるかというと、実は統合政府のネット債務という形になります。これは、資料の四ページ目、先ほどの政府のバランスシートの下に書きました。これを書いたのは私なんですけれども、上の政府のバランスシートから、簡単でして、中央銀行のバランスシートを足し算すれば、これはできます。
 ですから、左の方には資産と国債が載っかってきて、右の方には国債と日銀券、銀行券という形が載っかりますね。
 ちょっとここで余計な話も書いちゃったんですけれども、実は徴税権というのがあって、これは私が勝手につけたものでありまして、これはなくても別に議論は問題ないのでちょっと省いて考えますと、まあ、それを除いても、統合政府の資産というのは千三百兆円。それで、負債の方は、国債が千三百五十あって、銀行券というのがあるんですけれども、この銀行券というのは利子なし、償還負担なしですから、普通の意味での債務ではありません。これが意味しているのは、要するに、統合政府のBSを考えると、ネット債務はほぼゼロというのが現状です。このBSを見まして、財政危機と言う人はまずいないと思います。
 もっとも、こういうふうに言いますと、資産で売れないものがあるとか、いろいろな批判があります。ただ、資産で売れないものを見ても、数は、そんなに量的には大きくないんです。資産の大半というのは実は金融資産でありまして、これは後で、最後に述べます天下りに大いに関係しております。はっきり言えば、天下り先への出資金、貸付金が極めて多いというのが現状です。
 資産で売れないと言っているんですが、天下り先の政府子会社を処分しては困るという程度の話でありまして、これは官僚の泣き言という側面が大きいです。
 もし本当に政府が大変になればどうなるか。関係子会社だって売るに決まっていますし、民営化するに決まっています。これは民間会社でも同じでありまして、政府でも、例えば、本当に財政危機に陥ったギリシャなんかは猛烈な勢いで売りました。これが普通です。道路なんかは売れないというのは確かにそのとおりなんですけれども、これはどこでも一緒で、少額ですし、数字的に大きなものは天下り先への資金提供の金融資産であります。
 海外から見れば、日本政府がたっぷりと金融資産を持っていて、民営化もほとんどしないという状況を見たり、売却をしないという状況を見れば、財政破綻のはずがないと思うのが普通であります。そういう形で、もう見透かされております。
 この統合政府から見ますと、アベノミクスによる量的緩和で、実は財政再建がほぼできてしまったというのがあります。かつて、私のプリンストン大学での先生はベン・バーナンキです。バーナンキが前に言っておりましたけれども、量的緩和すればデフレから脱却できるだろう、そうでなくても財政再建はできるよというふうに言いましたけれども、まさにそのとおりになっております。消費増税しないと財政破綻して国債が暴落するなんというのは、こういうふうなバランスシートを見ている人から見れば、最も考えられない話であります。
 財政再建ができたということを、ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、これを統合政府のBSに即して具体的に言ってみたいと思います。
 資産は九百兆あります。これは、先ほど述べたように、金融資産が大半であります。その収益というのは、ほぼ国債金利と同じです。ですが、これに相当する実は税外収入というのがあります。
 また、日銀の保有している国債、これは四百兆円ですけれども、ここは財政負担がありません。この分は、実は日銀に対して利払いはします。利払いはしますけれども、それは納付金で返ってきます。だから、その意味では財政負担がないということです。
 つまり、負債の千三百五十兆円というのがあるんですけれども、この利払い負担というのは資産側の税外収入でほぼ賄われるという形になっておりまして、この意味で、財政再建がほぼできているということになります。
 これを言いますと、これはストックの話でしょう、フローもあるでしょうという話も必ずあります。そこで、フローの話もちょっとつけ加えて、次の資料の五ページというのに書いておきました。
 フローという懸念は確かにあります。これからの話です。ただし、フローのプライマリーバランスというのは結構簡単な原理でできておりまして、一年前の名目経済成長率にほぼリンクしています。これは、日本に限らず、先進国どこでも一緒です。要するに、一年前の名目成長率を高めればおのずと回復するというレベルの話でありますから、そうしますと、これは、名目成長率を高く、つまりデフレ脱却というのを進めればいいという形になります。
 ここまで来ますと、シムズ氏のように、財政再建を無責任にしないで財政支出せよという言い方ではなくて、実は、そもそも財政再建問題がないのですから、デフレ脱却に向けて財政政策、金融政策もフル活動すればいいというふうな非常に単純な結論になります。
 シムズ氏は、実はゼロ金利では金融政策では制約もあるという言い方もするんですけれども、これも統合政府の観点から簡単に導き出されます。
 今のようなゼロ金利の世界では、中央銀行によって得られる毎年の通貨益はわずかしかない。このために、実は物価上昇の、上げる効果が弱くなります。ですから、こういうときには、公共投資及び国債を増発して財政政策で有効需要をつくるということになります。要するに、財政、金融の併用という形になりますね。
 こういうふうな話をしますと、確かにケインズの話を持ち出す人もいるんですね。ケインズの一般理論の中に、財政出動、公共投資について、穴を掘って埋めるといって、これが無駄な事業の代名詞のように実は説明されますけれども、その原文をきちんと読むとどういうふうに書いてあるかというと、貨幣を詰めた瓶を埋めて掘り返すと書いてあります。これは何を言っているか。貨幣を詰めた瓶ですから、掘り出せば金融緩和になるわけで、実は、財政、金融の一体という話をしているだけです。ですから、そういう意味で、この財政、金融の一体発動は全く古くからの話であります。
 今の金融政策、これは実は、六ページに書いてありますけれども、詳細は除きますけれども、金利管理というやり方なんですけれども、国債をある程度発行しないと、実は金融引き締めに陥ってしまうという弊害もあるということを指摘しておきたいと思います。
