豊田正和の発言 (資源エネルギーに関する調査会)
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○参考人(豊田正和君) 御紹介をいただきました日本エネルギー経済研究所理事長の豊田でございます。
本日は、お招きをいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
二十分をいただいておりまして、三十八ページほどの紙でございますので、幾つか飛ばしながらお話をさせていただきます。お手元に資料もあろうかと思いますけれども、スライドの方で進めさせていただきたいと思います。(資料映写)
エネルギー情勢が大きく変わっているということを前提に日本はどのような対応をすべきかというような、そういう整理をしておりますけれども、三つほどに分けてお話をさせていただきます。
一つは、国際エネルギー情勢、内外のエネルギー情勢が変わってきている、大きく変わってきているというのが一つです。これ、五つのリスクと書いてございますが、ついこの間まで、先生方のお手元に、場合によっては七つのリスクのお話があると思うんですが、その後も八つ目が出てきたり九つ目が出てきたり、むしろ五つにまとめ上げましたということです。それからもう一つは、福島の原発の事故以降、あるいは今申し上げた五つのリスクも踏まえながら、政策の視点がどう変わってきているのか。そして最後に、政策として、政府としての政策、企業としての戦略という意味において、今五つの方向ということで整理をさせていただきました。
まず、リスクの方でございますけれども、一つは、原油価格が大きく下落をしてきておりますけれども、その先行きがよく分からないというのが一つですね。そしてもう一つ目は、中東のみならず、最近は朝鮮半島も含めてですけれども、地政学的な不安定性というのが際立ってきていると。三つ目は、パリ合意で多く世界中で共有されておりますけれども、気候変動への対応。そして、福島の事故を発端に原子力の安全性への懸念が高まったということ。最後が、去年の十一月以降に加えたものなんですけれども、新しい米国政権の誕生ということです。
ファクトが中心でございますので、早めに進めさせていただきますけれども、まず、原油価格が下落したというのはもう皆様も御存じのとおりでございます。去年の一月には一バレル二十ドル台まで下がったんですけれども、最近五十ドル前後で少し落ち着いているということですね。問題は、その結果として、この右の表にあるように、多くの産油国はみんな財政赤字でございます。これが長く続くと、中東がほぼ中心ですけれども、政治的不安定さが出てくる、もう既に出てきておりますけれども、産油国でさえおかしくなってくるということがございます。
加えて、こうやって四十年ベースで見ますと、大きな山が二つあるわけですけれども、これ二〇一四年のリアルバリューでやっておりますが、そうすると、ちょうど同じぐらいの高さになると下がり始めるということですね。問題は、下がりっ放しではなくて、どこかでまた上がるということでございます。そのタイミングがよく分からないので非常に不安であり、なかなか投資が進まない。そうすると、将来、どのぐらいのタイミングか分かりませんが、また石油価格が上がるということがあり得るということでございます。
二つ目のリスクが地政学的な不安定性ですね。中東はもう御案内のとおりで申し上げるまでもございませんけれども、加えて、ウクライナ、その背景のロシア。この右下の方にロシアへの依存度も案外高いということを書いてございます。ロシアもしっかりと安定をしていただかないと困ると。それに加えて、アジアも、中国の南シナ海への進出のみならず、最近では北朝鮮も予測不能な動きを見せてきているということは御案内のとおりでございます。この南シナ海はちなみに、原油の九割、LNGの四割が通ってくるというものです。
こういった地政学的な不安定性というのは、米国政権が一歩引いてしまったことからきていると。トランプ政権はオバマ政権のその対応をストラテジックペーシャンスというような言い方をしておりますけれども、それは言ってみれば、この下にございますように、国民の厭戦気分を反映したものでもあると。最近のトランプ政権の動きはちょっと様子が変わっておりますが、その件は後ほどもう少し申し上げたいと思います。
三つ目のリスクが気候変動でございます。この右の上にありますように、科学的には温度が上がってきているというのは否定できないと思いますが、そのスピード、そしてその影響については必ずしもはっきりはしないと。ただ、パリの合意で一定の合意ができております。そういう意味では、気候変動についてはまた後ほど述べますけれども、国際的な合意になっているということです。
それから四番目が原子力ですね。これ、最新時点の日本の再稼働のスピードを表しておりますけれども、事故の当時五十四基あったものが、廃炉分を引きますと四十二基になり、そのうち現在二十二基が審査中であり、三番目に、営業運転してきているのがほぼ四基になりつつある。これ、高浜の三号が今止まっておりますので、実際に動いているのは四列目の三基ということになりますが。高浜については、御案内のように、大阪高裁で仮処分が取消しになっていますので、三号が動き四号が動くというタイミングはそう遠くないと思いますが、いずれにしろ、二十二基のうち、審査中の、二十六基のうちこれだけしか動いていないということだと思います。
