大塚直の発言 (環境委員会)
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○参考人(大塚直君) 早稲田大学の大塚でございます。
本日はこのような機会を与えていただきまして、大変光栄に思っております。ありがとうございます。
意見を申し上げたいと思います。
先ほどから配付させていただいております私のレジュメを御参考にしていただければと思います。
時間の関係で、二、現行法の問題点と課題という三ページの二のところからお話ししたいと思います。
二〇〇九年の改正の後、土壌汚染対策法、これから本法といいますが、これにはなお問題点とか課題があるということが明らかになってまいりました。主な点は以下のとおりでございます。
第一に、本法の対象については、自然由来汚染が含まれるかという問題がございまして、自然由来汚染につきましても本法の対象であることは明文で示す必要があると考えられます。
第二に、調査の契機につきましては、なお問題が残されております。具体的には、土壌汚染状況調査の一時免除中又は操業中の特定有害物質取扱事業場に関する都道府県等の調査結果によりますと、三割から五割の割合で土壌汚染が確認されました。そのため、これらの段階におきましても、一定規模以上の土地の形質変更を行う場合には届出の対象として調査を行うということが考えられたということでございます。
第三に、汚染の除去等に関する課題といたしましては、現行法の汚染除去は、対策実施者にその実施を委ねておりまして、本当に適切な対策をしていただけるかどうかということを監視するための計画の提出の義務付けなどにつきましては規定が抜け落ちております。自治体のアンケートによりますと、要措置区域におきましてどのような措置が実際に行われたかを都道府県知事が確認しておられるのは、回答としては六八%にすぎなかったということでございます。
第四に、取引に関しましては、要措置区域等の指定の解除を行った場合に、台帳からの消除をするかどうかという問題がございます。現行の通知では、消除はするけれども、消除された台帳の情報につきましては、本法六十一条一項に基づいて保管し、必要に応じて提供されることが望ましいというふうに整理されております。これは、要措置区域等における汚染除去等の意欲を損ねないために必要であるという趣旨でございましたが、一方で、区域指定が解除された旨の記録を残す方が、土地の取得のときに詳細な土地の履歴を把握できるという指摘もなされてまいりました。
第五に、要措置区域等からの汚染土壌の搬出に関しまして、現行法では、一つの事業場の土地や一連の開発行為が行われる土地であっても、飛び地になって指定されている区域の間の土壌の移動というのは認められておりません。このことは、迅速な区域内でのオンサイト処理の妨げになる、あるいは工事の支障になるという問題がございまして、さらに、掘削除去による処理施設への搬出が増えてしまうという可能性もあるということが指摘されております。
また、自然由来の特例区域の間とか埋立地の特例区域の間の土壌の搬出とか移動につきましては、現行法では認められておりませんが、これらの区域から発生する基準に適合しない土壌は、特定有害物質の濃度が低い、それから特定の地層や同一の港湾内に分布している、広く分布しているというふうに考えられますので、区域の間での移動を認めてもいいのではないか、オランダとかドイツでは、低汚染の土壌は原則として資源として扱われていることに留意が必要ではないかという問題が発生いたしました。
第六に、そのほか、区域指定とも関連する問題として、臨海部の工業専用地域では、一般の居住者による地下水の飲用などによる健康リスクは低いと考えられますし、また、産業活性化などのためにも一定の場合には特例措置を設けるべきではないかという指摘がなされているところでございます。
以上をまとめますと、①として、事業場の操業中及び調査の一時免除中の段階からの調査義務を導入すること、二つ目に、汚染除去等の計画及び措置完了報告の提出を義務付けること、三つ目に、台帳の記載事項について、区域指定が解除された場合にその旨を台帳に残すこと、四つ目に、自然由来の土壌汚染について本法の対象であることを明確にすること、五つ目に、臨海部の工業専用地域について特例を設けること、六つ目に、搬出の規制について、飛び地の間及び自然由来特例区域間などの土壌の移動につきまして規制を緩和することなどといたしまして、六と一部重なりますが、自然由来汚染についての移動とか資源としての活用について規制緩和をすることなどになります。
