山内弘隆の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(山内弘隆君) それでは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案につきまして、参考人として意見を述べさせていただきます。
 本日は、このような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 私の資料、お手元にあります「原子力事故に係る賠償および廃炉の費用負担について」という一枚の紙でございます。
 福島原発事故と電力システム改革ということでございます。
 御承知のことでございますが、福島原発事故がございまして日本の電力の需要が大きく変わったという実態があります。しかし、その前に、電力自体が恐らく一九九〇年代ぐらいからシステムの大きな改革を遂げてきたという事実がございます。世界的に見ましても、電力事業改革をして自由化をする、その中で効率性あるいは費用の削減を目指していくと、こういう流れがあったわけでございます。
 具体的に言いますと、電力事業というのは、基本的にこれは地域の独占で行われてきた、地域の独占で行われてきたことによるいろいろな弊害が目立ってきた、そういうことと、それから、さらには新しい技術、新しいイノベーションというものを推進していく必要がある、それで社会全体のコストを下げていくと、そういう目的があったわけでありますね。
 そこで、事業をこれ切り分けるという表現をそこ使っておりますけれども、今まで垂直的に統合してきた発電と送電、配電、小売と、これが一体的にやってきたわけですけれども、それを切り分けることによって競争を実現すると、こういう動きになってきたわけであります。日本では、一九九〇年代の半ばから特別高圧といういわゆる産業用の電力を中心に自由化を始めたということであります。そういう流れの中で福島の原発事故というものが起こったということであります。
 我々、もちろん原発事故を、これに対する対処というものを第一にしなければいけないわけでありますけれども、その背景として、今申し上げたような電力事業を自由化、改革すると、こういう流れがあったということを御理解いただきたいというふうに思っております。
 しかし、福島の事故が起こって、何がその教訓として得られたかということでありますが、例えば、福島の大きな発電所、原子力発電所が事故起きて、それでいろいろな周辺に被害を及ぼしたんですけれども、それだけではなくて、供給システム自体の、いわゆるその集中型の供給システムがいいのかどうかと、こういう問題ですね。例えばドイツのようなところでは、さらに分散型のシステムを取り入れているということもございます。そういたしますと、供給のシステムとして集中型がいいのか分散型がいいのかと、こういうことも考えなければいけない。
 それから、デマンド・サイド・マネジメントといいますけれども、今までは電力というのはピークが立つとそれに合わせて発電をつくってきたわけでありますけれども、そういう中で需要の方を抑制する、コントロールすると、こういう視点はないのかどうかと、こんなような議論もあったというわけであります。
 いずれにいたしましても、そういう自由化というものが進んで、その中でこの事故が起きたということであります。自由化が進むと、自由化といいますか、制度改正が進むとどういうことが起きるかというと、今までの体制と変わってきますから、そこで新しいシステム、新しい法体系の下では回収できないような費用というのが発生する、ストランデッドコストというような言い方をしますけれども、そういったことも一方であり、その中で今の事故の問題があったということであります。
 東京電力の在り方につきましてですけれども、事故以来いろいろな意見があったことを承知しております。東京電力自体を法的整理をしてしまった方がいいんではないかということも言われたところであります。
 私は、一貫して東京電力については法的整理をせずに現存の企業体として残しておくべきだというふうに主張してまいりました。その理由は幾つかございますけれども、一つは、原子力損害賠償法で言われる第三条のいわゆる責任問題というのがあって、それを完遂するためには今の事業体の方がよろしいんではないかというのが一つであります。それから、もう一つは、法的整理に伴っていろいろな賠償の債務債権関係が非常に複雑になる、そうしますと、緊急を要し、しかも社会的にも絶対的に必要な賠償というものに対する、何といいますか、時間的な遅れとか複雑性とか、そういうものが生じるんではないかと、こんなふうに考えたわけであります。
