村上陽子の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(村上陽子君) 労働組合の連合で総合労働局長を務めております村上です。本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。
 私は、雇用保険法等改正法案の内容を議論した労働政策審議会の労働者代表委員を務めております。本日は、雇用保険法、職業安定法について意見を述べさせていただきます。
 まず、雇用保険制度について五点申し上げます。
 一点目は、雇用保険制度の目的についてです。
 雇用保険制度の最大の目的は、雇用保険法第一条にあるとおり、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことです。そのため、雇用保険制度では、失業等給付の保険事業と、雇用安定事業、能力開発事業から成る雇用保険二事業が行われておりますが、国庫負担に加え、労使が保険料を拠出している制度であることを改めて申し上げておきたいと思います。積立金も失業というリスクに対し労使が積み立ててきたものです。本来の目的以外に財源として用いることができる性質のものでは全くありません。雇用保険制度の見直しに当たっては、労使の意見を最大限尊重いただきたいと思います。
 今回の改正で教育訓練給付も一部拡充されますが、基本手当などの本体給付とのバランスを失してはならないと考えております。この点については、雇用保険部会報告の中でも、雇用保険制度は、失業に際して生活の安定を図りつつ、再就職に向けた支援を行うことを最も基本的な目的としているものであることに鑑みれば、基本手当等の求職者給付が本来の趣旨に沿って十分かつ確実に行われることが最優先であり、その枠組みの中で教育訓練給付等について考えられるべきであると記載されたところです。国会審議におきましても、雇用保険制度の本来の目的を意識した御議論をお願いしたいと思います。
 二点目は、基本手当についてです。
 今回の改正法案では、倒産、解雇等による離職者である特定受給資格者の一部について所定給付日数を拡充する内容が盛り込まれております。
 他方、自己都合離職者など特定受給資格者以外の方への給付は、厳しい財政状況に直面したことから、二〇〇〇年と二〇〇三年に雇用保険法改正によりまして所定給付日数の短縮や給付率の引下げなどの給付抑制が行われ、財政状況が改善した現在も給付水準が引き下げられたままとなっています。
 加えて、自己都合離職者に関しては三か月の給付制限期間が設定されております。この給付制限期間は、元々は一か月であったところ、昭和五十九年七月の改正により現行の三か月とされています。このような対応が取られたのは、昭和五十九年当時、雇用保険財政が逼迫していたことが背景にあります。
 自己都合離職者に対する給付水準が据え置かれていることや給付制限期間が三か月に設定されたままであることについては、積極的な転職を行おうとする自己都合離職者までもが転職を思いとどまってしまうことや、いわゆるブラック企業から脱出を図る場合に離職を思いとどまってしまうといった本来の目的とは違った方向に作用してしまう可能性もはらんでいます。
 今回、特定受給資格者の給付を一部拡充することは、直近の状況をきめ細かに分析し、就職率の低い層に光を当てる対応だと承知しておりますが、特定受給資格者以外についても、直近の雇用情勢や課題を踏まえ、給付を拡充する検討が必要と考えます。
 三点目は、雇い止め離職者への対応についてです。
 雇い止め離職者である特定理由離職者については、現在も、平成二十八年度末までの暫定措置として、所定給付日数を特定受給資格者と同等に扱う措置がとられています。今回の改正法案では、更に五年間暫定措置を延長する内容となっております。
 今回、暫定措置として延長する理由について、先日の参議院本会議において、雇い止め離職者も減少傾向にある一方、非正規で働く方が増加傾向にあることから、引き続き暫定措置として今後の推移を見る旨の政府答弁がなされております。
 状況を踏まえ対応を図ることは重要ですが、雇い止めの不安を抱えながら有期労働契約で働く労働者に対するセーフティーネットを整備するという観点からは、給付を受ける方の人数が多いかどうかで判断するのではなく、救うべき者は救うという考え方に立ち、制度を恒久化することが必要だと考えております。
 四点目は、国庫負担についてです。
 労働者の失業時の生活の安定を図ることは国の責務であり、雇用保険の国庫負担は当然の道理である旨、労働政策審議会などで強く主張してまいりました。政府には、四千万人以上いる雇用保険の被保険者に対する責任を改めて認識いただきたいと考えます。
 昨年十二月の雇用保険部会報告では、国庫負担について、三年間に厳に限定し、法律上もそれを明記した上で、本来負担すべき額の一〇%に相当する額とすることもやむを得ないとした一方で、これらを実施するとしても、国庫負担を速やかに本則に戻すべきであるとの考え方が変わるものではない、労使双方からも平成三十二年度からの国庫負担の本則復帰の実現について、改めて意見が示されたことを明記しました。
