グレン・S・フクシマの発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(グレン・S・フクシマ君) ただいま御紹介いただきましたグレン・S・フクシマと申します。本日は、この参議院の調査会にお招きいただきまして、ありがとうございます。大変光栄です。
 本日は、トランプ政権と日米関係の行方というテーマで二十分ほど話させていただきますが、前もって二点ほどお許し願いたい点があります。
 第一点は言葉なんですが、私はアメリカ国籍の日系三世ですので、母国語は英語です。ですから、本来でしたら母国語の英語の方が適切に、簡潔に考えを申し上げられるわけなんですが、本日は郷に入っては郷に従えという精神で、拙い日本語で話させていただきます。ただ、英語の方がかなりいい話ができるということを御了承いただきたいと思います。
 第二点は、私、立場といいますか視点なんですが、一九八五年から九〇年の間の五年間は米国通商代表部で働いていたわけなんですけど、当時はレーガン政権四年間とブッシュ政権一年間、共和党政権だったんですが、当時は普通の役人として勤めていましたので、いわゆる政治的任命を受けた人間ではなく、普通の官僚として勤めていました。ただ、この過去二年間は、二〇一五年、二〇一六年はヒラリー・クリントンのアジア政策作業部会という会のメンバーで、ヒラリー・クリントンを応援していましたので、そういう意味で、今日はトランプ政権を擁護するとか弁護するつもりではありませんが、できるだけ客観的にトランプ政権と日米関係についてお話ししたいというふうに考えています。
 最初にほんの簡単にオバマ政権下の日米関係について述べて、その後トランプ政権について話をしたいと思います。
 皆さん御存じのように、オバマ政権の八年間というのは、日本の政権では、麻生政権、鳩山政権、菅政権、野田政権で、最初の四年間は四つの政権だったんですが、二期目になってからは安倍政権ということで、特にオバマ政権一期目は、日米関係といいますと、やはり震災、二〇一一年三月十一日の震災が非常に大きい出来事だったということが言えると思いますが、オバマ政権側から見ると、やはり一期目は特にアジア回帰、アジアピボットということで、オバマ大統領も、二〇〇九年、シンガポールのAPECの会合に行く途中、日本に寄って日本でスピーチをしたときも、自分はアメリカの初めての太平洋志向、太平洋を向いている大統領だということを言って、その二年後の二〇一一年には、ヒラリー・クリントンが国務長官として「フォーリン・ポリシー」という雑誌に六つのアジア回帰の優先課題というのを述べたわけなんですね。
 一つは、アジアにおける同盟国との関係強化、特にこれは日本、韓国中心ですね。二つ目は、台頭しているアジアの国との関係強化、これは主に中国、インド、インドネシアですね。三つ目は、アジアにおける多国間の組織との関係を強化する、これはAPECとかASEAN含めてですね。四つ目は、アジア太平洋地域における経済との関係を強化する、これは主にTPP。五番目は、同盟関係のほかの国との安全保障関係を強化し、アメリカの軍事的プレゼンスを高める、これはフィリピンとかオーストラリアとかインドも含めて考えていたわけなんですね。最後には、アメリカの優先順位としては価値観の共有、民主主義あるいは人権を促進する、特にこれはビルマとかベトナム、北朝鮮を中心に考えていたわけなんですが、この六つの優先課題というのがオバマ政権のアジアピボットの中心だったというふうに言えると思います。
 日米関係のことを考えますと、オバマ政権から見ると、多分三つの柱といいますか、一つは経済、二つ目は安全保障、三つ目は歴史感覚、歴史問題、歴史認識ですね。
 一番目の経済に関しては、日本国内においてのアベノミクスに対して、オバマ政権は全体的には支持していたということが言えると思います。二国間あるいは地域間のことを考えると、TPPというのが中心的な注目された課題だと思います。
 安全保障に関しては、安倍政権がいろいろ日本の安全保障分野の強化、NSCの設立とか特定秘密保護法とか、あるいは安保法案、集団的自衛権、そういう問題に関するアメリカから見ると改善があったということで、それも歓迎したと。あとは、オバマ大統領が二〇一四年の四月に来日したときも、尖閣列島が日米安保条約の第五条を適用するということで、非常に安全保障面ではオバマ政権と安倍政権というのは深化したのではないかと思います。
 最後の歴史問題なんですが、安倍政権が発足したときは、アメリカ・オバマ政権としても、この歴史問題、特に日本と中国、あるいは日本と韓国の関係めぐって問題ではないかという懸念があったわけなんですが、実際にそれで二〇一三年の十二月二十六日の靖国参拝もあったということで、一時、非常にオバマ政権としてはこの歴史問題というのに注目をして、できるだけオバマ政権としては特に日本と韓国の関係を改善をしてほしいという、そういう努力もしたつもりだったと思いますが、オバマ政権二期目、安倍政権の四年間のこの三つの分野、経済、安全保障、歴史、それぞれの進展があって、歴史に関して申しますと、七十周年総理談話あるいは慰安婦に関する韓国との合意、あるいはオバマ大統領の広島訪問、安倍総理の真珠湾訪問、こういう形でオバマ政権の末期は日米関係が非常にいい方向に行っていて、これはもしヒラリー・クリントン政権になったら、私は、大体七割から八割ぐらいはオバマ政権の政策を継続したのではないかというふうに思います。
