森岡孝二の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○参考人(森岡孝二君) 実は、二〇〇四年にアメリカで出版されて、二〇〇七年に日本で、共訳者の一人で私が監訳を受け持つ形で、デービッド・シプラーという人の、アメリカの著名なジャーナリストですが、「ワーキング・プア」という本を翻訳出版いたしました。
この中にいろいろ興味深いことが書いていますが、貧困に関わって、また働いている低所得層に対してどんな教育なり訓練というのが望ましいかということのくだりの中で、スキルを二つに分けて、ハードのスキルとソフトのスキルと。ハードのスキルは、情報処理機器の操作能力とかあるいは言語能力とか、あるいは特定の免許資格等の取得等なんですが、ソフトというのは、もう少し日常的な、本来は家庭教育で身に付けるであろう規律で、時間を厳守するとか、あるいは挨拶がちゃんとできるとか、怒りを抑えられるとか、そういうスキル、言わば人間関係を円滑に営むためのスキル。
貧困に陥って、特に貧困の連鎖で、親も貧困、子も貧困、教育も十分に受けられないという中で若者が育っていくと、そのソフトのスキルが著しく欠けると。そうすると、それは就職開拓能力や採用されるという点での企業面接でも非常に大きな、言えばマイナス要因になって、なかなか定着しない、せっかく働き口があってもすぐに辞めてしまう。
私、たまたま院生で、社会人で入ってきた研究者になろうという人で派遣会社に勤めていた方がいました。先ほどの私の報告では、人材派遣のことは、あるいは労働者派遣業のことは全く取り上げませんでしたが、派遣でその彼が行っていたのは何かというと、何というか、突然穴を空ける、いなくなるとか連絡不明になるとかいう人のケアをする、そんな係で大変だというふうな話を聞いて、なるほどと思ったんですが、今言ったようなソフトのスキルという点、それをどういうふうに付けるかというのは一つの大きな課題があります。
それからもう一つ、若干のお時間をいただきますと、日本は高度のスキルを持ったいわゆる専門的、技術的職業従事者の非正規雇用比率が非常に高いんですよ。例えば、劇場、ホールを管理する様々なスキルを持った専門家というのは大概市町村でも非正規です。市町村の年史編さん室等に勤めている大学院卒の歴史学研究をしたような、あるいは考古学研究をしたような専門家も非正規です。あるいは市町村の、あるいは企業の生活相談にあずかっているかなり専門能力のある教育歴の高い人も非常勤です。一日一万円で週四日、月十六万円というふうなケースがあって、こういう点でいうと、もっと専門家を大事にする、スキルを身に付けた人を大事にするシステムの開発が必要。大学の就職面接でも、意外にスキルというのは高い評価なんかなくて、語学が適当にできるとか情報処理能力があるとかいうのだけでは到底企業では評価されない、むしろ下位の評価点しかないというふうなこともありまして、その辺の転換が求められると思います。