渡邊頼純の発言 (外交防衛委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(渡邊頼純君) 今日は、こういう大変重要な会議、参議院の外交防衛委員会にお呼びくださいまして誠にありがとうございます。大変光栄に存ずる次第でございます。
今、岡本行夫参考人が述べられましたように、私も、この新しい潮流、特に新しい帝国主義の台頭とでもいいましょうか、あるいは私の分野に引き付けて申しますと、新経済ナショナリズムとでも言ったらいいような状況が展開していることに非常に大きな懸念を持っております。特に重商主義的な傾向、つまり貿易をゼロサムゲームで見ると。私が得をするとあなたは損をするというような形で、貿易を二国間のベースで見る傾向が非常に強くなってきているということに極めて深刻な懸念を持っているわけでございます。
私に本日与えられましたテーマは、アジア太平洋の経済秩序と日本外交ということでございますので、今日はそこにまずは焦点を絞ってお話を申し上げたいというふうに思うわけでございます。
パワーポイントで作りました資料を用意してございます。お手元にあるかと思いますので、そちらを御覧になっていただければと思うわけでございます。
一枚目の表紙をめくっていただきますと、二ページ目でございますが、ここには、どのような大型の自由貿易協定、あるいは自由貿易の構想ですね、アイデアがあるかということを示させていただいております。世界中に現在、自由貿易協定、FTAを中心といたしました経済統合は世界で二百八十二件あるというふうに言われております。これは二〇一五年のジェトロの報告書に出ている数字でございます。本来は、ガット、WTOという多国間の貿易体制の中では例外というふうに位置付けられている自由貿易協定、これが二百八十件以上あるということは、それ自体も一つの驚きでございます。
近年の状況は、そのような二国間のEPAが徐々に収れん、収束いたしまして、大型のFTA、これをメガFTAと呼んだりしております。その様子をスライド一枚にまとめてみると、このような形になるかと思います。まずは、大きな地域、地域統合が進んでいる大きな地域が大きく分けて三つあるというふうに考えていいかと思います。
一つは、EUを中心とする欧州、その図の左の上の方に出ております。
それから、大西洋を渡りますと、今問題になっておりますNAFTA、北米自由貿易協定というのがございます。そして、同じ米州ですが、南の方へ下がってまいりますと、CAFTA、これはセントラルアメリカのFTAということで、中央アメリカですね、グアテマラとかホンジュラスとかコスタリカといったような国がございますが、それとアメリカが二国間で結んでいるようなFTAがございます。さらに、南の方に下がってまいりますと、メルコスールですね、これは南米の共同市場ということでございます。さらに、南米のアンデスを挟んで太平洋側を見ますと、そこにはメキシコ、チリ、コロンビア、ペルーという四か国が太平洋同盟というのをつくっております。そういうような地域統合の動きが北米、南米それぞれにあるということでございます。
そしてさらに、太平洋を飛びまして東アジアに参りますと、東アジアではASEAN十か国が独自のFTAをやっております。それに付け加えまして、ASEANプラス3、つまりそのスリーは日中韓でございますが、このASEANプラス3の枠組み、さらにはASEANプラス6ということで、そのASEANプラス3にインド、豪州、ニュージーランドを加えましたASEANプラス6という枠組みがございます。今は、このASEANプラス6がRCEP、リージョナル・コンプリヘンシブ・エコノミック・パートナーシップということで、包括的な東アジアの経済連携協定というのを目指して交渉しているという、こういう状況でございます。
御覧のように、欧州にあってはEU、そして北米にあってはNAFTA、そして南米にあってはメルコスール、さらには太平洋同盟、そして東アジアにはRCEP、さらには日中韓のFTAもあるわけでございます。
このように、それぞれのメガ地域にはそのメガ地域内の地域統合を進めている大型のFTAがある。さらに、二〇一〇年以降の傾向といたしましては、その地域と地域を結ぶ地域間の統合の枠組みもできてきているということでございます。
現在問題になっておりますTPPは、まさにこの東アジアと米州、その米州の中でも太平洋の沿岸諸国ですね、これが元々はAPECというこの地域の貿易と投資の協力枠組みがございますが、そのAPECの中から言わば出てくるような形でTPP、環太平洋経済連携協定というのが出てきております。
また、EUとアジアの間にもASEM、アジア欧州会合というのがございました。まさに、日EUのEPA交渉というのはそういうプラットホームの上で展開をしているというふうに理解していいと思います。
そして、最後にEUと米州でございますが、このEUと米州の間でも、特にEUとアメリカとの間では、環大西洋の貿易秩序をつくるための環大西洋貿易投資パートナーシップ、いわゆるTTIPというのが交渉されていたわけでございます。
このように、確かに二国間のFTAというのは二百八十ほどあるわけですけれども、徐々にそれが収れん、収束する形で、今申し上げたような、現在では地域間の大型FTA、メガFTAというのが一つのトレンドになっている。そして、特に日本にとって関係が深いのは、今まさに問題になっておりますTPPでありますとか、日EUのEPAでありますとか、さらにASEANプラス6の枠組みでありますところのRCEP、さらには日中韓のFTA、この四つぐらいの大型FTAというのが日本にとって非常に関係が深いところだというふうに理解してよろしいかと思います。
一枚めくっていただきますと、アジア太平洋における地域統合ということで、それぞれの枠組みにどういう国が入っているかということを示している枠組み、ちょっと錯綜しておりましてやや複雑な印象を与えるかもしれませんが、御覧のように、重層的、複層的に現在アジア太平洋の経済統合は進んでいるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
そんな中でも、RCEP、ASEANプラス6の枠組み、これは二〇一三年の五月に開始をしております。また、日中韓のFTAも二〇一三年の三月、日EUのEPAも、総理とそれから欧州委員会の委員長との間での電話会談でスタートしておりますが、それも二〇一三年三月ということで、この二〇一三年というのは極めて重要な年でございます。まさにこの年に日本は、二〇一三年三月十五日のことでありましたが、安倍総理がTPP交渉参加を決意され、同年、二〇一三年七月二十三日から日本はTPP交渉に参加をしたということでございます。
