江藤俊昭の発言 (総務委員会)
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○参考人(江藤俊昭君) おはようございます。山梨学院大学の江藤です。
私自身は、住民自治あるいは住民参加だとか、そして議会改革について研究をしておりますけれども、国の地方自治制度改革では地制調の、地方制度調査会の第二十九次と三十次に関わらせていただいていました。
今回、この地方自治法の一部改正案を読みますとガバナンスの強化ということで改革が提起されているなというふうに思っています。ただ、アングルを変えて読むと、住民参加だとか議会にも拡充できるというところもあるのかなというふうに思っています。
最初の意見陳述では、改正によってどのような活用が可能なのか、そして留意点、課題について述べさせていただきたいというふうに考えております。
もちろん、議会というと議会自体の問題を挙げる方も多いんじゃないかなというふうに思っています。政務活動費の不正受給とか、そして議会自体が追認機関化しているんではないだろうか、こうした問題というのはあると思いますけれども、今回の法律改正というのは、一方ではこうした状況を改革するためにも、そしてまた新たな議会をつくり出す上でも活用できる部分はあるかなというふうには印象を持っております。
議会改革は御存じのようにかなり進展している、だから従来の議会改革のイメージとは違うんではないだろうかということをまず最初に述べさせていただきます。
今から十一年ほど前に北海道の栗山町というところで議会基本条例というのが制定されていますけれども、そこでの方向性というのは、住民に閉鎖的ではなくて、住民に開かれて住民と歩む議会をつくっていこう、質問の場だけではなくて議員間討議を重視して論点を明確にしていく、そしてそれらを踏まえて追認機関ではなくて首長と政策競争をしていく議会というのをつくり出していく。で、たった十一年で約八百の自治体がこの議会基本条例を制定しています。だから、そういう意味では住民自治の広がりだというふうに感じていますけれども、ただ、その議会改革はある意味では形式なんですね。形式だと思いますけれども、それを住民の福祉の向上にどうやってつなげていくか、私たちの言葉では議会からの政策サイクルというふうに呼んでいます。
それでは、住民自治、その根幹としての議会の充実に活用できる視点から改正案について少し触れていきたいんですが、ただ、自治法改正というと、抜本的な改正というふうにいうといろんな議論が出てくると思いますので、ここでは、現行法体系を踏まえて改正案についてベターかどうかという視点でのみ論評したいというふうに思っています。そういう意味では、三十一次の地制調の答申との関係についても考えたいというふうに思っています。
それでは、まず監査制度の充実強化についてお話をさせていただきますが、監査委員制度は地域経営にとって重要だ、誰しもが認めることなんですが、監査委員制度の設置以降、抜本的な改革、議選監査委員の義務付けの緩和、いわゆる選択制というのがこの改正案には入っています。概要の中では少し下の方に書いてあるわけですけれども、かなり住民自治にとってすごく大事なんじゃないかというふうに思って、これを少し述べさせていただきます。
かなり多くの議論の中に、議選の監査委員は独立性、専門性から問題ではないか、なじむのか。それから、単にポストの一つとしてみなされて、任期が四年にもかかわらず短期で替わることにはいかがなものか。あるいは、今日、政務活動費問題も含めて、議会に関わる住民監査請求が多く上がっていて、これでは審査できないんじゃないだろうか。これは確かにそういうふうな議論があって、議選の監査委員制度自体の廃止というのも長年強調されていました。
私自身は、二十九次地制調の際にも少数説だというのを取っていたと思うんですね。言わば用心棒説というのがあるんですが、これは、監査委員制度が生まれたときに、政府の説明で、識見だけではなくて力を持った議選がいることによって充実した監査が可能なんじゃないだろうかという議論だったと思うんですけれども、政治的な感覚を持って監査に当たることも必要だ、実際にはこうした役割を実践している議会は少ないかもしれないので、その可能性というのはあるんじゃないかなというふうに思っています。だから、なくせばいいという議論ではないということです。
