塩崎賢明の発言 (国土交通委員会)
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○参考人(塩崎賢明君) 立命館大学の塩崎です。
お手元に数枚のメモをお配りしてあると思いますが、それに沿って、大きくは二点についてお話ししたいと思います。
まず一点目は、今回のこの法改正全体についての私の意見です。
今回の改正法案を見ますと全六十四条になっていますが、現行法は十二条なんですね。物すごく大きく条文が増えていますが、中身の大半は、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業に関するものが三十二条と半分を占めていて、ほとんどがそこに費やされている。すなわち、今回の法改正の主眼は空き家を活用した住宅登録制度の創設という点に置かれていると、こう考えます。
ところが、この住宅セーフティーネット法というものは、本来、住生活基本法の基本理念を実現するという役割を担っているものであります。住生活基本法の理念は四つあるわけですが、その四番目が居住の安定の確保ということであって、住宅セーフティーネット法はこの四番目の理念を実現する役割を担っていると考えます。
住生活基本法の具体的な施策としましては、住生活基本計画、全国計画が昨年閣議決定されました。ここには八つの目標が掲げられているわけですが、そのうちの三番目が住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保ということに置かれています。
したがいまして、住宅セーフティーネット法の役割は、住生活基本法の理念を実現し、かつ住生活基本計画で掲げられているこの三番目の目標を実現するというところにあるだろうと考えられますが、今回の法改正はこの基本理念や住生活基本計画の目標三に対応していて、新しく住宅セーフティーネットの制度を設けるという点は、これらの基本理念や目標三を達成する上では一つの大きな前進だというふうに評価はできると思います。ただしかし、基本理念の四番目や目標の三番目を実現する上でこれで十分かというと、十分でないところがあるというのが私の意見です。
その一つの理由は、基本計画の目標には四つの基本施策が掲げられているんですけれども、今回の法改正はそのうちの二つについて対応はしています。すなわち、住宅確保要配慮者の増加に対応するために空き家の活用を促進するとともにというのが一つ目。二つ目が、民間賃貸住宅への住宅確保要配慮者の円滑な入居を促進するため云々と。こうした点には対応しているんですけれども、三番目の公営住宅、UR賃貸住宅等の公的賃貸住宅を適切に供給するという施策についてはほとんど言及がないわけですね。
現在、公営住宅に対する応募倍率は全国で五・八倍、東京都では二十二・八倍と言われています。なおかつ、公的住宅はこの間、この十年間で表にありますように五万戸も減少しているわけですね。公営住宅をどんどん建てるということは財政的に厳しいことはもちろん分かっているわけですけれども、法においても計画においても適切に供給すると、こう述べていますし、現実に減っているわけですから、これに対する対応というものが本来求められるだろうと思うんですね。この点がちょっと欠けているんではないかなということです。
この点については、衆議院の委員会で国土交通大臣が、この役割はいささかも低下するものではないということをおっしゃっておられまして、この点、衆議院の附帯決議にも付記されているわけですけれども、本来、法改正にきちんと位置付けるべきではないかなというのが私の意見です。
二つ目に、この新しい住宅セーフティーネット制度ですけれども、登録住宅制度なんですが、現状の住宅確保要配慮者の困窮状態を解決するのに十分なのかという点でやや疑念があるということです。
例えば、収入五分位以下の世帯だとか公営住宅以外の借家に住んでいる人たちの数だとか、あるいはその中で特に高家賃負担をしている世帯の数だとか、こういうものを見比べますと膨大な数があるわけですね。少ない数見ても二十八万世帯ぐらいあるんですけれども、今回の登録住宅の計画では二〇二〇年までに十七万五千戸、年間五万戸という目標を掲げているわけで、その間に大きなギャップがあるんじゃないか。なおかつ、自主的な任意の登録制度なので、どこまで計画がちゃんと行けるかという辺りも不安があります。また、家賃低廉化措置というのが設けられているんですけれども、先ほど土肥先生もおっしゃいましたけれども、初年度三億円という予算で、恐らく登録住宅全部が実現したとしてもその二〇%若しくは一〇%程度しかこの恩恵が受けられないという点でやや不安があります。
それから、本法案で私が注目すべき、評価すべき点だと思うのは、都道府県計画や市町村計画がきちんと導入されているということで、ここにきちんとした公的住宅も含めた計画が都道府県や市町村で計画されることが大変重要だと思います。
時間がなくなってきましたので、二つ目の大きな問題は、被災者の居住の安定の確保の問題であります。