 次に、国債にふさわしい政策課題といえば、実は、これは次の七ページ目の話ですけれども、教育という形になろうかと思います。これは未来投資ですね。
 要するに、基礎教育とか基礎研究、教育なんかは、成果が出るまでの期間が長くて、大規模で広範囲に行う必要がありますので、そういう投資というのは公共事業が主導するべきであって、その財源は、実は税金ではなくて国債がふさわしいと思います。
 高等教育を実施すれば、実は、所得増、失業減があるので、結果として、かけた費用に対する便益が二倍以上になるという試算もあります。これは、はっきり言えば、今の公共事業選択基準を軽くクリアする話でありまして、教育とか研究開発というのは、いわば優良事業という見方もできます。ひとまず国債発行で賄って、効果の出る次の世代で返してもらうという形になります。
 そもそも、物に対する公共投資というのがあるのに、人への投資が税財源というのは、ちょっとつじつまが合わないと思います。
 実は、この話というのは、「予算と財政法」という、これは財務省の言ってみるとコンメンタールなんですけれども、そこの中にもちょっと記述があります。
 読みますと、「技術の進歩等を通じて後世代がその利益を享受でき、その意味で無形の資産と観念し得るものについては、後世代に相応の負担を求めるという観点から公債対象経費とすることについて妥当性があるものと考えられる。」と。まあ、ぐちゃぐちゃ言っていますけれども、はっきり言うと、出資金処理すれば、こういう形でやっても構わないと。過去にも、出資金処理でこういうような経費を公債対象経費としたことがあります。
 ちなみに、その下に財政法四条がありまして、ここには、公共事業と出資金、貸付金は、実は公債、建設公債から出せるという規定がありますから、今の法令のもとでやりますと、出資金にするのが一番簡単なので、そこでこういうような支出をやったこともあります。はっきり言うと、ここをちょっと改正して、教育関係にして、予算総則で教育関係費を書くのがすっきりしているのかもしれません。
 いずれにしましても、こういうのでやるという形になると、教育の無償化というのが今憲法改正でやるという議論が出てきたのは、非常に実はこの議論を加速する面で望ましいと思います。憲法で言うことになれば、時の政権や法律改正という話ではなくて、国の基本になりますので、その方が確実だと思います。
 最後に、天下りの話。ここはよく触れておきたいと思います。九ページであります。
 先ほど政府BSで述べましたように、資産の大半というのは天下り先への出資金、貸付金で、それだけ多くのストックがあるということは、毎年の予算でも財政支出があるということであります。
 私は、かつて第一次安倍政権のときの内閣参事官で、この天下り規制を企画した担当者です。そのときに、天下り規制というか再就職規制をつくったのは、余りに予算とかがひどく扱われているんじゃないのという話と、役所の人事の方がかかわってこういうふうなものが横行していたからであります。
 天下りというと、不適切な再就職というふうに定義しておきます。適切な再就職もあるわけでありまして、ちなみに私は適切な再就職をしたつもりです。ポイントは、役所があっせんを尽力することです。要するに、役所の力をかりて就職せずに独力で一人でやれば、これは適切な再就職になっております。
 こういうふうな役所人事、退職人事は、一定の管理職であれば経験をしております。私も、公務員だったときに管理職だったので、退職時には経験しました。結構きついですね。ただし、そこまでいかない人でも、天下り先の予算、手心を加えた予算をつける作業とか、それから監督権限で、多少手かげんした処分をした経験のある人はいるでしょう。こういうのが、ちょっとゆがめていると思います。
 再就職のポイントというのは、要するに、自分の関係先への求職はだめ、それと、あと、役所の人事のあっせんはだめというその二つになります。要するに独力でやれということであります。
 先日、全府省の調査というのが私のところに来ました。そこでは、再就職の経緯について細かく書くということですけれども、こういうふうな全数調査を行うのであれば、恒常的に調査機関をつくった方が簡単ですね。はっきり言えば、ちょっと人事をやっている人から見たら、この再就職に役所の関与があったかどうかなんというのは、かなり簡単にわかります。
 ちなみに、後発で再就職規制を実施した大阪府市では、第三者の手もかりながら、このような全数調査をしておりまして、それがかなりの牽制効果があっていると私は聞いております。
 また、役所の関連団体が人材を募集するとき、いきなり役所の人事課に話しにすぐ来るんじゃなくて、ハローワークを使ってやるというのがはるかにいいですね。要するに、ハローワークを使います、そうしますと、民間から求人がたくさん来ますよ、あんないいポストですからというので。そうしますと、少なくとも選考するときに民間と全く同一になりますから、手続がかなり透明化されると思います。
 さらに、制度的な改正というのもあります。
 今の再就職規制の抜け穴というと、官僚OBのあっせんというのは実は網がかかっていないです。官僚OBについては、何かの行為をしたらいけないというのは書いてあるんですけれども、人事課にかわってあっせんするのはかからないんですね。実際、そういうふうな事例を私も見聞きしました。
 あと、今の再就職規制違反というのは刑事罰はかかっていません。このようなのは実は検討した方がいいと思いますね。
 以上、三点でありまして、統合政府で財政は見るべきということ、教育というのは未来投資として考えるべきということ、それとあと、天下り根絶の実効性をさらに上げて、予算に対する批判がなくなってもらいたいと思っております。
 この三点を強調して、終わります。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119305262X00120170221_008

発言者: 高橋洋一

speaker_id: 3736

日付: 2017-02-21

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会