土肥真人の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(土肥真人君) おはようございます。
 本日はこのような貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、土肥真人と申します。東京工業大学環境・社会理工学院建築学系の教員であり、一般財団法人エコロジカル・デモクラシー財団の代表理事及び今回発表しますデータを作っておりますARCHの会員でございます。どうぞよろしくお願いします。
 本日、お手元に資料をお配りしております。三枚めくっていただきまして、資料の二ページ目から、スライドの二ページ、二と書いてあるところから御説明差し上げたいと思います。
 まず、資料の二ページ目ですが、本日、私は二つの立場より参考意見を述べたいと思います。
 まず、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向け、ホームレスの人々を放置しない優しい都市を実現することを掲げて活動していますグループ、ARCHの研究者としての立場があります。これに関しては、二〇〇九年以降、文部科学省の科学研究費を受けまして、イギリスのロンドン、オーストラリアのシドニーやメルボルン、またアメリカの様々な都市のホームレス政策を研究してまいりました。日本においても、川崎市を始めとする各都市のホームレス支援団体や自治体の方にヒアリングを行い、研究をしてきています。また、二〇一五年からは、後述しますが、ARCHのメンバーとして東京ストリートカウントを企画し、実施しているところです。このようなホームレスに関する研究をしてきた者として意見を表明いたします。
 もう一つの立場としては、もう三十年近くになりますけれども、コミュニティーデザイン、都市デザインを研究し、大学で講義してきた者として意見を述べさせていただきます。これに関しては、私は、主に都市オープンスペースに関する理論、法制度を研究し、コミュニティーデザイン、住民参加のまちづくりを行ってまいりました。近年は、特に都市デザインの新しい方法であるエコロジカル・デモクラシーの研究と実践を行っており、昨年来、エコロジカル・デモクラシー財団を設立して実践に当たっているところです。
 このような立場から、都市のビジョンという点についても本法案への御意見を申し上げたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 三ページに移ります。本日は、この四点について意見を述べたいと思います。
 次、四ページ、お願いいたします。
 意見一ですが、住宅確保要配慮者の定義におけるホームレスへの言及についてです。第二条第一項の住宅確保要配慮者の定義は、現在六グループに言及がありますが、この中にホームレスが書かれていないということで、これは是非明記していただきたいと考えています。理由としては、ホームレスの人々が、本法が対象とする住宅の確保に特に配慮を要する人々の最たるグループであるということがあります。また、以下に御説明しますが、現在考えられているよりも多くの人々がホームレスを経験されていると推計されるということがあります。
 次のページをお願いいたします。五ページです。
 推計の御説明に入ります。これは、私たちARCHが昨年来行ってまいりました深夜にホームレスの人の数を市民が参加し数える調査、東京ストリートカウントの結果になります。
 昨年の冬、夏、今年の冬と、市民二百四十五名、延べでは五百名近くの方々に、終電後、各駅に集まっていただきまして、毎回三十人から百十人程度で計九晩、東京中心部の十一区を歩いて、実際どれぐらいの方が寝られているかを調べたものです。
 なぜこれを行ったかというと、東京都の場合、厚生労働省の概数調査が昼間に実施されており、夜間の数は大分違うだろうということがあります。実際に、東京中心部の十一区に関して、昼間の概数調査では五百五十八名とされていたものが、深夜調査では約二・五倍の千四百十二名寝られていることが分かりました。
 この十一区の比率を基に東京都全体の推計を出すと、およそ二千六百五十名ということになります。都だけで推計値は約千二百名増えるわけです。全国では約七千五百人から一万人程度、これは少なめに見積もってなんですけれども、ホームレスの方々がおられるのではないかということになります。
 六ページを御覧ください。
 さらに、この七千五百から一万人というのは一晩にいる数を推計したものです。この一晩にいる数というのは一年間にホームレスを経験される方の数とは大きく違うということが、これは世界で唯一ホームレス個人をずっと追いかけているデータベースを作成しているロンドンの統計から分かっています。これによると、一晩に寝ている数の約十・八倍の方が一年間ではホームレス経験をされているということです。