そういうふうに考えてまいりますと、ここに複数のFTA、EPAの枠組みがございますけれども、やはりTPPが一番、交渉の進展の度合いといいましょうか、それが著しく進んでいるものである、最も発展した形態である、そして、幸いにも合意、そして署名までは来たわけでございます。そういう状況がアジアにおける地域統合の状況かと思います。
一枚更にめくっていただきますと、四ページ目でございますが、ここには、日本のアジア太平洋におけるEPA戦略、FTA戦略のこれからの展望みたいなものを紹介させていただいております。
この左には、日本の二国間のEPA、これが既に十五件ございますが、日本の二国間のEPA、これが日本の対外貿易のおよそ二三%ぐらいをカバーしております。
さあここからどういうふうに進んでいくかということでございますが、恐らく二つの方向性があるということでございます。一つは、矢印、上の方に向かっておりますが、東アジアに向かう方向、そしてもう一つは、矢印、下の方に向かっておりますが、環太平洋に向かう方向ということでございます。そして、東アジアの方はまさにRCEP、日中韓FTAということになる。そして環太平洋の方はTPP、さらには日本とカナダのFTAというのもここに入れてもいいかと思います。
そして、最終的な目的地といいましょうか、最終的なランディングゾーンはアジア太平洋自由貿易圏ということでFTAAP、これがAPECワイドのFTAをやるということで、APECの二〇一〇年の横浜APECでありますとか、あるいは二〇一四年の北京APECで合意をされているところでございます。御覧のように、最終的には、アジア太平洋ではそういうAPECワイドのFTAであるところのFTAAPを最終目的地として今交渉が進んでいる、その中で重要な枠組みとしてRCEPや日中韓やTPPというのがあると、こういうことでございます。
日本にとりましては、実は対外貿易の四六%はRCEPの構成国が仕向け先になっております。それに対しまして、TPPの方は日本の対外貿易の約三割でございます。もちろん、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアといったような国々はTPPにも属しておりますし、RCEPにも属しておりますから、若干の重複、オーバーラッピングはあるわけでございますけれども、大ざっぱに申し上げますと、輸出ではRCEPがよりTPPよりも重要であると。
じゃ、対外投資はどうかと。海外投資で申しますと、今度これが逆転いたします。対TPP加盟国への日本からの投資は四〇%強でございます。それに対して、対RCEP加盟国への投資は三割にとどまっております。
というふうに、貿易でいえばRCEPがより日本にとっては重要、そして投資ということでいいますとTPPがより重要。まさに日本にとりましてはRCEPとTPPというのは補完的な関係にあるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
もう一枚めくっていただきますと、アジア太平洋EPAの効果ということでございますが、御覧のように、ブルーの色が付いておりますところは関税撤廃による効果でございます。これがどれだけGDPの変化に寄与するかということです。そして、関税撤廃及び非関税の、関税以外の措置の削減というのがより濃いブルーになっているところでございます。
御覧のように、TPPもRCEPもそれぞれ重要ですが、特にRCEPにおきまして非関税措置の削減ということができたときの効果が非常に大きいわけですね。ですから、まさに日本はTPPとRCEPを組み合わせていく、そして、その行き着く果てとしてのFTAAP、そこが日本にとって非常に大きなメリットがあるということであろうかと思います。
一枚めくっていただきますと、FTAAP、APECワイドのFTAになりますが、FTAAPで鍵を握るAPECのメンバーエコノミーということでいいますと、中国が最も大きく裨益をする。そして二番目は米国、日本はマレーシア、メキシコに続きまして五番目に裨益をするということが見えてきております。
最後の結論部分でございますが、もう一枚めくっていただきまして、トランプ政権の通商戦略と日本の対応、どうしたらいいかと。
一つ目のポイント。私が申し上げたいのは、今お示しいたしましたFTAAPでどれだけの経済効果があるということから見ても、実はアメリカというのは二番目に裨益する国でございます。ですから、TPPから実は離脱して損をするのはアメリカ自身であるということでございます。もとより、RCEPのメンバーではアメリカはございませんので、そういう意味では、TPPから抜けるということはアメリカにとって最も残念なシナリオであると申し上げざるを得ないと思います。日本としては、そういう中で、アメリカのTPP復帰を周到に準備し、いつでもアメリカが戻ってこれるような状況をつくるということが重要だろうと思います。
それから二つ目のポイントですが、米国抜きのTPPというのは、これはやはり輸出の最終仕向け先としてのアメリカが欠落するというのは非常に所得効果が小さくなるということがありますが、非関税措置については一定の効果があるということがありますので、TPPマイナス1も早急に発効させる必要があると思います。
三つ目のポイント。先ほど申しましたように、TPPとRCEPは相互補完的でございます。ですから、日本企業が東アジアで構築してまいりました生産ネットワークの維持強化のために、やはりRCEPの推進というものを今後も鋭意進めていく必要があると思います。
次に、太平洋同盟、メキシコとコロンビア、ペルー、チリの四か国の同盟ですが、この太平洋同盟と日本との包括的経済連携というものを交渉していく、これも一案ではないかと思います。
最後に、やはり民主主義であるとか法の支配とか、それから人権とか、そういうユニバーサルな価値観を共有しておりますEUとの日EU経済連携協定の交渉を最終決着させる、これを早期に実現するということは極めて重要であるということを指摘させていただきまして、私の冒頭の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。