長有紀枝の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(長有紀枝君) ありがとうございます。
長と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
改めまして、本日は、こうした大変貴重なお席に私たちをお招きいただきまして、本当にありがとうございます。
私は、御紹介にありましたように、難民を助ける会というNGOの理事長をしておりますが、こちらは、一九七九年にベトナム、ラオス、カンボジアからインドシナ難民の方々が日本に来たときに、困ったときはお互いさまという日本の古来の伝統を身近な人だけではなくて外の人たちにも見せていこうということでできた組織でございます。現在、緊急人道支援、難民支援に加えて、障害者の方の支援であったり地雷対策を行っております。また、大学では、そういった活動で見聞きしたことなども含め、人間の安全保障ですとかジェノサイドの予防などについて講義をしております。
本日、私に与えられたお題といいますのが、国際社会で、海外でどのような関係がNGOと政府の間で築かれているのか、その部分を優先的にお話しするようにということですので、その御依頼に沿ったお話をしてまいります。
まず、レジュメに沿って参りますけれども、冒頭で、国際社会の諸課題に関する主要な国際協力活動というのを、これJICAのホームページを参考にしまして出しました。こういった多様な部分に特に国際NGOが関わっているわけなのですが、大橋先生がおっしゃられたことと少し重なりますが、述べてまいりたいと思います。
まず、物ですとかサービス、その中には人道支援ですとかリハビリテーション、様々なものが入るわけですが、そうした物やサービスの提供者、あるいは開発支援や平和構築の担い手として、こちらが先生方も、あるいは一般の日本の国民の方々もNGOに対して抱いているイメージではないかと思います。
ただ、それだけではございませんで、国際公共財というとちょっと難しく聞こえてしまうかもしれませんが、条約や制度をつくる担い手にもなっています。例えば、藤田先生こちらにいらっしゃいますが、九七年にできました対人地雷の禁止条約を作る原動力となったのが、世界の百か国を超える国々のNGOの連合体の地雷禁止国際キャンペーンです。いろいろな安全保障につきましては御意見があると思うのですけれども、少なくともこのICBLでは、地雷を保有することによる国益よりも、地雷をなくすことによって得られる国益の方を重視した政府とともにこういった地雷禁止条約を作ってまいりました。この地雷禁止条約につきましては民主主義の成熟度を測る指標にもなっているんだというようなお話がありましたが、まさにそうした部分でNGOが働きかけてきたわけであります。
同様に、クラスター弾の禁止条約、こちら二〇〇八年にできておりますが、これも世界各国のNGOと賛同する政府が共につくり上げたものです。また、ICC、国際刑事裁判所、これは日本が最大の資金の拠出国でございますけれども、こちらのICC、国際刑事裁判所設立のローマ規程を作るに当たっても、やはりNGOの連合体が大きな役割を果たしました。
また、残念ながら世界各地で人権侵害や国際人道法違反が起きているわけですが、そういったことを実際に現地でモニターしているのも国際協力のNGOです。特に、当該政府の人権侵害を、その国の方々が声を上げられないときに、外から、外国のNGOがそれに対して、告発と言ってはちょっと物騒かもしれませんが、そうしたことを行うという活動もしております。
また、オルタナティブな政策立案者というのも書きました。これはイギリスの国会議員の方がお話ししたことでもあるのですが、NGOは絶対自分たちに必要なんだと、なぜかというと、オルタナティブな代わりの政策を示してくれるので、それがいいかどうかはまた別かもしれませんが、常に対案を見せてもらうことによって御自分たちの取った政策を様々な視点から測ることができると。そういった意味で、オルタナティブな政策立案者としても大変貴重な存在だということをおっしゃられた方がおられます。
また、国内の啓発やアドボカシー、さらには、NGOがそんなことするんですかと思われるかもしれませんが、紛争地で実際にその地に長くいる方たちが特定の政府などと連携して調停者の役割を果たすようなNGOもございます。
そうした様々なNGOに対して主要ドナー国がどのように捉えているか、こちらを今日お持ちしました資料に基づいてお話をしてまいりたいと思います。経済協力開発機構、OECDの開発援助委員会、DACの統計資料から出したものです。
まず、もう既に大橋先生から、日本のNGOが日本の財政の中にどれほどの規模を占めているかいないかというお話がございましたが、その続きでございます。DAC加盟国によるNGO向け又はNGOを通じた二国間のODAの比率を出したのがこの統計の一です。これを見ますと、日本がないんじゃないかと。右からずっと下の方に行きますと、左から三つ目にジャパンというのがございまして、DACの二十九のメンバーのうち日本は二十七位です。