 これを仮に、先ほどの一晩の全国推計、七千五百人から一万人に掛け合わせてみると、約八万人から十一万人の方が日本でもホームレスの経験をされているということが当てはめてみると推計されます。
 また、同じロンドンのデータによると、年間の人数のうち新たに路上に出てくる方が約六五%を占めるということですので、仮に、これも仮にですが、日本に当てはめてみますと、約五万から七万人の方が毎年ホームレス状態を新たに経験していると推計されます。
 以上から、ホームレス問題は無視できない規模であり、持続的な仕組みづくりを必要とする社会的課題であると考えます。でありますから、是非ホームレスという定義を法律の中に設けていただきたいと、このように思うわけです。
 次のページ、七ページに参ります。
 意見二です。ホームレスその他の住宅確保要配慮者の入居後の支援の必要性についてです。
 これに関しては、第四十二条、居住支援法人の業務、第五十一条、居住支援協議会に関する記述に必要事項を明記すべきだという意見です。
 本法案は、ホームレスに恒久的住宅を提供するハウジングファーストという政策を支え得るものであり、その意味で画期的なものだと考えます。
 一方で、ホームレスの方々の中には、安定した居住のために、就労、生活相談、福祉、医療など様々な支援を必要とする方々も少なくありません。入居に関わる支援から、入居後にも途切れることなく安定した居住のための各種支援サービスが提供できる体制を整える必要があります。
 八ページをおめくりください。
 現況のホームレス支援の基本的な考え方は、就労可能な方々には就労支援を行う、そのための場所としてホームレス自立支援施設が求められているというものです。あるいは、すぐに就労が難しい方には、多くの場合、生活保護などの利用によって無料低額宿泊所での施設保護を行い、その施設は生活相談や就労指導等を提供するものと位置付けられています。
 問題は、これらの施設がいわゆる中間施設と呼ばれる一時的な宿泊施設だということです。ホームレスの人々は、まず中間施設で就労支援や生活支援を受け、住宅での自立生活ができるようになったと判断されて初めて住宅に移る形になっています。
 これに対し、ハウジングファーストという手法は、誰にでも居住の権利があるという考え方の下、まずはホームレスの人々が住宅に入ることから始まります。その後に適切なアセスメントを行い、本人の意思も含めながら必要なサービスを決め、そのサービスを提供します。
 これはアメリカで一九九〇年代初頭に生まれた手法ですが、ホームレスの方々の住宅定着率が中間施設を経由する場合と比べて非常に高いという成果が出ています。また、社会的コストも、ホームレスの人々に頻繁に利用されるその他の施設と比べて非常に安いという統計結果が出ております。この支援手法が現在欧米諸国で導入されておりますし、日本でも幾つかの事業が実験的に行われているところです。
 でありますから、今回の住宅セーフティーネット法案は、ホームレスの方々に直接恒久的住宅への入居機会を提供する画期的なものだと考えております。
 次のページをおめくりください。九ページです。
 今回の法案は、こうした積極的意義を持つ一方、居住支援法人や協議会が行うとされている支援内容は主に入居までの支援であり、その後のサービスについては手薄であると言わざるを得ません。ですから、ここに関しては、是非、国交省の住宅行政と厚生労働省の福祉行政の強い連携をもって、支援とセットの中間施設における保護ではなく、住むことがまず権利として確保され、そこに必要な支援をシームレスに提供する体制を整えていただきたい。そのために、住宅行政と福祉行政の連携が強く求められていると考えます。
 次のページをおめくりください。十ページです。意見の三番目になります。
 今回の法案で行われる公共投資としての家賃保証や改修費補助は、市場を尊重した社会住宅ストックの拡充策であり、家賃の低廉化にもつながる重要なものです。よって、第一に、現在予算措置のみとされている家賃補助、改修費補助が法文に明記されることが必要だと考えます。
 ちょっと駆け足で申し訳ないのですが、次、十一ページをおめくりください。
 公共投資した住宅がセーフティーネットという公共財としてきちんと機能しているか、これも継続的にチェックする必要があると考えます。
 十二ページをお願いします。
 日本における住宅扶助と家賃保証のバランスを見ます。前者、住宅扶助は、生活保護の住宅扶助費として五千九百十七億円が平成二十六年に支出されております。一方、供給サイドである住宅への補助、貸主への保証は生活困窮者自立支援法の住居確保給付金に二十三億円の支出があり、これに加え、今回の法案では改修費約三十億円、家賃低廉化への補助約三億円の予算が加わると聞いております。住宅扶助と家賃保証に二桁もの開きがあるということです。
 ちなみにですが、厚労省の試算では、本格的に日本で家賃補助制度を導入すると六千億円から一兆円程度の財政措置が必要になるという文献もございました。
 十三ページをおめくりください。