 私、ヒラリー・クリントン政権の方がかなり外交面では積極的に、北朝鮮も含めていろいろ行動を取ったのではないかと思いますけれど、七割、八割は継続性が期待できたと思うんです。しかし、予測に反してドナルド・トランプが選挙に勝ったということで、今、トランプ政権発足してまだ九十日、ちょうど来週、四月二十九日が百日目になるわけなんですが、この九十日間の間でも非常にいろいろ出来事があって、先ほど伊藤先生も言われたように、非常に予測がしにくい政権になっているわけなんですね。
 特に日米関係に絞って言いますと、去年、中央公論にトランプ政権と日米関係について記事を書いてくれと言われまして、参考資料にも入っていますけれど、このために、トランプ氏が書いた本とか、あるいは彼のスピーチを三十ぐらい聞いて一応記事を書いたんですが、明らかに、一九八〇年代からドナルド・トランプというのは、日本に対して五つの分野において非常に苦情あるいは不満があると。一つは、彼の言うのには、日本はアメリカから職を奪う、二つ目は輸出だけをして物を輸入はしない、アメリカから、あと通貨、為替の操作をする、最後には安全保障上はただ乗りをしていると。この五つの批判というのは、二〇一五年、二〇一六年の大統領選挙のキャンペーンめぐっても、繰り返し彼は日本に対して批判をしていました。しかし、トランプ政権が発足してからは、日本に関する発言あるいは行動というのが相当おとなしくなって、それにはいろいろ理由はあると思うんですけれども、後ほどもう少し説明したいと思います。
 皆さん御存じのように、トランプ政権の経済あるいは貿易政策に関して言いますと、今までの共和党あるいは民主党の政権とはかなり違うはっきりしたアメリカ第一主義的な考えということで、例えば、TPPも大統領になった直後の一月二十三日に脱退をし、NAFTA、北米自由貿易協定というのもカナダとメキシコと再交渉するということを言って、WTO、世界貿易機関に対しても非常に猜疑心を持ち、余り役に立たない組織だということを常に言っています。
 むしろ、トランプ政権としては、多国間の枠組みあるいは交渉ではなく二国間交渉の方が好むということで、これはトランプ大統領自身は、アメリカは力がある国だから二国間で交渉すればアメリカに有利な形に交渉できるはずだけど、多国間でするとほかの国がアメリカからいろいろベネフィットを取ってしまうという、非常にある意味ではちょっと被害妄想的に、ずっと、ほかの国はアメリカから利益を取っているという、そういう感覚、そういう考えでこういう多国間の交渉あるいは枠組みを見てきているわけなんです。
 直接通商政策ではない税金、税制を使って国境調整税とか、あるいは投資に関しても個別企業を、何といいますか、誘導し、それで例えばメキシコに投資しないでアメリカにとどめるという、そういう行動を取ったり、今までの政権とはかなり違う通商政策、貿易政策がこれから展開されるのではないかというふうに見られています。
 アメリカの場合は日本と比べて人事こそが政策だと言われていまして、要するに、誰が閣僚あるいは副長官、次官級のポストに就くかによって政策そのものも影響されると言われているわけなんですが、今のトランプ政権の閣僚を見ますと、多分、閣僚あるいは幹部の人たちを見ますと、大きく分けて三つ勢力があるんじゃないかと思いますね。
 一つはビジネス出身の財務長官とか国務長官、あるいは国家経済会議のトップ、あるいは商務長官。二つ目は元軍人、これは国防長官、あるいは国家安全保障会議の議長、あるいは国家安全保障省ですかのトップのケリー。三つ目のグループというのが、アメリカ第一主義的なスティーブン・バノンとか、あるいはスティーブン・ミラー、あと、今度、通商代表として多分近いうちに承認受けると思いますけれども、通商代表のライトハイザーですね。私も、実は通商代表部で働いている一九八五年から九〇年の間、彼も次席通商代表でレーガン政権で仕事をしたわけなんですが、彼と、あとピーター・ナバロという中国の専門家で今国家通商会議というところのトップなんですけれども、こういう人たちというのは割合に保護主義的な考えを持ち、これからも彼らたちは多分、市場開放だけじゃなく、むしろ輸出規制を貿易相手国に対して要求してくるんではないかというふうに思います。
 二ページに移りますが、今まで申し上げましたように、安倍総理がトランプ大統領と、当時は次期大統領ですね、去年の十一月十七日と今年の二月十日、首脳会談をして、そういう二つのミーティングからいいますと、過去ドナルド・トランプが言ってきた日本批判というのはほとんど出てこなかったわけなんですが、これにはいろいろ理由があると思いますし、例えばドナルド・トランプ大統領がメキシコとの関係、あるいはEUとの関係、あるいはオーストラリアとの関係とか、いろんな国との関係を相当悪くしているという、そういう批判もありまして、その背景の中での安倍総理との二月十日の会談があったということもありまして、あと北朝鮮の問題も中国の問題もあるということで、ドナルド・トランプとしては、どちらかというと二月十日のミーティングは、会合は、日米の同盟関係、日米の共通点を強調する、そういう首脳会談になったんではないかと思います。
