佐藤泉の発言 (環境委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(佐藤泉君) 参議院環境委員会における意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。
本日は、土壌汚染対策法の改正について私の意見を述べさせていただきます。手元にレジュメをお配りいたしておりますので、それを御覧くださいませ。
まず、意見陳述の要旨でございます。
現在、豊洲市場への移転問題が大きな国民の関心を呼んでおります。この事例では、土壌汚染に対して一定の浄化が行われたわけでありますが、完全な浄化ができていないということで、土地の合理的な利用に支障が発生するという事情が起きております。
その背景には、土壌の安全性について、一体どういう基準でそれを判断するかということが国民に分かりにくい、ある人にとっては安全だという、ある人にとっては危険だという状態が発生していると思います。
この基準の考え方でございますが、現在は土壌環境基準というものと土壌汚染対策法の指定区域となる基準が同じ数字になっております。本来、土壌環境基準というのは望ましい基準でありまして、ある程度の裁量が認められているわけですが、土壌汚染対策法ではそれが同じ基準になっている。これがほかの水質汚濁防止法や大気汚染防止法とは違うということであります。
この基準がどのように定められているかというと、土壌の含有基準は、七十年間毎日百ミリグラムを口にし続けても健康に影響を及ぼさないということで、本来は土壌というものは人が食べる食品ではないわけですが、七十年間毎日食べるということを前提に決められている。それから、土壌の溶出量基準は、七十年間毎日二リットルの地下水を飲み続けるということを前提に健康に影響を及ぼさないという基準になっております。この基準、確かに安全性を考えればやむを得ない部分もあるかもしれませんが、都会部の、水道が完備されている、そして土壌の表面が被覆されているところでは、この基準が本当に必要なのか、土地の利用にとって厳し過ぎないかという問題が私はあると思っております。
また、この基準値は、自然的原因によって多くの地域で現在基準値を超える土地が出ております。具体的には、関東平野あるいは大阪、名古屋、広島、私もいろいろな訴訟を行っておりますが、各地の場所でこの自然的由来、つまり平野部に堆積した火山岩由来のものですね、こういうものによって基準値を超過しております。これによって、有効活用すべき平野の土地がなかなか活用できないという事態が発生していると思います。しかも、これは汚染原因者がいないという日本の国土そのものであると思っています。
この問題について、前回、平成二十一年の改正の際に、法律改正ではなくて環境省の通知によって自然的原因の汚染も土壌汚染であるという制度変更が行われました。本来、国民にとって大きな関心のあるところだと思うんですが、これが通知によって行われており、国会の審議を経ていないということについて私は法律家として疑問を持っております。そして、このことが土地の利用に支障を発生させているというふうに私は考えております。
今回の改正でございますが、基本的には、操業中の事業場について、土壌汚染調査を進める、そして土地利用にも配慮するというバランスを考慮したものであると思います。したがって、その内容自体については一定の評価ができるというふうに思っています。しかし、その根本的な問題については余り触れられていないというふうに考えております。
また、具体的な規制の内容は省令に委ねられているために、この制度が本当に使いやすくなるかということも今後注目されるところであります。
私の意見としては、土地というのは国民にとって大きな財産でございます。もちろん、健康は必要であります。しかし同時に、土地を有効利用する、それによって国民の生活を支えていくということも重要な問題でございます。このバランスをどのように考えるか。すなわち、国民が安心して土地を売買する、あるいは利用するということができるような制度を目指すべきであると。この点に関して今回の改正は、一定の配慮はしておりますが、根本的なこの基準値の在り方ということについては踏み込んでいないというふうに感じます。
裏面を御覧くださいませ。今回の具体的な法改正の内容でございます。
まず、操業中の事業場に対して調査を促進するということで改正が行われています。この点に対して、私も、操業中の工場について調査をある程度すべきであるということは確かに現状としてはあるかもしれません。しかし、その目的は、工場用地としての利用を阻害するものではなくて、あくまで安全を確保するというものである必要があると思います。そうしますと、土壌を何メートル深くまで調査するというのではなくて、そこから搬出される土壌、これについての安全性だけを考慮すればその土地の利用と汚染の拡散防止というバランスが取れるのではないかということで、今回の改正は若干、土地の利用にまだ大きな規制が掛かっているのではないかというふうに考えます。
