国際経済・外交に関する調査会

2017-04-19 参議院 全91発言

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会議録情報#0
平成二十九年四月十九日(水曜日)
   午後一時五十八分開会
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   委員の異動
 四月十二日
    辞任         補欠選任
    渡辺美知太郎君     今井絵理子君
     熊野 正士君     高瀬 弘美君
 四月十三日
    辞任         補欠選任
     足立 敏之君     大野 泰正君
     川合 孝典君     大塚 耕平君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         鴻池 祥肇君
    理 事
                酒井 庸行君
                柘植 芳文君
                宮本 周司君
                藤田 幸久君
               佐々木さやか君
                武田 良介君
                東   徹君
    委 員
                今井絵理子君
                小野田紀美君
                尾辻 秀久君
                大野 泰正君
                中山 恭子君
                丸山 和也君
                三木  亨君
                宮島 喜文君
                吉川ゆうみ君
                大塚 耕平君
                古賀 之士君
                杉尾 秀哉君
                真山 勇一君
                高瀬 弘美君
                横山 信一君
                木戸口英司君
                伊波 洋一君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        松井 一彦君
   参考人
       明治大学政治経
       済学部教授    伊藤  剛君
       米国先端政策研
       究所上級研究員  グレン・S・
                フクシマ君
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      高原 明生君
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  本日の会議に付した案件
○国際経済・外交に関する調査
 (「アジア太平洋における平和の実現、地域協
 力及び日本外交の在り方」のうち、信頼醸成と
 永続的平和の実現に向けた取組と課題(日中、
 日米関係)について)
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鴻池祥肇#1
○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国際経済・外交に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日までに、熊野正士君、渡辺美知太郎君、川合孝典君及び足立敏之君が委員を辞任され、その補欠として高瀬弘美君、今井絵理子君、大塚耕平君及び大野泰正君が選任されました。
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鴻池祥肇#2
○会長(鴻池祥肇君) 国際経済・外交に関する調査を議題といたします。
 本日は、「アジア太平洋における平和の実現、地域協力及び日本外交の在り方」のうち、「信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組と課題」に関し、「日中、日米関係」について参考人からの御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、明治大学政治経済学部教授伊藤剛参考人、米国先端政策研究所上級研究員グレン・S・フクシマ参考人及び東京大学大学院法学政治学研究科教授高原明生参考人に御出席をいただいております。
 この際、一言御挨拶を申し上げます。
 お三方の先生方におきましては、御多用の中、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 どうか忌憚のない御意見を頂戴して、今後の調査の参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申します。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、伊藤参考人、フクシマ参考人、高原参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後五時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、伊藤参考人から御意見をお述べいただきます。伊藤参考人。
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伊藤剛#3
○参考人(伊藤剛君) ただいま御紹介にあずかりました明治大学政治経済学部の伊藤と申します。
 私にとりまして参議院と申しますのは、実は、今を遡ることちょうど六十年前の話なんですが、私の父がかつてこの参議院の事務局に一年だけ勤めていたことがございまして、そういう意味でも、私の家族を代表してといいますか、参議院でこのような形で意見を述べさせていただくことを大変光栄に思う次第でございます。
 永続的平和と関連して、かつ日米関係に関して話をするというのが私に与えられた課題でございますので、基本的には安全保障の観点から、その中にやや経済的な要素を組み込みながらお話を申し上げたいというふうに思います。
 私のお話をする論点といいますのは、簡単に、お配りいたしました資料に載っているとおりでございますが、そもそも日米関係というものを考える以前の段階として、そもそも国際関係において安全を確保するとはどういうことであるかということを、まず非常に基本的な話から考えますと、私はよく大学でも話をするんですが、夜、警察がいない道を一人で帰るときにどうやって自分の身を守るかということから考えなさいという話からスタートをいたします。やり方は大体三つぐらいしかございませんでして、自分で守るか、人に頼むか、そもそも安全な社会をつくるか、この三つぐらいしかありません。
 安全な社会をつくるというのは、言うのは簡単ですが、自分一人ではすぐにはできないことですから、すぐに自分でできる方法というのは最初の二つぐらいしか存在しないということになります。自分で守るというのは、安全保障にとってみればやはり防衛力をいかに整えるかということであり、人に頼むかということは、どうやって同盟をうまく利用するかということになってくるわけでございます。
 日米を語る前に、その構造的なものをまず組み入れて話をする必要があるのではないか。具体的に、現在のトランプ政権に関する陣容であるとか政策の変容に関しては次のフクシマ参考人からお話をしていただくということになっているようですので、私はその構造的な側面を主にお話をしたいというふうに思うわけであります。
 日本の場合は、この三つある手段のうちの二番目、人に頼むといいますか、同盟をうまく利用して日本国の安全というものを確保するということを選択肢として長い間やってきたわけであります。
 当然、自分で守るということと人に頼むということにはそれぞれに長所と短所があるわけでありまして、人に頼むとどうなるかといいますと、もちろん自分の安全のために人に頼るわけですから、自分は確実に安全でないといけないと。ところが、アメリカのように非常に大きな軍事力を持つ国の場合は、アメリカの行う戦争あるいは安全保障政策に日本が巻き込まれるという可能性というのが当然出てくるわけであります。これがよく言われる巻き込まれの恐怖というものでありまして、巻き込まれの恐怖を和らげようと思えば、当然その同盟関係を離さないといけないと。関係が希薄になればなるほど、君なんか要らないよということで、今度は同盟関係がなくなるという捨てられの恐怖というものが存在するわけで、この巻き込まれと捨てられの両方をうまい具合に操らないと同盟の関係というのはうまくいかないということであります。
 いずれにしましても、自分で守るという政策を取るにしても、人に頼むということを考えるにしても、やっぱり一〇〇%確実だということは当然ないわけであります。ですから、その確率のいかに高い状況を目指すかということを考えながら政策を考えていくしかないというのが現状であります。
 紙の上の理論上では、この捨てられと巻き込まれというのは両者相反するものであるわけですが、実際には、その置かれている状況によってこの恐怖を感じる度合いというのは異なるわけであります。
 実は、アメリカの同盟国といいますのは、韓国、日本、それから、なくなりましたけど、台湾もアメリカによって守られております、それからフィリピンというものがございますが。目の前に敵が存在する韓国やあるいは台湾というのは、アメリカによる安全保障供与がなくなるとひょっとしたら国家そのものもなくなるかもしれないという前提で戦後の体制というのがスタートしておりますから、明らかにアメリカから捨てられると困るという捨てられの恐怖の方が大きいと。日本やフィリピンのように、一応仮想敵国はいるけれども目の前にその脅威というものがそれほど差し迫ったものではないという国の場合は、どちらかというと巻き込まれの恐怖というものが大きくなると。
