矢後勝也の発言 (環境委員会)

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○参考人(矢後勝也君) ただいま御紹介にあずかりました東京大学総合研究博物館の矢後と申します。
 本日は、こちらの資料ございますけれども、お手元にございますでしょうか。こちらのタイトルにあります「里地里山の生物の衰退と「種の保存法」の課題」というタイトルでちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 私の方の自己紹介は、簡単に触れますと、専門は昆虫、特にチョウとガの昆虫自然史学、それから保全生物学となっております。環境省のレッドリストの選定委員にもなっておりまして、あと日本蝶類学会の副会長、それから日本昆虫学会前自然保護委員長、それから鱗翅学会の自然保護委員長等を務めさせていただいております。
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 こちらにいらっしゃる方はもう既に説明する必要ないかもしれませんが、生物多様性が減少する要因として、生物多様性国家戦略にもありますが、日本における生物多様性の四つの危機ということで、以下のようなものがあります。
 一つは、開発など人間活動による危機、それから二つ目、自然に対する働きかけの縮小による危機、三つ目が、人間により持ち込まれたもの、外来種ですね、これによる危機、それから四つ目は、地球環境の変化、例えば温暖化ですとか海洋の酸性化とか、そういったものの危機ということが挙げられます。
 今日特にお話ししたいのは、この二つ目の自然に対する働きかけの縮小による危機、つまり、雑木林や草原の管理放棄、こういういわゆる里地里山問題というものです。あと、これに付随する鹿などの害獣による悪影響であります。
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 次のページ行きますと、まず、里地里山というのはどういうものがあるかといいますと、こちらの、ちょっと田舎の方に行けば、自然に慣れ親しんだような環境というのが、懐かしいような環境があると思います。例えば、水田があり、それからため池があったり、いわゆる農家、農地があって、それから重要なのが、その近くに採草地があって、その森林との間のところに、それからクヌギ林、昔は薪炭林というのを形成していたので、今は余り使われなくなったのですが、こういった環境、鎮守の森があったりとか、そういうようなのが、いわゆるこの景観全体を里山あるいは里地里山と呼ぶことが多いです。古くから人為的環境により維持されてきた二次的な自然というものがここで挙げられます。
 特にこの中でも重要なのが、先ほども申しました薪炭林、いわゆるクヌギ林とか雑木林、それから採草地、こういうところに生息する生き物というのが徐々に今衰退しております。その原因というのは、最近は農地というのがやはり衰退していることによってその植生が単調化する、管理放棄によってその植生が単純化して里山環境の種が絶滅するということが起こっております。
 あるいは、哺乳類とかに言い換えますと、こういうところが昔は人間と生き物、生物、哺乳類とのバッファーゾーンになっていたんですね。そういうのが今消失して、目の前に哺乳類が思い掛けず出てくるということにもつながっております。
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 こちらは里山環境や半自然草原、こういったものの管理放棄によって実際に絶滅が危惧される種を取り上げています。私はチョウが専門なもので、ここにチョウを題材に取り上げましたが、危機的までに減少した草原性チョウ類ということで、ヒョウモンモドキ、オオウラギンヒョウモン、それからウスイロヒョウモンモドキ、オオルリシジミといった事例を挙げさせていただきました。このうち、ヒョウモンモドキとウスイロヒョウモンモドキについては既に種の保存法の国内希少野生動植物種になっております。
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 こういったチョウを実際どういうふうに今現在、環境復元していくか、生息保全をやっているかというと、こちらが実例です。左が伐採前、右は伐採後なんですが、この伐採前と書かれている左側の写真を御覧ください。ここ、昔、湿地帯、休耕田だったんですね。それが管理放棄によってほぼ雑木林と化している、雑木林というか、もうほとんど林となっているんですね。こういったものを復元するには、昔の環境に戻すために木を伐採したり湿地を復元したりということをしなければならない。こういったものの例えば人員とかそれから予算というのもなかなか取れない状況で、こういった地元のシルバー人材センターからの派遣によって、こっちは広島の環境なんですけれども、徐々に、少しずつやっているというのが現状です。
