黒田東彦の発言 (財政金融委員会)
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○参考人(黒田東彦君) まず、ほぼ完全雇用の状態にあるということで、四年連続でベースアップが実現するなど、賃金は緩やかには上昇しております。ただ、御指摘のとおり、労働需給の引き締まりの割には、これが賃金の上昇に波及していく力がやや弱いということも事実であります。
この背景には、我が国ではデフレが長期間にわたって続いていたために、デフレマインドの転換に時間が掛かっているということがあると思います。例えば、デフレの下で企業、従業員共に雇用確保を重視してきた経緯がありまして、賃金上昇に向けた姿勢になかなか切り替えられていないという面もあろうかと思います。また、我が国では、御案内のとおり、春闘等における賃金決定に際して前年度の物価上昇率を勘案するという慣行がございます。そうした下で、エネルギー価格下落の影響などから、実際の消費者物価上昇率が伸び悩んだという下で賃金が上がりにくかったということもあろうと思います。
二番目のエネルギー価格の点につきましては、確かに日本はエネルギーのほとんどを輸入しておりますので、エネルギー価格が上昇いたしますと言わば国民経済全体として実質所得にマイナスの影響が出てくるということは事実なんですが、過去の状況を見ましても、そうした下でもエネルギー価格が下落すると消費者物価も下落する、エネルギー価格が上昇すると消費者物価も上昇するという傾向が明らかにございます。ただ、これはエネルギー価格自体が、いろいろな要因で、一時的な要因で上がったり下がったりいたしますので、それ自体が物価上昇率の、あるいは物価上昇の基調を決定するということにはならないというふうには思います。
その点で、三点目が物価上昇予想というか予想物価上昇率ですが、これについては昨年の九月に行いました量的・質的金融緩和等の総括的検証でもかなり深く、詳しく分析しておりますけれども、我が国においてはどうしてもこの物価上昇率が後追い的に、言わば適応的な期待形成があるものですから、実際の物価が下がると期待物価上昇率も下がる、実際の物価が上がると期待物価上昇率も上がるという傾向がございます。実際にも、二〇一四年には一時、物価上昇率が生鮮食品を除いて一・五%程度まで上がりましたが、そのときには物価上昇予想というもの自体もそれに近いところまで上がっておりました。ただ、その後、エネルギー価格の下落を受けて、実際の物価上昇率が下がっていく中で予想物価上昇率自体も下がっていったという経緯がございます。