森岡孝二の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(森岡孝二君) 森岡と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、労働時間、とりわけ長時間労働と深い関連のある過労死問題について中心的に研究してまいりました。二〇〇〇年代に入って、とりわけ二〇〇五年以降、日本で格差社会あるいはワーキングプアということが問題になってきた中で、貧困の問題あるいは日本の労働所得格差の問題に少し関わる、あるいはテーマとして深く研究しようと思うようになりまして、今日は労働時間問題から見た格差問題というふうなアングルで幾つかの資料と論点を紹介したいと思います。
 非正規雇用がどう増えてきたかというのは、先ほど詳細な報告がありました、樋口先生から。幾つかのデータは私のデータとも重なるし、ある面で私のデータの不十分さを補って余りある詳細な資料が提示されておりましたが、その樋口報告をも念頭に置きながら以下のスライド等を御覧いただきたいと思います。(資料映写)
 非正規労働者がどのように増えてきたか、これは表の一に出ています。スライドで、このページでは、表を一ページとすれば三ページ目に表一がコピーされております。
 先ほど、一九九七年というのが一つのターニングポイントであるという御指摘がありましたが、まさしくこのデータはそれと符合するものでありまして、たまたま、就業構造基本調査、これ、四十数万の世帯に対して十五歳以上の約百万の労働力人口に調査をしている、この種の統計としては最大規模の統計ですが、五年に一度ということで、二〇一七年、今年が調査年で、来年その結果が発表される。したがって、二〇一三年に発表された二〇一二年データが一番新しいんですが、それで八七年から二〇一二年までをかいつまんで数字を取り出しています。
 男女計で見まして、労働者総数、雇用労働者ですが、役員を除いて、四千三百六万人から五千三百五十四万人に一千四十八万人増加している。それから、そのうち非正規労働者の方がその増加数より多くて一千百九十三万人、これ男女計です。正規労働者は、この間でいうと百四十五万人減少している。しかし、九七年以降の減少が大きくて、八七年から九七年の十年間は三百九十八万人、約四百万人増加している。そこから急激に減少して、何と九七年から一二年の十五年間に五百四十三万人減っているということが分かります。
 男性労働者は、総数では二百六十一万人の増加ですが、正規労働者は百四十四万人減少している。九七年以降を見ると四百万人近く減少していますが、そういう数字があります。
 それから、女性労働者、これは偶然の符合でもありますけど、七百八十七万人総女性労働者は増加しながら、正規雇用者の増加はゼロで、非正規労働者、雇用労働者、これが七百八十七万人増加している。ごくごく、出入りがいろいろありますが、結果からいうと、増えた仕事は全て非正規雇用であるかのような数字になっております。
 女性パートタイム雇用について、少し内訳を見ておきたいと思います。
 女性雇用の増加は専らパートタイム雇用であったということはさきの数字からも分かりますが、内訳でパートだけを見たものを図の一に示しました。
 このパートというのは日本の労働統計では二つ区別すべきで、一つは、週三十五時間を一つの基準とした時間区分によるパート、これを時間パートと呼びます。それから、雇用されている企業等の職場での呼称によるもの、パート、アルバイト、契約社員等区別されますが、その際のパートのことを呼称パートと。データで総数その他変化も多少違うんですが、おおよそは大体同じ傾向をたどっている。ただし、その呼称パートの中には、三分の一ほどのフルタイム労働者と同じ時間働いているパートタイム、つまり時給で、有期で非常に低時給の、賞与、諸手当等がほとんどない、そういう労働者がいる。
 ちょっと細かな議論はここでは省略しますが、図の一は、女性で見るともう五割近くがパートタイム労働者である、男性も二割近くになっているというのが分かります。この結果、先ほどもありましたが、総労働時間の平均は下がっていくわけで、毎月勤労統計調査で見ると、もうはっきり一般労働者は全く横ばい、パートタイム労働者が増えて平均が下がっているというのが分かります。