でも、二十八位にフランスがいるではないか、やはり国際協力を中心的に行っている国がいるのではないかと思われるかもしれないのですが、フランスの場合は先生方も御承知のように寄附構造が大分違いまして、例えば世界有数のNGOであります国境なき医師団のフランスのファンドレイジング、資金調達の表などを見てみますと、政府からいただいているのは一千八百万円程度ですが、一般の皆様からの募金は百九億円。これはもう日本ではとても考えられないような額なのですが、一つの団体で百九億円もの募金を集めておられると。その結果、政府からの助成が少なくても世界有数のNGOとしてやっておられるというような傾向があるかと思います。もちろん、お金が得られたとしても国境なき医師団が政府からいただくかどうかは、こちらはまた別問題ではありますが、少なくともそういう現実があります。
さらに、一番最後のギリシャは二十九位でございますが、こちらは御承知のように財政破綻をしている国ですので、そういったところから見ると日本は比率的には本当に一番下にいるという事実がございます。
次のページに統計の二で示しましたが、こちらはNGO向け及びNGOを経由したODAの額で比べたものです。先ほどはパーセンテージ、比率で二十七位と申しましたが、額的には十四位でございます。
次のページに参りまして、NGOの類型別に見るODAの拠出割合ということなのですが、類型と申しますのは、NGOと一口に申しましても、その国、例えば日本生まれの日本のNGO、それから国際的に活躍されている、世界各地に支部であったり、支部という言い方がよくないかもしれませんが、拠点のある国際NGO、さらには途上国にあるNGO、こういったものを分けたときに、DACのメンバーは、途上国のNGOよりもドナー国や国際NGOにより多くの助成をしているという統計がこちらでございます。二〇一三年度の統計で、国際NGO及びドナー国のNGOに七・五倍も出していると。さらにもっと言うと、国際NGO、国籍が一つではないNGOよりも自分たちの国のNGOにより多く助成しているという状況がございます。
同じページの統計四を見てみますと、これはNGOの今申し上げたような類型別に見るODAの拠出割合ですが、DACのメンバーの十か国がNGO向け資金の八割以上を自国のNGOに拠出しているという統計がございます。ここはもう明らかに政策的な意図があってそういうことをしているというふうに言えるかと思います。その典型例が、アメリカ、ドイツ、スペイン、フィンランド、ベルギーです。
他方で、途上国のNGOが直接DACのメンバーの資金にアクセスする機会が限られてはいるのですが、多くのこういったDACのメンバーが自国のNGOに対して、お金は出すけれども必ず途上国のNGOと連携して活動してくださいよということを義務付けていると。ですので、途上国のNGOを完全に無視しているわけではなくて、必ず途上国のNGOのところにお金は行くのですが、自国のNGOを通じることによって自国の顔を見せるというようなことをされているという実態があるかと思います。
次のページに参りまして、統計の五ですが、済みません、ちょっと一つ戻りますが、他方、日本は草の根資金などで直接途上国のNGOに支援も行っていると。これはある意味政策的には非常に優れたものもあると思いますので、一概的にどちらがいいということは言えないと思いますが、自国と途上国、直接どういうふうにするかというのは極めて政策的な面もあるということを改めて御指摘したいと思います。
資料の統計の五に戻ります。こちらはNGO向け及びNGO経由の二国間援助の割合や比率でございます。
これをちょっとより分かりやすくしたのが次のページのものでございまして、国別で、国際NGO、それから自国のNGO、それから途上国のNGOにどのようにお金を出しているか、二〇一一年、一二年、一三年というふうに経緯がたどれます。
次のページに、こちらのものを日本語にして計算し直したものが補足統計と出したものの一でございます。自国及びドナー国のNGO向けの実績額を順でいいますと、日本は十七位です。例えば、アメリカを見ますと自国のNGOに八二・三%、あるいはドイツも九五・六%ものNGO向け資金を自国のNGOに出していると。非常にそれぞれの国の考え方が表れるのではないかと思います。
次のページに参りまして、補足統計の二でございます。同じデータを比率で比べました。比率で比べますと、日本は四四・三%で、二十五位になります。ただし、先ほど申し上げましたように、途上国向けでは、日本はポルトガルに次いで二位の三二・七%を途上国のNGOに出しているということでございます。
また、次のページ、統計七ですが、NGOを通じた二国間援助の領域でどういったものが選ばれているかというものがこちらの表でございます。非常に多様なものであることがお分かりいただけるのではないかと思います。
駆け足で統計を見てきましたけれども、まず、こういった国際NGOが今どのような課題を抱えているかということも触れておきたいと思います。