 諸外国と比べますと、まず左側のグラフからですが、日本の住宅ストックに占める社会住宅の割合が極めて低いことが分かります。社会住宅とは何らかの公的資金が投下される住宅のことですが、これが日本では三・八%で、そのほとんどが公営住宅及びUR等の公的住宅です。つまり、家賃補助による民間社会住宅がほとんどありません。
 次に、右のグラフを御覧ください。GDPに対する政府の住宅手当支出額の割合を示したものですが、日本とアメリカの支出額の水準が極めて低いことが分かります。日本の支出額五千九百二十九億円は、ほとんどが生活保護の住宅扶助費で占められます。一方、アメリカはこれと逆で、支出額のほぼ全てが家賃補助で占められています。
 つまり、日本は、社会住宅ストックの量で見ても住宅手当の政府支出額で見ても、家賃保証がほとんどないことが特徴であり、そして問題であると私は考えます。住宅セーフティーネットの形成と良好な社会住宅ストックの拡充を実現するため、家賃補助、改修費補助を本法に位置付け、大幅に増額されたいと考えます。
 十四ページに参ります。
 住宅行政の観点から、改修費補助や家賃保証を行う登録住宅は、公共投資をすることになるため、公共財としての住宅ストック機能を果たす必要があります。どれだけ社会住宅としてストックされ使われたかを政策目標及び成果指標とすべきです。
 同時に、福祉行政の観点から、本制度によりどれだけ住宅確保要配慮者が住宅を確保できたのかを測る必要があります。低所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世代、それにホームレスの方などがどれだけこの登録住宅に入居できるのか、あるいは入居したかを政策目標及び成果指標とすべきです。さらに、その前提として住宅確保要配慮者の方が母数としてどれだけおられるのか、現在どういう状況にあられるのか、継続的な大規模調査が必要であると考えます。
 十五ページをお願いいたします。
 最後の意見ですが、本法が都市経営、地域づくりの視点を持つことが必要だと考えます。本法が住宅供給のみならず、多様で持続的な地域コミュニティーの形成に資するものとして位置付くよう、国がソーシャルミックスの理念を基本方針に明記し、地方公共団体が計画に反映できるよう啓発し、居住支援協議会が当該業務に当たれるよう支援することが必要だと考えます。
 十六ページをお願いいたします。
 ソーシャルミックスやミックス居住に関して、例えば国土交通政策研究所の報告書では、地域社会の形成には社会住宅を特定の地域に集約せず分散させ、バランスの良い社会を構築することが重要との趣旨が書かれています。また、厚生労働省内の検討会でも、生活困窮者自立支援を通じた地域づくりが大きな目標に掲げられ、共に住まい、暮らすことを互助で支え、生活困窮者が支えられるだけでなく支える側に立つ、そういう地域全体の在り方が求められています。
 十七ページをお願いいたします。
 続いて、こうしたソーシャルミックス実現の手段として、アメリカの低所得者向け家賃補助の考え方があります。住宅選択を可能にするセクション8プログラムという連邦政府の施策です。
 アメリカでも各地域で家賃が違うわけですが、各地域の住宅公団が標準家賃というものを決め、その分の家賃を賃貸人は受け取る、そして賃借人は自らの収入の三〇%まで家賃として支払う、その差額に関しては連邦政府が家賃補助を入れるというものです。賃貸人は適正な家賃の安定収入が保証され、賃借人は様々な地域で居住できることになります。これによってミックス居住が可能となり、ソーシャルミックスの実現につながるというものです。
 最後になります。
 十八ページですが、ホームレス状態から地域で住宅を得て安定した方は、今現在ホームレス状態にある方々のニーズをよく理解できるわけですから、彼らを支える人になることができます。かつて要配慮者だった方々が配慮する側として地域の重要な人的資源になるということです。これは低所得者や被災者、高齢者、障害者、子育て世代など、他の様々な層でも起こり得ることで、本法はこれを実現する可能性を持つという認識を是非持っていただきたいと思います。
 まとめますと、本法は、住宅供給のみならず、包摂的な地域づくり、持続的なまちづくりに資する可能性を持つものであり、都市経営の戦略としても、本法がソーシャルミックスという大きな理念を背景に持ち、また各自治体において多様性ある社会が実現されるよう、国が主導的役割を果たし、必要な支援施策を実施することが求められていると考えます。
 以上、駆け足でしたが、四点について私から申し上げました。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 土肥真人

speaker_id: 12679

日付: 2017-04-18

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会