 同じアメリカの同盟国の中でも、アジアはそれぞれ持っている恐怖が異なるわけでありまして、そういう意味で、日本の中では、どちらかというと、どの論調を見ましても、アメリカから巻き込まれたらどうしようという論調の方が圧倒的に強くなるというのが構造的にもう組み込まれているというふうに言えるわけであります。
 逆に、同じ国内でも政権党と野党によってこの恐怖の度合いというのは異なるわけでありまして、具体的にその政策を担当するわけではない野党にとってみれば、巻き込まれたらどうするんだという批判というのが多々出てくることになると。ところが、政権党で実際に安保の政策を担っている側にとってみれば、いや、そんなことを言っても、関係を離し過ぎてアメリカに君なんか要らないよというふうになると逆に同盟そのものの根幹が揺らぐということになっておりますので、この恐怖の感じ方というのは、同じアメリカの同盟国でも異なるし、同じ国内でも政権を持っているか持っていないかでも異なるということが言えるわけであります。
 じゃ、この安全保障を人に頼る、つまり同盟を使う、ここに生じる同盟ジレンマを和らげるためにはどうすればいいかというと、結局は自分の力を蓄えるしかないということになってくることがしばしばあるわけで、これを、自分で自分を強くするということで自強と書いているわけでありますが、しかし、自分で自分を強くすることももちろん欠点があるわけであります。
 自分で自分を強くすればするほど、自分にとってはそれは防衛力、防衛であるかもしれないけれども、安全を高めることになるかもしれないけれども、それは相手にとってみれば単なる恐怖の拡大であるということで、お互い恐怖が拡大して軍拡競争が続くというのが一般的に言われる軍拡スパイラルというものでありますが、この防衛政策の短所を和らげるために同盟政策というものが本来存在するんですが、その同盟にももちろん欠点があるということでありまして、結果的には一〇〇%の安全というのは確保されないというのが構造的に言えるわけであります。
 では、よりアメリカからの安全を確実にするにはどうすればいいかということがいつも問題になるわけですが、そこでいつも二つの課題が話題になります。
 一つは、代償物というラテン語でありますが、クイド・プロ・クオということで、アメリカが安全保障を供与してくれる代わりに日本は一体何ができるのかと。より一般的には、A国の安保供与に対してB国は何ができるのかということもしばしば出てくるわけであるし、アメリカからの安全保障供与を確実にしようと思えば思うほど、日本はアメリカにひっつくという形になっていくと。しかし、本当に危機のときにアメリカが安全保障を提供してくれるのだろうかという信頼性の問題というのは、これも昔からあるわけでありまして、日米安全保障条約五条、六条を取ってみましても、本当に危機になったときにアメリカが安保を提供してくれるのであろうかという疑問は昔からあるわけであります。
 歴史の流れで見ますと、日本とアメリカというのは、かつては人と物との協力というふうに外務省の高官が発言したことがありまして、アメリカが安全保障を担う人を提供する代わりに日本は基地という物を提供するんだという比喩で答弁された方も何人かいらっしゃいましたが、もう冷戦が終わった現代ではそういうわけにはいかないわけでありまして、お互いに人と人との安全保障協力というものをどうやって成し遂げていくかということがもう今後の日米関係に求められるというふうに言われてから、もう何十年もたってしまったという状態であります。
 冷戦が終わって人と人との協力が言われるようになったわけですが、もう冷戦が終わって約三十年がたつわけであります。我々学者の世界では冷戦コンセンサスということが言われていまして、イデオロギー的対立のためにどうやって自由主義陣営を整えればいいかということが言われた時代がかつてありました。この冷戦という激しいイデオロギー対立があったからこそ、平和主義という平和的な言葉が人々を魅了したわけでありまして、全世界的なイデオロギー対立がなくなると、逆にこの平和主義というのは余り心には響かなくなっていくという状況になっていくと。
 この二、三十年のうちに明らかに生じている現象は、新興国の台頭という形で、大国だけが国際政治全体を動かすわけではなくて、かつて発展途上国と言われていた国が中等国になりだんだんと経済発展をしていくと、経済発展をしていくに従ってだんだん大国クラブの中に入れてくれという事態が起きてくるわけであります。
 アメリカは、自らリベラルな秩序をつくって、国の関税をできるだけ低くして日本からの商品を受け入れるということを冷戦時代はやっていたわけですが、大国はいつも自分の都合に応じて政策を何度でも変えるというところがありまして、自ら持ち切れない国際的責任は必ず国際協調という言葉で代替をするわけであります。冷戦の変わり目、七〇年代、九〇年代、いつも円とドルの為替相場が大きく変動していますが、冷戦時代に持ち切れなかったアメリカの責任を為替を操作することによって同盟国にどんどん押し付けていくということを結果的にやっているというふうに言えるわけであります。
 と同時に、国際的な協調が気に入らないと、その協調の外に新しい機関をつくると。七〇年代にできたサミット、八〇年代に国連科学文化機構から脱退をしたこと等々も含めて、大国というのは基本的に、国際協調が気に入らないと自分の気に入るように機関を外につくっていくということが出てくるわけであります。TPPが気に入らないと新しいものをつくっていく、二国間交渉になるという事態が出てきているわけであります。
 そうやって大国クラブの中に入れてくれという国がどんどん増えていくと、G5からG20という事態に変わっていっていると思いますが、実際には、中等国くらいだと、大国クラブに入れてくれという要求はあるんですが、いざ、じゃその大国の責任を果たせということになると、いや、我が国はまだ発展途上国ですからという言葉で逃げるということが現実として起こっているのが、環境問題であるとか人権問題であるとか、こういったグローバルな課題を見れば明らかであるというふうに言えるわけであります。
 次のページに参ります。
 では、トランプ大統領自身の基本的な政策は、言うまでもなくアメリカ・ファーストというものであります。アメリカ・ファースト、○○ファーストというのは今、どこの国でもと言うとちょっと極端ですが、多くの政治指導者が言っていることでありまして、自国をとにかく、経済及び安全保障政策も含めた形で自国のプレゼンスを高くするということを政策の第一として掲げているわけであります。
 この背景にあるのは、いわゆる反オバマ、オバマがやっていたことと反対のことをやるという個人的な対抗心でありまして、そこ自体に余り明確でかつ一貫した戦略というものは存在しないというふうに言っていいかと思います。だから、どの識者に聞いても、結局トランプ外交は何ですかね、ううん、よく分かりませんという答えが大体であると。個人的対抗心で、そこには戦略はない。戦略がないこと自体が一体何を考えているか分からないということで戦略的曖昧性になるという可能性はあるんですが、現状では一貫した政策がないということから、一体何が起こるだろうということを毎日ニュースで確認しなければいけないということになっているわけであります。
 具体的には、シリアを空爆をしたわけでありますが、トマホークを撃ったとしても、映像を見ていると、次の日にはあのシリアの飛行場から普通に戦闘機が飛び立っているということですから、そう考えると、一体その攻撃の有効性というのはどこにあるのかということをいつも感じると。つまり、具体的な戦略の有効性が余り感じられない状態での空爆を行いながら、自分は声高にオバマと違うことをやっているということを主張するというのが現在展開されている状態ではないかというふうに思うわけであります。
 このトランプ政権というのは、どんなふうに解釈するかは、今現在戦略はないと簡単に切り捨てることはできるんですが、長い目で見たらどうなるだろうということは実はよく分からないことがたくさんありまして、よく言われることは、今から遡ること百数十年前でありますが、南北戦争の頃というのは、北側の共和党が自由貿易主義で奴隷制反対、南の民主党は保護貿易主義的で奴隷制に賛成ということで、今の民主党の政策と随分違うなということであります。そうやって考えると、非常に長い目で見れば、現在のトランプはそういうアメリカの歴史の大きな変革点にいるのかもしれないと勝手な想像はできますが、今のトランプの言説を見る限り、なかなかそんな、歴史的な分水嶺に我々は立っているなという気持ちというのはなかなかしません。これはやっぱり後世の歴史家が決めるしかないというのが現状であります。
 こういういろんな転換点というのが、民主党一つを取っても、南北戦争の頃、それからFDR、フランクリン・ルーズベルトでありますが、そのフランクリン・ルーズベルト以降の民主党で大きく違うわけであります。ですから、実はひょっとしたらそういう大きな歴史の転換点にいるのかもしれないということは感じるわけであります。
 ただ、戦後七十数年間、次第に日本とアメリカ、どの国も先進国は全てそうですが、民主的ないろんな制度が整い、そして成熟した民主化というものがどんどんと成し遂げられていると。そうすると、政治の側が応えなければならない課題というのが物すごく多くなってきたというような状況になると。そうすると、国内で応えなきゃいけない民主主義的な要求に様々応えなければならないという状況になってきたと。近年、我々研究者業界でよく話題になる本にグローバリゼーション・パラドックスというものがあるわけですが、これは、民主主義とグローバリゼーションと国民主権というものは、なかなか三つとも同時並行的に成立をさせるというのは困難であるという状況になりつつあると。
