橘川武郎の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(橘川武郎君) ありがとうございます。橘川と申します。
 それでは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正に関しまして、参考人として意見を述べさせていただきます。
 私、両隣の二人の参考人と違いまして、この法改正を準備しましたシステム改革貫徹小委員会の委員ではございません。私、十数年来、経済産業省で、主として資源エネルギー庁でたくさんの審議会の委員を務めさせていただいてきました。私の専門は電力の歴史を研究する経営史家なんですけれども、なぜか専門の電力でだけ審議会の委員に呼ばれたことは一度もなくて、それ以外のことでは多分全ての原課で委員を務めさせていただいたという者でありまして、よって、この法律の改革についての細かい論点については、メンバーじゃないので私は十分には分かっておりません。したがって、それよりはもう少し大きく、あるいは広い観点から、福島事故の事後処理の在り方あるいは東電改革の在り方という点から私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 お手元に青い題字のパワーポイントの資料があると思いますので、それを見ていただきたいと思います。
 一ページ目です。
 エネルギー基本計画の冒頭の「はじめに」の部分を書かせていただきました。こちらの委員会には私、委員として参加しておりましたので。やはり福島の方々に寄り添い、福島の復興再生を全力で成し遂げると、これがエネルギー政策を再構築するための出発点であると、ここが大事な考え方だと思います。
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 そういう観点に立ちますと、東電福島事故に対処する事後処理に当たっての原則というのが私は二つあると思います。一つは、ともかく福島の復興再生に全力を挙げるという点であります。それから、もう一つは東京電力が供給エリアとしていた地域において電気の低廉で安定的な供給をきちんと確保すると。これが二大原則だと思います。東京電力がどうなるかということはある意味では二の次と言っては失礼かもしれないけれども、この原則を貫徹するということが一番大事だと、こういうふうに、この二つの原則が大事だと思っております。
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 御存じのように、昨年の暮れ、現時点で東京電力の福島事故の事後処理の費用が二十一兆五千億円に上るということが発表されました。特に廃炉費用については、まだデブリの存在も特定できていませんのでここは更に膨らむ可能性もありますし、汚染水の処理なんかを考えますと更にやはり膨らむ可能性もあるということであります。
 これを、筋からいきますと当然東電が払うべきではありますが、とても私は払い切れないと思いますので、最終的にはかなりの部分が国民負担になるのはやむを得ないと考えております。それはなぜかといいますと、先ほどの第一の原則ですね、福島においてきちんと廃炉、除染、賠償が進められませんと福島の再生復興はあり得ませんので、福島県民にお金が回らないと困りますので、やむにやまれずですが、国民負担はやむを得ないと。そういう意味では、事実上、東電の責任は有限責任という形にこの件に関してはなるのではないかと、こう思います。
 ただし、その国民負担を具体化する前にやるべきことがあると思います。やはり、国民からすると、それを納得するためには事故を起こした東電がやるべきことをきちんとやると、全てをやった上で、ならば国民負担のことについて議論をしましょうというのが物事の順番ではないかというふうに思っています。
 それでは、東電がやるべきことは何か。それは、発電所を中心に資産を完全に売却する。特に、国民負担をしているにもかかわらずまだ東京電力が原子力発電の事業を続けるというのはなかなか納得ができないと思いますので、まずは柏崎刈羽の原子力発電所、そして、そうしますと新々総合特別事業計画も成り立たなくなりますので、火力発電所を含めまして全ての発電所を売却し、その売却で得た収益をまずは廃炉の費用に充てるということが重要なのではないかと思います。
