渡邊頼純の発言 (外交防衛委員会)
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○参考人(渡邊頼純君) 浜田先生、どうもありがとうございました。
三つとも大変難しい質問でございまして、チャレンジングな質問を頂戴して、感謝申し上げます。
まず一つ目の、アメリカで今言われております国境税というものについてなんですけれども、これはもう少し、実際にはこれが一体実態としてどういうふうに施行されるのか、どういうふうにインプリメントされるのかということを確かめないと、ちょっと軽々には申し上げられないという点がございます。
ただ、あくまでも一般論として申し上げますと、もし、例えばメキシコで作られたものに対して国境で何らかの税を掛けるということになりますと、これはガットの二条に書かれております譲許表、その中に関税あるいはその他の課徴金とかそういったようなものを全てWTO加盟国のWTO上の義務として記載をする必要があります。譲許表に記載をしていく必要がある。
つまり、それは、各国、他のメンバー国、WTOのメンバー国からの輸出に対して課せられるという意味では、既にアメリカがWTOに約束をしている、これ譲許しているといいますが、その譲許しているレベル以上に国境でのアジャストメントのレベルが高くなるということになりますと、これはガットの第二条違反を形成する可能性がございます。ですから、そういう意味では、それが国境で徴収されるものである限りにおいては、ガットの二条の制約の下に置かれるということだろうと思います。
ですから、先生の御質問のように、後半にありましたように、どうやればWTO違反でないことができるのかということになりますと、それはちょうどEUのいわゆるバリュー・アデッド・タックス、付加価値税がそうでありますように、輸出に仕向けられる産品については国内の付加価値税で還付をそれぞれの生産段階で受けるという、そういうシステムにEUの中なっておりますけれども、そういう形で行われるのであれば問題とはなりませんけれども、国境で輸出国からの産品に対して国境税を課すということになりますと、その点だけを捉えますと、ガット二条に対する違反を形成するというふうに考えていいのではないかというふうに考えます。
これが一つ目の御質問に対する私からの拙い回答でございます。
RCEPについて二つ目の御質問として頂戴しておりますが、スピード感も重要、まさにおっしゃるとおりだと思います。先ほど申しましたように、二〇一三年の五月から交渉しておりますが、TPPと比べますとはるかに交渉の進展、進捗の度合いが低くございます。やっと初期の物の関税の、物品関税の初期のオファーとリクエストが今ようやく交換されつつあるということで、実はまだ入口に立ったばっかりというような状況でございます。先生からは、非関税分野の制度的な改善というのはこれはしっかりやっていったらいいのではないか、おっしゃるとおりだと思います。
物品の関税とどこまで切り分けるかという御質問もありましたが、今やはり包括的経済連携というのは、物品のマーケットアクセスの改善と、それから投資とかあるいは知的所有権とかあるいは競争政策でありますとか、そういったようなものにつきましてのルールの方というのは一つのパッケージとして交渉しております。ですから、このパッケージをばらしてしまうと、例えば非関税分野だけ進めればいい、あるいは物品だけ進めればいい、あるいは物品の中でも農業はおいておいて製造業の産品だけやろうというふうに、どんどんある意味で分断、細分化が進んでいってしまう。
やっぱり交渉をまとめていくという観点からしますと、いろんな交渉分野を一まとめにして一括受諾という形で交渉していくというのが極めて重要なんですね。ですから、それを基本として進めていく。これはシングルアンダーテーキングというような言い方しておりますけれども、WTOの基になりましたウルグアイ・ラウンド交渉以来、通商交渉というのは一般的に、そういうルールメーキングの交渉とそれからマーケットアクセスとの交渉を分断しないというのが一つのセオリーになっております。ですから、まさにRCEPでもそうやって進めることによって両方のでき上がった協定の価値を維持していくというのが重要だと思います。
他方では、おっしゃったようにスピード感も重要だということでございますが、スピード感は確かに重要なんですが、RCEPの場合は、その基本にASEANプラス1というのが五本ございます。ASEANプラス日本とかASEANプラス中国、ASEANプラス韓国というのもあります。そういった五本のASEANプラス1でこれまでできているレベルは少なくとも超えるようにしましょうということがあるわけですね。ですから、そういう意味では、そこは何とか維持する必要がある。
例えば、先生御自身が言及してくださったように、インドは、例えばASEANとインドとか、そういうものは七六・五%、これは非常に低いわけですね。あと、中韓のFTAも実は七〇%台というようなことになっておりまして、野心が非常に低いわけですね。ですから、スピード感も重要ですが、この野心のレベルを維持していくというのもやはり大きなイシューではないかというふうに考えております。
最後に、日EUのEPAですけれども、これは、今EUの中でも、EUの統合、市場統合に対して、ブレグジットあるいは中東欧のEUメンバー国からのいろんなブラッセル主導の動きに対する反発とか出てきております。そういう意味では、日EUのEPAをまとめるということは、EUにとりましても、あるいはその政策当局である欧州委員会にとりましても重要なことだろうと思います。ですから、そういう意味では、この日EUのEPAをできるだけ早く、特に三月にはオランダの選挙、そして五月にはフランスの大統領選挙、さらには九月にはドイツの選挙がございます。ですから、ヨーロッパが政治の季節に入る前に日EUのEPAをできるだけ早くまとめるということが今重要ではないかと思います。
特に今、世界には保護主義あるいは保護貿易主義というものが蔓延しつつあるかのような前兆がございますので、そういうところで日本とEUがEPAで大筋合意できるというのは、世界に対しても極めて重要なメッセージになります。そしてまた、日本がそれだけオープンな貿易体制をつくっているということをアメリカにもアピールすることになると思いますね。
ですから、そういう意味では、日EUのEPA、これをできるだけ早期に合意に持っていくということが日本の国益にとって重要ではないかと考える次第でございます。
以上でございます。