 新興国が台頭してきて次第に国際的な要求がどんどん激しくなっていく、国内では、民主化及び高齢化あるいは社会保障の充実に伴って、国内でもいろいろ必要な資源というものが多々出てくるといろんな予算を割かねばならないというふうな状況になってくると。そうすると、当然、経済力の好ましいところにどんどん移民も集まってくるということで、今申し上げたグローバリゼーションと民主主義と国民主権というのが、人の移動の自由化に伴ってだんだんと三つが並列的に成立をするということが難しくなっていくという状況になるわけであります。
 アメリカ・ファースト、フランス・ファースト、○○ファーストという状況になっているわけですが、同時に、中国の台頭というのは、安全保障でもそうですけれども、例えば、中国が行っている人民元の過剰な発行で経済成長率よりも何倍もの大きさで人民元を発行している状態が、ここ二年ぐらいまでは落ち着いていますけど、過去において物すごい量で人民元を発行していたものですから、そうすると人民元が世界中にあふれる、過剰流動性のこの通貨というのが世界中をうごめいていて、ハワイの土地を買ってみたりバンクーバーの土地を買ってみたりという状況になると。そうすると、一般の中産階級であったアメリカ人や先進国の人たちが、どんどん値段が上がっていく不動産の状況、それから大学の授業料なんかもそうだと思うんですけれども、どんどんインフレ傾向の中で、日常的な生活を真面目にやっているにもかかわらず、家が買えない、不動産が買えない、子供を大学に通わすこともできない、我々は一生懸命やっているのに、こんな暮らしにくい嫌な社会に誰がしたんだというような不満というのがだんだん出てきているのが現状ではないかと。
 そのような意味で、中産階級の相対的な衰退というのが現在では起きていて、この状況はトランプ大統領の今でなくてもこの傾向は変わらない。つまり、ポピュリズム的な展開というのは別に二〇一六年だけに特異な現象ではなくて、これから国際社会全体が構造変動していくとともに、中産階級というのがだんだんと相対的に没落していくという構造になっているので、早くそれに手を打つ必要があるのだということを私は常に考えているわけであります。
 大きな転換点でいえば、第二次世界大戦以降の基本的な国際的な側面での自由貿易、そして国内的な側面の福祉主義というのがだんだんと維持できなくなってきたと。自由貿易主義が維持できなくなってきたのは現在のアメリカの政権を見れば立ち所に分かるわけでありまして、できるだけとにかく大きな地域的な枠組みをつくるよりは、二国間で交渉して短期的な利益を得た方が好ましいというような現象が現在起きているのではないかというふうに思うわけであります。
 こういった状況で、日米の連携、そして永続的平和のために、経済的な面でもそして安保の面でも連携をより深めていくにはどうしたらいいだろうかと。このトランプの四年間で、基本的にはアメリカの相対的な地位というのはやっぱり落ちると言わざるを得ないでしょうと。現在、アジア太平洋地域というのは、やはり国際環境は極めて不確実性を増しているわけでありまして、そういう意味で、外部の脅威というのが存在すればするほど日米というのはより緊密になっていかなければならないと言えます。しかしそれは、同盟に関してよく対称同盟、非対称同盟と言われるわけですが、対称さというのが求められていって、更なる巻き込まれの危険性というのがどんどん恐怖として大きくなっていくということが言えると。
 再び自分で守るという選択肢と人に頼むというこの二つの選択肢があって、人に頼むというのも大事で、どうやればアメリカからの安全保障供与を確実にできるかということを考えていくと同時に、自分たちが何ができるかということを前提として考えていく必要があるんではないかと。
 最後に申し上げることは、私の人生観でもあるんですけど、保険は一個あるより複数あった方がよいということでありまして、アメリカプラスアルファの安全保障を確実にするための方策を考えていかなければならないということですが、この報告は日米関係ということでしたので、また機を改めて論じることができればと思います。
 ありがとうございました。
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鴻池祥肇#4
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、フクシマ参考人から御意見をお述べいただきます。フクシマ参考人。
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グレン・S・フクシマ#5
○参考人(グレン・S・フクシマ君) ただいま御紹介いただきましたグレン・S・フクシマと申します。本日は、この参議院の調査会にお招きいただきまして、ありがとうございます。大変光栄です。
 本日は、トランプ政権と日米関係の行方というテーマで二十分ほど話させていただきますが、前もって二点ほどお許し願いたい点があります。
 第一点は言葉なんですが、私はアメリカ国籍の日系三世ですので、母国語は英語です。ですから、本来でしたら母国語の英語の方が適切に、簡潔に考えを申し上げられるわけなんですが、本日は郷に入っては郷に従えという精神で、拙い日本語で話させていただきます。ただ、英語の方がかなりいい話ができるということを御了承いただきたいと思います。
 第二点は、私、立場といいますか視点なんですが、一九八五年から九〇年の間の五年間は米国通商代表部で働いていたわけなんですけど、当時はレーガン政権四年間とブッシュ政権一年間、共和党政権だったんですが、当時は普通の役人として勤めていましたので、いわゆる政治的任命を受けた人間ではなく、普通の官僚として勤めていました。ただ、この過去二年間は、二〇一五年、二〇一六年はヒラリー・クリントンのアジア政策作業部会という会のメンバーで、ヒラリー・クリントンを応援していましたので、そういう意味で、今日はトランプ政権を擁護するとか弁護するつもりではありませんが、できるだけ客観的にトランプ政権と日米関係についてお話ししたいというふうに考えています。
 最初にほんの簡単にオバマ政権下の日米関係について述べて、その後トランプ政権について話をしたいと思います。
 皆さん御存じのように、オバマ政権の八年間というのは、日本の政権では、麻生政権、鳩山政権、菅政権、野田政権で、最初の四年間は四つの政権だったんですが、二期目になってからは安倍政権ということで、特にオバマ政権一期目は、日米関係といいますと、やはり震災、二〇一一年三月十一日の震災が非常に大きい出来事だったということが言えると思いますが、オバマ政権側から見ると、やはり一期目は特にアジア回帰、アジアピボットということで、オバマ大統領も、二〇〇九年、シンガポールのAPECの会合に行く途中、日本に寄って日本でスピーチをしたときも、自分はアメリカの初めての太平洋志向、太平洋を向いている大統領だということを言って、その二年後の二〇一一年には、ヒラリー・クリントンが国務長官として「フォーリン・ポリシー」という雑誌に六つのアジア回帰の優先課題というのを述べたわけなんですね。
 一つは、アジアにおける同盟国との関係強化、特にこれは日本、韓国中心ですね。二つ目は、台頭しているアジアの国との関係強化、これは主に中国、インド、インドネシアですね。三つ目は、アジアにおける多国間の組織との関係を強化する、これはAPECとかASEAN含めてですね。四つ目は、アジア太平洋地域における経済との関係を強化する、これは主にTPP。五番目は、同盟関係のほかの国との安全保障関係を強化し、アメリカの軍事的プレゼンスを高める、これはフィリピンとかオーストラリアとかインドも含めて考えていたわけなんですね。最後には、アメリカの優先順位としては価値観の共有、民主主義あるいは人権を促進する、特にこれはビルマとかベトナム、北朝鮮を中心に考えていたわけなんですが、この六つの優先課題というのがオバマ政権のアジアピボットの中心だったというふうに言えると思います。
 日米関係のことを考えますと、オバマ政権から見ると、多分三つの柱といいますか、一つは経済、二つ目は安全保障、三つ目は歴史感覚、歴史問題、歴史認識ですね。
 一番目の経済に関しては、日本国内においてのアベノミクスに対して、オバマ政権は全体的には支持していたということが言えると思います。二国間あるいは地域間のことを考えると、TPPというのが中心的な注目された課題だと思います。
 安全保障に関しては、安倍政権がいろいろ日本の安全保障分野の強化、NSCの設立とか特定秘密保護法とか、あるいは安保法案、集団的自衛権、そういう問題に関するアメリカから見ると改善があったということで、それも歓迎したと。あとは、オバマ大統領が二〇一四年の四月に来日したときも、尖閣列島が日米安保条約の第五条を適用するということで、非常に安全保障面ではオバマ政権と安倍政権というのは深化したのではないかと思います。
 最後の歴史問題なんですが、安倍政権が発足したときは、アメリカ・オバマ政権としても、この歴史問題、特に日本と中国、あるいは日本と韓国の関係めぐって問題ではないかという懸念があったわけなんですが、実際にそれで二〇一三年の十二月二十六日の靖国参拝もあったということで、一時、非常にオバマ政権としてはこの歴史問題というのに注目をして、できるだけオバマ政権としては特に日本と韓国の関係を改善をしてほしいという、そういう努力もしたつもりだったと思いますが、オバマ政権二期目、安倍政権の四年間のこの三つの分野、経済、安全保障、歴史、それぞれの進展があって、歴史に関して申しますと、七十周年総理談話あるいは慰安婦に関する韓国との合意、あるいはオバマ大統領の広島訪問、安倍総理の真珠湾訪問、こういう形でオバマ政権の末期は日米関係が非常にいい方向に行っていて、これはもしヒラリー・クリントン政権になったら、私は、大体七割から八割ぐらいはオバマ政権の政策を継続したのではないかというふうに思います。