これちょっと御説明省きますけれども、原発が幾つ動くかによって電力コストが幾らになってGDPがどういうふうに変化していくのかというのを書いたものです。御質問があれば御説明をさせていただきます。
最後が米国の新政権の誕生でございます。
エネルギー、環境として整理してありますが、これは次のページでまた詳しく述べますので一番下の外交を見ていただきますと、もう一言で言えば、オバマ政権よりは前に出てくると。ただ、一般論としては、他国への介入主義は是正しているという意味では変わっていないんですが、私どもの言い方ですと選択的介入というような言い方をしております。その代表がISIS対策はしっかりやりますよと。加えて、最近では北朝鮮ということになっていると思います。中国の為替の話は、御案内のように方向転換しちゃいまして、認定をしないで終わっていると。あと、イランあるいはテロ支援国家に対する対応というのは恐らくしっかりやっていくんだろうと思います。
エネルギー、環境だけちょっとつまみ上げまして、次の二ページで御説明をいたします。
アメリカ・ファースト、アメリカ第一主義のエネルギー政策というふうに彼らは呼んでおりますけれども、一つは化石燃料重視であると。地下に眠っているアメリカの資源は可能な限り使うと。これは天然ガス、よりクリーンと言われている天然ガスのみならず、そして石油のみならず石炭も含めてということだと思います。
二つ目のキーストーン、これは、パイプラインは環境を汚すということでオバマ政権は禁止していたんですけれども、カナダから石油を運んでくるパイプラインも許可をいたしました。その結果として中東依存がほぼゼロに理論的にはできると。今のところは油種の関係でまだ中東から輸入はしておりますけれども、いざとなれば中東から輸入しなくてもいい体制ができたということだと思います。そこが日本と大きく違う点ですね。
三番目の再生可能エネルギーへはインセンティブを提供しない、連邦政府としては提供しないということですね。州政府は、提供しているところは引き続きやっていくだろうと思います。
原子力は不明なんですが、ここ最近の予算の動きを見ていると、あのユッカマウンテンの処分場に対する予算を復活させていますので、通るかどうかは別として、原子力には比較的前向きだろうというふうに私どもは推測をしております。
次のページへ参りますが、温暖化対策については、初めはでっち上げであると、ほとんど信じないような御発言をされておりました。ただ、選挙後はだんだんトーンが緩やかになってきていて、慎重に検討する、あるいは既成観念なしでオープンマインドで見ていこうということでございます。
最近の状況を見ていると、国務長官がパリ合意から離脱はやめましょうとどうも言っておられるようですので、まあ離脱はしないかもしれませんが、今まで申し上げたことで、化石燃料が増えていくという意味においては、オバマ政権の公約がうまく実現できるかどうか分かりません。
中東の関わりは、先ほど申し上げましたように、エネルギーという意味ではほとんど依存しないで済んでしまう体制ができてきて、選択的介入という意味で反テロ集中型に行くんだろうというふうに考えております。
環境庁長官に環境庁は要らないんだという人がなっておられることは御案内のとおりですけれども、環境庁についてはむしろいわゆる古典的な公害対策に集中すべきであるというそういう立場のようでございます。
次に、政策の視点ということですが、もうこれは先生方御案内のとおりなので確認のために一枚だけ見ていただきますと、福島の事故の前はエネルギーセキュリティー、エコノミックエフィシェンシー、エンバイロンメントという3Eを中心に議論していたものが、セーフティーというSが加わったということでございます。
御案内のとおりでございますので、これ以上深いところには入らないで先へ行かせていただきます。
じゃ、どうするかということで、五つほど整理をしております。
不安定な状況、先がよく見えない状況下で行うべきこととして五つほど挙げておりますのは、省エネルギー、エネルギーミックス、これは決定しましたので、実現ということになると思います。それから三番目に温暖化ガス削減目標、これも決定しましたが、実現というところが問題だと思うんですね。それから原子力の安全確保と、この温暖化ガスの削減目標のためにも再稼働は進めないと実現しないということです。それから五番目が再生可能エネルギーのコストダウンということです。今再生可能エネルギーは非常に高くなっているということが大きな問題になりつつあります。
一つ一つ簡単に参りますけれども、省エネルギーのところは、もう中上先生が最も御専門家であられますので、ありますということだけ申し上げて、先へ進ませていただきます。
二つ目のエネルギーミックスのお話ですけれども、これももう皆様御案内のとおりでございますけれども、括弧の二番目の策定の基本方針ということで、委員会でも合意した三つの項目というのがございまして、安全保障の観点から自給率を事故の前の水準に上げるということで、二五%程度にするということ。それから、電力コストは現状より、これが決まりましたのは二年ほど前ですけれども、それよりも下げるということ。そして三番目に、温暖化ガスは欧米に遜色がないものという。この目標を定性的に決めた後に言わば自動的にいろんな数字が出てきたんですが、3Eという観点から見ると完璧なエネルギーは一つもないということで、結果的には多様化、バランスというものが出てきた。