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 次は、鹿の分布域の変化ということですが、上の日本地図があります。右と左。左が一九七八年までの鹿の分布域、右の方が二〇一一年の鹿の分布拡大域、黄色のところが拡大域です。鹿の分布域というのが明らかに急速に広がっています。これによって、環境省や農水それから各地方自治体が一生懸命に駆除しているというのが実情なんですが、実際、鹿というのは農業被害も大きいですし林業被害も大きい。さらには、里地里山に生息する昆虫類を始めとした生物、こういったものにも非常に大きな影響を与えているということで、今、鹿の捕獲数の変遷というものを、こちらにグラフになっておりますが、一生懸命各自治体でやっているものの全く追い付いていないのが現状であります。
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 これは具体的に対馬の例なんですけれども、今年、環境省、種の保存法のやはり国内希少種になりましたツシマウラボシシジミというチョウの生息環境です。これは、鹿害がやはり対馬というのは深刻で、実際に鹿防護柵があるところとないところを一枚の写真で表しているんですけれども、左は防護柵が掛かっていないところ、それから右が防護柵が掛かっているところです。実際、林床植生それから半自然草原というのはこれだけの違いがあると。実際に、チョウというのは、吸蜜植物とかそれからチョウの幼虫が食べる食草というのが必要になるので、こういったものが一斉にむしり取られてしまい、絶滅の寸前に陥っているというのが現状であります。
 もう一つの事例を紹介します。次のページに行きます。
 兵庫県で野生絶滅したウスイロヒョウモンモドキの報道ということで、これ、二〇一五年のものなんですが、実際、鹿の食害で、一時期このウスイロヒョウモンモドキというチョウが野生絶滅してしまいました。系統保存で担保しているものがあったので、鹿防護柵を立ててその中で草原をうまく管理して、何とか今、復元に至っているというのが現状であります。
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 こちら、国内希少野生動植物種の指定状況ということですが、現在、国内希少野生動植物種というのは多く指定されていて、徐々に今、二〇二〇年までに三百種という目標があると思うんですけれども、こういうふうに指定へ向かっていると。昆虫に対して、私の専門のところでは指定割合は一一%となっていますね。
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 こういった状況を踏まえて、現状の種の保存法に関する課題というのがあります。こちら四つ、身近な里地里山昆虫の採集規制というのが実際出てくるんですけれども、それによって、実は日本の学術文化や理科教育に影響を及ぼしているという点があります。二つ目が調査、研究、教育などを目的とした捕獲、これも含めて規制されて、許可手続が必要な点というのがあります。三つ目に、指定前の標本譲渡にも強い制限が加わることによって、教育、研究の場面にちょっと支障が出ている場面があると。四つ目が、保全を進めるための人員や予算、それからビジョン、展望というのが圧倒的に不足しているという点が挙げられます。
 これらをそれぞれ簡単に一項目ずつ述べさせていただきたいと思います。
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 一つ目の身近な里地里山昆虫の採集規制の問題なんですけれども、実際こういうものにどのような影響を及ぼしているかといいますと、実際、科学する心や環境への関心というものの育成にやはり支障が出てしまう。採集規制というのは余り強くやり過ぎると、特に里地里山の生き物というのはもう住んでいる真横に実は希少生物がいるというような状況がたくさんこの後起こり得る、どんどん指定していくとですね。
 実際、その採集、じゃ、やめろやめろということによってもう関心がなくなるのが実は一番怖い。結局、昆虫採集というのは非常に理科教育に役立っている。例えば、昆虫採集から科学を学んだノーベル賞受賞者ということで、左の隅、下側に、こちら、湯川秀樹、福井謙一、白川英樹、赤崎さん、それから、この前受賞しました大隅先生と、こういった方々というのは実際昆虫というものから科学を学んだと公言しております。実際、昆虫採集をまだ今でもしている方々もいると。