 この場合、決して私は、柏崎刈羽の原発は比較的新しい原子力発電所でもありますので、規制委員会の承認が取れた場合には動かした方がいいという、そういう立場に立っております。それを動かす人たちは、今の東電の人たちが新しい事業者に移るということです。火力発電所についても、事業主体が替わるけれども、実際に動かす人間、設備は同じということでありまして、二の原則の方の電気の低廉、安定供給の方にも支障はないと、こういうふうに考えております。それが私の基本的な考え方であります。
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 ここで、やはり民意ということを考えますと、昨年十月の新潟県知事選挙の結果が非常に意味があると思います。なぜ意味があるかと申しますと、三・一一以降四回の国政選挙がありましたが、そこでは必ずしも原子力の問題というのは中心的な論点とはなりませんでした。原発問題が中心的な論点となった選挙は二つしかありませんで、二〇一四年二月の東京都知事選挙と二〇一六年十月の新潟県知事選挙です。結果は全く逆でした。原子力に批判的な勢力が東京都知事選では敗れ、新潟県知事選では勝ちました。その理由は一体何なのかという点、私は二つあると思っております。
 私、反原発だ、推進だという形で二項対立で議論が進むこと自体がおかしなことだと思っていますので、原子力問題というのは現実的に考えていかなきゃいけないという立場であります。
 そういうことからすると、何でその都知事選と新潟県知事選挙の結果が違ったというところに一つの大きなヒントがあると思うんですが、次のページにちょっとグラフを掲げましたけれども、エネルギー価格の動向です。細かいことは申しませんが、この一番上の黄土色の線がブレントで示された原油価格でありまして、あとの三つの線は、上から日本、ヨーロッパ、アメリカの天然ガスの価格を示しますが、二〇一四年二月の東京都知事選の頃は原油価格が一バーレル当たり百ドルくらいでした。それに対して、二〇一六年十月の新潟県知事選挙のときには一バーレル当たり四十ドルくらいにまで下がっています。これによって日本の貿易赤字は消えております。そして、原発が動くことによる電力コスト面での貢献というのもその分小さくなったというようなところがあります。私は、この辺のことを選挙民の方々はきちんと判断されていて、違う判断になったんじゃないかと思います。
 それから、もう一点重要なのは、再稼働自体が困難だと思われます福島第二を除きますと、柏崎刈羽が唯一の、原発が立地している地域がその会社の供給エリアでないという、いわゆるたこ揚げ地帯方式と言われるエリアであります。これに対する新潟県民の批判的な観点もやっぱりあったんではないかと思います。
 そういうことを考えますと、この東京電力による柏崎刈羽の原発の完全売却ということがいろんな問題を解決する出発点になるのではないかというふうに思います。
 もう一度申しますが、国民負担の議論の前に東電の徹底的なリストラが必要だと考えます。そもそも、貫徹小委と同時に行われました東電改革・1F委で打ち出されました東電から原発を分離して、分社して連携するという案は、東電が残りますので、ということは二十一兆五千億の福島リスクと必ず結び付けられますから、他の電力会社はこの案には絶対乗ることができないと思います。東電がいる限りそうなってしまうので、東電が完全売却してそれを廃炉の費用に充てることによって福島リスクと切り離されると、初めて柏崎刈羽の再稼働の議論ができるようになると、こういうような物事なのではないかと思います。端的に言いますと、私は規制委員会の許可が下りれば柏崎刈羽は動かすべきだと思いますが、そういう立場からいって、東電、あんたは邪魔なのよと、こういうことであります。
 それでは誰が買うのかという話になりますけど、やはり地元の電力会社でありますので、避難計画のことも考えまして、東北電力は必要だと思います。ただし、東北電力はキャッシュが足りないと思いますので、中心的な受皿になるのは日本原電なのではないかと考えます。日本原電は現在、敦賀一号機が廃炉、二号機が活断層の問題、東海第二は地元の自治体の長の同意がなかなか得にくいということで、事実上原発なき原電というような状況になっていますので、原電が役割を変えて、この問題児沸騰水のオペレーション会社みたいなような形になるのではないかと、こういうふうに思っております。
 二つページをめくっていただきまして、この完全売却を行いますと波及効果があります。