 私、ヒラリー・クリントン政権の方がかなり外交面では積極的に、北朝鮮も含めていろいろ行動を取ったのではないかと思いますけれど、七割、八割は継続性が期待できたと思うんです。しかし、予測に反してドナルド・トランプが選挙に勝ったということで、今、トランプ政権発足してまだ九十日、ちょうど来週、四月二十九日が百日目になるわけなんですが、この九十日間の間でも非常にいろいろ出来事があって、先ほど伊藤先生も言われたように、非常に予測がしにくい政権になっているわけなんですね。
 特に日米関係に絞って言いますと、去年、中央公論にトランプ政権と日米関係について記事を書いてくれと言われまして、参考資料にも入っていますけれど、このために、トランプ氏が書いた本とか、あるいは彼のスピーチを三十ぐらい聞いて一応記事を書いたんですが、明らかに、一九八〇年代からドナルド・トランプというのは、日本に対して五つの分野において非常に苦情あるいは不満があると。一つは、彼の言うのには、日本はアメリカから職を奪う、二つ目は輸出だけをして物を輸入はしない、アメリカから、あと通貨、為替の操作をする、最後には安全保障上はただ乗りをしていると。この五つの批判というのは、二〇一五年、二〇一六年の大統領選挙のキャンペーンめぐっても、繰り返し彼は日本に対して批判をしていました。しかし、トランプ政権が発足してからは、日本に関する発言あるいは行動というのが相当おとなしくなって、それにはいろいろ理由はあると思うんですけれども、後ほどもう少し説明したいと思います。
 皆さん御存じのように、トランプ政権の経済あるいは貿易政策に関して言いますと、今までの共和党あるいは民主党の政権とはかなり違うはっきりしたアメリカ第一主義的な考えということで、例えば、TPPも大統領になった直後の一月二十三日に脱退をし、NAFTA、北米自由貿易協定というのもカナダとメキシコと再交渉するということを言って、WTO、世界貿易機関に対しても非常に猜疑心を持ち、余り役に立たない組織だということを常に言っています。
 むしろ、トランプ政権としては、多国間の枠組みあるいは交渉ではなく二国間交渉の方が好むということで、これはトランプ大統領自身は、アメリカは力がある国だから二国間で交渉すればアメリカに有利な形に交渉できるはずだけど、多国間でするとほかの国がアメリカからいろいろベネフィットを取ってしまうという、非常にある意味ではちょっと被害妄想的に、ずっと、ほかの国はアメリカから利益を取っているという、そういう感覚、そういう考えでこういう多国間の交渉あるいは枠組みを見てきているわけなんです。
 直接通商政策ではない税金、税制を使って国境調整税とか、あるいは投資に関しても個別企業を、何といいますか、誘導し、それで例えばメキシコに投資しないでアメリカにとどめるという、そういう行動を取ったり、今までの政権とはかなり違う通商政策、貿易政策がこれから展開されるのではないかというふうに見られています。
 アメリカの場合は日本と比べて人事こそが政策だと言われていまして、要するに、誰が閣僚あるいは副長官、次官級のポストに就くかによって政策そのものも影響されると言われているわけなんですが、今のトランプ政権の閣僚を見ますと、多分、閣僚あるいは幹部の人たちを見ますと、大きく分けて三つ勢力があるんじゃないかと思いますね。
 一つはビジネス出身の財務長官とか国務長官、あるいは国家経済会議のトップ、あるいは商務長官。二つ目は元軍人、これは国防長官、あるいは国家安全保障会議の議長、あるいは国家安全保障省ですかのトップのケリー。三つ目のグループというのが、アメリカ第一主義的なスティーブン・バノンとか、あるいはスティーブン・ミラー、あと、今度、通商代表として多分近いうちに承認受けると思いますけれども、通商代表のライトハイザーですね。私も、実は通商代表部で働いている一九八五年から九〇年の間、彼も次席通商代表でレーガン政権で仕事をしたわけなんですが、彼と、あとピーター・ナバロという中国の専門家で今国家通商会議というところのトップなんですけれども、こういう人たちというのは割合に保護主義的な考えを持ち、これからも彼らたちは多分、市場開放だけじゃなく、むしろ輸出規制を貿易相手国に対して要求してくるんではないかというふうに思います。
 二ページに移りますが、今まで申し上げましたように、安倍総理がトランプ大統領と、当時は次期大統領ですね、去年の十一月十七日と今年の二月十日、首脳会談をして、そういう二つのミーティングからいいますと、過去ドナルド・トランプが言ってきた日本批判というのはほとんど出てこなかったわけなんですが、これにはいろいろ理由があると思いますし、例えばドナルド・トランプ大統領がメキシコとの関係、あるいはEUとの関係、あるいはオーストラリアとの関係とか、いろんな国との関係を相当悪くしているという、そういう批判もありまして、その背景の中での安倍総理との二月十日の会談があったということもありまして、あと北朝鮮の問題も中国の問題もあるということで、ドナルド・トランプとしては、どちらかというと二月十日のミーティングは、会合は、日米の同盟関係、日米の共通点を強調する、そういう首脳会談になったんではないかと思います。
 ただ、ドナルド・トランプの共同記者会見のときの発言をよく聞くと、やはり彼は、自由、公正、互恵的と言ったらいいんですか、レシプロカルという言葉を使っているわけなんですけど、経済関係ではお互いに便益がある、お互いに利益がある関係ということを強調し、ですから、安全保障面では前の政権、オバマ政権と同じように礎という、コーナーストーンという言葉を使っているわけなんですが、トランプ政権も、経済面ではこれから多分今までとは違う形の要求が、アメリカから二国間の要求が出てくるんではないかというふうに思います。
 時間も余りありませんので、急いで最後の部分に移りますが、トランプ政権、百日まであと十日間になるんですが、非常に予測しにくい要素がたくさんありまして、多分、少なくとも戦後のアメリカでこれほど予測しにくい政権はないんじゃないかというぐらい、将来どう動くかというのを見るのは非常に難しいと思います。
 それには幾つか要素がありまして、一つは、幹部ポストが、普通だったらもう三月か四月頃新しい政権ではトップの人事が決まるわけなんですが、今の時点では、四千人ほど新しい人が政権に入るということで、そのうちの千百人ぐらいは議会の承認が必要とされているんですけれども、そのトップのポストというのがほとんどまだ埋まっていないんですね。ですから、国務省でも国務長官と国連大使だけで、ほかに誰もまだ議会の承認を得ている人は一人もいないわけなんですね。そういうことで、これ、こういうポストが埋まるまで多分まだ六か月ぐらい掛かるんじゃないかと思います。ですから、なぜこれ埋まらないかということはいろいろ、後からでも御説明しますけど、理由があるんですが、これが非常に時間掛かっているというのが一つ。
 二つ目は、トランプ氏自身の経営スタイルが、ビジネスマンのときでもそうなんですが、いろんな意見が違う人を集めて、それでお互いに闘ってもらって、それで、その結果、自分が決断をするという、そういうスタイルですので、当事者自身も実際にどういう結論になるかということを予測しにくいという、そういう経営方針といいますかね。彼もよくビジネスマンだと言われているんですけど、実は彼は非常に、何といいますか、限られた不動産業の仕事で、取締役会もない、株主総会も株主もないという、非常にそういう意味ではオーナー社長的な経営方式を取ってきたわけなんですね。ですから、政府の大きい組織のトップとして、どこまでこれに慣れて変わっていくかということはみんな注目しているところです。
 あと、彼が、もうこの九十日間の間でも、ころころ前言ったことと全く正反対のことを言うようになっているわけですね。NATOに関してもそうですし、中国の為替操作についてもそうですし、シリアに関してもそうですし、輸出入銀行に関してもそうですし、FRBの議長のジャネット・イエレンに関しても、それぞれ前言ったことと今言っていることとは変わっているわけなんですね。ですから、結果的にどういう行動を取るかというのはまだ分からないということですね。
 あと、彼がよく言っていることは、全てのオプションはテーブルの上にあると。要するに、彼はアメリカは予測可能だということが不利だと、アメリカにとっては。相手が自分がどういう行動を起こすか分からないという、そういう立場にならなければ利用されてしまうという、不動産の交渉をしているような、そういう考えで外交も遂行しているようです。
 ですから、時間がありませんので最後に申し上げたいことは、安倍総理とドナルド・トランプ御自身は割合にケミストリーがいいということなんでしょうけど、ただ、制度的に、日本の政府の制度、あるいはアメリカの政府の制度、今のアメリカの政府の制度を比べると、私は外から常に日本のことを見ているんですが、日本というのは、特に政府が非常に安定性を重視する、あるいは一貫性、予測可能性、継続性、前例主義とか、そういうことを重視することに対して、今のトランプ政権というのは、アメリカの政権としても、アメリカの水準から見ても非常に不安定、予測しにくい、不連続性がある、一貫性がない、全て物事を取引関係に考えているという、そういうことで、アメリカのワシントンにいても、シンクタンクの人間、学者、あるいはジャーナリストも含めて、非常にトランプ政権の行動と、あとこれからどういうアクションを取るかということを予測するのは難しいという、そういう情勢です。
 ちょうど時間が来ましたので、私の話はこのくらいにしておきます。
 どうもありがとうございます。
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鴻池祥肇#6
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、高原参考人から御意見をお述べいただきます。高原参考人。