これらのうち、②と③につきましては、二〇〇二年の法の制定時から残された問題点と言うことができるのに対して、①と④は二〇〇九年改正以降残された問題点でございます。①事業場の操業中及び調査の一時免除中の段階からの調査義務の導入につきましては、二〇〇九年の本法改正時に国会で附帯決議が付されていた問題点でございます。④の自然由来の土壌汚染について本法の対象とすることにつきましては、二〇〇九年の改正の時点では本法には明確には組み込まれておらず、環境省が通知で対処してきた問題でございます。⑤から⑦は規制緩和に関する論点でございます。
次に、三の改正案の特色に移りたいと思います。
まず①といたしまして、有害物質使用特定施設での土壌汚染の状況調査についてでございます。改正案では、一時免除中の事業場において土地所有者がその土地の形質を変更する場合、形質変更というのは工事とかをする場合でございますが、この場合には、都道府県知事に対する届出義務を課し、届出を受けた都道府県知事は、汚染状況について土地所有者に対して指定調査機関に調査をさせて報告するように命ずるというふうにしています。一時免除中の土地に対して、汚染の拡散を防ぐという観点から、土地の形質変更に着目した改正が企図されているということでございます。
他方、操業中の事業場についてはどうかということでございますが、操業中の事業場につきましては、土地の形質の変更の際には四条調査の対象になりまして、届出の義務が課され得るわけでございますが、これにつきましては、環境省令で面積の裾切りについて現行の三千平米よりも縮小するという予定でございます。
次に、②のところでございますけれども、改正案では、要措置区域における指示措置等の実施の枠組みとして、汚染除去等計画の提出及び完了報告の手続を導入しております。汚染除去等計画の内容として環境省令で定める一定の項目について記載する、実施措置の着手予定時期及び完了予定時期等について記載する、この計画に記載された実施措置を講じた場合には都道府県知事にその旨を報告するということなどが必要となります。
次に、③でございますが、台帳の記載事項について、改正案では、区域指定が解除された場合に、措置の内容などと併せて区域指定が解除された旨の記録を解除台帳という別の台帳に残すことによって、措置済みの土地であることを明らかにし、それとともにその閲覧を可能として、土壌汚染状況の把握ができるようにするとしております。
次に、④でございますが、自然由来の土壌汚染に関して現行法が規定を置いていないという問題点につきましては、改正案では、自然由来汚染であっても汚染の拡散のおそれはあり、規制対象となり得ることを前提としつつ規制緩和をするという規定が置かれております。
次に、⑤といたしまして、重要な規制緩和として、改正案は、臨海部の工業専用地域での特例を設けまして、通常の形質変更時要届出区域とは違って、事前届出ではなく、事後届出としております。これについては二つの要件がございまして、一つ目は、土壌の特定有害物質による汚染が専ら自然又は埋立材由来のものである土地であり、二つ目の要件として、かつ人の健康に係る被害が生じるおそれがない土地についての形質の変更の場合には、汚染土壌の区域外への搬出は規制しつつ、管理方針をあらかじめ都道府県知事と合意し、これを実施する代わりに、その都度の事前届出を不要とするということが考えられたわけでございます。改正案では、この考え方に従いまして、管理方針について都道府県知事の確認を受けた上で、最低限必要な情報をまとめて事後的に届け出させるということにしております。
次に、⑥でございますが、搬出規制に関して、要措置区域等における汚染土壌の飛び地の間での移動及び自然由来等土壌の区域間の移動を可能にする規制緩和を行うということでございます。
次に、⑦でございますが、自然由来特例区域及び埋立材から成る埋立地特例区域から発生する基準に適合しない土壌は、先ほど申しました理由で、一定の場合にはその移動や活用を可能とすべきであると考えられます。この活用につきましては、改正案では、国や自治体が汚染土壌処理の事業を行う場合の特例が定められておりまして、そこでは都道府県知事との協議が重要な要素とされております。
次に、その他でございますけれども、⑩として、改正案では、有害物質使用特定施設設置者の汚染状況調査への協力の努力義務の規定が置かれております。
次に、四の(1)の改正案の評価に移りたいと思います。