 私は、毎勤だけじゃなくて総務省の、毎月勤労統計調査と別に、労働者に、直接世帯に行って記入させる労働力調査のデータないし就業構造基本調査のデータを使っていますが、その労調のデータで見ると、毎勤のデータに加えて、賃金の払われない就業時間が集計されている、その分、一人当たりでいうと三百時間余り毎勤よりも長いというデータがあります。
 いずれにせよ、この間の平均は大きく下がって、下がりながら同時に男女の開きが大きくなっている、図の二というのがありますが、この右側ですね、この開きを示しています。
 これ、一九五〇年代の後半は百時間を切っていまして、一番短かったときには七十数時間にとどまっていました。それがだんだん広がって、七五年、オイルショック後に労働時間がちょっと減る時期がありますが、それから後どんどん、男の場合、時間外労働、残業が増えて、女性はパートが増えて、その差が大きくなると。その後、両方とも労働時間は総平均では減っていきますが、開きは二〇〇五年ぐらいが一番大きくて、ほぼ六百時間ぐらいになって、今は五百七十、八十時間ぐらいの時間差になっています。こういう一国で二つの、単にフルタイム、パートタイムという区分じゃなくて、男性労働時間、女性労働時間で全く違う、そういう特徴が日本の労働時間にあるということがこれから分かります。
 図の三は非正規労働者比率ですが、これちょっと戻りますけど、どんどん高齢化が進む中でとりわけ女性は高齢者就業が顕著に増えていて、労調で見ると、九七年二月調査では二十万人である、パート、アルバイトを含めてですね。それが、二〇一七年の同時期の一―三月調査、統計が変わっていますが、それで見ると、百八万人と五倍以上になっているんですね。そういう点で驚くべき変化がありますが、若者も近年非正規雇用比率が高まって、男女問わず若者は、やや女性が非正規率高いんですが、若者の場合、男女計では、ここ十年近く変化を見ればもう共に五割あるいは五割前後にあるということが分かります。
 先を急ぎます。この賃金ということを問題にしていく場合には、性別、雇用形態別、労働時間階級別の視点で労働所得格差がどのように開いたのかあるいは縮小しているのか、その推移を見る必要があります。
 前から指摘がありますが、女性の収入力格差というのは、時給格差と、時間、この場合は労働時間のことですが、時間較差、ちょっと字を変えていますが、開きという意味も含めた比較の較を使っています。その時間較差の掛け合わせたもので見ると、男性の一般労働者の賃金を一〇〇としたときの女性のパートタイム労働者は、時給が約半分として〇・五、労働時間がまあ八時間対六時間というような形で〇・六としますと、五、六、三十で〇・三ですから三割、こうなる。
 こうして見るデータの一つの参考例が表の二で、ちょっと古い、新しいのに置き換える時間的余裕のないままここに貼り付けましたが、この時給格差と週労働時間格差、この格差は別の字を使っていますが、これで見ると、二十八という一番低い週給格差が出ています。日本は、決して労働時間そのものは、パートタイムということで、他の国のパートタイムに比べて短いというわけじゃありません、フルタイムパートがいる分むしろ長いんですが、それでもこうして両方掛けると非常に大きな格差があると。
 それから、次のデータは就業構造基本調査から一番新しい、ただし二〇一二年というデータを取ったものです。男性のパート、アルバイトの六割は年収百五十万未満である。それから、女性のパート、アルバイトは、この場合は呼称ですね、パート、アルバイトは百五十万未満が八割を超えていると、こういう数字が出ています。
 もう一つ、図の四ですが、これは二十四歳未満十五歳以上の最も狭い年齢階級の若年者を取っています。一九九二年から二〇一二年の変化を見たものですが、一番下の百五十万未満のところを見ると、一九九二年時点ではまだ百五十万未満は二五%であったのが、二〇一二年には約四四%になっているということが分かります。いかにこの間、若者の年収が落ち込んだか。その上から、百五十万以上で見ると、皆むしろこの九二年から二〇一二年の間に大きく減っているんですが、一番低い賃金層は逆に非常に大きく増えているということが分かります。