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高原明生#7
○参考人(高原明生君) 私の母国語は日本語ですので、もし話が分かりにくくても言い訳の言いようがありません。その場合は、どうぞ後でたくさん御質問をなさってください。
 今の前のお二人の先生方のお話の中心はアメリカあるいは日米関係ということでしたけれども、私自身は中国のことを研究していますので、中国、日中関係ということがお話の中心になります。
 今、東アジアの平和を脅かす要因というのが大きくなっている、多くの人が不安を感じ始めている、そういう状況ですね。北朝鮮の核開発、ミサイル発射、これも、当然でありますが、中国を研究する私のような者からすれば、非常に残念なことに、ここ数年の中国の海洋進出、また海洋における行動、それから国際法の無視。御案内のとおり、昨年の七月、ハーグの国際仲裁裁判所の判決が出まして、中国対フィリピンの案件だったんですけれども、中国の主張がほぼ全面的に退けられましたが、中国はそれを無視し続けているという現状がございます。
 それから、もう一点挙げるとするならば、東アジア地域、アジア太平洋の中でも特に東アジア地域の国民の間で排他的なナショナリズムが高まる傾向が見られます。特に日本と中国の間、あるいは日本と韓国の間もそうかもしれません。中国と韓国の間もそうかもしれないんですが、国民の認識のずれというのが非常に大きくなっているということを私は大変ゆゆしき問題だと感じています。
 例えばなんですが、昨年発表されました言論NPOなどが毎年行っている世論調査の結果ですけれども、毎年こういうことを聞いています。将来、日中間で領土をめぐって軍事紛争が勃発すると思いますかと。この問いに対しまして、昨年は何と中国で、可能性があると、将来領土をめぐる軍事紛争が起こり得ると答えた人の数、パーセンテージが二一ポイントも飛び上がって六二・六%に達するということがございました。これは非常に不思議なことです。昨年は特に、そういう判決はありましたけれども、具体的な目立った衝突事件があったわけでもないにもかかわらず、なぜこういうことになるのか。
 私も研究者として一つの推測をしますと、やはり南シナ海問題に中国当局が大変敏感になっていて、日本側が行うどんな動きもかなり針小棒大に誇張された形で中国で報道されているという事実があります。そうした中国のマスメディアの報道ぶりの影響ではないかというふうに感じております。これについてどうするかというのは、また後で申したいと思います。
 次のページへ参りますけれども、いろんな認識ギャップがあるというのは一般国民もそうだし当局もそうであるということなんですが、南シナ海をめぐる日中の論争状況というのは、次のようになっているのは御案内のとおりでしょうから簡単に申しますけれども、日本側は中国をどのように批判するかというと、東シナ海の二〇一二年以来の状況を踏まえて、力による一方的な現状変更は認められない、法の支配が大事でしょう、紛争は平和的手段で解決しなければならない、こういうことを一貫して言い続けてまいりました。それから、国際仲裁裁判所の判断につきましては、仲裁判断は最終的なものである、紛争当事国を法的に拘束するものだ、当事国はこの判断に従わなければならない、そういう言い方を続けてきたわけですね。
 下の方のスライドですけれども、それに対して中国は何と言っているかというと、去年の三月の全国人民代表大会における記者会見での発言ですが、私たちみんな知っている王毅外相、元駐日大使ですね、日本政府とその指導者が日中関係の改善を声高に唱える一方で、他方では至る所で絶えず中国にトラブルをもたらしている、中国のことを批判している。これはまさに典型的な裏表のあるやり方ではないか。中国語でリャンミェンレン、両面人と言うんですけれども、ヤヌスのように表と裏と二枚顔を持っている、そういうやり口を取っているではないかと。また、日中関係の病根は日本の指導者の対中認識だ、発展した中国は日本の友なのか敵なのか、パートナーかライバルなのか、まあ敵、ライバルとして捉えているんじゃないかという、そういう言い方で批判したのが去年です。今年はもうちょっと言葉遣いが悪くなって、更に悪くなって、日本は心の病を治せと、中国の絶えざる発展、振興という事実を理性的に取り扱い受け入れなければならない、そういう言い方をしています。
 私は、これに対して中国の人によく言うんですけれども、いや、決して裏表じゃない、これはどっちも表なんだと、そういう説明をしています。つまり、日本にとって中国との関係が大事なのは疑いありません。御案内のとおり、九割の日本人が中国に対していいイメージを持っていないのは事実です。しかし、七割の日本人は日中関係が大事だというふうに感じているわけですね。ですから、情緒的には中国のやっていることは受け入れ難い、しかし、理性的には関係を良くしなければならないということは大方の日本人は分かっている、これが現状だと思います。
 でありまして、中国のやり方は、これは受け入れられない、力をもって自分の意思を他者に押し付ける、これは絶対やってはならないことだというのが、前世紀、我々がひどい戦争をやって負けて得た教訓なわけですね。それは、日本人が得た教訓ということだけではなくて、人類全体が得た教訓として国連憲章にもちゃんと書いてあるわけですから、これも絶対守ってもらわなきゃならない。そういう二つの表の顔だというふうに中国側に説明すると、言った相手は何となく分かってくれるということがございます。
 次のページへ参りまして、じゃ、どうして中国は行動を取っているのか。あたかも行動第一、既成事実をまずつくる、外交第二、後で外交的に処理をする、そういった私は行動第一主義と呼んでいるようなやり方をしているのかと。
 これも詳しく言うと時間がないんですけれども、基本的な要因は、もちろん実力が上がったということです。以前はできなかったことが今できるようになっている、これが基本ですね。それに加えて、中国共産党はやはり力を信奉する。力と金だと、そういう意識が強いリーダーシップだというふうに思います。
 また、リーダーシップだけではなくて、一般国民の側でも遵法意識がやはり比較的低い。法律というのは自分たちの行動を縛るものである、そういう意識が強いと思いますね。もちろん法律は、それだけじゃなくて権力の濫用から私たちを守ってくれる、そういう自分を守るものでもあるわけなんですけれども、法治が徹底していない社会においては、あくまでも法律というのは自分を束縛するものだと、そういう意識が強いものですから、遵法意識が国内的にも国際的にも低い。だから、政府の法を無視するようなやり方を許容するという、そういう面があろうかというふうに思います。
 また、リーダーシップにとってみると、指導部にとってみると、市場化の進展によってかなり社会が多様化している、利益が多元化している、また意識が多様化している下で何とか国をまとめなければならない。また、共産党の中も、実は相当深刻な意見の分岐、分立、対立があります。党も何とかしてまとめなければならない。そういうときに、多少外国と摩擦があっても、あるいは多少摩擦があった方がまとめやすい、そういう意識はあると思いますね。怖いのは外国から来る批判じゃない、怖いのは国内から来る批判だ、そういう事情が第三点として挙げられます。そのことはもちろん、社会全般にナショナリズムが高まっている、これは共産党の愛国主義教育が非常に大きくあずかっているわけですが、そういった事情も当然あります。
 それから、もう一つ加えるとすると、習近平さんというリーダー自身の傾向、性向というのがあると思いますね。前の指導者と比べて行動を取るのがお好きであるということですね。
 例えば、ハーグの仲裁裁判所の判断が出て一週間後のことですけれども、地方に視察に行った際に習さんは次のように言いました。中華民族のエネルギーは余りに長く抑圧されてきた、ここらでひとつ爆発させて偉大な中国の夢を実現させねばならないんだと。しかし、これは別に海軍に向かって言ったわけじゃないんですね。どういうコンテクストで言ったかというと、ある工場を訪ねたときに、その工場の従業員の士気を上げようと思ってこういうことを言ったと思われます。ただ、こういう彼の発言というのは、下々の部門がそれぞれの利益に即して自分たちにいいように解釈しているわけなので、こういう発言を聞いた海軍や海上法執行機関はどう受け止めるかというのは当然問題としてあるわけですね。
 中国がこれだけ隆々と発展して、そして影響力を高めているという状況ですから、今後の東アジアの平和の要となるのが中国の力の自制ということ、そして、もう一つの大国である日本との関係を安定させるということ、これが全地域的に大きな課題、あるいはもしかしたら全世界的な大きな課題と言ってもいいかもしれません。
 そこで、私たちとしましては、大きな戦略的な目標として、日本の戦略的な目標として、どうすれば中国との共生を実現できるのか、お互いを敵視せず、どっちの国が発展しようと、どれだけ発展しようと不安を感じないで安心して暮らせることができるようにどうすればなるのか、そういう状況を目標として努力すべきではないかと思います。大平首相が前おっしゃったように、日中は引っ越せない隣人ですから、お互いに、要するに日本だけが努力するわけじゃない、中国にも努力してもらわなきゃなりませんが、相手を敵にしたら大変だ、味方にしたら大きな利益がある、そのことを国民の間に、日本の国民だけではなくて中国の国民の間にも認識として広めていくということが大切だと思います。
 そのための総方針というふうにちょっと格好付けて書きましたけれども、私は、日本と中国の二国間関係で見た場合には、つい脆弱な面にばかり目が行くわけですね。マスコミも脆弱な面を取り上げがちです。それだけでは、しかしないわけですよね。強靱な面も日中関係にはあるわけでありますから、強靱な面をどうやったら一層強化できるのか、脆弱な面をどうやったらうまく抑制できるのか、管理できるのか、そういった発想で日本も中国も日中関係の改善、発展に取り組むべきではないかというふうに思います。