ただ、そうであっても、私は今回の選択制について評価をしているのは、監査委員制度自体、そして議選制度自体をそれぞれの自治体で議論する機会になるというふうなことなんですね。そこの中で、どういうふうな議選の委員ならば必要なのかということを議論する機会になるのではないか。だから、つまり、議選制度があるから議選を置くのではなくて必要だから置く、あるいは、廃止するならばどのような監視機能を強化し、監査委員との連携を強化するかどうか。議選を配置するかどうかはともかく、識見は議会の同意です。だから、どのような人を識見として同意するかどうかというのを是非議論をしたい、そういうふうなことだと思うんですね。
その上で、留意点として三点ほど述べさせていただきますが、一つは、監査委員制度が設置されたときに、実地検査権というのは監査委員に移っちゃっているんですね。だから、もし議選を廃止するのであれば実地検査権というのも議会に付与する、そういう議論の展開というのは今後課題としてあるんじゃないだろうか。また、議選をなくすとすれば、監査委員というのを議会からの選挙ということも今後議論することでもあるんじゃないかというふうに思っています。
留意点の二点目です。それとも関係しますが、監査委員制度というのはすごく大事なんですけれども、その監査委員事務局がいまだに必置じゃないんですね。そして、設置しているとしても、総務課やそれから議会事務局との併任ということも多い。だから、そこのところを今度充実させる。だから、議会事務局の必置と同時に、その監査委員事務局も必置制というのも今後考える必要がある。
さらに、ちょっと私は自治法、自治的な制度としては変則だと思っているんですが、議会の身分を残したまま執行機関の監査委員になっているわけですね。だから兼任になっているわけですけれども、この整合性を今後どうしていくかどうか。私自身も結論を持っているわけではないんですけれども、今回のものについても次善の策として考える必要もあるのではないだろうかというふうに思っています。
それ以外の監査委員制度については、勧告制度の創設とか監査専門委員の創設などは、基本的に監査委員を充実させる、監査機能を充実させる意味では評価をしたいというふうに思っています。
なお、この分野で、三十一次の地制調の答申、これとの少し異同があるわけですね。それは何かというと、全国を通じて統一的な基準を策定する、監査委員の研修を義務化していく、それから監査事務の助言等を行う全国組織を設置するというのが答申の中に書かれているんですが、私は今回これが外れたことは高く評価をしたいというふうに思っているんですね。もう既にこういう制度がありますし、実際上は研修もやられているんですね。またぞろそういう制度をつくる必要は私はないんじゃないかなというふうに思っています。これが一つです。
次に、決算不認定についての議会への報告規定の整備についてなんですが、なぜこれが今までなかったのかどうなのか。要するに、専決処分については先般の自治法改正で専決処分の承認の否定後の対応が義務化されています。恐らくこれをスライドさせたものだというふうに思っていますけれども、要するに、決算、終わったことだからって軽視する風潮をなくすことにもなるし、それから関連事項が動いているから重要だという狭い活用の仕方ではないんですね。
今日、本丸として、財務過程に議会が関わっています。予算を審議するためには決算認定がすごく大事だ、決算認定をするためにはしっかりと議会でも行政評価をやっていく、そういう流れの中ですから、この決算審査こそが今後の予算審査の中ですごく充実する。だから、是非、まず今回のことというのは評価をしています。
ただ、今回の場合は、必要と認める措置を講じたときはという限定が入っているんですね。恐らく、政治的なあつれきの中で不認定ということも想定しながら、そういう場合に限ってということになっていると思うんですが、不認定の場合には議会側からも説得的な説明が必要になってきているなというふうに読みたいというふうに思っています。
そして、三番目には、地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直しということなんですが、これも三十一次の地制調でいろいろ議論があって、その後も議論があるところだと思います。
