馬田啓一の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(馬田啓一君) 不都合な現実についてと、こういうふうなことでありますけれども、アメリカがTPPを本当に離脱すれば、アジア太平洋におけるアメリカの影響力が完全に低下していくということは避けられないと思います。
 アメリカのアジア戦略というのは、結局、とどのつまり、中国をどう変えるかと。国家資本主義の下に国営企業が世界中を席巻して、それが自由貿易体制をも揺るがすような状況になっている。国家資本主義の国家の二文字を取りたいということです。
 そのために、ブッシュ政権のときから米中戦略・経済会議、二国間の、米中の構造改革を中国にもやらせる、その取組をアメリカは始めたわけです。もう十年以上になりますが、これによって確かにアメリカにとって得るものもあったけれども、なかなか中国は変わっていない。トランプはバイの交渉の重要性を強調していますけど、しかし本当にそうなのか。アメリカは、バイの枠組みで中国に対して中国を変えようと。これは、日米構造協議でアメリカは日本の譲歩を引き出してうまくいったと、その同じやり方を中国に適用したわけですけれども、中国はなかなかしたたか、変わらない。
 米中戦略・経済会議は、これはなかなかアメリカが思ったように効果が上がらないという反省の下に、バイではなくて今度はマルチでいこうと。TPPという多国間の枠組みで、最初から中国を入れれば骨抜きにされる、後でいいと。APECの枠組みの中で、まずはこの指止まれという形でTPPを立ち上げて、そしてそのTPPに参加する国の数を増やして、まさに中国を孤立させる。外堀、内堀埋めて、最後は中国が入らざるを得ないような形にし、入りたいというときに、中国変わらなければ駄目だ、参加条件として国家資本主義を改めろ、国際的なルールも従え、国有企業も改革だ。
 WTOに中国が入るときに、二〇〇一年十一月、中国は何を約束したか。国有企業の民営化、国有企業改革。しかし実際には、二、三年たったら、後は喉元過ぎれば熱さ忘れるということで、国有企業はますます強くなって、その悪影響が欧米に及んでいる。
 TPPについては、今度はそうはさせない、TPPに入るときに完全に中国を変えてやろう、構造改革だ、これがアメリカのシナリオなんです。それに日本も、中国におけるビジネス環境は非常に難しい、日中韓のFTAも多分なかなか中国の壁を打ち破れないだろう、日中韓FTAも駄目だ。そこで日米が中心となってTPPをまとめたわけです。それは、今は中国は入っていませんが、やがて中国が入らざるを得ない状況をつくり出して中国を変えるという、アメリカにとっても日本にとってもこれは長期戦略なんですね、中長期の。
 つまり、トランプは不動産屋のおやじで、バイの取引を重視しマルチはばかにしている。だけれども、そうじゃないんだと。マルチの取引、交渉の重要性ですね、中国みたいな国を何とか抑え込むためには、マルチのTPPのような、これが非常に手段として役に立つ。
 ということで、もったいないぞ、TPPから離脱してどぶに捨てるようなことをして。中国を変えられるこのカード、切り札ですよ、これは。中国の構造改革、中国をがっと変えていく、その切り札であるTPPを、入らねえやということでどぶに捨てる。もったいないぞ。経済的な利益を重視するアメリカであれば、トランプに上手に、もったいないことするな、TPPは中国を変える切り札だ、アメリカにとって都合のいいように中国からいろんな譲歩も引き出すことができる。そういう対応をしていかなきゃいけない、またできる手段であるのがTPP。そのTPPをむざむざと捨てる、TPPの葬式を挙げる、これはアメリカにとってまさに大きな損失。それを望んでいないのはアメリカの産業界じゃないですかと。
 つまり、アメリカの産業界が、アジア太平洋地域でアメリカの企業がもっとビジネスチャンスを増やそう、そのためにいろんなアジアの壁をぶち破る、アメリカの価値観で、まあ押し付けるわけですけれども、いろんな交渉の中で、百点満点で八十点ぐらいの内容かもしれませんが、それでもTPPがないよりはアメリカの企業、産業界にとってプラスの内容になっているわけですね。
 企業は本当にTPPがこれで駄目になっていいと思っているのか、指をくわえて黙って見ているのか。そんなはずはないんじゃないですか。あれだけTPPに、熱意でもってオバマ政権を後ろからたたき、あるときはいろんなサポートもし、あめとむちでTPPをまとめ上げたその産業界が、ここでむざむざと、TPP、トランプが駄目だと言って、永久離脱だと言って、はい、そうですかと黙っているんですかね。
 二国間のFTAでは、企業のグローバル化がこれだけ進んでいて、グローバルサプライチェーンが企業の生命線、競争力を左右すると。グローバルサプライチェーンの効率化のためにはバイでは駄目だ。アジア太平洋十二か国の中で二国間のFTAを結べば、まさにスパゲッティボウル。皿の上のパスタがこんがらがっているように、企業からすれば面倒くさい、煩わしい、一つのルールにしろという、これがTPPです。
 企業は二国間FTAでは飽き足らず、その問題点を十分理解しながら、アジア太平洋にぶわっと大きなメガFTAという一本のルールでぴしゃっと決める、それを望んでいる。それを今、トランプの登場で黙り込んでしまうのか、そんなことはないだろうと。
 つまり、アメリカにとって不都合な真実とは、中国がのさばる、中国を変えられない。アメリカの企業も決してこれは想定外の出来事。このままで済むのか済ませぬのかという、日本がその辺のところをトランプによく説得していく。ただし、現行のTPPでは難しければ、ちょっと再交渉。トランプの頭を変えさせるのは、現行のTPPは非常に難しい。再交渉という甘い言葉でもって、TPP修正版という形で土俵に引きずり込めば、あとは結果は交渉次第。相撲でいえば取り直し、仕切り直し、これをやろうというふうに安倍さんはトランプに上手に言うべきじゃないでしょうか。下手に言うとトランプは怒りますから日米関係も壊れますけれども、いいタイミングで、トランプが聞いてもらえるようなタイミングで日本からそういう提案を上手にしていくことが今、日本に求められている。
 つまり、アメリカにとって不都合な現実をきちっと説明するけれども、だからといって現行のTPP、これは難しいだろうと私は思っています。
 以上です。

発言情報

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発言者: 馬田啓一

speaker_id: 26149

日付: 2017-02-08

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会