 強靱性の内容は、もう言わずと知れた経済的な結び付き。貿易の額でいえば、もうここ数年ずっと日米貿易の一・五倍、毎年あるわけなんですね。非常に大きな貿易パートナー、最大の貿易パートナーです。文化的な結び付きも非常に強いです。これは、伝統的な我々の中国文化に対する、古典文化に対する憧れもありますし、中国の若者の日本の現代文化に対する憧れもある、両面ある大変いい関係が実はあります。それから、海賊対策にせよ環境問題にせよ、あるいは麻薬対策、感染症対策等々、非伝統的な安全保障の面では実は相当に内容のある協力が今現在進行中であるという事実があります。
 しかし、歴史問題、あるいは尖閣の問題、安全保障の問題、北朝鮮問題では幸いずっと協力をしてきた実績がありますけれども、こうした脆弱性を抱えているのも言うまでもございません。
 そこで、残りの五分で、中国への三つのアプローチということを次のページからお話し申し上げたいと思うんですが、国際関係論からすると、平和を保つためにはどうすればいいか。三つの主な考え方があるんですね。一つはバランス・オブ・パワーです。やっぱり力のバランスが大事だと、一番目がリアリズム。二番目がリベラリズムですね。利益の相互依存、そういう関係が平和をもたらすと、これが二番目の考え方。三番目の考え方は、コンストラクティビズムと言いますけれども、価値を、規範を共有すること。それによって平和は保たれるという考え方ですね。私自身は、日中の間をどうやって、あるいは世界と中国の間をどうやって平和を保っていくかというと、この三つの考え方を総動員しないと間に合わない、そうかもしれない、非常に危機感を持っているのが現状です。
 一番目ですけれども、リアリズム的な考え方からすれば、やはり力のバランスが変わっているのは今事実なんですけれども、余り急に変わるとこれは危ないんですね。やっぱりぬきんでた力を持ってしまうと、どうしてもその力を振るう誘惑に駆られます。これは個人でもそうかもしれないし、国でもそうだと思いますね。それを防止するために、やはり防衛力の強化、海上保安庁の能力の強化、同盟ネットワークの強化等々、こうした措置は私は必要だと思います。
 しかし、それだけやりますと、さっき伊藤先生の話にもありましたように、軍拡競争になりますから、それと同時に、どうやって対話を進めていったらいいのか、協力を進めていったらいいのか。今、海空連絡メカニズムの交渉をずっとやっていますけれども、それに限らず、自衛隊と人民解放軍の間あるいは防衛当局間の交流、是非進めなければならないというふうに思います。
 簡単に、今、尖閣で中国が圧力を日本に掛け続けている状況の下で妥協することは絶対に良くないと思いますね。それは実は中国にとっても良くない。中国の中にも、強硬派だけではなくて穏健派がいるわけです。国粋主義者だけではなくて国際主義者もいるわけですね。もし日本が圧力に負けて折れてしまうと、中国で勝利の凱歌を上げるのは国粋派であり強硬派です。我々が応援しなければならない国際派、穏健派はいよいよ周縁化されてしまうことになりますので、それはすべきでないと思います。
 二番目のアプローチは、経済や非伝統的安全保障問題での協力の推進ですね。
 今、とかく中国というとすぐ腕まくりをして、ああ、これは綱引きだ、けんかだというふうにむきになる日本人も昨今は増えているんですけれども、それは良くないと私は思います。そうではなくて、我々の支援もあって、多大なる支援もあって中国は隆々と発展したわけですから、その大きくなった中国の国力をどう私たちの利益のために活用するのか、そういう発想が非常に重要だというふうに思っております。さっき申しましたように、既存の協力も多々あるわけですから、それを一般の国民に知らす広報、これをもっとやらないと、つい国民は脆弱性の方にばかり目を向けてしまうということがあろうと思います。
 アジアインフラ投資銀行、AIIBに私自身は最初から参加した方がいいと思っておりますけれども、実績が次第にできてきて、国際基準でちゃんとやっているというその認識がもう少し広まれば、アメリカとの協調の上で私はAIIBに入ってもいいんじゃないかというふうに感じている次第であります。
 時間がないので次へ参りますけれども、次のページですが、最後の、規範を共有する、価値を共有する、これも絶対に必要なことですね。
 今、中国は近代化の真っただ中にいるので、我々、明治、大正、昭和の初めも経験がありますけれども、言わば富国強兵パラダイムにとらわれているという、そういう状況なんですね。近代と伝統との相克、あつれきも強いので、どうしても西洋に対する反発が前に出るという、そういう精神状態に中国は今いるわけです。
 日本と中国の間の相互不信も全然解消されない。国交を正常化して四十五年たちますけれども、どうしてこんなに相互理解が進まないのかと、もう本当に何か、私も責任があると思うんですけれども、我々中国研究者も大変に残念な思いです。それは、そういう認識ギャップだとか相互の不理解というのは何を要因としているか。非常に重要なのはもちろん情報ギャップですよね。後ろに付録で、漁船衝突事件のときの中国側の報道、あるいは日本人が知っている当時の状況についてのギャップの大きさというのをよく示しているこれを付けておきました。時間があれば、あるいは御質問があれば後で解説しますけれども。
 これを埋めるには、中国のマスメディアには頼れません、あるいは日本のマスメディアにも実は頼れません。やっぱり商業主義が先に立ってしまうので、どうしてもみんなに受ける、みんなに見てもらえる、目を引く、そういうセンセーショナルな報道をするのは、中国も日本も実はメディアは同じなんですね。
 じゃ、そういう状況下で何ができるのかということを考えたときに、ここに公論外交という翻訳をした言葉を書きました。これはいわゆるパブリックディプロマシーの日本語訳なんですけれども、相手の国民に私たちの知っている事実をどうやって伝達するか、私たちの本当の気持ちをどうやって伝えるのか。今、官邸を中心に大きな予算を付けて対外発信、一生懸命やっていますよ。それは大変結構なことだと思うんですが、もっと中国正面にやってほしいというのが私の印象です。
 知識交流、青少年交流、これも大事ですね。是非、国会議員の方々、今、何千人もの青少年が中国から来ますので、毎年、ホームステイをしてあげてください。ホームステイは非常にインパクトがあるんです。
 中国で、私、実は新日中友好二十一世紀委員会をやっているときに、日本では国会議員、県会議員の人に泊めてもらいたい、でも、中国ではあなた方中央委員会の中央委員に泊めてもらいたいと、日本の青少年が行ったときですね。そうしたら、その場に中央委員が二名いまして、手を挙げて泊めますというふうに言っていました。しかし、その後で中国の友達にその話をしましたら、いや、連中、泊めないよと言うんですね。どうしてと聞いたら、彼らは自分たちがどんなにいい暮らしをしているか知られたくないからさという、それはちょっと冗談のような話ですけれども。是非、青少年交流を日本と同じような予算を付けて中国でも推進してほしいというふうにも思っています。
 そういう公論外交だ何だということをやる際に、歴史を忘れないことは大事ですね。もし日本人が歴史を忘れたら、日本外交は世界で立つ瀬を失います。これは絶対忘れてはならないことだと思いますね。日本では近代史の教育をもっと今以上にやるべきだし、中国では戦後の現代史の教育をちゃんとやらないと、私たち両国の若者たちが共に未来を築くことは絶対にできないと思います。
 最後にですけれども、もう時間が過ぎましたが、申し訳ありません、構想実現のためにやっぱり日本自身が能力を構築しないと、どんなにアピールしても外国の人たちには聞いてもらえない、中国人も聞いてくれません。ですので、教育が大事ですね。基礎は語学力と社交力だと思います。どれだけ魅力ある日本人をつくることができるのかということが、インテリジェンスの強化、外交力の強化とともに大変重要だと思っている次第です。
 以上であります。ありがとうございました。
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鴻池祥肇#8
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
 質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言くださいますようお願いをいたします。
 まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言をいただきたいと存じます。
 委員の一回の発言時間は答弁を含めて十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願いをいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手を願います。
 小野田紀美君。
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小野田紀美#9
○小野田紀美君 本日は、貴重なお話をありがとうございました。
 十分という限られた時間なので、日米に関しても日中に関しても聞きたいことたくさんあるんですけれども、まず高原先生に日中のことについてお伺いしたいなと思います。