 重要な点なので繰り返しますが、労働政策審議会の意思は、平成三十二年度からの国庫負担は、本則の百分の五十五という現行の水準にとどまることなく、本則復帰の実現です。政府には最大限の努力をお願いいたします。
 また、雇用保険部会報告では、国庫負担について変更を加え、その低下につながるような場合も、国の責任の観点から合理的かつ十分な説明が求められることは当然であるとの意見も明記しております。政府には、このような労使の意見も踏まえ、説明責任を十分に果たしていただきたいと考えております。
 五点目として、育児休業期間中の経済的支援については、雇用保険財源によらず、本来は国の責任により一般会計で実施されるべきとの考え方が労働政策審議会での労使の一致した意見です。
 今回の改正では、保育所に入れない場合に限り、育児休業給付を二年まで延長することとしています。緊急的セーフティーネットの措置を講ずることは一定評価できるものの、保育環境の整備は十分でなく、男性の育児休業取得が進まない中では、育児休業期間の延長は育児休業取得が女性に偏る現状を助長する懸念があります。
 保育環境の着実な整備を求めるとともに、二〇二〇年までに男性の育児休業取得率一三%という政府目標を達成するための抜本的な両立支援策を講じていく必要があると考えます。
 次に、職業安定法について述べます。
 求人票で示された労働条件と実際の労働条件が異なるといった相談は、連合が行っている、なんでも労働相談ダイヤルにも多数寄せられています。また、昨年十月にツイッターで詐欺求人に関する投稿を呼びかけたところ、三千件を超える投稿がありました。投稿には、求人票では給与の中に残業代が含まれていることが分からなかった、正社員募集となっていたのに実際は業務委託だったなどの体験談がありました。
 このような問題は働き始めてから分かることも多く、実際には泣き寝入りしている労働者も多くいると考えられます。求職者にとって、求人情報は働く場所を選ぶための不可欠な情報であることは言うまでもなく、実態と懸け離れた不適切な情報によって働く者が不利益を被る現状をこれ以上放置することはできません。
 また、人手不足が深刻化する中においては、求職者を呼び込むために見た目だけ良くしているような求人情報が蔓延することは、誠実に求人を出している真面目な企業にとって不公正な競争がますます加速することにもなりかねません。
 本法案には、虚偽求人を出した求人者を罰則対象とすることや、労働条件明示のルールの見直し、求人不受理の拡大などの施策が盛り込まれています。これらの施策は、不適切な求人情報が提供されることへの一定の抑止効果が期待できるものと考えています。今後運用面でこれらの施策の実効性を高めていくことが重要であり、特に三点について要望します。
 一点目は、労働条件の明示の時期についてです。求職者保護のためには、賃金に固定残業代が含まれるかどうか、裁量労働制が適用されるかどうかなどの重要な情報は、募集時やファーストコンタクトの時点できちんと明示されるべきです。とりわけ新卒者にとっては、入社の直前や入社時に示された労働条件に不満があったとしても、一度きりの新卒採用の機会を棒に振って次年度に別の会社を受け直すという選択はし難く、我慢して入社してしまうことにもなりかねません。こうしたことから、特に新卒者に対しては、募集要項などでできるだけ早い時期にきちんと明示いただくこと、そして、ある程度確定した労働条件は内定時など選択の余地がある段階で明示されるべきと考えます。
 二点目に、本法案では、当初明示した労働条件に変更などがあった場合の明示義務が新設されています。これは、募集時にできるだけきちんとした労働条件を明示することを前提とした上で、労働契約の締結過程において交渉の中で違いが生じた場合には、そのことを確認できるように明示させるという趣旨と理解しています。初めに示しておいた労働条件を都合よく変えていくことを許容するという趣旨のものではないことを改めて確認、周知いただきたいと考えます。また、変更内容の明示も、就労開始の直前ではなく、できる限り早い段階で行われるよう徹底すべきです。
 三点目は、求人広告の掲載などを行う募集情報提供事業の適正化についてです。近年は多様な形態の募集情報提供事業が存在しており、求職者にとっては、利便性が高まる一方で、信頼できる情報の選別が難しくなっています。いかなる事業形態であっても、掲載情報の信頼性が担保される仕組みが求められます。今回、募集情報提供事業者が講ずべき措置を指針で定めることとされ、助言、指導や報告徴収を行うことができる規定も整備されることから、不適正な事業者に対する指導監督が強化されるものと期待します。
 なお、施行後には適宜実態把握などを行い、適正化が進まない場合には法規制を行うことも検討すべきと考えます。
 以上、意見として申し上げます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 村上陽子

speaker_id: 14697

日付: 2017-03-28

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会