中川雅之の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(中川雅之君) それでは、お時間を頂戴いたしまして、今回提出されております住宅セーフティーネット関連の制度につきまして意見を述べさせていただきます。口頭で意見を述べさせていただく非礼をお許しください。
 まず最初に、これまでの住宅セーフティーネット関連の制度、それからそれをめぐる環境の変化、それにつきまして私の方から述べさせていただきます。
 まず、これまでの住宅セーフティーネット関連の制度というのは、公営住宅という公共部門が低家賃住宅を直接供給しまして、それでそれを管理していくという政策に非常にその大きな部分を依存してきたということでございます。この体系は一定の成果を上げてきたと評価できるわけですけれども、これから述べる三点に、三つの観点において変化が見られるのではないかと私は考えております。
 まず一点目でございます。
 民間給与実態調査、そういったようなものを見ても、この十五年程度で平均給与、これが一〇%低下する一方で、平均家賃はやや上昇する、そういう状況にございます。そういうことを考えますと、アフォーダビリティー、支払能力という問題は依然として重要な問題である、そういう認識は共有すべきだと考えます。
 ただしでございますけれども、十年とか十五年、その間、単身高齢者、これが二百四十二万世帯から五百五十二万世帯、こういったものに倍増して、父子世帯あるいは母子世帯、これは七十一万世帯から八十四万世帯に二〇%程度増加している、そういう実態がございます。こういったような世帯というのは、身体状況が急変する、あるいはお子さんがいらっしゃいましてうるさいとか、けがをされるかもしれない、そういったリスク、それを理由にして賃貸人が入居拒否、これを行う可能性のある世帯である、そういうことが調査などでも明らかになってございます。
 何を申し上げたいかといいますと、支払能力、そういったような観点以外からも、住宅のセーフティーネット網、こういったものを構築する必要性に恐らく迫られているんだろうと。住宅セーフティーネット、何を住宅セーフティーネットとして認識するか、その認識の多様化、これが大きな課題となっているのではないか、これが一点目の環境変化でございます。
 二点目でございます。
 公営住宅制度、これは地方公共団体が非常に全ての整備から管理まで引き受けると、そういった供給体制にあったわけですが、供給側の事情といたしまして、まず国、それから地方公共団体、双方とも財政が非常に厳しい状況にあるというのは今でも同じでございます。
 それから、将来、もう既にでございますけれども、人口減少社会あるいは少子高齢化がますます激しくなっていくということを考えますと、大きな公的な資産、不動産資産ですね、国が持っている、あるいは地方公共団体の資産、これを抱え続けるということは非常に大きなリスクだと、そういう認識が非常に共有されつつあると。バランスシートを大きくしていると強い財政増嵩要因になるということが多くの自治体で何を行わしめているかというと、公共施設の再配置あるいは縮減、そういうものがパブリック・リアル・エステート・マネジメントですとかファシリティーマネジメントという形で取り組まれつつあると。そういうことから考えますと、公営住宅という政策手段を大きく拡大する、そしてそのストックを増やす、そういう環境にはないのではないかと、そういう認識が広まりつつあるというのが二点目のものでございます。
 その反面でございますが、民間住宅については、活用可能な空き家として百三十七万戸、それからその他の空き家四十八万戸、それが存在していると。ということは、それらを政策資源として活用する、そういう可能性が急速に浮上しつつあると。
 二点目で申し上げたいことというのは、ハードな政策資源、そういった形としまして民間の空き家、これが強く認識されるようになった、それが二点目の環境変化でございます。
 それでは、三点目の環境変化、これについて述べさせていただきます。
 三点目は、家賃債務保証ですとか、あるいは住宅確保要配慮者であっても、生活支援サービスなどを付けながら適切な賃貸住宅サービスを提供する大家さん、あるいはそれを紹介する不動産業者さん、それから、そういったものを側面としまして、生活支援サービスなどを提供する社会福祉協議会、NPOなど、公共団体そのもの以外の主体が非常に住宅確保要配慮者に対する支援を行うということが萌芽的に見られつつあるということでございます。住宅確保要配慮者、そういったものに対しての働きかけ、それが公共団体そのもの以外のプレーヤー、それも非常に大きな期待を掛けることのできる、そういった環境が今広がりつつあるんじゃないかと。
 三点目の環境変化としましては、ソフトな政策資源として、公的なことをやるソフトな政策資源として公共団体そのもの以外の主体、それに大きな期待を掛けることができるような、そういった環境が整いつつあるのではないか。これが、住宅セーフティーネット制度を考えていく際の大きな三つの環境変化だと私は認識してございます。
 こういったことを背景といたしまして、今回の住宅セーフティーネット制度、これは、今までのセーフティーネットの体系というのは、非常に手厚いサービス、それを公共団体が直接供給する公営住宅政策、非常に手厚いサービスを受けられるか受けられないか、そういった世界がこれまで基本になっていたもの、それを中間領域、要するに受けられるか受けられないかの中間領域を拡大する形で多様なサービス、それをこれまでの政策支援の対象となっていなかった方、それも含めて広く提供できるような体制を整えようとする、そういった制度の提案ではないかなと私は解釈してございます。