この電力、二十二ページの電源別コストというのが前提になっております。これも御説明を省きますが、ワーキンググループでこれを作った上で、先ほどの電力コストが今よりも下がるという、そういう計算をしたわけですね。
二十三ページと二十四ページは、もうしょっちゅう御覧になっているものだと思いますから御説明は省きますけれども、一次エネルギーにおけるエネルギーミックス、そして電力におけるエネルギーミックスが決まっているわけですが、ゼロエミッションという意味においては、再生可能エネルギーと原子力で四四%というのを目標にしたと。この四四%が実現できませんと温暖化ガスの削減というのは非常に難しくなってくるということでございます。
ちょっと先へ進ませていただきます。
二十六ページのパリ合意ですね。これはパリ合意と京都合意を比較していますが、パリ合意の方が百九十か国が参加している、京都は三十七か国にすぎなかったという意味では成功なんですが、合意を立ち上げても減ってはいないというところが大きな課題になっているということです。
その中で、二十七ページに多数の国が出してきた数字が書いてございますけれども、下の方を見ていただくと、BAU比ですから、ビジネス・アズ・ユージュアル、ほっておけば伸びるものが少し減りますよというふうな目標を立てている国が多いものですから、結果的には決して減っていないということです。
二十八ページが、日本、アメリカ、EUの比較でございます。基準年次が違うので簡単に比較できないんですが、そう遜色のあるものではないということは言えるだろうというふうに思います。
二十九ページですけれども、伸び伸びと増えていくビジネス・アズ・ユージュアルがこの上の黒い線ですね。それから、努力をすれば下がるだろうというのが赤い線でして、努力の半分近くが省エネになっています。そして、再生エネルギーと原子力と燃料転換、例えば石炭から天然ガスへと。下の方に黒三角がございますけれども、黒三角が今IPCCで合意されている二〇五〇年半減の数字ですので、とてもそこに届かないということでございます。
私どもの研究所としては、今のエネルギー体制、技術体制では十分ではなくて、三十ページにあるような新しい技術が必要だということを申し上げております。
ちょっと中身は省きますけれども、例えば水素製造が、CCS、カーボン・キャプチャー・ストレージとともに使われますと、先ほどのほぼ横ばいのものが更に下がるということは言えると思いますが、この技術というのはまだ必ずしも十分確立していませんし、日本にはそもそも場所もないということで、日本としては水素にして輸入するというような考え方が出てきております。
原子力の安全性については、技術と制度、これ独立性ですね、そして安全文化という三つが重要だというふうに私どもは思っております。
三十二ページに整理をしておりますが、技術はそれほど日本は遜色はないと、津波が来る前はしっかり耐えたわけですので。ただ、津波で全電源が喪失してしまったということが規律の中に入っていなかった、安全規制の中に入っていなかったという意味では制度の問題があったと。その制度も今は直っているので、むしろ文化の問題だというふうに私ども考えております。事業者が規制の基準をはるかに上回る努力を自主的に行うことと、国民が、ある意味で一定のレベルまでリスクが下がれば合理的な許容範囲だというふうに捉えて、それを支持できるかどうかということだと思います。欧米の国々はそういう考え方で進めておられます。
三十三ページは、放射線というものがある意味で相対的だということを申しているものでございますが、ちょっとお時間も限りがございますので、省かせていただきます。
そして、これが、今、司法の問題ですね。多くの国では、規制機関の判断を司法は尊重するということになっていますが、日本もようやく大阪高裁でそれに近づいたということです。
これが最後でございますけれども、再生可能エネルギーというのは大きく入ってきております。ちょっと字が小さくて恐縮ですけれども、一番右の列の一番下に八八五八というのがございますけれども、去年の九月の段階で八十九ギガワット、八千九百万キロワット入ってきています。実際には、入ってきているとは言い過ぎで、認可されています。この三分の一近くが実現していて、今後三分の二が実現していくと、その一番下に書いてございますが、FITのタリフの支払が今後二十年で五十八兆円という大きな数字であるということは多くの国民と共有をしておく必要があるだろうというふうに思っております。
そのために、再エネが太陽一辺倒でないように、三十六ページに、バランス化ということを進め、コストダウンのために必要があればオークションも入れる、そして、効率的な電力取引を実現するというようなことを念頭に改正FIT法というのも実現をしているということでございます。
以上申し上げて、大きなリスクが不安定な状況を今つくり上げていますけれども、五つの政策あるいは戦略というものを進めていったらいかがかというのが私どもの主張でございます。
ちょっと駆け足でございましたが、お時間でございますので、以上でございます。
ありがとうございました。