 意図せず実は犯罪者を出すおそれ、特に子供たちなどというのがいます。こういうのはやはり、実際虫好きでも、採集、捕って駄目ですとか、何か犯罪者扱いの、実際には犯罪者も、年齢が小さくて知らなかったと言うと犯罪者にならないかもしれないですけれども、意図せずにそういうことになったら、もう二度と虫なんか触らないという、こういう状況が起こり得るということであります。
 三つ目、欧州での昆虫採集の規制というのが非常に強いのは御存じの方は多いかもしれないんですが、あちらはかなり早い段階から自然を壊してしまったということがあるんですが、それによって、実は日本ではファーブルというのはこれだけいろんな教育に役立っていると思うんですけれども、実はフランス人は、ファーブル、ほとんど知られていません。そういう現状というのが実はあるということですね。
 次のページに行きます。ちょっと時間がなくなったので駆け足で行きますけれども。
 次、調査、研究、教育などを目的とした捕獲の規制というのがあって、それに関して許可手続が必要となると、例えば今現在、種の保存法というのは、割と哺乳類とか鳥類とか、そういった大きな生き物を対象としてやっているんですが、昆虫が同じベースになると、いろいろ同じ基準ではなかなか測れないという問題があります。
 二つ目に、昆虫の分類、保全の進展には、実はプロの実際の研究者よりも、むしろ過去からのアマチュアの研究者の協力というのが非常に大きいんです。ですので、例えばこの下にミヤマシジミというようなチョウの分布状況それから変遷がありますけれども、こういうものもアマチュアの情報の集積というのが非常に大きいと。これはやはり採集というのも含まれているということであります。
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 指定前の標本譲渡にも強い制限が掛かるという点で、先ほどの話とちょっと通ずるところがあるんですが、アマチュアの研究教育活動の妨げになる。元々この種の保存法というのが取引規制から始まった法律なのでなかなか難しいところもあるんですが、現状で大事なのは、実は希少種そのものの研究や教育に時代がちょっと移っているんじゃないかなと思っています。
 また、もう一つ大事なのが、過去の貴重な標本が死滅するおそれがあります。現状では公共機関への寄贈が推奨されていますが、私、公共機関に所属している者として必ずぶち当たるのが収蔵庫の限界があります。そういったもので、受け入れたくても受け入れられないものがある。すると、貴重なデータのその証拠標本というのが失われる可能性がある。つまり、それに当たっては何らかの法的措置か、あるいは博物館等の収蔵庫の拡充、これが非常に大事になってくるということであります。
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 保全を進めるための人員や予算、展望が圧倒的に不足しているという点なんですが、これは指定種の保全を進めるためには、指定したら終わりではなくて、人員的にかつ金銭的にも含めて、効果的かつ計画的な保全対策が不可欠であります。
 希少種保全に指定するのは非常に結構なことではあるんですが、数だけ増えて十分な保全が各種で行き渡らないという現状が起こる。さらに、特に里地里山の希少種というのは継続的な環境管理というのが必須なんですが、その辺りの人員、予算が全く不足している。本当は同一管理で複数種の保全が効果的にできるにもかかわらず、そういうことができないような状況にもなるということですね。ちょっとこの二つはまた飛ばさせていただきます。
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 そこで、特定第二種国内希少野生動植物種の制度の創設について、現状の種の保存法に関する課題として、上の三つ、今日課題としてお話しさせていただいたこの三つについては、ある程度この制度の創設によりカバーできるのではないかと考えております。ただし、引き続き残る課題として、保全を進めるための人員や予算、展望というのが不足している点については、この制度をより効果的に機能させるためには人員と予算というのをやはりきちんと確保して活用する、さらにそれに伴って将来の展望を見据えるということが大事なのではないかというふうに思っております。
 私からは以上になります。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 矢後勝也

speaker_id: 32700

日付: 2017-05-18

院: 参議院

会議名: 環境委員会