 ただ、ドナルド・トランプの共同記者会見のときの発言をよく聞くと、やはり彼は、自由、公正、互恵的と言ったらいいんですか、レシプロカルという言葉を使っているわけなんですけど、経済関係ではお互いに便益がある、お互いに利益がある関係ということを強調し、ですから、安全保障面では前の政権、オバマ政権と同じように礎という、コーナーストーンという言葉を使っているわけなんですが、トランプ政権も、経済面ではこれから多分今までとは違う形の要求が、アメリカから二国間の要求が出てくるんではないかというふうに思います。
 時間も余りありませんので、急いで最後の部分に移りますが、トランプ政権、百日まであと十日間になるんですが、非常に予測しにくい要素がたくさんありまして、多分、少なくとも戦後のアメリカでこれほど予測しにくい政権はないんじゃないかというぐらい、将来どう動くかというのを見るのは非常に難しいと思います。
 それには幾つか要素がありまして、一つは、幹部ポストが、普通だったらもう三月か四月頃新しい政権ではトップの人事が決まるわけなんですが、今の時点では、四千人ほど新しい人が政権に入るということで、そのうちの千百人ぐらいは議会の承認が必要とされているんですけれども、そのトップのポストというのがほとんどまだ埋まっていないんですね。ですから、国務省でも国務長官と国連大使だけで、ほかに誰もまだ議会の承認を得ている人は一人もいないわけなんですね。そういうことで、これ、こういうポストが埋まるまで多分まだ六か月ぐらい掛かるんじゃないかと思います。ですから、なぜこれ埋まらないかということはいろいろ、後からでも御説明しますけど、理由があるんですが、これが非常に時間掛かっているというのが一つ。
 二つ目は、トランプ氏自身の経営スタイルが、ビジネスマンのときでもそうなんですが、いろんな意見が違う人を集めて、それでお互いに闘ってもらって、それで、その結果、自分が決断をするという、そういうスタイルですので、当事者自身も実際にどういう結論になるかということを予測しにくいという、そういう経営方針といいますかね。彼もよくビジネスマンだと言われているんですけど、実は彼は非常に、何といいますか、限られた不動産業の仕事で、取締役会もない、株主総会も株主もないという、非常にそういう意味ではオーナー社長的な経営方式を取ってきたわけなんですね。ですから、政府の大きい組織のトップとして、どこまでこれに慣れて変わっていくかということはみんな注目しているところです。
 あと、彼が、もうこの九十日間の間でも、ころころ前言ったことと全く正反対のことを言うようになっているわけですね。NATOに関してもそうですし、中国の為替操作についてもそうですし、シリアに関してもそうですし、輸出入銀行に関してもそうですし、FRBの議長のジャネット・イエレンに関しても、それぞれ前言ったことと今言っていることとは変わっているわけなんですね。ですから、結果的にどういう行動を取るかというのはまだ分からないということですね。
 あと、彼がよく言っていることは、全てのオプションはテーブルの上にあると。要するに、彼はアメリカは予測可能だということが不利だと、アメリカにとっては。相手が自分がどういう行動を起こすか分からないという、そういう立場にならなければ利用されてしまうという、不動産の交渉をしているような、そういう考えで外交も遂行しているようです。
 ですから、時間がありませんので最後に申し上げたいことは、安倍総理とドナルド・トランプ御自身は割合にケミストリーがいいということなんでしょうけど、ただ、制度的に、日本の政府の制度、あるいはアメリカの政府の制度、今のアメリカの政府の制度を比べると、私は外から常に日本のことを見ているんですが、日本というのは、特に政府が非常に安定性を重視する、あるいは一貫性、予測可能性、継続性、前例主義とか、そういうことを重視することに対して、今のトランプ政権というのは、アメリカの政権としても、アメリカの水準から見ても非常に不安定、予測しにくい、不連続性がある、一貫性がない、全て物事を取引関係に考えているという、そういうことで、アメリカのワシントンにいても、シンクタンクの人間、学者、あるいはジャーナリストも含めて、非常にトランプ政権の行動と、あとこれからどういうアクションを取るかということを予測するのは難しいという、そういう情勢です。
 ちょうど時間が来ましたので、私の話はこのくらいにしておきます。
 どうもありがとうございます。

発言情報

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発言者: グレン・S・フクシマ

speaker_id: 29807

日付: 2017-04-19

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会