まず、これは先ほど申し上げたような地雷の対策でもそうなのですが、非常に政策に関与を深めていると。今までそれは難民政策であったり環境問題だけであったりしたものが、特に地雷禁止の運動以降、安全保障の分野にも積極的に出るようになってきていると。そうしたことをする正統性とか説明責任ということが非常に問われる時代にもなっていきます。一体誰の声を代弁しているのかと。そのためにも、NGO自身が、独自の意思決定の手段ですとか方法ですとか、そういったことをホームページなどで明らかにしています。
それから、南のオーナーシップといいますか、北のNGO、いわゆる先進国のNGOが国際協力をすることの正統性はどこにあるのですかと。直接途上国のNGOを支援した方がよいのではないか、その方がより現地に裨益するのではないかと。日本政府の取っておられる行動の一つはそういうことだと思うのですが、先ほど御紹介しましたDACの資料を見ましても、南のオーナーシップ十分に認めつつも、自国のNGOを経由した支援を行っている。それは、この後に述べますそれぞれの国にとっての外交との関係から自国のNGOを通じたものをしているんだと思います。
これも繰り返しになりますが、自国のNGOを通じると途上国のNGOを無視するのではないかということにならないように、あくまでも途上国のNGOと組んで活動することを義務付けながら、南のオーナーシップというものを担保しながら進めているというような現状があるかと思います。
また、政府資金が多い場合、NGOとしての独立性とか自主性、こちらをどのように考えるのかということから、財源の多様性ですとか透明性、メディアや企業との関係なども大きな課題としてあるかと思います。
特に、一般の皆様からの募金が潤沢に期待できる欧州の国々と異なりまして、日本の場合は、特に緊急人道支援の場合には政府からの支援金が非常に重要なものになってまいりますが、そうした場合の独立性をどのように考えるのかと。これは大変重要な問題ではありますけれども、政府のお金と申しましても、皆様、私も含め国民一人一人の税金から成っているお金であり、そういったものを途上国の支援に使うことに対しましては、そのために政府の意向を一〇〇%生かすような外交の一手段になってしまっているということではないというふうに思っております。
それから、ポスト冷戦、ポスト九・一一以降、人道支援の分野に軍ですとか商業アクターが関与することが非常に多くなり、人道の原則や人道的空間が危機にさらされているというような意見もございます。また、先生方も御承知のように、高まる危険、紛争地や、それからISの問題などもございます。そういった地域の安全管理や危機管理が非常に大きな課題になっています。
こうした現状がある中で、日本政府にとってNGOとの連携がどのような意味を持つのか、あるいは持つべきかということについて、最後、申し述べさせていただきたいと思います。
私も、外交というのは、一義的には日本政府が担うものではありますが、決して一義的だけではなくて多義的なもので、多様な主体があって初めて自国の安全というものが確保されるというふうに考えております。本日、こうした調査会に私どもをお招きいただきましたのも、先生方がそうした御意見を共有してくださっていることの証左であるというふうに考えております。
NGOというアクターは、どの国にとってもなくてはならないものだと思います。私がここで声を大にしていろんなことを申し上げたいと思いますのは、必要不可欠なセクターでありながら日本の中では余りにもその地位が低い、弱過ぎること、これはひいては多様な外交を考える上で日本の弱点にもなりかねないというようなことがあるのではないかと思います。なくてはならない存在のNGOを強化することは、決して日本の国益を損なうものではなくて、一義的な国益ではない多様な国益というものを担保する重要な手段になるのではないかというふうに思っています。
NGOを外交のアクターとしてどう捉えるかと。まさに、私たちは外交の一翼を担っているというふうに考えております。現地で私どもは日本人を実際に派遣しまして、現地の職員と一緒に活動をしているわけですが、日本という多くの場所にとって政治的にも利益の余り関係ないところ、利害のないところから届いた支援というのを非常に現地の方々は喜んでくださっており、日本というものを日本の製品以外で意識する非常に重要な場になっているかと思います。
もちろん、援助を受ける側にとっては、それがどこの国であろうと援助が届けば一番いい。それはもちろんなのですけれども、同時にそこに外国、特に日本の顔や人が入るということで、自分たちは国際社会あるいは日本という国から、見捨てられていないと言うと言葉が悪いかもしれませんが、私たちのことを考えてくれている人が見ず知らずの国にいるんだということを、実際に受益者の方たちから私たちはよく耳にしております。そういったことの積み重ね、非常に小さなことではありますけれども、それがひいては日本の国益に資しているというふうに強く感じております。
お時間になりましたので、以上にいたします。ありがとうございます。