 そういう中で、法的な主体として残して、東京電力を残して、そしてある意味では責任を取っていただくと、こういうことが望ましいんではないかというふうに考えてまいりました。ただ、その責任を取るときに最も重要なことは、その責任を取るための安定的な資金を長期にわたって確保していくと、こういう必要性であります。最初に原子力賠償の損害支援機構が成立をして、そこでそういう仕組みができたわけでありますけれども、それだけでは十分ではないと、こういうことが分かってきて、それで、御承知のように昨年の秋ですかね、夏以降、東京電力の在り方についていろんな議論が起こってきたということであります。
 そこで、私、そこにありますけれども、電力システム改革貫徹のための政策小委員会というものに参加させていただいて、その司会役、座長を務めさせていただいたということであります。これは、言うまでもないことでありますけれども、東京電力がどのようにあるべきか、どういうふうに改革すべきかという、そういうその姿、これは別のところで議論をされていたわけでありますけれども、そういうあるべき姿と、それから一方で、どれだけの費用が必要なのかと、これは将来にわたって必要なのかと、こういうようなこと、これも別のところで議論されていた。それを受けた上で、電力システムを改革をする、先ほど申し上げたような自由化を中心とする改革をする、こういったことを無事に、そして整合的に行えるためにどうしたらいいかと、こういうことを議論するための小委員会であったというふうに理解をしております。
 これは非常に複雑な話でございますので、今日ここで全てを御説明して、そして私の意見を言うという時間がないと思いますけれども、基本的には、今申し上げた、市場の改革をするという一方で、東京電力の安定的かつ将来的にわたるような資金を確保すると、こういうことで、今そこにありますように、市場の整備のワーキンググループと、それから財務会計のワーキンググループという名前のワーキンググループをつくって、それぞれにおいて市場の在り方と資金の在り方ということを議論したということでございます。
 私は商学部に属しておりまして、そういう面では、技術的なことではなくて、今申し上げたような財務的な、あるいは、基本的には私の専門は経済学でございますので、社会的にどういうふうな形で費用負担をしていくかと、こういう議論が私の得意なところ。その意味では、財務会計の方を担当させていただいたというわけであります。
 財務会計のワーキンググループで、そこにありますけれども、四つの論点ということであります。
 一つは、原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方ということであります。これは御説明の必要もないと思いますけれども、事故によって生じたいろいろな損害に対して賠償をする、それをどういうふうに費用負担をしていくかと、こういう具体的な話であります。
 それから、二つ目が廃炉の資金管理・確保の在り方ということであります。本日ここの場で議論されている法改正の内容についてが直接これに関係するものだというふうに理解をしております。
 それから、三番目が廃炉に関する会計制度の取扱いということです。これは事故炉以外の原子力発電所を廃炉する際の会計的な扱いということであります。
 それから、四つ目が税制面の課題についてということで、これは法人事業税の取り方でありますけれども、ある意味ではこれはマイナーな問題と言えるかもしれません。
 そこで、一番最初の賠償の備えに関する負担の在り方というのが一番大きな議論になったところかというふうに思っております。
 先ほど申しましたように、どれだけ将来的に費用が必要になるのかというのは、これは我々のところではなくて別のところで議論されていたわけでありますけれども、それに対して東京電力という枠組みを使ってきちっと損害賠償をしていくというためにどうしたらいいのか、その費用をどういうふうに負担したらいいのかと、こういうことになったわけであります。
 そこで、基本的にはこれ、何らかの形で利用者、国民の皆さんに御負担いただくというのが前提になるわけでありますけれども、どういう形でそれをお願いするのかということであります。結論的に申し上げると、我々のところで取った策は、託送料金にその分を上乗せしてといいますか、託送料金の一部としてそれをお願いして御負担していただくと、こういうことだったわけであります。