 そもそも、そういうやり方をして東電は大丈夫なのだろうかと、こういう話あろうかと思いますが、私は十分にやっていけると思います。東京の地下を走ります二十七万五千ボルトの高圧線、それに伴う世界最高の消費地へ向けての配電線、これが一番の競争力の源泉、コアコンピタンスになると思いますので、いわゆるネットワーク会社、グリッドパワーと、いわゆる小売会社、エナジーパートナーを中心にやっていけると思います。
 これらの会社が堅実に上げた利益の一部を長期にわたって賠償に回すべきだと思います。ちょうどチッソと同じ方式であります。チッソは液晶の世界の半分を作り出して利益を上げて、それを半世紀にわたって水俣病の賠償に回してきました。世界史的にこんな会社はほかにありません。こういうことを東電についてもやるべきじゃないか。
 一方で、福島の責任はきちんと果たしていただかなければいけないので、その場合にも福島第一廃炉推進カンパニーの事業は継続していくと、こういうことになってまいります。
 こういう形で原電を中心に柏崎刈羽の原発を管理するようになって、もしそれが再稼働ということになりますと、そこから出た電源は中立的な値段で電力卸市場に回すということができるようになります。現在、電力の離脱率約五%、頑張っていると思いますけど、まだまだ十分とは言えないと思います。それはやっぱり卸取引所のシェアが三%であることと強い相関関係があると思いますので、そういう意味で、この完全売却をやると、卸取引所を厚くして自由化を促進するという効果もあると思います。
 一方で、更に火力発電所まで売りに出ますと、東京湾のLNG火力が売りに出ますので、今、東京湾をめぐっては、東京市場に参入したい他地域の電力会社や石油会社やガス会社がたくさんの石炭火力発電所を造ろうという計画がありますが、それは東電が売りに出すLNGを買えばいいわけでありまして、あえて石炭火力を建てる必要がなくなりますので、これは地球温暖化対策に対しても貢献するのではないかと、そういう波及効果があるのではないかと思います。
 最後に、一番最後のページですが、原子力をめぐってはネガティブキャンペーンを言っている時代は終わったと思います。どうやって解決していくのか、私は三つの方向が重要だと思っております。
 何%であれ原子力を使うというならば、危険性を最小化しなきゃいけないのは当然であります。ということは、新しい炉を使った方がいいに決まっているわけでありますから、堂々と、使い続けるというのならば新しい原子力を建てるということを言うべきだと思います。一方で、古い原子力はどんどん畳んで依存度全体は下げると。リプレースと依存度低下を同時に追求するというのが道筋だと思っています。
 そして、何よりも、使用済核燃料の処理問題、バックエンド問題を解決しなければいけません。そのためには、何といっても、一万年単位で危険な期間が続きますと、どこの自治体も最終処分地として受け入れることはできないと思いますので、「もんじゅ」が廃止になるのであればそれに代わる、「もんじゅ」は基本計画ではバックエンド問題の中心と位置付け直されていて、その方向は正しいと思うんですけれども、それが廃炉になってしまいますので、どうやってその危ない期間を短くするのかという、その毒性低減の炉の開発に全力を挙げるべきだと思います。あわせて、そのためには、時間が掛かりますので、原子力発電所の中で追加的なエネルギーが必要としない安全な形での空冷式の中間貯蔵を行うという、オンサイト中間貯蔵というような考え方が必要なんじゃないかと思います。
 そして、バックエンド問題が解決しない場合には、やはり長期的には原子力を畳んでいかなければいけない。その場合、原発立地地域、福井県のような原発立地地域はどうするのかという話になると思いますので、そこでは、送変電線を使って火力シフトをする、廃炉で雇用を確保する、そしてオンサイト中間貯蔵に対して消費地から保管料を払うというような枠組みで、一つの選択肢として原子力からの出口戦略という選択肢も準備する必要があるんじゃないか。これ、原発をやめろと申しているわけではありません。バックエンド問題が解決すれば原発は使い続けることができると思いますが、二つの選択肢を持つ必要があるのではないかと思います。
 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 橘川武郎

speaker_id: 20440

日付: 2017-04-27

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会