 でございますので、どういう供給体制でこのセーフティーネット制度が構築されているのか。一つは、非常に広い中間領域だと申し上げましたが、多様な領域、これを対象にした政策スキームでございますので、国が何かを決めてそれをがっとやる、そういうような供給体制ではなくて、何をどうやってやるか、あるいはどこまでやるか、これは非常に広いバリエーションが考えられるものと考えてございます。
 でございますので、地域の情報は地域に密着した主体、そこにその情報が集まっていると考えるのが普通でございますので、地方公共団体、それが何をどうやってやるか、それを決めて、地方公共団体そのものだけではなくて、社会福祉協議会あるいはNPOあるいは不動産業者あるいは関連する民間企業、そういった多様な主体が政策の担い手として登場する、そういう仕組みをつくり上げたというのが今回の制度の供給体制側の、何といいますか、特徴だと考えております。
 そういったようなセーフティーネット制度が提案されていると私は認識してございますけれども、その提案されているセーフティーネット制度、これを評価するとすればということを申し述べさせていただきます。大きく分けて三点でございます。
 基本的な評価といたしましては、現在どんな課題があるのか、あるいは持続可能な政策資源をこれからも使っていかざるを得ないだろうということを考えた場合には、今回の提案というのは私は基本的に評価すべき提案ではないかなと思っています。ただ、二点、是非運用あるいは制度の細部をつくり上げるに当たって御配慮いただければということを述べさせていただきます。
 まず、一点目でございます。
 これ、先ほど述べましたように、何をどれだけどのようにして行うのか、これは地方公共団体の判断に大きく委ねられているようなスキームになってございます。公営住宅というのは、基本的には基準が示されて、どれだけ財政的な資金が使えるのか、それによってやれること、やることがほぼ決定できるというような仕組みになっていたかと思います。ただし、今回の地方公共団体に大きな何をやるのかという部分、それが委ねられているようなそういうスキームにおきましては、地方公共団体がそもそも地域課題を適切に認識しているんだろうか、それを戦略的に解決するようなアイデアを持っているんだろうかと、そういう能力があるのかということが大きく問われるところだと思っています。
 つまり、地域にとって何が課題で、どこまでセーフティーネットを用意するのか。それを、地方公共団体の住宅部局に限らず、内部でもちろん福祉部局、それと綿密な連携を取っていただきたい。それだけではなくて、社会福祉法人、民間企業、そういったものと地域のビジョン、それを共有するようなそういう困難な作業、それが前提条件になるということでございます。
 それは、基本的にどうしたらいいのかというのは、恐らく国あるいは研究者である私どもが持っている情報よりも、実際にその現場でおやりになっているようなメンバーの方、地方公共団体の方、あるいは社会福祉協議会の方、NPOの方、不動産業者の方、そういったような方々がお持ちになっていると思います。こうやったら成功した、こうやったら失敗した、そういうことを教え合うようなそういう先進事例の紹介あるいは情報交換の場の設定、そういったものを設けていただいて、適切な戦略の策定あるいはその実施体制の設定、これが組めるようなそういう体制を是非整えていただきたいと思います。それが一点目です。
 二点目ですけれども、基本的には地方公共団体だけが登場していた公営住宅のスキーム、それとは異なって、非常に多様なプレーヤー、これが登場する仕組みになってございます。それに関連して二点だけ申し上げたいと思います。
 この登場が予定されているプレーヤーの中には、このセーフティーネット法の中だけではなくて、他の法律で指導監督が可能なものばかりではないと思っております。このため、この制度の執行に当たっては、例えば空き家等の登録制度とか賃貸人への指導監督とか様々な執行の適切性を確保するような仕組みが用意されていると思いますので、その執行をきちんと、指導監督をきちんとやっていただきたいというのが一点目です。
 最後になりますけれども、多様なプレーヤーを登場させたということを解釈しますと、これまでは、公営住宅というような仕組みというのは公共団体が整備、それから住宅の管理あるいは生活の支援、それを全て引き受けるような、神様のようなそういう存在だったわけです。それを、そういう全てを引き受ける公共団体の役割を、賃貸人とか不動産業者とか社会福祉法人、NPO、それから債務保証を行う企業、そういったものにアンバンドリングして分業化すると、それが今回の提案されている制度の一つの肝になっていると思います。今までは公共団体が一つの主体としてそれをやってきましたけれども、アンバンドル化したことによって、主体が異なる人たちが協業体制を組まないといけない、それが非常に大きな、何といいますか、コストを伴う、そういった可能性があるんではないかと。
 そういう意味で、各主体の綿密な連携あるいは統一的な戦略に従った執行、それを確保する意味でも、制度の中にございますが、居住支援協議会、その存在が非常に重要だと思います。居住支援協議会のそういった実質的な協調体制の確保、それがうまく発揮できるような体制、それを組んでいただきたいというのが私からのお願いということでございます。
 私からの意見陳述は以上でございます。

発言情報

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発言者: 中川雅之

speaker_id: 33533

日付: 2017-04-18

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会