 これはなぜそういうことなのかということでありますけれども、今申し上げたように、私自身のこれは考えですけれども、国民の方々広く御負担いただくというのが基本だというふうに思っておりますけれども、これ託送料金で取るのかあるいは税金という形で取るのかと、こういう議論になったところでありますけれども、これは両者メリット、デメリットあろうかというふうに思いますけれども、我々の取った考え方は、託送料金の形を取ることによって、ある意味では受益と負担といいますか、そういうものを結び付けることができる、あるいは負担の在り方も少しバリエーションを付けることができる、それが国民的な理解にとって非常に重要ではないかと、こういうふうに考えたところであります。
 今申し上げました受益と負担というところでありますけれども、受益、これは何かということでありますけれども、我々の考え方ではこれは過去分という言い方をしておりまして、これは非常に誤解を招きやすいのでこの言葉のワーディング自体は私自身も少しどうかと思っておりますけれども、過去分、要するに原子力発電を今まで消費してきたといいますか、その中で得てきた消費者、利用者、受益者、需要者としての利益みたいなものを考えたらどうかということであります。
 これは非常に分かりにくいんですけれども、これ逆に企業の財務の方から見てみますとどういうことかということなんですけれども、これ、今までの電気料金というのは総括原価でやってきたわけでありますけれども、その総括原価でやってくると、その中で費用項目といいますか、費用はこれだけだということをある意味ではきちっと固めていくわけでありますね。ところが、それに含まれなかったような費用というのがあったのではないか、それは取りも直さず今回の事故で明らかになったいろいろなリスクですね、こういったものを取りこぼしてきたのではないかということであります。事故のリスク、あるいはそれにまつわる様々なリスクですね、こういったところが、制度的リスクとも、先ほど申し上げたようにストランデッドコスト的なものでいえば制度的リスクということになりますけれども、そういったものを取りこぼしてきたのではないかということであります。
 そういったものを考えたときに、その分だけ皆さんの御負担が小さかった、これはある意味ではそれを取り込めなかった自体ということが問題ではありますが、今考えてみればそれが利益、受益というふうにつながるのではないかと、こういうふうに考えるわけであります。そこで、今申し上げた受益というものとそれから負担というものを結び付けるということによる、これの形でいえば託送料金という形が望ましいのではないかと、こういう結論に達したということでございます。
 企業の会計でいうと引当金というのがございますけれども、引当金というのは、ある意味では、今いろいろな事業活動を行う上で、それに備える意味で引き当てるというのがございますけれども、その中にもある意味ではリスクを含むということがあるわけでありますけれども、そういった引当金的なものが十分に行われなかったと、こんなふうに考えるわけであります。
 ここが一番大きな論点であったわけでありますけれども、御承知のようにこれに対してはいろいろな御判断、御発言、御意見がございまして、税金でやるべきだという御意見もございましたし、いろいろな御反対もありました。我々としては、報告書の方にまとめましたけれども、そういう反対というものがあった上でこういうふうに決めましたということで御理解いただいたというふうに考えております。
 それから、廃炉の資金管理ということでございます。これは長期にわたって廃炉をしていく。この廃炉の費用は、これは一般的な負担ということではなくて東京電力の全体としての負担としてやっていく。その資金を確保するために、支援機構等を通じた明確な資金の流れというものをつくっていく。これをするための内容ということになっております。時間の関係で詳細は省きますけれども、これにつきましても、長期的な資金の確保という意味で非常に重要なものであると私は考えておる次第でございます。
 総合いたしまして、大きなシステムの改革の中で今回の事故があって、それを、システム改革との整合性を取りながらこれを処理していくといいますか、手当てしていくという必要性があって、今回の結論に至ったということであります。私自身は、やはり新しい制度の下で、競争あるいはそこから生まれるイノベーションというものが電力供給そのもの、あるいは更に言えば、日本のインフラ産業の効率的な在り方というものを導き出していっていただきたいというふうに考えております。
 御参考になればと思いますけれども、以上が私の考えであります。どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 119314080X00820170427_002

発言者: 山内弘隆

speaker_id: 8182

日付: 2017-04-27

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会