 事前にいただいたこの水色の資料の中にも書かれておりまして、今日のお話にもあったんですけれども、国連海洋法条約に違反すると判断をされて、これをちゃんとしなさいよというふうに判決が出てもやはり言うことを聞いてくれないというところで、そういった場合にどう対応していけばいいのかという、その正解がまだ見えてこないなと個人的に思っておりまして、これから日本が取るべきアプローチ、中国への三つのアプローチというのも書かれてはいたんですけれども、何というんでしょう、日本が敵視しないというか、互いに敵視しないことが大事というのはもちろん本当にそのとおりだと思うんですけれども、割と日本人の感覚として、うちの国にこれをしたから許さないぞという敵視というよりは、何で世界のルールを守らないんだろう、そんな国は許しちゃ世界は混乱に陥るよねというような、何というんでしょう、個人的な恨みというよりは、やっぱりこれから平和な世界をつくっていく上で、世界のルールを守ることをする国はいいけど、それを守らない国はやっぱり許しちゃいけないんじゃないかという意味で、ううんと思っている国民もやっぱり結構いると思うんです。
 それに伴って、どうやったらこの中国という国にこれから世界のルールの中で平和的に活動してもらえるように、国際的な裁判所が言ったことも聞いてくれない以上、どう行動していけばいいのかというのを、先生のちょっとアドバイスをいただけたら有り難いなと思います。
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高原明生#10
○参考人(高原明生君) 御質問をありがとうございます。
 今、中国だけではなくて、例えばクリミア、ウクライナに出ていったロシア、それから、実はもう少し遡れば中東におけるアメリカの振る舞い、特に単独行動主義をブッシュ政権が唱えたときの、そういうことで、やはり冷戦構造が崩れた後、大国が国際法を無視して力を使うという、そういう非常に我々からすればよろしくない傾向が顕著になっているという状況があると思います。なおかつ、ブレグジットなりトランピズムも、一部の要因としては、何かこう理性ではなくて情緒ですね。理性ではなくて力、理性ではなくて情緒が幅を利かすという、そういう非常にまずい状況が世界的に現れているのではないかという気がするんですね。
 ですので、例えば国際仲裁裁判所の判断にしましても、アメリカの中でも、いや、そんな、中国は大国になったんだから、国際法を大国は守らないよねというような論調さえ出ているというのが実情です。
 ですので、私たち、国際法を是非とも守ってもらいたい、特に大国が守らなければ意味がないわけですから、大国の力の濫用を防ぐというのが国際法の非常に重要な目的の一つなわけであって、そういう志を同じくする国々と連携するということがまずは考えられますね。特にヨーロッパは国際法が発達したところでもありますし、ヨーロッパもそうですし、もちろんアメリカの中にだって中国の中にだって国際法をよく知っている人たちは重要性を分かっているわけなんですけれども、国際的な連携ということがですから第一点。
 それから、第二点としましては、やはり知識交流ということだと思うんですね。
 実は、日本の国際法学者たちと中国の国際法学者たちとの連携が今まさに始まろうとしています。そうした知識人交流なり学生の受入れ等々を通して、我々の規範あるいは我々が知っている国際的な規範をどうやって中国の中に広めていったらいいのか。相当ミクロ的な個別のやり方で歯がゆい感じもしますけれども、しかし、突然中国の学校教育体系を変えられるわけでもないので。私はいつも思うんですが、我々は中国を変えられないんですね。中国を変えられるのは中国人なんですね。しかし、我々は中国人を変えられる。だから、中国の若者にアプローチしていくということがもう一つの方法だと思います。
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小野田紀美#11
○小野田紀美君 ありがとうございます。
 本当に、さっきの、中国を変えるのは中国人、でも中国人を変えられるのは日本人でありほかの世界の人でもあるというのは本当に素晴らしいなと思いましたし、その活動をしていかなくちゃいけないなというふうにまた考えさせられました。
 もう一つ、ちょっと時間がもうないんですが、日中の関係を考えたときに、その周辺国、例えば台湾であるとか、そういったところとの関係、一つの中国というのを主張している中国に対して、例えば日本ですと今非常に台湾と関係が良くて、我々も青年団として台湾の方々と交流をして、実際に、最近悲しい話題になった八田與一さんの像にも行って現地の人たちと話をしてというのをやってきたんですが、今回、その八田與一さんの像の頭部が切り取られてという事件があって、実際調べてみたら、中華統一促進党に以前所属していて、中国と台湾は一つだという方たちがそういうことをしていたというのもあった中で、日台の関係や逆に中台との関係とかいうのをうまく総合的に発展させていくためになかなか矛盾が生じてしまうところもあると思うんですが、これに関しては高原先生どうお考えか、教えていただけますか。
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高原明生#12
○参考人(高原明生君) なかなか政府レベルでやるのは難しいというか、敏感な問題なので微妙な部分があります。しかし、例えば地方自治体の交流であるとか、NGO、NPOの交流であるとか、あるいは学生、研究者たちの交流であるとか、そういったレベルであれば問題は小さいので、そこで例えば日中台、韓国、香港も入れてもいいですけれども、そうした枠組みの下に定期的な交流をするというのは大変有効なやり方ではないかと思うんです。
 しかし、今、台湾では新政権ができて中国大陸の側は非常にぴりぴりしている状況ですので、余り政府レベルで目立った動きをするとかえって問題が大きくなる可能性もあるんですね。そこのレベルは慎重にやった方がいいと思います。
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小野田紀美#13
○小野田紀美君 いずれもミクロの人同士のつながりをうまくやっていって、じわじわと、アメーバ状というのはいい意味では使われていませんでしたけど、じわっとこの友好関係を広げていきながら国と国との関係もうまくいくようにしていかなくてはいけないんだなというふうに改めて思いました。
 ありがとうございます。終わります。
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鴻池祥肇#14
○会長(鴻池祥肇君) 次に、藤田幸久君。
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藤田幸久#15
○藤田幸久君 三人の先生方、ありがとうございます。
 高原先生に、まず。私は外国で二百軒ぐらいの家にホームステイしたことありまして、なんですが、中国ではございませんので、是非次回は中国でホームステイをアレンジしていただきたいということをお願いでございます。
 その上で、基本的に、近年の安倍政権の政策というのは、安全保障環境が悪くなってきた、したがって軍備を含めた能力を向上するというのが基本的な流れだろうと思うんですけれども、いわゆる、自衛隊を含めた、あるいは安保法制を含めたものを拡大しなくても済むように安全保障環境を改善するための日中関係の構築というものがこの平和外交の基本ではないかと思うんですけれども、そのためには何をしたらいいのかということについて簡潔にお答えいただきたいと思います。
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高原明生#16
○参考人(高原明生君) まず、ホームステイですが、確かに先生方が中国に行ってホームステイするのも大事ですね。あと、中国の若者が来たら是非泊めてあげてください。
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藤田幸久#17
○藤田幸久君 それはいろいろやっています。
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高原明生#18
○参考人(高原明生君) ありがとうございます。
 そして、おっしゃるとおり、一方で、安全保障、いわゆる国防政策、防衛政策としてやる部分と、それから外交でもって安全保障環境を改善する部分と、両方やらなきゃならないというのはまさに御指摘のとおりだというふうに思います。
 外交でできることですけれども、先ほど申しましたように、一つはいわゆる公論外交、これをもっと力を入れてやってもらえないかというふうに思います。対話をするといっても、中国側のあしき性向として、何か気に入らないことがあると何か寝てしまうというのはあるんですよね。私たちの新日中友好二十一世紀委員会も、政治関係が悪くなったときこそ役割を発揮しなければならないのに、政治に付き合ってずっと休んじゃうという、そういうところがありますので、やりにくい部分があるのは間違いありません。
 しかし、我々とすれば、だからといってほっておいていいということではないので、もうありとあらゆる手を伸ばして、交流しよう、対話しようということを呼びかけるということがまずは考えられる重要なことではないかと思います。そのことを周りの国を巻き込んでやるというのも手かもしれません。やはり中国は、ぬきんでて大きな国にアジアではなりましたけれども、しかし孤立することを非常に恐れますね。多国間の枠組みで迫るというのはもう一つのアプローチかと思います。
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藤田幸久#19
○藤田幸久君 その関係で、例えば中国は、AIIBに加えて、需要を起こすためにいろんな国との連携をしています。私は、中国が自分たちが金融を押さえるという以上に、戦略的に多国的に需要を増やしていくということは、むしろ軍拡に取って代わる平和経済外交の戦略性もあるし、それからパリ協定、イギリスと連携して加入したこと等は、再生エネルギーの方の転換といった意味で、大変構想力、戦略性を持った、そういう意味での積極的な貢献があるんではないかと思っておりますけど、それについてどうお考えか、簡単に評価を。