今回の改正案では、①の一時免除中や施設操業中の事業場における土地の形質変更の際の届出、調査報告の導入、②の汚染除去等計画の提出及び完了報告の手続の導入の二つの点につきまして、従来から積み残されておりました問題点に対処することになります。①は、搬出の場合を含め、汚染土壌の拡散を防止するという観点から重要な改正になると思われます。②は、汚染除去等の措置という本法の最も核心的な部分について従来必ずしも明確な規定がなかったところに切り込むというものでございまして、本法の実効性を高めるために必要不可欠な改正であると考えております。
さらに、③の台帳の記載事項につきまして、区域指定が解除された場合に、措置の内容などと併せて区域指定が解除された旨の記録を台帳に残すということは、透明性を確保し、土地取得のときに詳細な土地履歴を把握できるようにするという要請を重視しながら、かつ要措置区域等における汚染除去等の意欲を損ねないようにするという要請にも一定の配慮をしたものと評価できると思われます。透明性の確保は、土地の履歴や状況に関する情報を社会で共有するためには必要なものであると考えられます。
他方で、⑤から⑦は規制緩和に関する改正案でございまして、本法が合理的な規制を行うために必要な改正であると考えております。特に、⑤の臨海部の工業専用地域につきましては、一定の要件の下に、通常の形質変更時要届出区域とは違う特例を設けるということでございまして、これは経済界及び千葉県からの要請を踏まえたものでございますが、形質変更時要届出区域の一種としていることとか、事後届出を命じていることのために、土地の管理は依然として必要となります。したがって、これによって土壌汚染に伴う健康リスクが増えるという可能性は乏しいと言えると思われます。
全体的に見て、今般の改正案は、現時点で必要な現実的な対応を最大限行おうとするものであるというふうに評価できると考えております。
もっとも、本改正案につきましても幾つかの将来的な課題は残されております。主なものを三点挙げておきたいと思います。
第一に、本法の目的が健康被害の防止に限定されていることでございます。我が国の土壌汚染対策は、健康被害に関連する特定有害物質の汚染除去対策だけでもかなりの困難を抱えている現状にございますが、将来的には、生活環境被害防止につきましても本法の対象に入れる、本法の目的に入れるということが検討されるべきであると思われます。
第二に、土地所有者の責任につきましては、欧米では善意無過失の購入者には抗弁を認めて免責をするという考え方を取るものが少なくありません。我が国でもこのような考え方を導入することが検討されるべきであると考えられます。
第三に、法改正ではなくて運用でも可能な点といたしまして、指定支援法人の基金の活用による助成金の交付がございます。これは、土地の所有者等が汚染除去等をした場合に用いられるものでございます。さらに、土壌汚染の原因者に対しましては、融資が検討されるべきであると思われます。この助成につきましても融資につきましても交付例が非常に少なく、融資につきましては現在中止されているというところでございますけれども、今般の改正案によれば、一時免除中及び操業中の事業場の調査が新たに行われるわけでございますので、特に中小企業の事業場につきましてはその必要性が生じることが予測されます。かつて交付例が少なかった原因を真摯に探ることが必要であると思います。
助成につきましては、そもそも助成要綱を策定していない都道府県等があるということが想定されていること、都道府県等が助成金の四分の一を負担することを懸念していることが想定されることなどの問題点があると考えております。
次に、融資につきましては、土壌汚染の原因者に対して融資をしないということが、原因者に負担能力がないことになりまして、七条一項ただし書の「相当であると認められ、」の要件に該当しなくなる結果として、原因者でない土地所有者等が汚染除去等の指示の対象とされる可能性を増やすということにも留意が必要となります。原因者でない土地所有者等というのは、まさに汚染をした人から土地を買った人がこの場合にその指示の対象にされてしまうという可能性があるということでございまして、これでかなりの額の負担をさせられるということになる可能性もあるということでございます。その意味では、融資の制度の復活の必要性は高いというふうに考えているところでございます。
以上で私の意見を終わらせていただきます。ありがとうございます。