改正法案の二条では、被災者を住宅確保要配慮者として位置付けているんですけれども、括弧三年に限るという限定が付いているんですね。しかし、私は、この現在の東日本大震災やあるいは熊本の、熊本はまだ一年ですけれども、状況を見ていますと、災害発生から三年を経過していないものに限るという限定は現実に合わないだろうというふうに思います。この点についても既に議論がされていて、法ではそうなっているけれども、実際、現実に被災者で住宅困窮に陥っている人に対してはそれなりの支援措置を講ずるということをおっしゃっているわけですけれども、私は本来、本法の本則においてその点を改めて、被災者を三年に限るというふうにしない方がいいのではないかなというのが私の意見です。
この点に関してはいろいろ細かい議論がありまして、私はどうして今回新たに三年に限るということを導入したのかということについてやや疑問、疑念を持っているわけですけれども、これは、公営住宅法における規定だとか被災市街地復興特別措置法における規定だとかに関連して、それと整合させているのだという説明もあるわけですけれども、私は、その点はちょっと時間がないので詳しくは申し上げられませんが、多分そういう整合性を取る必要はないだろうというふうに思います。今回の法改正は、公営住宅の入居資格だけに関したものではなくて、民間賃貸住宅に住宅確保要配慮者の人たちをどのように入居していただくかということを含んでいるわけですから、その点でいいますと、公営住宅の入居資格だけに整合させる必要はなくて、広く捉えるべきだろうというのが私の意見です。
被災者は、三年を経過しても居住の安定に大変難渋しているという現実があります。これは、東日本大震災で今も十二万人が避難し、五万人以上が仮設住宅に暮らしています。六年たってもこの状態なのでありまして、東日本については東日本大震災特別区域法があって、十年間、すなわち二〇二一年三月三十一日まで延長されるということになっております。この点では一定の安心材料があるわけですけど、しかし、果たしてその時点で問題が全部解決しているかというと、福島原発からの被災者の人たちのことを考えると、やや不安が残っているところであります。
また、阪神・淡路大震災から既に二十二年が経過しているわけですけれども、ここでも同様に被災者が居住の安定に難渋しているという問題が起こっています。これは具体的には、借り上げ公営住宅、借り上げた公営住宅を災害公営住宅として提供しているものがおよそ七千戸ぐらいあったわけですけれども、この借り上げ公営住宅というのは、県や市が民間若しくはURから借り上げて、それを転貸するという形で公営住宅として活用しているわけですけれども、この借り上げているときの賃借契約が二十年で切れるということがございまして、もう二十年既にたっているわけですけれども、入居している人たちに対して退去を求めているわけであります。
ところが、実際には、入居した人たちは入居当初にその話を聞いていないという人もいっぱいいるわけですね。あるいは、使用契約書の中に全く書かれていないという人もいっぱいいて、突然この話が降って湧いて、もう八十を超えるような人たちは目先真っ暗という状態ですね。もちろん、あっせんして別のところに移ってくださいということはしているわけですけれども、多くの人は、自分のかかりつけのお医者さんだとか、隣近所の人たちと助け合ってその日その日を暮らしているというような生活状態にあるわけなので、箱物としての住宅がどこかにあるよと、こう言われても、生活全体が成り立ち行かなくなるという、こういう問題を抱えておりまして、私はこれを強行するのは大変問題だなと思っています。
現在は、神戸市や西宮市では、出ていかない人たちを裁判に提訴して、強制退去に近いような形が行われようとしている、こんな問題もありまして、被災者の人たちが三年で居住の安定が確保できるということにはなかなかならないというふうに思います。
もう一つは、将来のことですね。南海トラフの巨大地震が三十年以内にほぼ確実に、七〇%以上の確率でやってくると。死者三十二万人とか、全壊、焼失が二百三十八万棟といった被害が予測されています。仮に三十二万人が半分に減ったとしても、残った人の大半は住宅がなくなるわけですね。これは東日本よりもはるかに大きな規模でそういう事態が起こるわけですから、この人たちが三年で居住の安定を確保できるかというと、恐らくそうはならないだろうと。
現在、東日本、熊本でみなし仮設住宅というのが大量に導入されています。多分、首都直下や南海トラフでもそういうふうになるだろうと思いますが、このみなし仮設住宅というのは、先ほど申し上げました借り上げ公営住宅とちょっと似ているわけですね。民間から借り上げたものを仮設住宅として提供するということで、その間は家賃は国費で支給されるわけですけれども、一定の期限があります。ずっと永遠にというわけにはいかない。
今、もうすぐ家賃支給がなくなるということで、住み慣れたみなし仮設住宅からまた移らなくちゃいけないという事態に直面しているわけですけれども、こういう問題を解決するには、私は家賃補助制度がどうしても要ると思うんですね。その場において、全額支給ではなくても、自ら払える公営住宅家賃並みの家賃で生活ができるようにするという、そういう措置が講じられれば、みなし仮設住宅に住んでおられる被災者の人たちの居住の安定確保はある程度図られるのではないか。
こういう点から見ましても、家賃補助制度の導入というのが、先ほど土肥先生もおっしゃいましたけれども、この住宅セーフティーネットの仕組みの中にどうしても導入することが必要なのではないかなというふうに思います。
以上で私の意見を終わります。どうもありがとうございました。