 同じく、これは別のデータで、国民生活基礎調査というデータで、三十五歳未満の労働者の平均年収を正規、非正規別に見て、非正規の中のパート、アルバイトをまた区分して取り出しています。男性はパート、アルバイトは百十六万円、全労働者は二百八十五万円、正規労働者は三百十一万、こうなっています。女性は正規が二百十一万円、非正規が百十四万円、しかしパート、アルバイトは更にそれよりも低くて九十四万円と、こういう数字があります。
 表の六は、二十五歳から三十九歳の性別・雇用形態別未婚率なる数字を取ってみました。二〇一二年の就業構造基本調査のデータですが、在学中の者を除いた卒業者のデータから取った数字で見ると、男性の非正規雇用の未婚率、これは七五・九%、パートタイム、アルバイトは八四・二%、しかし、正規は、男性で未婚率が高いといっても四割台、四二・五%にとどまっています。女性は結婚してパートで勤めるという形になっていて、男性の場合と同じ形では表れないのでちょっと説明を省略しますが、男性の低所得者の結婚が遅くなる、あるいは結婚しない率が高くなるという傾向は広く指摘されておりました。こういうことも雇用形態別に見るとシビアな格差があるということが見えてきます。
 最後に少し文章的なものを入れておきました。
 本来、このデータではフルタイム労働者の労働時間について補う必要がありますが、フルタイム労働者は幾つかのデータにくくりがあって、例えば、近年では労調にも非正規労働者の労働時間が出るようになっています。しかし、正規労働者だけの平均労働時間というのは、フルタイム正規という限定でくくると実は利用できない。労調の正規というのは、三十五時間未満の労働時間の労働者も、男性で八%、女性で二割近くの比率を占める。近年それが増えているんですね。恐らく時給正社員、エリア正社員、あるいは限定正社員等が徐々に増えてきたということと関わりがあるかもしれません。
 いずれにせよ、なかなか正規の労働時間は取れないんですが、社会生活基本調査のデータで今年発表される、昨年のデータはまだ利用できませんが、二〇一一年調査の二〇一二年発表によりますと、男性の週労働時間は平均で五十三・一時間。これは、遡ってみるとむしろ少しずつ、ここ何回かの調査、五年ごとですが、の間に増えてさえいると。そういうことがあって、週休適用労働者は若干増えていますが、平日の労働時間が長くなってかえって労働時間全体が長くなった。週四十時間制に移行した後そういう変化があったと言っても間違いではありません。
 したがって、労働時間が減っていないフルタイム正規労働者、とりわけ長時間労働の男性労働者が一方にいて、その労働者と、他方に、特に結婚後一旦辞めた後、再雇用なり労働市場に再参入した後、仕事がほとんどパートタイムしかないという中でパート就業を余儀なくされている、あるいは家庭戦略からも選択をしているそういう女性、近年では女性に限らず男性もパートと職場で呼称される労働者が増えていますが、そういう労働者が増えていることをどう捉えるかという中で、なおもやはり男女の役割分業みたいなことが非常に大きな背景になっているということで、この最後の結びを書いています。これを読み上げて終了します。
 家事労働をほとんどせず、サービス残業も拒まず、過労死の不安と背中合わせに働く男性が中核的正社員になっている、女性の多くは結婚、妊娠、出産後一旦労働市場から退出し、家事労働に専念する、再び雇われるときにはほとんどがパートタイム労働者である、企業はこうした労働力の性別振り分け構造の存在を前提に、女性を低賃金の使い捨て労働力として働かせる雇用管理戦略を選択してきたのではないか、女性活躍戦略は性別分業を前提としたパート雇用戦略の部分的手直し、残業の上限規制による長時間労働の解消こそが、男女の働き方の労働所得にも広がっているような大きな格差を解消、改善する先決条件ではないかというのが、私の最も強調したいポイントです。
 どうも御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 森岡孝二

speaker_id: 21643

日付: 2017-02-22

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会