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高原明生#20
○参考人(高原明生君) 私も、先ほど申しましたとおり、中国の国力をどうみんなで活用するのかというのが大事な発想だと思いますので、そういう点から考えましても、AIIBが私たちから見ても非常にいい方向に発展している。そこには世銀、IMF、ADB、アジア開発銀行の協力等もあるわけですし、日本の協力もありますね、それは大変結構だと。それは、ある意味で非常に中国にとっていいラーニングプロセスといいますか、やはり国際基準に従って、国際的なルールにのっとってやるのが中国にとってもいいんだという、そういうことを認識させる効果も生んでいるので結構だと思います。
 パリ協定も、もちろん中国のためにもなることなので、これもいい方向だと思うんですが、問題は安全保障ですね。
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藤田幸久#21
○藤田幸久君 ありがとうございます。
 グレン・フクシマさんに二つお伺いしたいと思います。
 私も、二月、トランプさんの演説聞いてまいりましたが、報道されていないいい面も結構ございました。例えば、宗教の自由を守るというようなことをはっきりおっしゃっている、それから汚職に対する対応なんかもやっていらっしゃる。
 他方で、二つ気になることがありまして、一つは、貧困とかあるいは格差ということで白人の皆さんの支援で大統領になっているわけですが、やっぱり上がっている株は金融とかあるいは軍需産業で、むしろ、結果的にはそういう方々の格差をより拡大してしまう危険性があるのではないかというのが一つと、それから、やっぱり人事それから体制からして、そのやっていることとやろうとしていることの間で空中分解をしてしまうのではないかという二つ心配がありますが、その点についてどう思われるか、お聞かせいただきたいと思います。
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グレン・S・フクシマ#22
○参考人(グレン・S・フクシマ君) おっしゃるとおり、トランプ大統領は、非常に成功したビジネスマンを周りに、閣僚あるいは重要ポストに登用していまして、選挙公約のときの、要するに、彼が言ったアメリカに雇用を戻す、石炭産業あるいは鉄鋼産業あるいは自動車、そういう雇用を戻して、そういう所得あるいは教育水準が低い人たちの、労働者のためにいろいろするという公約の下で、特にラストベルトでは、本来だったら労働組合のメンバーで民主党に投票する、過去した人たちが今回は、アメリカの民主党が自分のことを見捨ててしまった、トランプ候補こそが自分たちのことを救済してくれるということで彼に票を入れた人が結構、後からの出口調査とかの結果で明らかなんですが、トランプ政権が今やろうとしていることで、例えば大幅減税、個人あるいは企業、法人の減税あるいは規制撤廃、こういうことによって貧富の格差がむしろ広がる危険性というのは大いにあるのではないかというふうに考えています。ですから、これは藤田先生言われるように、アメリカ国内においても非常に懸念されていることだと思います。
 二つ目の、トランプ大統領が言っていることと行動の間のギャップというのが非常に、特に多分この一か月の間に非常にはっきり出てきて、これも大統領の信頼性とか、よく言われているように、今の大統領ほどうそを平気で言う大統領は歴史上今までいなかったというくらい、今のアメリカのジャーナリストの仕事の半分ぐらいは、トランプ大統領あるいは彼の周りの人たちが言っていることが事実に反しているか、事実に基づいているかということを毎回確かめなきゃ駄目だということと、あと、透明性が非常に、今、特にホワイトハウスの中で、今までだったら、例えばホワイトハウスに誰が訪問するかという、そういう名簿も公開していたのが、その名簿もこれから公開しないということ、それとか利益相反とか、たくさんこういう問題が出てきて、途中でこの政権というのがおかしくなってしまうんじゃないかというふうに見ている人が結構いることは事実なんですが。
 ただ、御存じのように、今のアメリカの主流の共和党の人たちは、もしトランプ大統領自身が途中で何かの理由で辞めなきゃならないことになっても、副大統領のペンスという、むしろ共和党の主流から見ると好ましい人が副大統領ですから、ですから、そういう意味では共和党の皆さんもそれほど心配していないかもしれません。
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藤田幸久#23
○藤田幸久君 伊藤先生に、時間余りなくて恐縮ですが、アメリカ政府は尖閣諸島の施政権はずっと認めてきていますが、領有権は少なくとも一九七二年以降明示的に認めていません。その理由と背景についてお答えいただきたいと思います。
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伊藤剛#24
○参考人(伊藤剛君) 基本的には、アメリカの方針というのは、御存じのことであると思いますが、その施政権及び領有権というのをこれは意図的に別個に離して、できるだけアメリカの交渉におけるバーゲニングパワーも高くしようとするという傾向にあると。
 現在起きていることは、例えば日本の、海上法執行機関が、例えば船を一隻増やすと中国はいきなり五隻ぐらい増やしてくる、日本の側が三十六ミリでしたっけ、機関砲を準備すると今度それよりもっと強力な大砲を準備するということで、完全にもうエスカレーションの状態になっているわけでありまして。
 尖閣に関していうと、明らかに二〇一〇年より前の状態にまず戻すということからスタートしないと、もうとにかく関係は悪くなっていく一方であるし、アメリカは、東シナ海の尖閣を見てもそうですけど、あとそれから南シナ海を見てもそうなんですが、航行の自由作戦で航行、通過はするけれども、本当にあそこが公海であるというのならば別に船舶を泊めていかりを下ろしても何の問題もないんですが、それはやらないわけですよ。なぜやらないかというと、答えは簡単でありまして、できるだけ問題を悪化させたくないと。ある程度のところまでは航行の自由作戦はやるけれども、そこから先には踏み込まないという体制を取っているわけでありまして、その意味で、アメリカの安全保障供与に頼り過ぎることというのはやっぱり危険なことであるというふうに私は考えています。
 以上です。
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藤田幸久#25
○藤田幸久君 ありがとうございました。
 質問を終わります。ありがとうございました。
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鴻池祥肇#26
○会長(鴻池祥肇君) 高瀬弘美君。
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高瀬弘美#27
○高瀬弘美君 参考人の先生方、大変興味深いお話をありがとうございました。
 それぞれにお聞きをしたいと思いますが、まず高原先生にお聞きしたいこととしまして、先ほどのお話の中で、広報外交が大事だというお話がございました。
 私も外務省におりましたときに広報を携わってまいりましたが、こちらが伝えたいメッセージとその国に住んでいらっしゃる国民の方が知りたい日本についての情報というのは必ずしも一致をしないという中で、どのようにその広報をやっていくことが効果的とお考えかを教えていただきたいと思います。
 そして、フクシマ先生にお伺いしたいのは、先ほどのお話の中で、トランプ政権の高官ポストが埋まっていないというお話で、そのポストが埋まっていない理由、お時間あったらお話しいただけるということでしたので、お願いしたいと思います。
 また、伊藤先生におかれましては、同じく最後の部分で、日米同盟を強固にするために保険は複数あった方がいいということで、アメリカ以外にも保険を持っていた方がいいというふうにおっしゃられたので、その部分についてもう少し詳しくお教えいただければと思います。
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鴻池祥肇#28
○会長(鴻池祥肇君) それでは、高原参考人からお願いします。
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高原明生#29
○参考人(高原明生君) 広報についてですが、私は二点申し上げたいと思います。
 一つは、もちろん外務省は一生懸命やっていて大変頭が下がりますが、いかんせんくるくるポストも替わりますし、プロフェッショナルというわけではありませんよね、広報の。広報、教育もそうですけれども、やっぱり情熱とテクニックと両方要るんですよね。なので、私はプロに任せるといいますか、プロをもっと活用する。プロって誰かということになりますと、決して電通ではなくて、やっぱり学者ですね。その問題について詳しい学者、まあ学者にも実はうまい人、下手な人といるんですけれども、それが第一点です。
 それからもう一点として、やっぱりNHKの国際テレビですね。もうちょっとどうにかならないかな。それは、政府が使う広報ということではなくて、日本人が世界をどう見ているのかという観点から申しているんですけれども、フランスでさえと言ったらフランスに失礼かもしれませんが、最近二十四時間で英語でニュースをやるチャンネルがあって物すごくいいんですよね。やはりニュース専門のチャンネルを日本も持った方が、日本の見方を世界に伝える、日本がどう世界を見ているかということを伝える上ではいいんじゃないかなと私は思います。
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