次に、三千平米以上、この土地は土壌汚染があるかないかということが分からない全ての土地でございます。こういうものについて事業者に、自主的な調査結果を提出できるようになったということでございます。
この四条調査と言われる三千平米以上の土地の改変の問題でございますが、実は、この問題では多くの土地が対象になっております。例えば、道路を造るとかトンネルを掘るとか、あるいは大規模な宅地開発をする。今まで工場として使ったことのない土地、自然的原因しか考えられない土地もこの対象になっているわけですね。これが、速やかな土地の利用というものに私は一定の規制が掛かっているのではないかと思います。したがって、人為的な汚染の可能性が低い土地についてはもう少し規制緩和をする必要があるのではないかというふうに考えております。
三番目の点でございます。要措置区域における事業者の自主的な計画提出という問題が今回の改正に入っています。
私は、この改正は、事業者の自主性、それから行政の監督の透明性というものを考えると合理的な内容ではないかというふうに考えております。
四番目、形質変更時届出区域における施行方法の合理化。
これについても土地の利用をある程度配慮したということで考えております。特に、これは臨海部の工場地帯に対して一定の規制緩和をしようということが考えられている。また、自然由来特例の区域に対して土地利用を合理化するようにという配慮がされています。これについては一定の評価ができると思いますが、私は本来は、基準値の考え方、つまりこの地域はこの基準値であれば安全だというふうに基準値の考え方で考えるべきではないかというふうに思っています。
三番目、改正点以外の要望でございます。
今回の改正で解決できていない問題が私はあると思います。
まず一点目。先ほどから述べておりますように、土壌汚染対策法に対する指定基準、これが現在、環境基準と同一になっているわけであります。しかし、土地の利用用途、例えば住宅地である、あるいは臨海部である、マンション用地である、倉庫である、いろいろな用途があるわけですが、その用途に即して安全性の基準を設けるべきではないか。全ての土地で地下水を二リットル、七十年間人が飲むということは想定できないわけであります。そうしますと、その用途に応じた基準を考えないと土地の利用に大きな支障が起きているのではないかというふうに思います。
二番目。
自然的原因による汚染が、現在、環境省の通知によって土壌汚染対策法の対象になっております。しかし、自然的原因による汚染というのは、公害、つまり人が起こしたものではない、国土の問題なわけでございますね。しかも、日本は火山国であるという前提があるわけであります。
このように、汚染原因者が存在しない、長いこと日本国民が使っていた土地についてこれを規制の対象にするということは、環境基本法の下にある土壌汚染対策法として無理があるのではないか、土地の所有者に過大な負担になっているのではないか。
つまり、自分ではどうしようもないわけですね。その平野一帯に同じような濃度の自然的原因による汚染が存在している。それにもかかわらず、一筆の土地の所有者がこれを測定して指定を受けて、それによって売却が困難になる、あるいは土地の利用が困難になるということは合理的ではないのではないか、土地の所有者に過大な負担になっているのではないかというふうに考えます。
三番目でございます。
土壌汚染対策法は、汚染原因者責任というよりは土地の所有者責任ということを強く打ち出している法律でございます。これも環境法としては非常に珍しい法体系でございます。土地の所有者というのは、土地というのはそもそも転々売買されます。もちろん相続もされます。そういう中で、土地の所有者がたまたま測定すると、ある意味でばばを引いてしまったというような結果になるわけであります。
そうしますと、少なくとも、現在工場が設置されている場合には、工場の設置者に土壌についての調査をして対策をするという義務を課すべきであると。現在工場があるにもかかわらず、土地の所有者責任になっているというのはいかがなものなのか、又は、善意の土地の所有者をどうするかという問題について、この法律は根本的な汚染原因者責任の原則というものから少し外れているのではないかというふうに考えます。
四番目でございます。
不動産売買の際に私も多くの御相談を受けます。土壌汚染の調査をすべきか、したときに、自然由来の汚染が確認された場合に、それは一体どのように評価されるのか。それから、前の土地の所有者が汚染原因者だった場合にどうしたらいいのかというふうに、土地の所有者としては悩みが深いわけでございます。
この調査結果をしかし隠しておくということは、現在の世の中では許されないということで、私は、土壌の調査結果というのは売買の契約の際に開示すべきである。と同時に、その汚染の濃度がどのような意味を持つのか、つまり、その土地の所有者が汚染したのか、あるいは自然由来なのか、安全にどのぐらい影響する値なのかということについて、安全性の情報とともに土壌の調査結果を開示する、こういう仕組みが土地の有効利用あるいは売買の安全性を考えたときに必要ではないかというふうに考えております。
以上でございます。