大きくは二つあるわけですが、一つは、善意で軽過失の場合に賠償責任額を限定してそれ以上の額を免責すること、これを条例で定めるということだと思うんですね。もう一点は、住民監査請求に関する損害賠償請求等の放棄を議会が議決するとき、議会は今までもできたわけですけれども、そのときは監査委員からの意見聴取をする。
一点目は、軽過失免責を取っていない、一方で、従来どおり監査請求ができるし、住民訴訟ができる、他方で、過大な責任は取らない配慮がされていると思います。
問題になるのは二点目だというふうに思います。係属中の賠償責任を放棄することを制限するかどうか、いろんなところで議論がありました。私自身は、一点目と絡めながらこの二点目の議論をしていかないと、その条文だけを読んでいくと従来と同じじゃないかというふうに読めてしまう可能性もあると思うんですね。だから、一点目と二点目を絡めながらというふうに思っています。
そもそも私は、今までの二十九次の地制調の中でも、原則論として、地方分権時代の議会が高まっている時期に議会の権限を制限する、係属中という規定がありながらも、今回なくなっていますけれども、問題はあるというふうに考えていました。ただし、住民の感覚からするとそういうことについても問題がある。そこで監査委員からの意見聴取を組み込んだというふうになりますけれども、監査委員に問題があるから住民訴訟になっているわけで、そこに、監査委員に聞いてもどれだけの意味があるかどうか。これはこれで一つの議論として成り立つんだと思うんですが、今回ベターだというふうに考えているのは、一点目が効いているんだと思うんですね。
既に賠償責任額を限定してそれ以上の額を免責としている、そうだとすれば、それ以上の免責の放棄の根拠が必要になってくるわけです。だから、そこのところをどのように議論していくかどうか。今までも、通常、放棄というのは一部放棄ではなくて全額免責なんですね。だから、そこの一点目と絡めながらそこで慎重に議論する。要するに、議会にも監査委員にも説明責任が求められているというふうに思います。
繰り返しになりますけれども、三十一次答申の係属中の放棄の禁止が強調されているんですが、これは今回なくなっていますけれども、議会の権限を奪うのは、分権時代に、そして政治の時代に私はなじまないというふうに思っています。住民感覚と外れた行動を議会に取らせないためにも、しっかりと説明責任の強化によって外堀をしっかり埋めていくような改正が一つの方向性かなというふうに思っています。
その上で、巨額の損失を自治体に被らせないためにも、次の内部統制の強化が必要になる、それが次の論点なんですが、なぜ今までこうした内部統制に関する方針の策定等についてこういうことがなかなか広がらなかったかどうか。私たちが調査した中でも、実際上、市町村においては三十数%はまだそういう議論は知らない、去年の段階ですね、あるいは町村においては四〇%以上がそういう議論は知らない。是非、この内部統制をしっかりしていく、そういう方向性にかじを切ったということは評価したいと思います。
そのことで報告書等が公開されるわけですから、議会もこれを活用する、そして住民もそれを活用するというような、実際上活用の方向に役立つことはできるんじゃないだろうかなというふうに思っています。
今回、義務化が都道府県とそれから政令市、指定都市に限られているんですけれども、私は、それ以外のところでも積極的に位置付ける、さらには、庁内部の話だけではなくて、こうしたリスクマネジメントというのは議会にも必要だと、だから、今後議会としてもこうしたものを、リスクをあぶり出して不正がないようなシステムをつくる必要があるんじゃないかなというふうに思っています。
以上、ガバナンスの強化、とりわけ住民との関係でこの拡充、活用できるところ、あるいは課題について述べさせていただきました。
あと一分あるので一つだけ。ちょっと私が今後議論しなきゃいけないところというのは、監査委員が監査基準を策定する際に国が指針を出すことになっているわけですけれども、私は、指針を出すことは重要だと思うんですが、既に技術的な助言があるのに、同じように法的拘束力があるわけではないので、大臣の助言の意義はどのような関係性があるかどうかというのは十分議論した方がいいのではないだろうかというふうには思っています。
以上、ガバナンスの強化に絞って、最初の意見陳述を終わらせていただきます。